会社の変更登記を忘れていませんか?|登記義務・2週間の期限・過料

1.会社には変更登記の義務があります
株式会社では、法律上の登記事項に変更が生じた場合、その変更内容に応じて変更登記をする義務があります。
以下では、主として株式会社を前提に解説します。合同会社など他の会社形態では、登記事項や機関制度が異なるため、個別に確認が必要です。
株式会社について、どのような事項を登記するのかは、会社法911条3項に定められています。
登記事項は会社の機関設計や株式の内容などによって異なりますが、たとえば商号(会社名)、本店、目的、資本金の額、株式に関する事項、役員に関する事項(代表取締役の氏名・住所を含みます)などです。これらは一部の例で、同項にはこのほかにも多くの登記事項が定められています。
登記の期限は、変更が生じてから原則2週間以内
登記事項に変更が生じた場合の変更登記については、会社法915条1項が次のように定めています。
会社法915条1項(変更の登記)
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
「第九百十一条第三項各号」は株式会社の登記事項、「前三条各号」は合名会社・合資会社・合同会社の登記事項です。
会社法915条|e-Gov法令検索
つまり実務上は、登記事項に変更が生じたら、原則として2週間以内に変更登記をするというのが基本です。
「原則」としている理由:会社法915条2項・3項には、払込期間を定めた募集株式の発行や、新株予約権の行使など、一部の変更登記について登記時期の特則があります。本記事では、一般的な変更登記の原則を中心に説明しています。
この「2週間」は、常に株主総会の日から数えるという意味ではありません。何を原因として、いつ登記事項に変更が生じたのかを確認し、その変更が生じた時を基準に登記期限を判断します。たとえば、代表取締役が引っ越した場合は住所が変わった日、任期満了に伴って役員を再任した場合は任期が満了した時(多くは定時株主総会の終結の時)が基準になります。
登記を怠ると「過料」の対象になることがあります
過料について定めているのは会社法976条です。同条は、取締役・監査役・執行役・清算人などを対象として各種の過料事由を定め、その1号に「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」を掲げています。登記を怠った場合について定めた部分は、次のとおりです。
会社法976条(過料に処すべき行為・抜粋)
発起人、……取締役、……監査役、執行役、……清算人、……は、次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。
一 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
柱書の列挙の一部、ただし書、2号以下を省略しています。
会社法976条|e-Gov法令検索
過料の対象は、会社そのものではなく個人です。法務省は、株式会社の役員変更の登記について、登記すべき期間内の登記申請を怠った代表取締役が、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると案内しています。
根拠・公的資料
当事務所の経験則|実際の過料はいくらくらい?
「100万円以下といっても、実際にはいくらくらいになるのでしょうか」とご質問をいただくことがあります。
東京地方裁判所のQ&Aでは、具体的な算定基準や一般的な相場は示されておらず、過料の金額は法律で定められた金額の範囲内で裁判所が判断すると案内されています。
当事務所が過料の金額まで確認できた取扱案件では、登記を怠ったことによる過料は数万円から十数万円程度のケースが多く、20万円を超えるケースは把握していません。
登記を怠っていた期間との関係でいえば、登記の期限から2〜3年程度遅れて登記した案件では、5万円以下にとどまるケースが多いという印象を持っています。
ただし、これらは当事務所の取扱案件に限った経験と印象であり、統計に基づくものでも、過料の一般的な相場を示すものでもありません。「2〜3年なら5万円以下で済む」「20万円以下で済む」という意味でもありません。会社法上の上限は100万円です。過料を科すかどうか、またその金額については、個別の事案について裁判所が判断します。
2.どんな変更をしたときに登記が必要?
変更登記が必要になる場面はさまざまです。代表的な例としては、次のようなものがあります。
- 会社名(商号)を変更した
- 本店を移転した
- 事業目的を追加・変更した
- 取締役や代表取締役などの役員に変更があった
- 増資などにより資本金の額や発行済株式数が変わった
- 取締役会を新たに設置した、または廃止した
- 公告方法を変更した
これも変更登記が必要になる場面の一例です。会社の状況や行った手続によって、ほかの登記が必要になることもあります。
大切なのは、「会社内部で必要な手続をしたこと」と「必要な変更登記をしたこと」は別の問題だという点です。
例えば、本店を移転した場合、本店は登記事項ですので、実際に事務所を移転するだけでは手続は終わらず、本店移転の登記が必要です。また、新しい事業を始めるために定款の目的を追加した場合、目的は登記事項ですので、定款変更に加えて変更登記も必要です。
会社法上の手続を行う際には、あわせて「この変更について登記も必要か?」まで確認してください。
3.自社の登記内容は履歴事項全部証明書で確認できます
自社について現在どのような内容が登記されているかは、法務局で取得できる「履歴事項全部証明書」で確認できます。
一般に「会社の登記簿」と呼ばれることもありますが、正確には、法務局に記録されている登記記録の内容を証明する登記事項証明書の一つです。商号、本店、目的、資本金の額、株式に関する事項、役員に関する事項などが記載されています。
履歴事項全部証明書は、次のような書類です。
2.前号に附帯又は関連する一切の事業
令和8年6月25日就任
大阪市北区△△二丁目○番○号
代表取締役 山田 太郎
令和8年6月25日就任
※説明用の架空の見本です。実際の証明書の様式をそのまま再現したものではありません。
自社の証明書を取得したら、記載されている内容が現在の会社の状況と一致しているかを見比べます。特に、次の章で取り上げる登記を忘れやすい2つの事項は、証明書の「役員に関する事項」の欄で確認できます。
※代表取締役等住所非表示措置(証明書に代表取締役の住所の一部を表示しない措置)を利用している会社では、証明書には住所の一部しか表示されません。そのため、CHECK 1は証明書だけでは確認しきれないことがあります。
4.当事務所の経験上、特に登記を忘れやすい2つのケース
当事務所がこれまで会社の変更登記をご相談・ご依頼いただいた経験上、特に見落としに注意していただきたいのが「代表取締役の住所変更」と「役員の重任(再任)」の登記です。
これは、公的な統計としてこの2つが最も多いという意味ではありません。あくまで、当事務所が実際に会社登記を取り扱ってきた経験によるものです。
ケース1|代表取締役の住所変更の見落とし
株式会社では、代表取締役について、氏名だけでなく住所も登記事項となっています(会社法911条3項14号)。
したがって、会社の本店は何も変わっていなくても、代表取締役本人が自宅を引っ越した場合には、代表取締役の住所変更登記が必要です。
会社の本店移転とは異なり、代表者個人の引っ越しであるため、「会社の登記には関係ないだろう」と思ってしまいやすいところです。
代表取締役等住所非表示措置を利用している場合でも、代表取締役の住所変更についての登記義務自体がなくなるわけではありません。措置の内容は代表取締役の住所は非表示にできる?で解説しています。
ケース2|役員の重任(再任)の見落とし
株式会社の取締役には任期があります。例えば、山田太郎さんが会社設立時からずっと取締役を続けていても、任期が満了したときに、間を置かず同じ山田太郎さんを再任する場合でも、役員変更登記が必要です。このように任期満了と再任が連続する場合、登記上は「重任」といいます。
取締役の任期は会社法332条に定められており、原則は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。公開会社でない株式会社(非公開会社)では、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、定款によって最長10年まで伸長することができます(同条2項)。非公開会社が任期を10年とする場合、定款には例えば次のように定めます。
第○条(取締役の任期)
取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
ただし、「10年任期=就任日からちょうど10年後に任期満了」という意味ではありません。実際の満了時期は、履歴事項全部証明書だけでは確定できず、定款の内容、選任日、事業年度、定時株主総会の時期などを確認して判断します。
任期の確認方法や10年任期の数え方は、取締役の任期はいつまで?10年任期の数え方と重任登記の期限で詳しく解説しています。
5.定款変更で新たに登記が必要になる場合と、登記が要らない場合
履歴事項全部証明書に現在記載されている内容だけを確認していれば十分とは限りません。
例えば、現在は取締役会を設置していない株式会社が、会社の成長などに伴って定款を変更し、新たに取締役会を設置することがあります。
この場合、それまで存在しなかった「取締役会設置会社である旨」が新たな登記事項となり(会社法911条3項15号)、変更登記が必要になります。
取締役会の設置・廃止など、会社の機関設計を変更する場合には、これに伴って役員構成その他の登記事項にも変更が生じることがあります。実際の手続では、関連する登記事項をまとめて確認する必要があります。
一方で、定款を変更したら、必ず変更登記が必要になるわけでもありません。例えば、事業年度や取締役の任期は、定款に定められていても、その定め自体は登記事項ではありません。
つまり、「定款変更をしたかどうか」と「変更登記が必要かどうか」は同じ問題ではありません。定款変更によって会社法上の登記事項に変更が生じるのか、別の手続や登記が必要になるのかを確認する必要があります。
定款変更と登記の関係は定款を変更すると登記が必要?必要・不要なケースで、定款そのものの位置づけは定款とは?記載事項・定款変更・登記簿との違いで解説しています。
6.登記を忘れないために、会社自身でも管理しておきましょう
税理士や司法書士に依頼している場合でも、会社自身でも登記が必要になる時期を意識しておくことをおすすめします。
税理士事務所によっては、顧問先の役員任期を管理し、任期満了が近づいた際に案内しているところもあります。一方で、税務顧問契約を締結しているからといって、役員任期の管理まで当然に契約内容に含まれているとは限りません。
役員任期の管理方法は税理士事務所ごとに異なりますので、自社の顧問契約でどこまで対応してもらえるのかを確認しておくことをおすすめします。司法書士事務所についても同様で、継続的に任期管理を行う事務所と、登記のご依頼を受けた際に確認する事務所があります。
また、東京地方裁判所の過料決定についてのQ&Aでは、会社等を代表する者は登記義務を当然に守るべきものとされていることから、同裁判所は過料の決定の前に、登記を怠っていることを通知していない旨が案内されています。
そのため、「誰かから連絡が来るはず」という前提にはせず、会社自身でも管理しておくことをおすすめします。
登記の手続を知らなかった、忘れていた、忙しかった、他人に任せていた、といった事情があれば、過料について考慮されるのではないかと思われるかもしれません。しかし、同じQ&Aでは、登記を怠ったことなどを理由とする過料の決定に不服を申し立てる場面で、こうした理由が特別の理由として認められることはほとんどないと案内されています。
管理方法の一つ|クラウドカレンダーに確認の予定を入れておく
特に役員任期のように、数年後、場合によっては10年近く先に手続が必要になるものは、記憶だけで管理するのは難しいと思います。
そこで当事務所では、管理方法の一つとして、GoogleカレンダーやiCloudのカレンダーなど、予定をインターネット上のアカウントに保存するカレンダー(いわゆるクラウドカレンダー)に、将来の確認予定を登録しておく方法をご案内することがあります。
クラウドカレンダーの予定は、スマートフォンの本体ではなくアカウントに保存されます。そのため、スマートフォンを買い替えても、同じアカウントでログインすれば登録した予定が引き継がれます。何年も先の予定を残しておくのに向いているのは、この点です。
登録例:「役員任期を確認する|定款・前回の選任時期を確認」
正確な任期満了日をご自身で計算することに不安がある場合には、無理に満了日そのものを登録する必要はありません。「この年になったら一度確認する」というリマインダーでも、何年も先の登記を思い出すきっかけになります。
役員任期の年を、会社の節目の記念日に
また、当事務所では、役員の任期にあたる年を会社の節目の記念日としていただき、そのたびに役員の任期を思い出していただくようお伝えすることが多くあります。
ただし、節目の日がそのまま任期満了の日になるとは限りません。事業年度や選任の時期によっては、節目より前に任期が満了することもあります。
7.司法書士として実際に確認しているポイント
変更登記のご相談を受けた際は、できるだけ、今回の手続に関連してほかの登記事項にも変更が生じないかを確認します。
当事務所が確認している事項の例です。手続の内容によっては、ここに挙げていない事項を確認することもあります。
- 履歴事項全部証明書で、現在どのような事項が登記されているか
- 定款で、役員任期・機関設計・代表取締役の選定方法などがどのように定められているか
- 代表取締役の現在の住所と登記上の住所に相違がないか
- 役員の就任・重任時期から、任期満了が生じていないか
- 今回の株主総会・取締役会等の手続に関連して、ほかの登記事項にも変更が生じないか
会社の手続を進めてから登記漏れに気付くより、手続を決める段階で「登記も必要か」を確認する方が、必要な決議や書類を一度に整理しやすくなります。
8.まとめ|会社に変更があったら「登記も必要?」を確認してください
- 株式会社の登記事項に変更が生じた場合、原則として2週間以内に変更登記が必要です。
- 必要な登記を怠ると、代表取締役など会社を代表する者が、会社法上100万円以下の過料に処せられる可能性があります。
- 商号・本店・目的・役員などを変更したときは、会社内部の手続だけでなく登記の要否も確認してください。
- 当事務所の経験上、代表取締役の住所変更と役員の重任(再任)の登記は、特に見落としに注意したい事項です。
- 履歴事項全部証明書に現在載っていない事項でも、新たな会社法上の手続によって登記が必要になることがあります。
本店の移転、定款の変更、役員の交代など、会社に変更があったときに、「登記も必要?」と一度考える習慣をつけておくことが、登記漏れを防ぐうえで大切です。
よくあるご質問
- 登記の期限を過ぎてしまったら、もう登記できませんか。
-
いいえ。期限を過ぎても変更登記の申請はできます。ただし、期限後に申請しても、登記を怠ったことについて100万円以下の過料に処せられる可能性は残りますので、気付いた時点で速やかに必要な手続を確認してください。
- 過料に処せられると、前科になりますか。
-
東京地方裁判所の過料決定についてのQ&Aでは、過料は行政上の秩序を維持するために金銭的な負担を課す制裁であり、刑事事件の罰金とは異なって、過料に処せられた事実は前科にはならないと案内されています。
変更登記が必要か分からない段階でもご相談ください
会社の重要な事項を変更するときは、決議や書類を作成する前の段階でご相談いただければ、会社法上の手続と変更登記の要否をあわせて確認できます。
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本記事について
本記事は、2026年10月時点の法令および公表資料等をもとに、主として株式会社の変更登記について一般的に解説したものです。合同会社等では登記事項や機関制度が異なります。また、株式会社でも機関設計、定款、決議内容その他の事情により、必要となる手続や登記は異なります。具体的な会社法上の手続と登記については、個別にご確認ください。
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