定款を変更すると登記が必要?必要・不要なケース

結論
定款を変更しても、登記もあわせて変更しなければならないとは限りません。基本的には、その定款変更によって、会社法上の登記事項に変更が生じるかどうかを確認します。株式会社の登記事項は、会社法911条3項に列挙されています。
商号や目的のように、登記事項そのものを変える定款変更であれば、原則として変更登記も必要です。事業年度や取締役の任期のように、その定め自体が登記事項ではないものは、一般には、その定めを変更したこと自体を登記する必要はありません。
ただし、変更した定款の条文そのものが登記事項でなくても、その変更をきっかけに、役員の任期満了など別の登記事項に変更が生じる場合があります。反対に、本店の移転のように、定款を変えなくても登記だけが必要になる場合もあります。どちらになるかは、自社の定款に何がどう書かれているかによっても変わります。
定款を変更しても、登記が必要とは限らない
株式会社は、株主総会の決議によって定款を変更できます(会社法466条)。定款変更の決議は、原則として株主総会の特別決議によります(会社法309条2項11号)。ただし、変更の内容によっては、これと異なる決議要件や、種類株主総会の決議が必要になることもあります。一方で、定款に書いてあることのすべてが登記事項になっているわけではありません。
そのため、登記が必要かどうかは、次の順番で確認します。
- 自社の定款にどのように定められているかを確認する
定款に何をどこまで書いているかは、会社ごとに違います。変更したい事項が、定款のどの条文に、どのように書かれているかを確認します。 - その内容が登記事項に当たるかを確認する
登記事項は会社法911条3項に列挙されています。当たれば、原則として変更登記が必要です。 - 登記事項に当たらない場合も、別の登記事項が動かないかを確認する
変更した条文自体は登記事項でなくても、その変更をきっかけに役員の任期などが動くことがあります。
登記が必要になったときの期限は、会社法915条1項に定めがあります。会社法911条3項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地において変更登記をしなければなりません。
定款変更の決議そのものについては、株主総会について|非公開会社を中心に基本を解説で扱っています。
そもそも株式会社は、何を登記する?
「定款を変更すると登記が必要なのか」を考えるには、先に株式会社の登記事項を知っておくと判断しやすくなります。株式会社の基本的な登記事項は、会社法911条3項にまとめて定められています。
会社法と商業登記法の役割分担は、次のとおりです。
| 法律 | 定めていること |
|---|---|
| 会社法 | 何を登記するのか(登記事項の内容と、登記の期限) |
| 商業登記法・商業登記規則 | その登記をどのように申請するのか(申請書の記載事項、添付書面など) |
この関係は、会社法907条が定めています。会社法の規定により登記すべき事項は、商業登記法の定めるところに従って商業登記簿に登記するとされています。
会社法911条3項の登記事項(要約)
会社法911条3項は長い条文です。ここでは条文をそのまま引くのではなく、どのような事項が登記事項になっているのか、その全体像がつかめるように要約して並べます。
以下は、条文の内容を読みやすく言い換えた要約です。条文上の正確な要件や記載事項は、会社法911条|e-Gov法令検索の本文をご確認ください。
次の表は、株式会社の登記事項の全体像をつかむためのものです。登記事項には「取締役の氏名」「発行済株式の総数」のように、通常は定款に書かれていない事項も含まれます。定款変更にあたっては、変更する条文そのものだけでなく、その変更によってこれらの登記事項に影響が生じないかもあわせて確認します。
| 号 | 主な登記事項 |
|---|---|
| 1号 | 目的 |
| 2号 | 商号 |
| 3号 | 本店及び支店の所在場所 |
| 4号 | 存続期間または解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め |
| 5号 | 資本金の額 |
| 6号 | 発行可能株式総数 |
| 7号 | 発行する株式の内容(種類株式発行会社では、発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容) |
| 8号 | 単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数 |
| 9号 | 発行済株式の総数並びにその種類および種類ごとの数 |
| 10号 | 株券発行会社であるときは、その旨 |
| 11号 | 株主名簿管理人を置いたときは、その氏名または名称、住所、営業所 |
| 12号 | 新株予約権を発行したときは、新株予約権の数、内容、払込金額など |
| 12号の2 | 電子提供措置をとる旨の定款の定めがあるときは、その定め |
| 13号 | 取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く)の氏名 |
| 14号 | 代表取締役の氏名および住所(指名委員会等設置会社の場合を除く) |
| 15号 | 取締役会設置会社であるときは、その旨 |
| 16号 | 会計参与設置会社であるときは、その旨、会計参与の氏名または名称、計算書類等を備え置く場所 |
| 17号 | 監査役設置会社であるときは、その旨と監査役の氏名。監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるときは、その旨 |
| 18号 | 監査役会設置会社であるときは、その旨と、監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨 |
| 19号 | 会計監査人設置会社であるときは、その旨と会計監査人の氏名または名称 |
| 20号 | 一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名または名称 |
| 21号 | 特別取締役による議決の定めがあるときは、その旨、特別取締役の氏名、取締役のうち社外取締役であるものについて社外取締役である旨 |
| 22号 | 監査等委員会設置会社であるときは、その旨、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役の氏名、取締役のうち社外取締役であるものについて社外取締役である旨、重要な業務執行の決定の委任についての定款の定め |
| 23号 | 指名委員会等設置会社であるときは、その旨、取締役のうち社外取締役であるものについて社外取締役である旨、各委員会の委員・執行役の氏名、代表執行役の氏名および住所 |
| 24号 | 役員等の責任の免除についての定款の定め(会社法426条1項)があるときは、その定め |
| 25号 | 非業務執行取締役等の責任限定契約についての定款の定め(会社法427条1項)があるときは、その定め |
| 26号 | 貸借対照表の内容をインターネットで提供する措置をとるときは、その情報の提供に必要な事項 |
| 27号 | 公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め |
| 28号 | 27号の定めが電子公告であるときは、その情報の提供に必要な事項など |
| 29号 | 27号の定款の定めがないときは、官報に掲載する方法を公告方法とする旨 |
並べてみると、「商号と目的くらいだと思っていた」という方には、意外に多く感じられるかもしれません。役員等の責任の免除や電子提供措置に関する定款の定めのように、日ごろ意識しにくい事項も登記事項に含まれます。
会社法911条3項は、株式会社の基本的な登記事項をまとめた条文ですが、株式会社に必要な登記がこの条文だけで完結するわけではありません。他の登記所の管轄区域内への本店移転(会社法916条)をはじめ、職務執行停止の仮処分、支配人、組織変更、合併などについては、会社法916条以下にそれぞれ規定があります。本記事は、日ごろの定款変更と変更登記の関係に絞って説明します。
定款に書いてあることが、すべて登記されるわけではない
登記事項は多いのですが、それでも「定款に書いてあること=すべて登記事項」ではありません。よくある3つの例で見ていきます。
目的を変更する場合|登記も必要
目的は会社法911条3項1号の登記事項です。新しい事業を追加するなどして目的を変更すれば、原則として目的の変更登記も必要です。目的をどこまで書くかは、会社の目的はどこまで書く?で扱っています。
事業年度を変更する場合|変更自体の登記は不要でも、任期に注意
「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする」という定めを「毎年1月1日から12月31日までとする」に変更した場合はどうでしょうか。事業年度は定款に書かれる事項ですが、会社法911条3項には、事業年度そのものを登記事項とする規定がありません。したがって、定款変更はするが、事業年度の変更それ自体について商業登記は原則として不要です。決算月の決め方は会社の事業年度・決算月はいつにする?で扱っています。
ただし、事業年度を変更すると、在任中の役員の任期が満了する時期が動くことがあります。取締役・監査役の任期が、事業年度を基準に定められているためです(会社法332条1項・336条1項)。
事業年度を変更したときは、税務署等への届出が必要になることがあります。税務上の取扱いについては、当事務所では判断していません。税理士または管轄税務署へご確認ください。
取締役の任期を変更する場合|ここは要注意
取締役の任期も、たとえば非公開会社が「取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」と定めていても、「任期10年」という内容そのものが登記事項になっているわけではありません。任期の決め方は取締役の任期は何年がよい?で扱っています。
もっとも、任期の変更は、在任中の取締役の任期満了につながることがあります。任期そのものが登記事項でないことだけで判断を終えず、別途注意が必要です。
定款に何を書いているかは、会社によって違う
定款には、法律上必ず記載しなければならない事項(いわゆる絶対的記載事項)のほか、会社法の各規定により、定款に定めることで効力が生じる事項(いわゆる相対的記載事項)や、会社法に違反しない範囲で会社が任意に定める事項(いわゆる任意的記載事項)があります(会社法27条・29条等)。
そのため、同じ変更でも、自社の定款にどこまで書かれているかによって、定款変更が必要かどうかが変わることがあります。たとえば本店の所在地を、定款で「大阪市に置く」とだけ定めている会社と、具体的な所在場所まで定めている会社とでは、大阪市内で本店を移転するときに定款変更が必要かどうかが異なります。また、法律上は定款に書く必要のない事項を、あえて定款に書いている会社もあります。
定款変更と登記の要否を最終的に判断するには、自社の定款を実際に確認する必要があります。
一般的なケースで見る|定款変更と登記の関係
ご相談の多い定款変更について、一般的な内容の定款を前提に、基本的な考え方を整理すると次のようになります。
次の表は、一般的な内容の定款を前提に、実務で比較的多いケースを挙げた例示であり、定款変更や必要となる登記を網羅したものではありません。実際の結論は、自社の定款の書き方、現在の登記の内容、機関設計、役員の任期、同時に変更する他の条文などによって異なることがあります。表に出ていないから登記は不要、という判断はできません。
「規定自体は登記事項か」の欄は、変更する定款の規定そのものが、会社法911条3項の登記事項に当たるかどうかを示しています。
| 一般的な定款変更の例 | 規定自体は登記事項か | 一般的な取扱い |
|---|---|---|
| 商号の変更 | 登記事項(2号) | 通常、変更登記が必要 |
| 目的の変更 | 登記事項(1号) | 通常、変更登記が必要 |
| 発行可能株式総数の変更 | 登記事項(6号) | 通常、変更登記が必要 |
| 株式の譲渡制限の設定・変更・廃止 | 登記事項(7号) | 通常、変更登記が必要。全部の株式の譲渡制限を廃止する場合は、役員の任期満了にも注意 |
| 種類株式の設定・内容の変更 | 登記事項(7号) | 通常、変更登記が必要 |
| 単元株式数の設定・変更・廃止 | 登記事項(8号) | 通常、変更登記が必要 |
| 株券を発行する旨の定めの設定・廃止 | 登記事項(10号) | 通常、変更登記が必要 |
| 取締役会の設置・廃止 | 登記事項(15号) | 通常、変更登記が必要。関連する他の条文との整合にも注意 |
| 監査役など機関の設置・廃止 | 登記事項(16号〜23号) | 通常、変更登記が必要 |
| 公告方法の変更 | 登記事項(27号〜29号) | 通常、変更登記が必要 |
| 事業年度・決算月の変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要。ただし、役員の任期が満了する時期が動くことに注意 |
| 取締役の任期の変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要。ただし、在任中の取締役の任期満了に注意 |
| 取締役の員数に関する変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要。ただし、員数に合わせた取締役の就任・退任に注意 |
| 定時株主総会の開催時期の変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要 |
| 株主総会の議長に関する変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要 |
| 株主総会の定足数・決議要件に関する変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要 |
| 取締役会の招集権者に関する変更 | 登記事項ではない | 通常、その変更自体の登記は不要 |
※ 「通常」は、一般的な内容の定款を前提にした取扱いです。自社の定款の書き方や、同時に行う他の変更によって結論が変わることがあります。
「この定款変更は登記不要」で終わらない場合がある
定款変更と変更登記を考えるうえで、いちばん見落としやすいのがこの点です。変更した条文が登記事項でなくても、その変更をきっかけに別の登記事項が動くことがあります。
任期を短縮した結果、在任中の取締役が任期満了になることがある
当事務所でも「取締役の任期を変えるだけなので、登記は不要ですよね」というご相談をいただきます。たしかに、任期そのものは登記事項ではありません。しかし「任期の定款変更自体は登記不要」であることと、「今回、役員変更の登記も不要」であることは別です。
取締役の任期は、定款または株主総会の決議によって短縮することができます(会社法332条1項ただし書)。任期を短縮する定款変更が、在任中の取締役にどこまで及ぶのかについては、会社法に明文の規定がありません。
そこで当事務所では、任期を短縮するときは、変更後の定款を在任中の取締役に当てはめると任期がいつ満了することになるのか、定款の附則に経過措置を置くかどうかまで確認しています。すでに満了している、または近く満了するという結論になる場合は、役員の改選と登記が必要にならないかをご案内します。
そして、任期が満了した後に同じ人をもう一度取締役に選任した場合でも、登記は必要です。法務省も、任期満了後に間を置かず同じ人が再任された場合について、任期満了により退任した役員が再び就任することになり役員の登記事項に変更が生じているため、役員変更の登記を申請するよう案内しています(登記上は「重任」といいます)(法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」)。任期満了と重任の考え方は、取締役の任期はいつまで?「定時株主総会の終結の時まで」の意味と重任登記で詳しく扱っています。
事業年度を変更した結果、任期の満了時期が動くことがある
事業年度の変更も、同じ理由で注意が必要です。取締役の任期は、選任後一定の期間内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされており(会社法332条1項・2項)、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集するものとされています(会社法296条1項)。決算日を動かすと、この「最終のもの」に当たる事業年度がどれかが変わることがあり、任期の満了時期も前後します。
たとえば、毎年6月下旬の定時株主総会で取締役を選任している3月決算の会社が、決算期を12月に変更した場合です。変更前は3月末で終わる事業年度が「最終のもの」でしたが、変更後は、その前の12月末で終わる事業年度が「最終のもの」になり、任期の満了が早まる方向に動きます。そこで当事務所では、事業年度を変更するときも、変更後の事業年度を前提に、在任中の役員の任期がいつ満了することになるのかを計算し直しています。在任中の役員が任期満了となる場合には、役員の改選と役員変更登記の要否をあわせて確認します。
定款変更の効力が生じた時に、法律上、任期が満了する場合もある
会社法には、一定の定款変更をした場合に、取締役の任期がその定款変更の効力が生じた時に満了すると定めた規定があります(会社法332条7項)。次の3つです。
- 監査等委員会または指名委員会等を置く旨の定款の変更(1号)
- 監査等委員会または指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更(2号)
- 発行する株式の全部の内容として設けていた譲渡制限の定めを廃止する定款の変更(3号。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社がするものを除く)
たとえば、非公開会社が譲渡制限の定めを廃止して公開会社になる定款変更をするときは、「株式の内容に関する登記だけを変えれば終わり」とは限りません。役員の任期への影響まで確認する必要があります。
反対に「定款変更なし・登記あり」の場合もある
ここまでとは反対に、定款を変更していないのに変更登記が必要になる場合もあります。
同じ市内で本店を移転する場合
定款に「当会社は、本店を大阪市に置く。」と定めている会社が、大阪市北区から大阪市中央区へ本店を移転するとします。定款の上では、移転の前も後も「大阪市」ですから、この条文を変更する必要はありません。
一方、本店の所在場所は会社法911条3項3号の登記事項です。したがって、定款変更はしないが、本店移転の登記は必要ということになります。
これに対し、定款に「大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号に置く」のように具体的な所在場所まで定めている会社では、同じ大阪市内の移転でも、その条文自体を変更する必要があります。同じ「本店移転」でも、定款の書き方によって定款変更が必要かどうかが変わるわけです。
取締役が交代する場合
定款に個々の取締役の氏名を書くことは通常ありませんが、取締役の氏名は会社法911条3項13号の登記事項です。そのため、定款を一切変更しなくても、取締役の就任・退任があれば役員変更の登記が必要です。
ここまで整理すると、「定款変更の有無」と「変更登記の要否」は、そもそも別の問題であることが分かります。
登記が必要な場合の期限|原則として2週間以内
会社法911条3項各号の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地において変更登記をしなければなりません(会社法915条1項)。
注意したいのは、「株主総会の日から2週間」と決まっているわけではないという点です。起算点は、原則として登記事項に変更が生じた時です。
たとえば、9月20日の株主総会で商号変更を決議し、「10月1日から新しい商号とする」と定めたのであれば、商号変更の効力が生じるのは10月1日です。株主総会の決議と同時に効力を生じさせる場合には、その決議の時に登記事項に変更が生じることになります。
なお、会社法915条には、一部の登記について期限の特則も置かれています。
ですから、「変更登記は2週間」とだけ覚えるのではなく、何を原因として、いつ登記事項に変更が生じたのかを確認することが大切です。
登記を怠った場合、取締役等は100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法976条1号)。法務省も、必要な登記を怠った代表者等が裁判所から過料に処される可能性があるとして、速やかな申請を案内しています(法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」)。
司法書士として実際に確認しているポイント
当事務所では、会社を設立して間もない経営者の方やスタートアップの方から、「定款を変更したら、登記も全部変更するんですよね」というご相談をいただきます。このとき、変更したい条文だけを見て登記事項かどうかを判断して終わることはありません。現行の定款と登記事項証明書をそろえて確認し、その変更が会社全体にどう影響するかを見ます。
定款と登記の内容が一致しているか
お手元の定款が設立時のままで、その後の定款変更が反映されていないことがあります。まず、登記事項証明書の記載と、定款の現在の条文を突き合わせます。ここがずれていると、今回の変更の出発点自体が誤ります。設立時の附則がそのまま残っていることもあり、その扱いもあわせて確認します。
定款変更の効力がいつ生じるか
登記期間の起算点になるため、決議と同時に効力を生じさせるのか、将来の日から効力を生じさせるのかを確認します。将来の効力発生日を定めた場合には、原則として、その効力が生じる前に変更登記を申請することはできません。
役員の任期と機関設計に影響しないか
任期の短縮、事業年度の変更、譲渡制限の廃止、監査等委員会や指名委員会等の設置・廃止は、役員の任期に影響します。また、機関設計を変えるときは、変更が1か所で済まないことがよくあります。たとえば取締役会を廃止するときは、「取締役会設置会社である旨」の登記を抹消して終わりとは限らず、株式の譲渡承認機関、代表取締役の選定方法、監査役などの機関、役員の員数といった条文との整合も確認します。
種類株式を発行している場合の手続
種類株式を発行している会社では、定款変更にあたって種類株主総会の決議が必要になることがあります。必要な決議を欠いたまま登記を申請することがないよう、株式の内容と株主構成をあわせて確認します。種類株主総会が必要になる場面は、種類株主総会とは?必要となる場面・決議要件・手続で扱っています。
定款変更が投資契約や株主間契約に触れる場合、契約の解釈や紛争の見通しについては、当事務所では判断していません。弁護士へご相談ください。
一つの定款変更が、複数の定款条文や複数の登記事項に影響することがある。ここが、定款変更と商業登記を考えるときの実務上の要点です。
よくあるご質問
- この記事の一覧に載っていなければ、登記は不要と考えてよいですか。
-
そのようには判断できません。本記事の一覧は、実務で比較的多い定款変更を挙げた例示であり、定款変更や必要となる登記を網羅したものではありません。会社法911条3項だけでも多くの登記事項があり、そのほかにも会社法上、一定の場合に必要となる登記があります。実際の定款変更にあたっては、個別に確認する必要があります。
- 変更登記の申請には、株主総会の議事録が必要ですか。
-
登記すべき事項につき株主総会の決議を要するときは、申請書に議事録を添付しなければならないとされています(商業登記法46条2項)。定款変更を伴う変更登記では、議事録が必要になるのが通常です。必要な添付書面は登記の種類によって異なりますので、申請前にご確認ください。
- 登記が必要だったのに、していないことに気づいた場合はどうすればよいですか。
-
期限を過ぎていても、変更登記の申請はできます。登記を怠った場合、100万円以下の過料に処される可能性があるのは会社ではなく、取締役をはじめとする役員等の個人です(会社法976条1号)。気づいた時点で速やかに申請することをおすすめします。必要な書面や手続が分からない場合は、本店の所在地を管轄する法務局または司法書士にご相談ください。法務局も、登記申請で不明な点があるときは管轄の登記所へ相談するよう案内しています(法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」)。
まとめ
- 定款を変更しても、変更登記が必ず必要になるわけではありません。判断の軸は、その変更によって会社法911条3項の登記事項が変わるかです。
- 商号、目的、発行可能株式総数、株式の内容、機関設計、公告方法などは登記事項です。これらが変われば、原則として変更登記も必要です。
- 事業年度、取締役の任期・員数、株主総会の運営に関する定めなどは、それ自体は登記事項ではありません。
- ただし、変更した条文が登記事項でないというだけで、登記不要と結論づけることはできません。任期を短縮した場合や事業年度を変更した場合に、在任中の取締役が任期満了になれば、役員変更の登記が必要になることがあります。
- 反対に、本店移転や役員の交代のように、定款を変更しなくても登記が必要になる場合があります。
- 定款に何をどこまで書いているかは会社ごとに違います。最終的な判断には、自社の定款の確認が欠かせません。
本記事は、定款変更と変更登記の関係を理解していただくために、実務で比較的多いケースを中心に整理したものです。定款変更や株式会社に必要となる登記を網羅したものではありません。実際には、現在の定款、登記の内容、役員構成、株式の内容によって結論が変わることがあります。登記の要否や必要な手続に迷う場合は、あらかじめ本店の所在地を管轄する法務局または司法書士にご確認ください。
定款変更と登記は、まとめてご相談いただけます
定款と登記事項証明書を確認し、今回の変更でどの登記が必要になるか、他の条文や役員の任期に影響しないかまで整理してご案内します。「この変更で登記が要るのか分からない」という段階でもご相談いただけます。
主な根拠法令・参考資料
- 会社法27条(定款の記載又は記録事項)/29条
- 会社法296条(株主総会の招集)1項
- 会社法309条(株主総会の決議)2項11号
- 会社法332条(取締役の任期)1項・7項
- 会社法336条(監査役の任期)1項
- 会社法466条(定款の変更)
- 会社法907条(通則)
- 会社法911条(株式会社の設立の登記)3項
- 会社法915条(変更の登記)1項
- 会社法916条(他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記)
- 会社法976条(過料に処すべき行為)1号
- 商業登記法46条(添付書面の通則)2項
- 法務省「役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です」
- 法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」
本記事について
本記事は、2026年9月時点の会社法、商業登記法その他の公表資料をもとに、株式会社を前提として作成しています。法令や実務の取扱いは変更されることがあります。会社の定款、機関設計、株式の内容、役員構成により必要な手続は異なりますので、具体的な手続にあたっては最新の法令・定款等をご確認のうえ、会社法上の手続と登記については司法書士へ、税務上の取扱いについては税理士へご相談ください。
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