新株予約権とは?仕組みとストックオプションとの関係をわかりやすく解説

結論
新株予約権とは、あらかじめ決められた条件で、会社から株式を受け取ることができる権利です。会社法では、この権利を使うことを「行使(こうし)」、会社が株式を渡すことを「交付」といいます。会社法2条21号は、新株予約権を「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利」と定めています。
新株予約権を持っているだけでは、その目的である株式について、まだ株主ではありません。行使した日に、はじめてその株式の株主になります(会社法282条1項)。株式そのものと、株式の交付を受けることができる権利は、別のものです。
どのような条件で株式の交付を受けられるのかは、会社法236条1項により、新株予約権の「内容」としてあらかじめ定めて発行します。役員や従業員などへのインセンティブとして使われる「ストックオプション」も、新株予約権の使われ方の一つです。
1.新株予約権とは?
新株予約権は、「いま株式そのものを持つ」のではなく、「会社に対して行使することで株式の交付を受けられる権利」です。
会社法は、新株予約権を次のように定義しています。
初めて聞くと難しく感じますが、次の3つの段階に分けて見ると分かりやすくなります。
具体的な数字を当てはめると、次のようになります。
たとえば、このような新株予約権
- 行使すると100株の交付を受けられる
- 行使に際して1株につき1,000円を出資する
- 2030年12月31日まで行使できる
この新株予約権を持つ人が期間内に権利を行使し、10万円(1,000円×100株)を出資すると、100株の交付を受けて株主になります。
2.株式と新株予約権は何が違う?
一番大きな違いは、「株式そのもの」を持っているのか、「株式の交付を受けることができる権利」を持っているのかです。
株式を持っている人は株主です。これに対して、新株予約権を持っている人は「新株予約権者」と呼ばれます。
そのため、新株予約権を持っているというだけでは、その目的である株式について、議決権や剰余金の配当を受ける権利は生じません。会社法282条1項は、新株予約権を行使した新株予約権者は、その行使した日に、目的である株式の株主となると定めています。
両者の違いを、次の表で整理します。
| 株式 | 新株予約権 | |
|---|---|---|
| 持っているもの | 株式そのもの | 株式の交付を受けることができる権利 |
| 持っている人の呼び方 | 株主 | 新株予約権者 |
| その時点で対象株式の株主か | 株主である | 持っているだけでは株主ではない |
| その後 | 株式を保有し続ける | 定められた条件に従って行使すると、株式の交付を受ける |
「新株予約権」と「その行使によって交付される株式」を分けて考えることが、新株予約権を理解する最初のポイントです。
3.ストックオプションも新株予約権の使われ方の一つ
会社法上の「新株予約権」という権利があり、その使われ方の一つがストックオプションです。
新株予約権は、ストックオプション専用の制度ではありません。どのような目的で、どのような条件を付けて発行するかによって、使われ方が変わります。
新株予約権には、例えば次のような使われ方があります。
新株予約権の使われ方の例
- 役員・従業員などへのインセンティブとして使う → 一般に「ストックオプション」と呼ばれます
- 資金調達に使う → J-KISSなど、新株予約権を利用した仕組みがあります
日本の株式会社で、役員や従業員などへのインセンティブとして新株予約権を付与する仕組みは、一般にストックオプションと呼ばれます。付与された人が在籍期間などの条件を満たすにつれて行使できる数が増えていく、という設計をとることもあります(クリフとベスティング)。
一方、新株予約権は資金調達にも使われます。たとえば、スタートアップの資金調達で利用されるJ-KISSも、新株予約権を利用した仕組みです。
「新株予約権=ストックオプション」ではありません。新株予約権という会社法上の仕組みがあり、その使われ方の一つがストックオプションです。この順序で理解しておくと、条文を読むときに迷いにくくなります。
なお、あらかじめ発行できる枠を決めておく実務については、ストックオプション・プールとは?で解説しています。
4.新株予約権は、内容をあらかじめ決めて発行する
新株予約権は、単に「将来、株式を渡します」という権利ではありません。どのような条件で株式の交付を受けられるのかを、あらかじめ決めて発行します。
会社法236条1項は、株式会社が新株予約権を発行するときに、その新株予約権の「内容」としなければならない事項を規定しています。たとえば、次のような事項です。
- 行使すると何株の交付を受けられるのか(1号)
- 原則として、行使するときに出資する財産の価額またはその算定方法(2号)
- いつからいつまで行使できるのか(4号)
- 譲渡するときに会社の承認を必要とするのか(6号)
つまり、新株予約権を理解するときは、「株式を取得できる権利」というだけでなく、「どのような条件で株式を取得できる権利なのか」まで確認することが大切です。
新株予約権を引き受ける者を募集して発行する場合には、会社法238条以下に従って募集事項を定め、必要な機関決議等を行います。発行後には、新株予約権原簿の作成や登記なども必要になります。具体的な発行手続については、ストックオプション(新株予約権)発行手続のページで解説しています。
5.司法書士として実際に確認しているポイント
新株予約権を実際に発行するときは、発行要項だけを見るのではなく、会社の現状から発行後の登記までを一連の手続として確認します。
当事務所では、主に次の点を確認しています。
- 定款・登記簿・機関設計を確認し、今回の発行に必要な会社法上の決議を整理する
- 新株予約権の内容と募集事項が、株主総会議事録・取締役会議事録等の決議内容と一致しているか確認する
- 発行要項、割当てに関する書類、登記する内容の間に食い違いがないか確認する
- 過去に新株予約権を発行している場合は、既存の発行要項との違いを確認する
新株予約権は内容を柔軟に設計できる一方で、会社法上の決議や登記まで正確に対応する必要があります。発行要項に書いた内容がそのまま登記されるわけではないため、当事務所では発行要項と登記する内容を項目ごとに突き合わせて確認しています。
具体的な発行手続の流れと、ご依頼から登記完了までの進め方は、ストックオプション(新株予約権)発行手続のページをご覧ください。
新株予約権の税務上の取扱い、株価評価、会計処理、資本政策については、当事務所では判断していません。必要に応じて、税理士・公認会計士その他の専門家へご相談ください。
よくあるご質問
- 新株予約権は譲渡できますか。
-
会社法254条1項は、新株予約権者はその有する新株予約権を譲渡することができると定めており、これが原則です。もっとも、会社は、会社法236条1項6号により、譲渡による取得について会社の承認を要することとする旨を新株予約権の内容として定めることができます。誰に、どのような目的で付与するのかによって変わりますので、発行の設計段階で決めておく必要があります。
- 新株予約権は、いつでも行使できるのですか。
-
いいえ。行使することができる期間は、会社法236条1項4号により、新株予約権の内容として定められます。このほか、一定の期間在籍していることなど、行使の条件を付けて発行することもあります。実際にいつ行使できるのかは、その新株予約権の発行要項をご確認ください。
- 新株予約権を発行したら、登記は必要ですか。
-
はい。新株予約権を発行したときは、会社法911条3項12号に掲げる事項が登記事項となり、会社法915条1項により、2週間以内に、その本店の所在地において変更の登記をしなければなりません。その後に新株予約権が行使された場合なども、登記が必要になることがあります。登記の内容や必要書類については、発行手続のページで解説しています。
まとめ|まずは「権利」と「株式」を分けて理解する
- 新株予約権は、株式会社に対して行使することにより、その株式会社の株式の交付を受けることができる権利(会社法2条21号)
- 新株予約権を持っているだけでは、その目的である株式についてまだ株主ではなく、行使した日に株主となる(会社法282条1項)
- 株式と新株予約権は別のもので、「新株予約権」と「その行使によって交付される株式」は分けて考える
- ストックオプションは、新株予約権の使われ方の一つであり、「新株予約権=ストックオプション」ではない
- 新株予約権は、会社法236条1項により、どのような条件で株式の交付を受けられるのかをあらかじめ内容として定めて発行する
新株予約権には細かなルールがありますが、最初は「どのような条件で、将来株式の交付を受けられる権利なのか」という視点で読むと整理しやすくなります。
本記事について
本記事は、2026年9月時点の会社法その他の法令および公表資料等をもとに作成しています。法令や実務の取扱いは変更されることがあります。具体的な手続にあたっては最新の情報をご確認のうえ、会社法上の手続と登記については司法書士、税務については税理士、会計については公認会計士等へご相談ください。
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