会社の登記簿謄本とは?履歴事項全部証明書・現在事項全部証明書など種類と見方を解説

結論
一般に「会社の登記簿謄本」「会社の謄本」と呼ばれているものは、現在のコンピュータ化された商業登記では、通常「登記事項証明書」を指します(商業登記法10条1項)。会社の商号(会社名)・本店(会社の所在地)・目的・資本金・役員など、法務局に登記されている会社の基本的な情報を証明する書類です。
会社の内容を確認・証明する資料として、たとえば、取引先が取引を始める前に相手の会社を確認するときや、会社名義の銀行口座を開設するとき、許認可を申請するときなどに、提出や確認を求められることがあります。
登記事項証明書には、現在事項証明書・履歴事項証明書・閉鎖事項証明書・代表者事項証明書の4種類があり(商業登記規則30条1項)、提出先から種類を指定されている場合は、その指定に従います。指定がなく、会社全体の現在の登記内容と最近の変更履歴をまとめて確認したい場合には、履歴事項全部証明書が使いやすいと当事務所では考えています。
「登記簿謄本」は一般的な呼び方|法令上は「登記事項証明書」
「登記簿謄本」は、もともと紙の登記簿の謄本を指す名称で、現在も一般的な呼び方として使われています。
現在の商業登記はコンピュータ化されており、商業登記法10条1項では、登記簿に記録されている事項を証明した書面を「登記事項証明書」と呼んでいます。
そのため、「会社の謄本を取ってください」「登記簿謄本を提出してください」と言われた場合、多くは会社の登記事項証明書を指しています。どの種類の証明書を指しているのかがはっきりしないときは、取得する前に提出先へ確認しておくと確実です。
登記事項証明書の種類|法務局の交付申請書で全体像を確認
登記事項証明書にはいくつかの種類があり、法務局の交付申請書を見ると全体像をつかみやすくなります。
次の画像は、法務局が公開している会社・法人用の交付申請書のうち、どの証明書を請求するかを選ぶ「請求事項」欄です。

申請書には「履歴事項」「現在事項」「閉鎖事項」と、「全部」「一部」という言葉が出てきます。大まかにいうと、証明書の名前は次の2つの組み合わせでできています。
- 履歴事項・現在事項・閉鎖事項:どの情報を載せるか(現在の情報が中心か、最近の変更履歴も含めるか、閉鎖された古い記録か)
- 全部・一部:会社の登記内容のうち、どの範囲を載せるか(会社全体か、必要な項目だけか)
「一部」で指定する項目のまとまりを、登記記録では「区」と呼びます。申請書に並んでいる「株式・資本区」「目的区」「役員区」などがその例です。
この組み合わせを表にすると、次のとおりです。種類は商業登記規則30条1項が定める4つで、代表者事項証明書は、区を指定して取得するものではありません。
| 種類 | 全部 |
一部 |
|---|---|---|
| 履歴事項 |
履歴事項 |
履歴事項 |
| 現在事項 |
現在事項 |
現在事項 |
| 閉鎖事項 |
閉鎖事項 |
閉鎖事項 |
| 代表者事項 |
代表者事項証明書 |
|
なお、「全部」は会社全体という意味で、会社設立から現在までのすべての履歴が載るという意味ではありません。履歴がどこまで載るかは、次の履歴事項全部証明書の説明で触れます。
履歴事項全部証明書|現在の登記内容と最近の変更履歴がわかる
履歴事項全部証明書は、会社の現在の登記内容と、最近の変更履歴をまとめて確認できる証明書です。
たとえば、現在の役員に加えて最近退任した役員や、現在の本店に加えて移転する前の本店なども確認できます。そのため、会社の現在の状態だけでなく、「最近どのような変更があったのか」まで確認したいときに使いやすい証明書です。
履歴はどこまで載る?
履歴として載るのは、原則として、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消された事項(変更などで効力を失った事項)などです(商業登記規則30条1項2号)。たとえば2026年10月に請求する場合は、原則として、2023年1月1日以降に抹消された事項などが履歴として記載されます。ただし、それより古い情報がまったく載らないわけではありません。現在も効力のある事項や、会社成立の年月日、現在の役員の就任の年月日、商号・本店の直前の事項などは、古いものでも記載されます(同項1号)。
履歴事項全部証明書で確認できる主な項目
登記事項証明書に記載される項目は、会社の定款の定めなどによって異なります。以下は、あくまで一例として、発行するすべての株式について、譲渡による取得に会社の承認が必要と定款で定めている会社(非公開会社)の場合に記載される主な項目を挙げたものです。
- 商号・本店・会社成立の年月日
- 公告をする方法
- 事業の目的
- 発行可能株式総数・発行済株式の総数
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 資本金の額
- 取締役・代表取締役などの役員に関する事項
- 取締役会や監査役を置いている場合は、その旨(取締役会設置会社・監査役設置会社である旨)
- 最近の変更履歴(移転前の本店や、退任した役員など)
非公開会社では、取締役会や監査役を置くかどうかを一定の範囲で会社が選べるため、同じ非公開会社でも、機関設計によって記載される項目は会社ごとに変わります。なお、発行する株式の全部または一部に譲渡制限の定めがない会社(公開会社)は、取締役会を置かなければなりません(会社法327条1項1号)。
見方の基本|下線が引かれた事項は「抹消された事項」
登記簿の中で抹消する記号が記録された事項(変更などで効力を失った事項)は、登記事項証明書では下線を付して表示されます(商業登記規則30条4項)。商号・本店・役員などに下線が付いている場合は、変更前の内容を確認できることがあります。実際の見え方を、法務省が公表している記載例で確認してみましょう。

この記載例では、変更前の商号「第一電器株式会社」と移転前の本店に下線が引かれ、その下に変更後の商号と移転後の本店が記載されています。右側の欄には「何年何月何日変更」「何年何月何日登記」のように、変更などが生じた日と、登記がされた日が記載されています。
現在事項全部証明書|現在の登記内容を中心に確認する
現在事項全部証明書は、会社の現在の登記内容を中心に確認するための証明書です。
履歴事項全部証明書のように、一定期間内の変更や抹消された事項を広く確認するための証明書ではないため、現在の会社の状態を比較的読み取りやすいという特徴があります。
2つの証明書の違いを簡単に並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 履歴事項全部証明書 | 現在事項全部証明書 |
|---|---|---|
| 現在の登記内容 | 記載される | 記載される |
| 過去の情報 | 一定期間内に抹消された事項なども記載される | 過去の変更履歴は限定的※ |
| 向いている場面 | 現在の内容と最近の変更履歴をあわせて確認したいとき | 現在の会社の状態を見やすく確認したいとき |
※現在事項全部証明書にも、会社成立の年月日、現在の役員などの就任の年月日、現在の商号・本店の直前の事項など、一部の過去の情報は記載されます(商業登記規則30条1項1号)。
一部事項・閉鎖事項・代表者事項証明書|必要な場面で使い分ける
履歴事項全部証明書と現在事項全部証明書のほかに、確認・証明したい内容に応じて、次の証明書を使うことがあります。
一部事項証明書(抄本)|必要な区だけを証明する
一部事項証明書は、役員・目的・株式や資本金など、必要な項目のまとまり(区)に絞って取得する証明書です。たとえば役員に関する履歴だけを確認したい場合には、履歴事項証明書を選んだうえで「役員区」を指定します(いわゆる「履歴事項一部証明書」)。
閉鎖事項証明書|古い記録・閉鎖された登記記録を確認する
閉鎖事項証明書は、閉鎖された登記記録、つまり現在は使われなくなった古い記録を証明する書類です(商業登記規則30条1項3号)。
履歴事項全部証明書に記載されていない古い変更履歴を遡って調べる場合には、閉鎖事項証明書を確認することがあります。また、本店を別の法務局の担当地域へ移転した会社の移転前の記録や、合併で解散した会社・清算が終わった会社などの記録は、登記記録そのものが閉鎖されます(商業登記規則80条)。
代表者事項証明書|現在の代表者を証明する
代表者事項証明書は、現在、誰が会社を代表する権限を持っているかを証明する書類です(商業登記規則30条1項4号)。会社の目的や資本金、過去の役員変更などまでは必要なく、代表者の情報だけを証明すればよい場面で使われます。代表取締役が2名以上いる会社では、一部の代表者だけについて請求することもできます(同条2項)。
どの証明書を取ればいい?|確認したい内容で選ぶ
提出先から証明書の種類を指定されている場合は、その指定に従うのが原則です。指定がない場合は、何を確認・証明したいかで選びます。
確認したい内容ごとの選択肢の目安は、次の表のとおりです。
| 確認したいこと | 選択肢の目安 |
|---|---|
| 会社の現在の内容と、最近の変更履歴をまとめて確認したい | 履歴事項全部証明書 |
| 現在の登記内容を中心に、見やすく確認したい | 現在事項全部証明書 |
| 役員・目的・株式や資本金など、特定の区に絞りたい | 一部事項証明書(必要な区を指定) |
| 履歴事項全部証明書に記載されていない古い記録や、閉鎖された登記記録を確認したい | 閉鎖事項証明書 |
| 現在の代表者だけを証明したい | 代表者事項証明書 |
提出先から種類の指定がなく、会社全体の現在の内容と最近の変更履歴を確認したい場合には、履歴事項全部証明書が使いやすいと考えています。金融機関や官公署の手続でも、履歴事項全部証明書を指定されることがあります。
ただし、種類株式や新株予約権を何度も発行している会社などでは、変更の履歴や新株予約権の記載が多くなり、履歴事項全部証明書の枚数が膨大になることがあります。そのような場合には、確認したいところを的確に把握するために、現在事項全部証明書や、必要な区だけの一部事項証明書、代表者事項証明書を取得するケースも、実務上は多いと考えています。
登記事項証明書の手数料
2026年10月時点で、会社の登記事項証明書の交付手数料は、請求の方法によって1通490円〜600円です。
法務省が公表している、令和7年4月1日以降の手数料は次のとおりです。
| 請求方法 | 1通の手数料(1通50枚まで) |
|---|---|
| 書面請求(窓口・郵送) | 600円 |
| オンライン請求・郵送で受け取る | 520円 |
| オンライン請求・窓口で受け取る | 490円 |
1通が50枚を超える場合は、追加の手数料がかかります。手数料は改定されることがあるため、最新の金額は法務省「登記手数料について」でご確認ください。
司法書士として実際に確認しているポイント
登記事項証明書は、その作成時点の登記記録を確認する重要な資料ですが、それだけで会社の現在の状態がすべて分かるわけではありません。当事務所でご相談の際に、記載内容とあわせて確認することの多い点の例です。
1証明書の作成年月日が古くないか
登記事項証明書には作成の年月日が記載されます(商業登記規則30条3項)。作成から時間がたった証明書でも、その時点の登記の内容を確認する資料にはなりますが、作成後にされた変更の登記は、その証明書には反映されていません。必要に応じて、新しく取得した証明書で現在の内容を確かめるようにしています。
2会社から伺っている現在の状況と一致するか
本店の移転や代表取締役の交代などを社内で決定・実行していても、変更の登記がされていなければ登記事項証明書には反映されません。また、最新の証明書を取り直しても、会社内部の手続まで適正だったことが分かるわけではありません。ご依頼の内容と登記記録を照らし合わせ、食い違いがあれば、その理由を伺うようにしています。変更の登記の期限については会社の変更登記を忘れていませんか?で解説しています。
3役員の就任・重任の年月日と任期
役員欄の就任・重任の年月日から、任期が満了している可能性がないかを確認することがあります。ただし、役員の任期は登記事項証明書だけでは判断できないため、定款の任期の定め、選任した株主総会の議事録、事業年度などとあわせて確認します。任期の数え方は取締役の任期はいつまで?で整理しています。
4現在の代表者と、ご依頼者の本人確認・権限の確認
代表者が交代している案件では、登記事項証明書上の代表者を確認し、会社から伺っている内容や必要書類とも照合したうえで、ご依頼に必要な本人確認・意思確認・権限の確認を行うようにしています。
よくあるご質問
- 会社の登記事項証明書は、その会社の関係者でなくても取得できますか。
-
はい。商業登記法10条1項は「何人も」交付を請求できると定めており、手数料を納付すれば、会社の役員や株主でなくても会社の登記事項証明書を取得できます(商業登記法10条1項)。一方、会社の印鑑証明書は、法務局に印鑑を提出した会社の代表者本人(またはその代理人)が請求するもので、誰でも取得できるわけではありません(法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」Q2)。
- 本店を管轄する法務局以外でも取得できますか。
-
はい。会社の登記は、本店の所在地を担当する(管轄する)法務局で行われますが、登記事項証明書は、一部の例外を除き、ほかの法務局でも請求できます(商業登記法10条2項)。法務局も、たとえば大阪市内の法務局で、東京法務局に登記された会社の登記事項証明書を取得できると案内しています(法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」Q5)。また、オンラインで請求し、郵送や法務局の窓口で受け取ることもできます。
- 登記事項証明書に有効期限はありますか。
-
登記事項証明書がいつまで使えるかは、提出先や用途によって決まります。たとえば、商業登記の申請書に登記事項証明書を添付する場合は、作成後3か月以内のものに限られます(商業登記規則36条の2)。また、金融機関・官公署などの提出先が「発行後3か月以内」などの条件を定めていることがあります。提出用に取得する場合は、提出先が求める作成時期をご確認ください。
- 履歴事項全部証明書には、会社設立からの履歴がすべて載っていますか。
-
いいえ。履歴事項全部証明書に変更の履歴として載るのは、原則として、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に抹消された事項(変更などで効力を失った事項)などです(商業登記規則30条1項2号)。ただし、現在の商号・本店の直前の事項などは、それより古くても記載されることがあります。古い変更履歴を遡って確認したい場合は、閉鎖事項証明書を確認することがあります。コンピュータ化される前の古い記録は、交付申請書の「コンピュータ化以前の閉鎖登記簿の謄抄本」の欄で請求できます。
まとめ|会社の登記簿謄本は「何を確認したいか」で選ぶ
登記事項証明書は、確認・証明したい内容に応じて種類を選びます。この記事のポイントは次の3つです。
- 一般に「会社の謄本」「登記簿謄本」と呼ばれるものは、多くの場合、会社の登記事項証明書を指します。
- 提出先の指定がなく、会社全体の現在の内容と最近の変更履歴を確認したい場合は、履歴事項全部証明書が使いやすいと考えています。
- 提出用に取得する場合は、提出先が指定する証明書の種類と作成時期を確認してから取得すると確実です。
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登記事項証明書の内容と会社の現状が合っているか分からない場合や、役員変更・本店移転・増資などの変更登記が必要か迷う場合も、司法書士が会社法上の手続とあわせて確認します。
本記事について
本記事は、2026年10月時点の商業登記法・商業登記規則、登記手数料および法務省・法務局の公表資料をもとに、株式会社の登記事項証明書について一般的に解説したものです。証明書の種類・記載事項・手数料・取得方法の運用は変更されることがあります。具体的な手続については、最新の公表資料と提出先の案内をご確認ください。
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