資本金はいくらが目安?設立・増資・減資の決め方|500万円・1,000万円・1億円で何が変わる?

HOMEコラム企業法務の基礎知識資本金はいくらが目安?設立・増資・減資の決め方|500万円・1,000万円・1億円で何が変わる?

公開日:2026年8月15日/執筆・監修:司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光 康太

結論

資本金に、すべての会社に共通する「正解」はありません。

まず「何のために資本金を決める・変えるのか」を整理し、そのうえで500万円・1,000万円・1億円・5億円などの制度上の分岐点を確認します。

制度によって、見る数字や判定する時点は異なります。資本金そのものを確認する制度もあれば、資本金の額、従業員数、負債額なども確認する制度があります。

この記事では、どの金額で何が変わるのかを、設立・増資・減資の実務に沿って整理します。

読み方のご案内

専門用語は記事末尾の「用語解説」にまとめています。本文中の下線のある用語からも該当箇所へ移動できます。

この記事の前提:会社法・登記に関する説明とモデル事例は、特に断りがない限り株式会社を前提とします。合同会社その他の法人では、資本金・出資等のルールが異なる場合があります。

1.資本金とは?その意味と金額の考え方

資本金は、設立時や増資時の出資等を基礎として、法令上「資本金」として計上される金額です。株式会社では、設立時や株式発行時の払込み・給付を基礎に資本金の額を計算します。会社法上、その額の2分の1を超えない額は資本金に計上せず、資本準備金とすることもできます。

まず、この2つを区別すると分かりやすくなります。

  • 資本金 ≠ 会社に残っている現金
    資本金1,000万円で設立した会社が300万円を事業に使っても、それだけで資本金が700万円になるわけではありません。
  • 資本金 ≠ 借入金
    出資は借入れとは性質が異なり、会社に借入元本の返済義務が生じるものではありません。借入れで会社に資金を入れても、通常、それだけで資本金は増えません。

資本金は、貸借対照表では純資産の部の「株主資本」に区分して表示され、株式会社では登記事項でもあります。つまり、資本金は会社の銀行口座の残高ではなく、法務・会計上の金額です。

貸借対照表そのものの見方は貸借対照表(B/S)とは?会社設立・増資・減資を理解するための基礎知識で、資本準備金・その他資本剰余金・利益剰余金との違いは純資産の部とは?資本金・資本剰余金・利益剰余金の違いで、それぞれ詳しく整理しています。本記事は、この2記事を前提に「では、資本金をいくらにするか」を扱う三部作の3本目です。

根拠条文

会社に資金が必要でも、増資が最適な方法とは限りません

例えば、会社に1,500万円の運転資金が必要になったとします。その資金をどう調達するかには、株主から出資を受ける方法のほか、金融機関から借り入れる方法、役員・株主から借り入れる方法などがあります。

次の3つは、会社に資金を入れる代表的な方法です。比較するときは、まず「資本金への影響」「会社の返済義務」の2点を見ると違いが分かりやすくなります。

資金調達の方法 資本金への影響 会社に返済義務があるか 主な特徴
増資(新株発行による出資) 原則として資本金が増える
※増資の場合:払込額のうち一定額を資本準備金とすることもできます。
会社には、借入金のような元本返済義務は生じません。 募集株式の発行等の会社法上の手続・登記が必要です。新たな株主が入る場合は持株比率にも影響します。
役員・株主からの借入れ 役員・株主からの借入れでは、資本金は通常増えません。 会社に返済義務が生じます。 会計上「役員借入金」等として処理されることがあります。会社へ資金は入りますが、資本金そのものを増やす方法ではありません。
金融機関等からの借入れ 金融機関等からの借入れでは、資本金は増えません。 会社に返済義務が生じます。 融資審査、返済条件、利息等を踏まえて検討します。

※上表は違いを把握するための一般的な整理です。借入れの契約条件、利息、会計・税務処理等は個別に確認が必要です。

資本政策上の注意|増資では持株比率も変わります

新たな株主への第三者割当増資では、資本金だけでなく持株比率も変わります。

例えば、創業者が普通株式100株をすべて保有する会社が、投資家へ普通株式60株を発行すると、発行後は合計160株となり、創業者の持株比率は62.5%になります。

定款変更など、株主総会の特別決議が必要な重要事項もあります。そのため第三者割当増資では、調達額や資本金額だけでなく、増資後に誰が何%の議決権を持つのかも確認することが重要です。

※上記は1株1議決権・自己株式なしの単純例です。実際の議決権関係は、定款や株式の内容等を踏まえて確認します。

資本金を決めたり、増資・減資したりする場面では、必要な資金だけでなく、株主構成、税務、許認可、支援制度なども関係します。設立の経緯、必要な資金、株主構成、今後予定している事業や制度の利用は会社ごとに異なります。
そのため当事務所では、資本金額だけを先に決めるのではなく、まず資本金に関係する各制度を確認するところからご案内しています。

2.制度から見る|資本金で何が変わる?何の数字を・いつ確認する?

この章では、制度を起点に「何が変わるのか」を確認し、そのうえで「何の数字を見るのか」「いつの数字を見るのか」を整理します。

※以下の表は、会社設立・増資・減資の場面で実務上問題になりやすい代表的な制度を整理したもので、資本金に関係する制度をすべて網羅したものではありません。 業種・所在地・株主構成・グループ関係・利用予定の許認可や補助金等によって、別の基準や要件の確認が必要になる場合があります。

A

資本金の額そのものが直接の基準になる制度・判定制度全体が資本金だけで決まるという意味ではなく、特定の判定で登記上の資本金額そのものを直接確認します

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧ください。

制度・場面 まず確認するもの いつの数字を見るか 代表的な境目 実際に何が変わる?
消費税
設立1・2期目など、基準期間がない法人
事業年度開始日の資本金 期首
事業年度の開始日
1,000万円以上 実際の影響その事業年度について、消費税の納税義務は免除されず、課税事業者となります基準期間がない事業年度では、期首の資本金が1,000万円以上なら納税義務は免除されません。設立1期目・2期目では特に確認が必要です。インボイス登録等は別に確認します。
役員変更登記の登録免許税 資本金の額 申請時点
登記申請時の資本金額
1億円以下/1億円超 結論役員変更登記1申請につき、登録免許税が1万円/3万円になります資本金1億円以下なら1万円、1億円を超えると3万円です。
B

資本金以外の数字もあわせて見る制度・判定資本金の額・従業員数・負債・許認可上の財産要件なども確認します
※「資本金の額」は、登記上の「資本金」と同じ金額とは限りません。名前が似ていますが別の概念です。特に法人住民税の均等割では、ここを取り違えないよう注意します。

※スマートフォンでは、表を横にスクロールしてご覧ください。

制度 確認するもの いつの数字を見るか 実際に何が変わる?
法人住民税の均等割 資本金の額※1
② 従業者数等
原則として算定期間末日
期末時点の区分を確認
実際の影響算定期間末日の区分に応じて、均等割の年額区分が変わります大阪市の法人市民税(均等割)の税率(年額)は、区内の従業者の合計が50人以下の場合、資本金の額が1,000万円以下なら5万円、1,000万円を超え1億円以下なら13万円です。
※法人府民税の均等割は別途あります。
中小企業基本法 資本金 又は 従業員数 制度ごとの基準日を確認
補助金・支援制度は公募要領等も確認
実際の影響中小企業基本法上の「中小企業者」に該当するかが変わります一般的なサービス業では「資本金5,000万円以下 又は 常時使用する従業員100人以下」。両方の基準を超えると中小企業基本法上の「中小企業者」から外れます。その定義を採用する補助金・支援制度では対象外となる場合があります。
法人事業税の外形標準課税 通常は期末の資本金又は出資金
+一定の場合は追加基準
事業年度末日
期末を基本に判定
実際の影響外形標準課税の対象法人に該当するかが変わります対象法人になると、所得割だけでなく、付加価値額や資本金等の額を課税標準とする付加価値割・資本割も関係します。通常は1億円超が一つの境目ですが、現在は減資への対応や一定の100%子法人等に関する追加基準もあります。
中小受託取引適正化法
(取適法)
発注側・受注側双方の資本金
資本金基準が適用されない場合は従業員数
取引時点
当事者双方の区分を確認
実際の影響対象取引では、委託事業者に取適法上の義務・禁止事項が適用されます具体的には、発注内容等の明示、記録の作成・保存、支払期日の設定等の義務に加え、支払遅延・減額・買いたたき等の禁止事項を確認する必要があります。
会社法上の大会社 資本金 又は 負債 原則:最終事業年度
貸借対照表で確認
※成立後最初の定時株主総会までの間は、会社法435条1項の貸借対照表
実際の影響大会社に該当すると、会計監査人の設置が必要になるなど、会社法上の規律が変わります資本金5億円以上、又は負債200億円以上で大会社に該当します。資本金だけを見て判断する制度ではありません。
許認可
制度ごとに異なる
資本金だけで決まるとは限りません
資本金以外の財産要件等が設けられている場合があります ※2
制度ごとに確認
基準日も制度ごとに異なります
実際の影響許認可上の財産要件との関係で、資本金額を検討する場合があります具体的な要件・取得可否は※2をご確認ください。

※1〜※2は、上の表中の同じ番号に対応しています。

※1
法人住民税の均等割|「資本金の額」に注意
登記上の資本金だけでなく、地方税法上の「資本金の額」や従業者数等を確認します。「資本金の額」は資本準備金・減資・剰余金の取扱いまで関係するため、本記事では詳細計算に立ち入りません。
※2
許認可|要件そのものは本記事では判断しません
許認可が関係する場合でも、必要な金額が登記上の資本金とは限りません。具体的な要件・基準日・取得可否は、管轄行政庁または当該手続を取り扱う専門家へご確認ください。当事務所では、その確認内容を前提に会社法上の手続と商業登記を整理します。

第三者割当増資・種類株式・減資等の会社法上の手続については、資金調達・資本政策の料金表をご覧ください。

3.金額から見る|500万円・1,000万円・1億円などの分岐点を早見表で確認

第2章では、制度を起点に整理しました。この章では、金額から逆引きできるよう、資本金を検討するときに実務でよく出てくる金額・基準を一覧にします。資本金そのものを確認する制度もあれば、資本金以外の数字もあわせて確認する制度もあります。

※重要

この表は、資本金の「境目となる金額」だけで結論を出すためのものではありません。

以下は、各金額・基準に関する代表的な論点です。実際には制度ごとに、①何の数字を見るか、②いつの数字を見るか、③資本金以外の要件もあるかまで確認してください。

主な金額・基準 代表的な論点 境目の見方・何が変わるか
500万円 許認可との関係 許認可で「500万円」という数字が出ても、資本金500万円が要件とは限りません。有料職業紹介事業の例では、1事業所の場合、基準資産額500万円以上に加え、自己名義の現金・預貯金150万円以上が財産的基礎の基準です。確認した許認可要件によって、設立・増資時の資本金設計に影響することがあります。
1,000万円以上 消費税
基準期間がない事業年度
基準期間がない事業年度では、事業年度開始日の資本金が1,000万円以上であれば、この資本金基準に該当し、その事業年度について消費税の納税義務は免除されません。1,000万円ちょうども含まれます。
※インボイス登録、特定期間、特定新規設立法人等は別途確認が必要です。
1,000万円超 法人住民税の均等割
大阪市の例
大阪市の法人市民税(均等割)の税率(年額)は、区内の従業者の合計が50人以下の場合、 資本金の額1,000万円以下なら5万円、1,000万円を超え1億円以下なら13万円 です。1,000万円ちょうどは「1,000万円以下」の区分です。
※法人府民税の均等割は別途あります。消費税の資本金基準は、1,000万円ちょうどから該当します。
5,000万円 一般的なサービス業・小売業の中小企業区分 中小企業基本法では、一般的なサービス業・小売業とも5,000万円以下が資本金基準です。5,000万円を超えても、一般的なサービス業なら従業員100人以下、小売業なら50人以下であれば中小企業者に該当します。資本金・従業員数の両方が基準を超えると同法上の中小企業者から外れます。
1億円 法人税上の中小法人等/外形標準課税/登録免許税 外形標準課税は、通常基準では事業年度末日の資本金又は出資金が1億円を超えると対象となり、法人事業税について所得割だけでなく付加価値割・資本割も関係します。役員変更登記の登録免許税は、登記申請時の資本金の額により、1申請につき1億円以下なら1万円、1億円を超えると3万円です。
※外形標準課税は、1億円以下でも追加基準により対象となる場合があります。
3億円 製造業・建設業・運輸業等の中小企業区分 中小企業基本法では、一般的な製造業・建設業・運輸業等について3億円以下又は従業員300人以下が基準です。3億円を超えても従業員300人以下なら中小企業者に該当し、資本金・従業員数の両方が基準を超えると同法上の中小企業者から外れます。
5億円 会社法上の「大会社」 原則として、最終事業年度の貸借対照表上の資本金が5億円以上、又は負債の部の合計額が200億円以上なら会社法上の大会社です。大会社に該当すると、会計監査人の設置など会社法上の規律が変わります。
※成立後最初の定時株主総会までの間は、会社法435条1項の貸借対照表で判定します。
取引類型ごと 中小受託取引適正化法(取適法) 単一の資本金額だけでは決まりません。取引類型に応じて発注側・受注側双方の資本金基準を確認し、資本金基準が適用されない場合は従業員基準も確認します。対象取引では、委託事業者に発注内容等の明示、記録の作成・保存、支払期日の設定等の義務が生じ、減額・買いたたき等の禁止事項も適用されます。
このあと詳しく解説当事務所の実務で論点になりやすい4つの重点テーマ

ここからは、相談・確認が多い4テーマを重点テーマ❶〜❹として、第4章から第7章で順に掘り下げます。下のカードと各章の「重点テーマ❶〜❹」は対応しています。

4.500万円|許認可との関係で「資本金を500万円に」と相談されるケース

重点テーマ❶許認可の「500万円」と、登記上の資本金500万円は同じとは限りません

当事務所の会社設立・増資のご相談では、許認可との関係から「資本金を500万円にしたい」「500万円まで増資したい」とご相談いただくことがあります。 そのため、資本金を決める際には、許認可制度で示される「500万円」が何の金額を指しているのかを確認することが重要です。

実務でよくある誤解許認可に「500万円」という基準があっても、「資本金500万円以上」が要件とは限りません。

制度によっては、資本金ではなく、貸借対照表上の資産・負債などから計算する財産的基礎が基準になっています。管轄労働局又は当該分野を取り扱う専門家に確認した要件を、会社設立や増資の資本金設計へ反映します。

例|有料職業紹介事業の「500万円」

有料職業紹介事業の新規許可では、1事業所の場合、「基準資産額500万円以上」と「自己名義の現金・預貯金150万円以上」の双方が財産的基礎の基準です。

確認するもの 1事業所の場合 ここがポイント
基準資産額 500万円以上 資産(繰延資産・営業権を除く)の総額から負債の総額を控除して計算します。登記上の資本金そのものではありません。
現金・預貯金 150万円以上 事業資金として、自己名義の現金・預貯金についても別の基準があります。
なぜ「資本金500万円」という相談が出てくる?

設立後、まだ最初の決算期を終えていない法人について、大阪労働局は会社成立時の貸借対照表を提出資料としています。そのため、例えば500万円を全額現金出資して会社を設立し、成立時の貸借対照表でも基準資産額500万円以上・現金預金150万円以上を満たすようなケースでは、財産的基礎の要件との関係を整理しやすくなります。

ただし、これは「有料職業紹介事業には資本金500万円が必須」という意味ではありません。 基準となるのはあくまで上記の基準資産額・現金預金等であり、許可にはこのほかの要件もあります。

※許認可について
上記は、大阪労働局が公表する有料職業紹介事業の許可基準のうち、資本金設計と関係しやすい財産的基礎の部分だけを抜粋したものです。当事務所では、許認可の取得可否の判断や許可申請そのものは行わず、管轄労働局又は当該分野を取り扱う専門家に確認した要件・基準をもとに、会社設立、資本金の設定、増資等の会社法上の手続・商業登記を行います。

5.1,000万円|消費税・法人住民税で何が変わる?

重点テーマ❷この章でまず押さえたいのは、「1,000万円以上」と「1,000万円を超える」の違いです

消費税と法人住民税の均等割では、同じ1,000万円でも確認する金額と境目が異なります。以下では、法人住民税について大阪市・大阪府を例に整理します。

ここは要注意1,000万円「ちょうど」の扱いが違います
消費税|基準期間がない法人の資本金基準1,000万円以上

1,000万円ちょうどを含みます。その事業年度開始日の資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上であれば、この資本金基準では納税義務は免除されません。

法人住民税の均等割|資本金等の額の区分1,000万円を超える

1,000万円ちょうどは「1,000万円以下」の区分です。1,000万円を超えると、はじめて次の均等割区分に入ります。

同じ「1,000万円ちょうど」でも、制度によって扱いは異なります。 しかも、消費税で見るのは「資本金の額又は出資の金額」、法人住民税の均等割で見るのは「資本金の額」などです。「以上」か「超える」かだけでなく、「何の金額を見るのか」も分けて確認する必要があります。

消費税|「1,000万円以上」なので、1,000万円ちょうども含みます

法人の基準期間は原則として前々事業年度です。新たに設立された法人では、設立1期目・2期目は通常、基準期間がありません。 そのため、各事業年度開始日の資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上かどうかが一つの判定基準になります。

一方、設立3期目以降は、基準期間が生じるのが通常です。 そのため、3期目以降は「期首の資本金が1,000万円未満か」だけではなく、基準期間の課税売上高などを確認して納税義務を判定します。なお、前々事業年度が1年未満の場合は、基準期間が単純に「前々事業年度そのもの」とはならない場合があります。

※「基準期間・特定期間・特定新規設立法人」の詳しい意味は、末尾の用語解説で確認できます。

モデルA社|設立1期目・2期目・3期目で比較

前提:A社は資本金100万円で設立。第1期中の増資後は資本金900万円・資本準備金200万円とし、第3期開始まで追加の増資・減資はないものとします。通常の1年決算を前提にした簡略例です。
事業年度 基準期間 まず確認するもの この例での見方
第1期 なし 期首の資本金100万円 資本金1,000万円以上の基準には該当しません。
第2期 なし 期首の資本金900万円 資本金1,000万円以上の基準には該当しません。
第3期 通常あり
第1期が1年未満なら基準期間の取り方に注意
基準期間の課税売上高など 資本金900万円という事実だけでは、免税か課税かを結論できません。
ポイント
第1期・第2期の資本金基準では、資本準備金200万円を足して「1,100万円」として判定するわけではありません。第3期以降は基準期間が生じるのが通常で、基準期間の課税売上高などへ確認の中心が移ります。

※ 上表は制度の違いをつかむための簡略例です。設立第1期が1年未満の場合は、法人の基準期間の取り方が単純な「第1期そのもの」とはならない場合があります。また、短期事業年度、特定期間、特定新規設立法人、課税事業者選択、組織再編等がある場合も別途確認が必要です。

別例B社|第1期の途中で1,000万円以上に増資した場合

前提:新設株式会社B社は、第1期の期首が資本金900万円。第1期の途中で増資して資本金1,200万円となり、そのまま第2期を迎えるものとします。ここでは「基準期間がない法人の資本金基準」だけを取り出します。
事業年度 期首の資本金 期中の変化 この資本金基準だけで見た結論
第1期 900万円 第1期の途中で900万円→1,200万円に増資 期中増資だけを理由に、資本金1,000万円以上の特例が第1期へ遡って適用されるわけではありません。
第2期 1,200万円 追加の増資・減資なし 第2期は、期首の資本金が1,000万円以上であるため、この資本金基準により課税事業者となります。

インボイス|資本金が1,000万円未満でも、登録中は免税ではありません

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けている間は、資本金が1,000万円未満でも、消費税の納税義務は免除されません。 したがって、「資本金を999万円にすれば免税」とは判断できません。

注意

資本金999万円は「免税を保証する金額」ではありません。
インボイス登録の有無、特定期間、特定新規設立法人等を含め、実際の納税義務は税理士または所轄税務署へご確認ください。

法人住民税の均等割|大阪市・大阪府では、判定対象となる「資本金等の額」が1,000万円を超えると次の区分へ

法人住民税の均等割でも、1,000万円が区分の境目となる例があります。 均等割は自治体ごとに確認が必要で、本記事では大阪市の法人市民税と大阪府の法人府民税を例にします。いずれも資本金の額について、「1,000万円以下」と「1,000万円を超える」で区分が分かれます。 なお、大阪市では資本金等の額・従業者数を算定期間末日、大阪府では資本金等の額を事業年度終了日現在で判定します。

大阪市|法人市民税(均等割)・区内従業者の合計50人以下の税率例

資本金の額1,000万円以下なら5万円1,000万円を超え1億円以下なら13万円です。したがって、1,000万円ちょうどと1,000万円超では、税率(年額)に8万円の差があります。
※上記は税率(年額)の比較です。実際の均等割額は、区内に事務所等を有していた月数に応じて計算します。また、大阪市内の2以上の区に事務所等を有する法人は、区ごとに均等割額を計算して合計します。法人府民税の均等割は別途あります。
大阪府|法人府民税(均等割・独自税率)の例

税率(年額)は、資本金の額1,000万円以下なら2万円1,000万円を超え1億円以下なら7万5,000円です。大阪府でも、1,000万円ちょうどと「1,000万円超」では均等割の区分が変わります。
※大阪府では、令和10年3月31日までに開始する事業年度について、法人府民税均等割に独自税率(超過課税)が実施されています。
※「1,000万円を超えるか」を見る前に、判定対象となる金額そのものを確認してください。ここで見るのは、登記上の「資本金」そのものとは限らず、「資本金の額」について地方税法上の調整が必要になる場合があります。また、市町村民税では従業者数によっても区分が変わります。したがって、「登記上の資本金を1,000万円にしたから均等割はこの金額」と単純には判断できません。

6.5,000万円・1億円・3億円・5億円|中小企業・税務・会社法の分岐点

重点テーマ❸5,000万円・1億円・3億円・5億円は、それぞれ異なる制度の分岐点です

まず「どの制度の、どの基準なのか」を確認し、次に資本金以外の要件や判定時点を見ていきます。

5,000万円|一般的なサービス業でよく出てくる中小企業基準

5,000万円は、一般的なサービス業について、中小企業基本法上の「中小企業者」を判定するときの資本金基準です。

まず前提|ここで見ているのは「中小企業基本法上の中小企業者」です

中小企業基本法の定義は、中小企業政策における基本的な対象範囲を示すものです。法人税、補助金、中小受託取引適正化法(取適法)などの「中小企業」と必ず同じ範囲になるわけではありません。

ミニ解説

中小企業基本法上の「中小企業者」資本金だけで決まる制度ではありません
一般的なサービス業:資本金 5,000万円以下又は常時使用する従業員 100人以下

どちらか一方を満たせば、中小企業基本法上の中小企業者に該当します。したがって、資本金6,000万円・従業員80人の会社でも、この前提では中小企業基本法上の中小企業者に該当します。

POINT

両方の基準を超えて中小企業基本法上の「中小企業者」から外れると、その定義を採用する補助金・支援制度では申請対象外となる場合があります。 ただし、補助金・支援制度には独自要件や「みなし大企業」の除外等があるため、必ず最新の公募要領を確認します。

1億円|税務で分岐点になりやすい金額

1億円は、増資だけでなく、減資を検討する会社でも特に重要な基準額です。 例えば資本金1億2,000万円の会社が1億円まで減資すれば、資本金額については「1億円以下」となります。ただし、それだけで税務上の取扱いがすべて確定するわけではありません。

法人税|資本金1億円以下を要件の一つとする特例がある

各種特例には、資本金1億円以下を適用要件の一つとする制度が多くあります。ただし、大法人との一定の資本関係などにより、資本金1億円以下でも個別の特例から除外される場合があります。

外形標準課税

通常基準では、事業年度末日の資本金又は出資金が1億円を超えると対象となり、法人事業税について所得割だけでなく、付加価値割・資本割も関係します。

※現在は追加基準があります。例えば、前期に外形標準課税の対象で、期末資本金1億円以下でも払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超となる一定の法人や、払込資本(資本金+資本剰余金)が50億円を超える特定法人等との間に一定の完全支配関係等があり、期末資本金1億円以下・払込資本2億円超となる一定の法人は、追加基準により対象となる場合があります。

※100%子法人等の追加基準における払込資本の額は、一定の場合、資本剰余金を原資とする配当・出資の払戻し額を加算して判定します。個別判定は税理士等へご確認ください。

令和7年4月1日以後最初に開始する事業年度については、対象判定に経過措置があります。また、100%子法人等に関する追加基準には、認定特別事業再編に係る買収についての特例措置や、令和8年度・令和9年度に開始する事業年度の激変緩和措置もあります。個別の適用判定は税理士等へご確認ください。

役員変更登記の登録免許税

役員変更登記の登録免許税は、登記申請時の資本金の額が1億円以下なら1申請につき1万円、1億円を超えると3万円です。役員1人につき課税されるものではありません。

1億円以下が気にされる代表的な税務上の例

※以下の税率・金額は、2026年8月15日に公表資料を確認した時点の内容です。

法人税率の例

各事業年度終了時に資本金1億円以下である一定の普通法人などでは、年800万円以下の所得部分に、現行の特例により15%の税率が適用されます。

※この15%の特例は、現行法では令和9年3月31日までの間に開始する事業年度が対象です。令和7年4月1日以後に開始する事業年度で所得金額が年10億円を超える場合は17%、適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は19%となります。また、大法人との一定の完全支配関係等にある法人などは対象から除かれ、通算法人等では別の取扱いがあります。

上記の15%・17%・19%は、一定の法人について「年800万円以下の所得部分」に適用される法人税(国税)の税率です。法人の所得全体に一律に適用される税率ではなく、法人住民税・法人事業税等を含めた実効税率でもありません。また、令和8年4月1日以後に開始する事業年度については、防衛特別法人税(基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額に4%)も別途確認が必要です。

交際費等の例

期末の資本金1億円以下である等の一定の法人では、交際費等について、年800万円の定額控除限度額を用いる計算を選択できる場合があります。

※中小法人に係る年800万円の定額控除限度額の特例は、現行法では令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象です。大法人の100%子法人等には適用されない場合があり、事業年度が12か月未満の場合は月数按分されます。

注意

「資本金を1億円以下にすれば一律に有利になる」とは言えません。
減資によって資本金を1億円以下にする場合も、資本関係、所得金額、外形標準課税の追加基準など、他の要件まで確認して初めて結論が出ます。

※税務上の「中小法人」と、中小企業基本法上の「中小企業者」は別の概念です。詳しい違いは末尾の用語解説で確認できます。

3億円|製造業等やソフトウェア業等で出てくる中小企業基準

3億円は、一般的な製造業・建設業・運輸業・その他の業種について、中小企業基本法上の「中小企業者」を判定するときの資本金基準です。

例|製造業・建設業・運輸業・その他

資本金 3億円以下 又は 常時使用する従業員 300人以下 のいずれか一方を満たせば、中小企業基本法上の中小企業者に該当します。

したがって、資本金3億円を超えただけで中小企業者から外れるわけではありません。従業員数も300人を超え、両方が基準を超えた場合に、中小企業基本法上の中小企業者から外れます。

POINT

業種特例にも注意が必要です。
中小企業関連立法の政策対象では、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下旅館業は資本金5,000万円以下又は従業員200人以下とされています。IT企業を一律に「サービス業5,000万円」と考えず、実際の業種区分と利用する制度の定義を確認します。

当事務所が関与したスタートアップ企業の案件でも、会社側で関係専門家・行政庁・制度事務局等に確認した業種区分や資本金要件を共有いただき、その内容を踏まえて、会社法上の資本金額や必要手続を整理したことがあります。

5億円|会社法上の「大会社」の資本金基準

会社法上の大会社は、原則として最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上、又は負債の部の合計額が200億円以上である株式会社です。

※設立直後の判定には例外があります。
株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間は、会社法第2条第6号の定義上、会社法第435条第1項の貸借対照表を用いて判定します。

例|資本金が5億円未満でも「大会社」になることがあります

最終事業年度の貸借対照表が「資本金1億円・負債の部の合計額200億円」である株式会社を考えます。資本金は5億円未満ですが、負債の部の合計額が200億円以上なので、会社法上の大会社に該当します。

大会社に該当すると、会計監査人の設置など、機関設計・監査体制にも影響します。

主な公式資料・根拠法令

7.取適法|資本金基準だけでなく、従業員基準も確認

重点テーマ❹取適法は、資本金基準だけでなく従業員基準も確認します

取適法は、発注側・受注側の規模と取引内容の組合せによって、対象となるかを確認する制度です。
※2025年の法改正により、旧「下請代金支払遅延等防止法」の法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)へ改められ、改正法は2026年1月1日に施行されました。

資本金との関係|対象になると何が変わる?

資本金額を変更すると、取適法の適用関係を確認し直す必要が生じる場合があります。対象取引では、委託事業者に発注内容等の明示、取引記録の作成・保存、支払期日の設定、遅延利息の支払などの義務が生じ、減額・買いたたき等の禁止事項も適用されます。

取引類型によって、確認する規模基準が異なります

主な取引類型 資本金基準の代表的な組合せ 従業員基準
製造委託・修理委託・特定運送委託
+プログラム作成
+運送・物品の倉庫保管・情報処理
委託事業者が3億円超 → 中小受託事業者が3億円以下
または、委託事業者が1,000万円超3億円以下 → 中小受託事業者が1,000万円以下
資本金基準が適用されない場合、委託事業者300人超 → 中小受託事業者300人以下
上記を除く情報成果物作成委託・役務提供委託 委託事業者が5,000万円超 → 中小受託事業者が5,000万円以下
または、委託事業者が1,000万円超5,000万円以下 → 中小受託事業者が1,000万円以下
資本金基準が適用されない場合、委託事業者100人超 → 中小受託事業者100人以下

※公正取引委員会の整理では、プログラム作成は上段の情報成果物作成委託、運送・物品の倉庫における保管・情報処理は上段の役務提供委託に含まれます。上表は資本金との関係を把握するための整理であり、個別の適用可否は取引内容と当事者双方の属性を踏まえて確認する必要があります。

業務範囲

個別取引が取適法の対象になるか、契約・取引条件をどう評価するかといった判断は、取引内容を踏まえて公正取引委員会の資料や弁護士等への確認が必要です。

当事務所では、取適法の適用関係について確認いただいた内容が資本金額や増資・減資に関係する場合、その内容を会社法上の手続・商業登記に反映して整理します。

8.司法書士として実際に確認しているポイント

資本金額を先に決めず、目的・現状・他制度への影響・必要手続を順に確認します

実務で確認する4つのポイント

確認すること 実務上の見方
① 目的 会社設立、資金調達、累積赤字の整理、許認可・支援制度への対応など、何のために資本金を決める・変えるのかを確認します。
② 現在の状態・増資等の必要性 登記事項証明書だけでなく、必要に応じて貸借対照表や株主資本等変動計算書等を確認し、資本金・資本準備金・その他資本剰余金などの現在の状態を把握します。そのうえで、例えば資金確保が目的であれば借入れという選択肢も含め、本当に増資・減資が必要かを整理します。
③ 税務・会計・許認可の確認 税務・会計・許認可に関する確認が必要な場合は、税務・会計上の効果や処理は税理士等許認可の要件・取得可否は管轄行政庁又は当該分野を取り扱う専門家へご確認いただきます。その確認内容が資本金額に関係する場合、当事務所の会社法上の手続・商業登記に反映します。
④ 会社法・登記手続 増資・減資を行う場合は、株主総会等の決議、払込日・効力発生日、債権者保護手続、登記までのスケジュールを組み立てます。
専門家との役割分担

資本金額や増資・減資の会社法上の手続・商業登記は、当事務所で確認します。一方、資本金・資本準備金への計上割合や、減資等に伴う資本剰余金・利益剰余金等について税務・会計上の効果・処理を検討する場合は税理士等へ、許認可の要件・取得可否は管轄行政庁又は当該分野を取り扱う専門家へご確認ください。

設立時の資本金については会社設立支援、設立後の増資・減資等については資金調達・資本政策をご覧ください。

9.よくあるご質問

資本金の設計・増資・減資に直接関係する質問に絞って整理します。

Q会社に資金を入れる方法は、増資だけですか。

Aいいえ。増資と借入れは別の方法です。 増資では、払込額等を基礎に算定した資本金等増加限度額の全部又は一部が資本金に計上され、資本金の額が変われば登記が必要です。一方、借入れは通常、会社の負債として扱われ、それだけで資本金が増えるわけではありません。どの資金調達方法を選ぶかは、資金需要や税務・金融面なども含めて別途検討します。

Q「中小企業」の資本金基準は5,000万円ですか、それとも1億円ですか。

Aどの制度の「中小企業」をいうかで異なります。 中小企業基本法では業種ごとに資本金又は従業員数の基準があります。一方、税法上は別の定義・要件が使われる制度があります。「中小企業」という言葉だけで同じ基準だと考えず、どの制度について確認しているのかを分けてください。個別の税務上の適用判断は税理士等へご確認ください。

Q資本金は後から増やしたり減らしたりできますか。

Aできます。 設立後でも、募集株式の発行等による増資や、会社法第447条に基づく資本金の額の減少により変更できます。減資は原則として株主総会の特別決議が必要で、資本金の額の減少では会社法第449条の債権者保護手続も必要です。ただし、定時株主総会で欠損の額を超えない範囲の減資など、決議要件に例外があります。

Q減資をすると、会社のお金が株主へ返されるのですか。

A資本金の額を減少するだけで、当然に会社の現預金が株主へ払い戻されるわけではありません。 資本金の額の減少に伴う会計上の振替と、欠損填補や株主への払戻しを伴うかどうかは、それぞれ目的と手続内容に応じて整理する必要があります。

Q1億円を出資してもらったら、資本金も1億円になりますか。

A必ずしも1億円全額を資本金にする必要はありません。 設立済みの株式会社が募集株式を発行し、1億円の払込み全額が資本金等増加限度額となる単純な例では、会社法第445条により、そのうち最大5,000万円を資本金に計上せず、資本準備金とすることができます。増資後の資本金は「増資前の資本金+今回の資本金増加額」です。

10.用語解説|専門用語はここでまとめて確認

本文の流れを止めないため、詳しい用語説明はこの章にまとめています。 最初から順番に読む必要はありません。本文中のリンクから、必要な項目だけ確認してください。

← 本編「制度から見る|資本金で何が変わる?」へ戻る

01会社法・登記

資本金|会社法・登記上の基本となる金額

株式会社では登記事項となり、設立・増資・減資や各制度の判定で基準になることがある金額です。

詳しく見る閉じる
ここだけ覚える資本金は「会社の現金残高」ではなく、会社法・会計上の資本構成を表す金額です。

会社法第445条第1項~第3項は、会社設立時だけでなく、設立後に新株を発行して増資する場合にも関係する規定です。

同条は、設立又は株式の発行に際して資本金として計上すべき額を定め、そのうち2分の1を超えない額は資本金に計上しないことができ、その額を資本準備金として計上するとしています。設立後の募集株式の発行における具体的な「資本金等増加限度額」は、会社計算規則第14条等に従って算定します。

02会社計算規則

資本剰余金|「資本準備金」と「その他資本剰余金」の上位区分

貸借対照表では「資本準備金」と「その他資本剰余金」をまとめる上位区分です。

詳しく見る閉じる
資本剰余金
内訳①資本準備金
内訳②その他資本剰余金
関係性「資本剰余金」という大きな箱の中に、「資本準備金」と「その他資本剰余金」があります。

会社法そのものに「資本剰余金とは○○をいう」という一文の定義規定が置かれているわけではありません。

会社計算規則では、第76条第2項第3号が株式会社の株主資本の項目として「資本剰余金」を掲げ、同条第4項が、株式会社の貸借対照表の資本剰余金を「資本準備金」と「その他資本剰余金」に区分することを定めています。

また、会社計算規則第26条は資本準備金の額、第27条はその他資本剰余金の額の増減を定めています。したがって、貸借対照表の表示上は、「資本剰余金」が上位区分で、その内訳が「資本準備金」と「その他資本剰余金」という関係です。

03税務

資本金の額」|法人住民税などで使う、登記上の資本金とは別の金額

資本金の額」は、登記上の資本金や「資本金+資本準備金」そのものではありません。株主等からの出資に対応する金額を基礎に、資本取引に応じた加算・減算を行って計算する税務上の金額です。

詳しく見る閉じる
ここだけ覚える資本金の額」=「資本金+資本準備金」ではありません。登記上の資本金とも、貸借対照表の純資産合計とも別の計算概念です。

法人税法では、「資本金の額」を、法人が株主等から出資を受けた金額として政令で定める金額としています。具体的な計算は法人税法施行令第8条に定められており、増資、自己株式に関する取引、合併・会社分割などの組織再編その他の資本取引によって、加算・減算が生じることがあります。

ざっくりしたイメージ

「登記上の資本金に資本準備金を足せば終わり」という数字ではなく、これまでにどのような出資・資本取引があったかを税法上のルールに沿って積み上げ、又は差し引いて求める金額です。

そのため、増資・減資、資本準備金、その他資本剰余金、自己株式、組織再編などの履歴がある会社では、現在の貸借対照表の科目名だけを見ても「資本金の額」を判断できないことがあります。

注意

法人住民税の均等割では、さらに別の調整があります。
法人住民税の均等割では、法人税法上の「資本金の額」に無償増資・無償減資等の調整を行い、その調整後の金額が「資本金+資本準備金」を下回る場合には、原則として「資本金+資本準備金」の額を用います。したがって、ここでも単純に登記上の資本金だけを見るわけではありません。

この論点は別コラムへ

具体的に「何を加算・減算するのか」「減資や欠損填補をすると法人住民税の均等割にどう影響するのか」まで扱うと独立したテーマになります。本記事では「資本金等の額は、資本金+資本準備金ではない」という点まで押さえ、具体的な計算方法は別コラムで詳しく解説します。

法人税法第2条第16号法人税法施行令第8条大阪市「法人市民税に関する用語集」

04中小企業基本法

中小企業者|中小企業政策の基本的な対象範囲

業種ごとに、「資本金の額又は出資の総額」又は「常時使用する従業員数」のいずれか一方が基準以下であれば該当します。

詳しく見る閉じる
ここだけ覚える「資本金基準」と「従業員数基準」の両方を満たす必要はありません。どちらか一方を満たせば、中小企業基本法上の中小企業者に該当します。

中小企業基本法第2条第1項では、業種ごとに次の基準が定められています。

業種 資本金の額又は出資の総額 常時使用する従業員数
製造業・建設業・運輸業・その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
例|一般的なサービス業で資本金8,000万円・従業員80人なら?

資本金は5,000万円を超えていますが、常時使用する従業員数が100人以下です。したがって、この前提では中小企業基本法上の「中小企業者」に該当します。

中小企業者になると、何が変わる?

中小企業基本法上の「中小企業者」は、国が中小企業政策を行う際の基本的な対象範囲です。中小企業向けの補助金・融資・経営支援などの施策で、対象となる可能性があります。

ただし、「中小企業者に該当する=すべての中小企業向け制度を利用できる」という意味ではありません。補助金、税制、融資その他の制度では、独自の要件や除外要件が定められていることがあります。

注意

税務上の「中小法人」とは別に考えます。
法人税・租税特別措置法では、資本金1億円以下などを要件の一つとする「中小法人」等の区分があります。中小企業基本法上の「サービス業=5,000万円以下又は100人以下」という基準とは一致しません。

※中小企業関連立法では、一部業種について別の基準が置かれる場合があります。実際に利用する補助金・支援制度等については、その制度の公募要領・要件を個別に確認してください。

制度用語05〜08|本文に出てくる制度用語を一言で確認
05

基準期間・特定期間・特定新規設立法人消費税

基準期間は原則として前々事業年度、特定期間は原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です。また、特定新規設立法人は、基準期間がない資本金1,000万円未満の新規設立法人でも、事業年度開始日に一定の支配関係等の要件を満たし、判定対象者の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超える場合(令和6年10月1日以後開始の課税期間では、売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額が50億円を超える場合を含みます。)などに、消費税の納税義務が免除されない制度です。

06

中小法人税務

税務上の区分です。資本金1億円以下を要件の一つとする制度がありますが、大法人との資本関係等による除外があります。中小企業基本法上の「中小企業者」とは別概念です。

07

外形標準課税法人事業税

所得だけでなく、付加価値額や資本等も使って法人事業税を計算する仕組みです。本文では、資本金1億円前後の判定に絞って扱っています。

08

大会社会社法

株式会社で、原則として最終事業年度の貸借対照表上、資本金5億円以上又は負債200億円以上の場合に該当する会社法上の区分です。
※成立後最初の定時株主総会までの間は、会社法435条1項の貸借対照表で判定します。

資本金の設定・増資・減資についてご相談ください

「資本金をいくらにするか」がまだ決まっていない段階でもご相談いただけます。当事務所では、会社法・商業登記の観点から資本金額と増資・減資の手続を確認します。税務・会計上の効果や処理は税理士等、許認可の要件・取得可否は管轄行政庁又は当該分野を取り扱う専門家へご確認いただき、その内容を会社法上の手続・商業登記に反映します。

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

詳しいプロフィールを見る

主な根拠法令・公的資料

e-Gov法令検索「会社法第447条(資本金の額の減少)・第449条(債権者の異議)」

会社法(第2条第6号、第445条ほか)

会社計算規則(第26条、第27条、第76条ほか)

法人税法(第2条第16号)/地方税法(第292条、第312条ほか)

登録免許税法(別表第一)

国税庁「No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」

国税庁「No.5759 法人税の税率」

大阪市「法人の市民税について」「法人市民税に関する用語集」

大阪府「法人府民税・法人事業税に係る超過課税について」

大阪府「法人事業税の外形標準課税について」

中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」

公正取引委員会「取適法・振興法」

参考書籍

神崎満治郎・金子登志雄・鈴木龍介 編著『商業・法人登記500問』テイハン、2023年7月(ISBN 978-4-86096-169-5)。特に第5章「計算と資本金の額の減少」の貸借対照表・純資産・資本金等に関する解説を参照しました。

金子登志雄・富田太郎 著『募集株式と種類株式の実務〈第2版〉』中央経済社、2014年5月(ISBN 978-4-502-09900-7)。募集株式の発行・払込みと資本金等の実務に関する解説を参照しました。

ご利用にあたって

本記事は、法令・行政庁その他の公表資料を確認したうえで、司法書士法人LSOの実務経験を踏まえて作成しています。もっとも、法令・制度は改正されることがあり、会社の状況や取引内容によって結論が異なる場合があります。

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別案件についての税務・会計・許認可その他の専門的判断を行うものではありません。税務については税理士・税務署、許認可その他の事項については管轄行政庁や当該分野を取り扱う専門家等へご確認ください。

なお、記載内容についてお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりお知らせいただけますと幸いです。

来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています

対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。

商業登記・企業法務 料金表を見る