会社の事業年度・決算月はいつにする?設立日・売上時期・決算負担から考える決め方

結論
会社の決算月に、すべての会社に共通する正解はありません。設立直後の決算を避けたい会社では、最初の事業年度をある程度長く取ることが考えられます。一方、一定の時期までに決算書を作成する必要がある場合や、親会社と決算期を合わせたい場合には、最初の事業年度を短くすることもあります。
決算月は、「何月がお得か」だけでなく、設立日、事業開始時期、売上が立ち始める時期、決算書を必要とする時期、創業融資の予定、繁忙期、経理体制、親会社との関係、定時株主総会や取締役の任期管理などから検討することが大切です。
本記事では、主に株式会社の設立を前提として解説します。株式会社以外の法人(合同会社や一般社団法人など)では、機関構成、役員等の任期、事業年度に伴う手続が異なるため、以下の会社法上の説明がそのまま当てはまらない場合があります。法人の種類については「株式会社と合同会社の違いと選び方3つのポイント」もあわせてご覧ください。
事業年度と決算月とは
事業年度とは、会社の経営成績や財産の状況を、一定の期間ごとに区切るための期間です。その事業年度の最後の月を、一般に「決算月」と呼びます。
例えば、定款に次のような規定を設けた株式会社は、3月決算です。
「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。」
事業年度は、会社の目的や商号と同じく、定款で定める事項の一つです。
会社を設立した最初の年は、会社の成立日から最初の事業年度末までが第1期となります。
例えば、2026年4月15日に会社が成立し、3月31日を事業年度末とした場合、第1期は次の期間です。
「2026年4月15日から2027年3月31日まで」
株式会社については、各事業年度に係る計算書類およびその附属明細書の作成に係る期間は、前事業年度がない場合には会社の成立日から事業年度末までとされ、原則として1年を超えることができません。
ただし、事業年度末を変更した場合の変更後最初の事業年度については、その期間を1年6か月以内とすることができます。
決算月は会計だけの問題ではありません
決算月は、毎年の会社運営の日程を決める基準となる月でもあります。
株式会社は、各事業年度について、計算書類、事業報告およびそれぞれの附属明細書を作成します。
また、定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならないとされています。
そのため、決算月は、次のような会社運営上の日程にも関係します。
- 決算作業を行う時期
- 定時株主総会を開催する時期
- 株主へ業績を報告する時期
- 取締役の任期を管理する時期
決算月は、単に経理を締める月ではなく、毎年の会社運営の基準となる月でもあります。毎年の総会運営については「株主総会・取締役会の運営支援」でご案内しています。
最初の事業年度は長く取った方がよいのか
設立直後の決算を避けたい会社では、第1期をある程度長く取ることが考えられます。
例えば、2026年4月15日に会社が成立し、同年4月30日を事業年度末とすると、第1期は約2週間です。
会社設立後には、銀行口座の開設、契約の締結、営業活動、採用、許認可の取得など、事業を始めるための準備が重なることがあります。その時期に決算準備まで必要になると、会社側の事務負担が大きくなる場合があります。
一方、第1期を長くすると、第1期の決算を終え、その事業年度の決算書を示せる時期も遅くなります。
次のような事情がある会社では、第1期を短くすることも考えられます。
- 一定の時期までに決算書を作成する必要がある
- 親会社やグループ会社と決算期を合わせたい
- 事業上の区切りとなる時期が明確に決まっている
- 売上開始後の実績を含む決算書を早めに作成したい
ただし、短い事業年度の決算書を早く作成することが、融資や取引において有利になるとは限りません。
したがって、「第1期は長ければ長いほどよい」と決めつけるのではなく、設立直後の事務負担を抑えたいのか、一定の時期までに決算書を必要としているのかを整理して決めることが大切です。
決算月を決める主な判断軸
決算月は、次の7つの視点から順に確認していくと整理しやすくなります。
1.設立から最初の決算までの期間
まず確認したいのは、設立予定日から最初の事業年度末までが、どの程度の期間になるかです。
設立予定日と決算月が近い場合、第1期が数週間または数か月になることがあります。
例えば、3月下旬に設立する会社が3月決算を選ぶと、会社設立後すぐに第1期の決算を迎えます。
第1期が短いことだけで直ちに問題となるわけではありませんが、その必要性と、設立後すぐに決算を迎えることによる事務負担を確認しておくことが大切です。
設立予定日を確認したうえで、第1期が具体的にいつからいつまでになるのかを計算しましょう。設立日の決め方は「会社の設立日はいつにする?土日・祝日も選べる新制度」で解説しています。
2.事業開始と売上が立ち始める時期
会社の成立日と、実際に事業を開始する日は必ずしも同じではありません。
設立後に、商品開発、システム開発、店舗準備、採用、許認可の取得などが必要な会社では、売上が立ち始めるまでに一定の期間がかかることがあります。
売上が立ち始める前に決算を迎えると、売上実績のない状態で第1期を終えることがあります。
反対に、売上開始後の一定期間を第1期に含めれば、実際の事業活動を含む決算書を作成できます。
もっとも、売上開始後、どの程度の期間を第1期に含めるのがよいかは、事業内容や決算書を利用する目的によって異なります。
3.決算書をいつ、何のために必要とするか
金融機関、取引先、株主、親会社その他の関係者から、決算書の提出を求められる具体的な予定がある場合には、その時期も確認します。
ただし、事業年度末を迎えた日に、決算書が完成するわけではありません。
事業年度末の後には、帳簿や証憑の整理、決算作業、計算書類の作成、必要な社内手続などが続きます。
一定の期限までに決算書を提出する必要がある場合には、提出期限の直前を決算月とするのではなく、決算作業や社内手続に必要な期間も見込んで検討する必要があります。
また、提出先が必要としているのがその事業年度の決算書なのか、月次試算表その他の資料でもよいのかを、事前に確認しておくことも大切です。
4.創業融資を申し込む予定
創業融資を予定している場合には、申込予定時期と、その時点で必要となる資料を確認します。
日本政策金融公庫(国民生活事業)のインターネット申込に関する必要書類の案内では、法人について、事業をはじめて間もない方で税務申告が未了の場合には確定申告書・決算書の提出は不要とされています。また、事業を始めたばかりで決算を終えていない場合には試算表、これから事業を開始する場合または事業を開始して間もない場合には創業計画書を準備する取扱いが示されています。
そのため、創業融資を申し込むという事情だけで、必ず第1期を短くして決算書を作成しなければならないとは限りません。
必要となる資料や審査上の取扱いは、金融機関、融資制度、申込時点の状況によって異なります。当事務所では融資審査上の有利・不利について判断していません。申込予定の金融機関へ事前にご確認ください。
参照した公的資料
5.会社の繁忙期や棚卸しの時期
会社の繁忙期と決算作業の時期が重なると、通常業務を行いながら、請求書、領収書、売掛金、買掛金、在庫その他の資料を整理することになります。
特に、在庫を保有する小売業、卸売業、製造業等では、棚卸しを行いやすい時期かどうかも判断材料になります。
ただし、繁忙期を必ず避けなければならないわけではありません。
会社の業務サイクルや経営管理、資金計画も踏まえ、決算作業を行う時期として無理がないかを検討します。
6.経理体制と顧問税理士への確認
会社に経理担当者がいるのか、代表者自身が経理を行うのかによって、決算時期の負担は異なります。
顧問税理士が決まっている場合には、希望する決算月への対応体制、資料の提出時期、日常の経理処理などを事前に確認しておくとよいでしょう。
顧問税理士の業務体制も、決算月を決める際の判断材料の一つです。
会社側が事業に集中したい時期と、決算資料を整理する時期が重ならないかも確認します。
7.親会社・グループ会社との決算期
子会社やグループ会社を設立する場合には、親会社と同じ決算月にする方法があります。
決算期を合わせることで、グループ内の業績管理や資料作成を行いやすくなる場合があります。
一方、親会社の決算月の直前に子会社を設立すると、子会社の第1期が非常に短くなることがあります。
例えば、親会社が12月決算で、子会社を10月に設立する場合、子会社も12月決算にすると、第1期は約2か月から3か月です。
親会社と決算期を合わせることによる管理上の利点と、子会社が設立直後に決算を迎える負担の双方を確認して決定します。
連結決算その他の会計上の取扱いについては、当事務所では判断していません。税理士または公認会計士へご確認ください。
決算月と定時株主総会・取締役の任期
株式会社の決算月は、定時株主総会の開催時期や、取締役の任期管理にも関係します。
取締役の任期は、単純に選任日から一定の年数を数えるだけで判断できるとは限りません。
会社法第332条第1項の原則では、取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までとされています。
ただし、定款または株主総会の決議によって任期を短縮することができます。また、公開会社でない株式会社のうち、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社以外の会社では、定款によって取締役の任期を最長10年まで伸長することができます。
実際の任期満了時期は、主に次の事項によって異なります。
- 会社の機関設計や公開会社であるかどうか
- 定款および選任時の決議に定められた任期
- 取締役の選任日
- 会社の事業年度
会社法第332条に基づき、取締役の任期の終期が一定の事業年度に関する定時株主総会の終結時とされている場合には、決算月の変更によって、任期満了となる定時株主総会の時期が変わることがあります。
任期を何年にするかの考え方は「取締役の任期は何年がよい?1年と10年の判断基準」、終期の数え方は「「定時株主総会の終結の時まで」の意味と重任登記」で詳しく解説しています。
決算月を変更する際には、現在の定款、取締役の選任日、選任時の株主総会議事録、登記事項証明書、会社の機関設計などを確認する必要があります。
具体的な任期満了時期は、これらの資料を確認したうえで個別に判断します。
根拠条文
具体例から考える決算月
実際にご相談を受けることの多い3つのパターンから、決算月の考え方を整理します。
例1 設立後すぐには売上が立たない会社
次のような会社を想定します。
- 設立予定日:2026年4月15日
- 事業開始予定:2026年9月
- 親会社なし
- 設立直後に決算書を必要とする予定なし
4月末決算とすると、第1期は約2週間となり、事業を開始する前に決算を迎えます。
一方、3月末決算とすれば、第1期は約11か月半となり、事業開始後の期間も第1期に含まれます。
設立直後の決算を避けたい場合には、後者のように第1期をある程度長くすることが考えられます。
例2 決算書を比較的早く作成したい会社
次のような会社を想定します。
- 設立予定日:2026年4月15日
- 売上開始予定:2026年5月
- 一定の時期までに決算書を提出する具体的な予定がある
この場合には、9月末などを事業年度末とし、売上開始後の数か月を含む第1期の決算書を比較的早く作成する方法があります。
ただし、短い事業年度の決算書であるため、会社の通常の年間業績をそのまま表すものにはならない可能性があります。
また、9月末を事業年度末としても、9月末に決算書が完成するわけではありません。
提出先がいつまでに、どのような資料を必要としているのかを確認し、決算作業や社内手続に必要な期間も見込んで決定します。
例3 親会社と決算期を合わせる会社
次のような会社を想定します。
- 親会社:12月決算
- 子会社の設立予定日:2026年10月
- グループ内の管理上、決算期を合わせたい
子会社も12月決算にすると、第1期は約2か月から3か月となります。
親会社と決算期を合わせることで管理しやすくなる一方、子会社は設立直後に決算を迎えます。
この場合には、グループ全体の管理上の必要性と、子会社側の決算負担を比較して検討します。
税務上の有利不利は税理士へ確認してください
決算月によって、法人税、消費税、各種届出、納税時期その他の税務上の取扱いに違いが生じることがあります。
その結論は、会社の資本金、設立時期、売上、株主構成、取引内容、提出済みの届出その他の事情によって異なります。
当事務所では、決算月による税務上の有利不利や節税効果について判断していません。具体的な税務上の取扱いについては、税理士へご相談ください。
司法書士として実際に確認しているポイント
司法書士法人LSOが会社設立のご相談を受ける際には、事業年度について、主に次の点を確認しています。
- 設立日から最初の事業年度末までが、意図せず極端に短くなっていないか
- 定款に定める事業年度と、定時株主総会や取締役の任期管理との関係
- 親会社やグループ会社との関係など、会社側に希望する決算時期があるか
当事務所では、設立予定日や会社側のご希望を伺い、定款に記載する事業年度と会社法上の手続との関係を確認します。
ただし、実際の事業内容、売上開始時期、資金繰り、経理体制、融資の予定等が十分に共有されていない場合には、どの決算月が会社に適しているか判断できかねる場合があります。
税務上の取扱いについては税理士、会計処理については税理士または公認会計士、融資の審査や必要資料については申込予定の金融機関等へご確認ください。
よくあるご質問
- 会社は3月決算にしなければならないのですか。
-
いいえ。新しく設立する会社が、3月決算にしなければならないという決まりはありません。
設立日、事業開始時期、会社の繁忙期、経理体制、親会社との関係などを踏まえて決めることができます。 - 第1期はできるだけ長くした方がよいですか。
-
設立直後の決算を避けたい会社では、第1期をある程度長く取ることが考えられます。
ただし、決算書を早めに作成する必要がある場合や、親会社と決算期を合わせる場合には、第1期を短くすることもあります。第1期は長ければ長いほどよいとは限りません。 - 創業融資を申し込むには決算書が必要ですか。
-
設立直後で決算を終えていない会社でも、申し込める創業融資があります。
必要となる資料は、金融機関、融資制度、申込時点の状況によって異なるため、申込予定先へ事前にご確認ください。日本政策金融公庫では、税務申告が未了の場合の決算書や、決算未了の場合の試算表について取扱いを案内しています。 - 決算月は後から変更できますか。
-
決算月は、会社設立後に変更することもできます。定款に事業年度を定めている株式会社では、通常、株主総会の特別決議による定款変更が必要です。
事業年度は株式会社の登記事項ではないため、決算月の変更のみで、ほかの登記事項に変更がなければ、通常、変更登記は必要ありません。
ただし、決算月の変更により、変更後の事業年度の長さ、定時株主総会の開催時期、現任取締役の任期満了時期に影響する場合があります。変更前に、現在の定款、取締役の選任日、選任時の株主総会議事録等を確認することが大切です。税務・会計上の手続や影響については、税理士または公認会計士等へご確認ください。 - 決算月を変更すると取締役の任期も変わりますか。
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会社法第332条に基づき、取締役の任期の終期が一定の事業年度に関する定時株主総会の終結時とされている場合には、決算月の変更によって、任期満了となる定時株主総会の時期が変わることがあります。
具体的な任期満了時期は、会社の機関設計、定款や選任時の決議に定められた任期、選任日、変更前後の事業年度等によって異なります。決算月を変更する前に、現在の定款や選任時の議事録等を確認し、個別に判断する必要があります。 - 株式会社以外の法人でも同じ考え方になりますか。
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設立後すぐに決算を迎えるか、事業開始時期や繁忙期をどう考えるかといった実務上の判断軸には、共通する部分があります。
一方、合同会社や一般社団法人などでは、機関構成、業務執行者・役員、任期、総会等の制度が株式会社とは異なります。法人の種類に応じて、定款の内容と必要な手続を個別に確認してください。
まとめ
会社の決算月は、「何月がお得か」だけで決めるものではありません。
会社設立時には、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 設立から最初の決算までの期間
- 事業開始と売上が立ち始める時期
- 決算書を必要とする時期と目的
- 創業融資を申し込む予定
- 会社の繁忙期や棚卸しの時期
- 経理体制と顧問税理士との連携
- 親会社やグループ会社との決算期
- 定時株主総会と取締役の任期管理
特に理由がないまま設立直後に決算を迎える設定になっている場合には、第1期をある程度長くすることが考えられます。
一方、一定の時期までに決算書を作成する必要がある会社や、親会社と決算期を合わせたい会社では、短い第1期が適することもあります。
決算月を決める前に、決算書をいつ、何のために必要とするのかを整理し、会社の事業計画と毎年の運営スケジュールから検討することが大切です。
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本記事について
本記事は、2026年8月時点の法令および公表資料等をもとに作成しています。法令や制度、実務上の取扱いは変更されることがあります。具体的な手続にあたっては最新の情報をご確認のうえ、会社法上の手続と登記については司法書士、税務については税理士、会計については公認会計士等へご相談ください。



