会社の目的変更登記とは?手続き・費用・注意点を大阪の司法書士が解説

結論
株式会社が定款の事業目的を追加・削除・変更する場合は、原則として、株主総会の特別決議(通常の決議より出席や賛成の要件が重い決議)で定款を変更し、目的変更登記をする必要があります(会社法466条・309条2項11号・911条3項1号)。
登記の申請期限は変更の効力が生じた日から原則2週間以内、登録免許税は3万円です。ただし、新しい事業を始めるたびに目的を変更する必要があるとは限りません。
1.会社の目的変更登記とは?――定款と登記の両方を変える手続
会社の目的変更登記とは、定款に定めた事業目的の追加・削除・修正を、商業登記簿に反映する手続です。
株式会社の目的は定款の絶対的記載事項であり(会社法27条1号)、登記事項でもあります(同法911条3項1号)。会社の目的を変更したときは、定款の変更だけでなく、登記の変更も必要になります。
ただし、新しい事業を始めたことだけで、目的変更登記が必要になるわけではありません。登記が必要になるのは、定款に定めた目的を変更した場合です。新しい事業が既存の目的に含まれるか、まず確認することが大切です。反対に、既存の目的で事業内容を読み取れる場合でも、事業を始めるために必要な許認可(行政庁の許可・認可・登録など)の申請で目的の文言が問われ、目的の変更が必要になることがあります。定款変更と登記の関係は、別記事「定款を変更すると登記が必要?」でも解説しています。
以下、会社設立後の「目的変更」に絞り、まずはどのような場面で目的変更を検討するのかから見ていきます。
2.どのような場合に目的変更を検討する?
目的変更を検討するのは、新しい事業の追加や事業の方向転換のほか、許認可の取得や、事業の撤退・上場準備などの場面です。
- 新規事業への進出:現在の目的では、新しく始める事業を読み取りにくい場合。
- ピボット(事業の方向転換)・事業の多角化:従来の商品・サービスや顧客層から事業の中心を移す場合。
- 許認可の取得:新しく始める事業に許認可が必要で、その申請に定款の目的の記載が関係する場合。
- 事業撤退・上場(IPO)準備:今後実施する予定のない事業を削除するなど、目的を整理したい場合。
例えば、特定の商品名だけを目的に記載していた会社が、その技術を別の事業へ展開すると、目的の表現を見直した方がよいことがあります。一方、既存の目的にその事業が含まれていれば、登記変更まで必要ない場合もあります。
このコラムでは、これらの場面に沿って、次の順に見ていきます。
まずは、新規事業への進出やピボットの場面で問題となる、目的をどこまで広く、どこまで具体的に書くかから見ていきましょう。
3.目的は包括的に書く?具体的に書く?――ピボットと事業への想い
将来の事業転換への柔軟性を重視するか、取引先などに事業内容を明確に伝えるか。目的の書き方に一律の正解はありません。
例えば、保護犬・保護猫の命を救いたいという想いから、里親希望者とのマッチングアプリを開発する会社を考えてみましょう。
包括的に記載する例
インターネットを利用したマッチングサービスの企画、開発及び運営
将来、別の分野にもマッチングサービスを広げる場合に対応しやすい。
前者にはピボットしやすい利点があり、後者には事業の内容を伝えやすい利点があります。両方を組み合わせて目的を設ける方法もあります。ただし、登記されていることだけで、その事業を現に行っている事実まで証明されるわけではありません。
目的の文言を検討する際には、将来の事業展開への柔軟性と、取引先などへの伝わりやすさのどちらを重視するかを、お客様と一緒に考えることがあります。
法務省は目的の「具体性」を登記申請で審査しないとする一方、記載によって官公庁への届出や取引に支障が生じる可能性も示しています。また、意味が不明確な目的や適法でない目的は、これまでどおり登記できないとしています。つまり、目的を幅広く書くことはできても、どのような事業を指すのか分からない書き方まで認められるわけではなく、目的を広く書けば常に有利とは限りません(法務省「会社登記についてのQ&A」Q15)。
会社設立時の目的設計を詳しく知りたい方は、既存コラム「会社の目的はどこまで書く?」をご参照ください。
目的の書き方を考えるうえでは、もう一つ注意したい場面があります。第2章で触れた、許認可が必要な事業を始める場合です。
4.許認可が必要な事業では、登記前に目的の文言を確認する
登記できる目的の文言と、許認可申請で求められる目的の文言が、必ずしも一致するとは限りません。
例えば、大阪労働局が公表している有料職業紹介事業の新規許可申請資料では、定款に「職業紹介事業」を実施する旨の記載が必要とされています(大阪労働局・提出書類一覧)。
許認可を予定している場合は、目的変更登記を申請する前に、所管行政庁や担当の行政書士等へ文言を確認することをおすすめします。登記後に文言の修正が必要となれば、改めて定款変更・登記を行うことになりかねません。
許認可の確認が必要な場合とは別に、上場準備では目的の「削除」が検討されることもあります。
5.IPO準備では、不要になった目的の削除・整理も検討する
上場準備の過程で、現在の事業内容や事業計画と、登記上の目的が整合しているかを見直す場合があります。
創業時には多くの事業を想定していたものの、その後の成長やピボットによって、実施予定のない事業が目的に残っている会社もあります。上場準備では、主幹事証券会社(上場の準備を中心となって支援する証券会社)等との確認の中で、目的の整理が検討事項となることも考えられます。
ただし、実施していない目的をすべて削除しなければ上場できない、という一律のルールではありません。日本取引所グループが公表しているグロース市場の上場審査基準の概要では、「企業内容、リスク情報等の開示の適切性」や「事業計画の合理性」が審査の内容として示されていますが、実施していない目的の削除は項目として掲げられていません(日本取引所グループ・グロース市場の上場審査基準)。
商業登記の公示機能から考える
商業登記法1条は、登記事項の公示による会社等の信用維持と、取引の安全・円滑を法の目的としています。
会社の目的には、現に行っている事業だけでなく、今後の事業計画に基づく事業を記載しておくことも考えられます。そのうえで、既に取り組む予定のなくなった目的を見直すことには、第三者への情報の分かりやすさという点から実務的な意義があると考えています。
目的の方針がまとまったら、次は会社法上の決議と登記申請の手続に進みます。
6.目的変更登記の手続と必要書類
株式会社の目的変更は、原則として株主総会の決議で定款を変更し、その効力が生じた後に法務局へ登記申請する流れです。
まずは、定款変更の決議について定めた条文を確認してみましょう。
会社法309条2項(株主総会の決議)※抜粋
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。(後段略)
十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
466条は会社法の第6章(定款の変更)に置かれた規定です。そのため、309条2項11号により、定款を変更する株主総会の決議は、309条2項の要件を満たす必要があります。この決議は、一般に特別決議と呼ばれます。
- 出席の要件:議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席すること(定款で3分の1以上の割合まで下げることができます)
- 賛成の要件:出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成があること(定款で引き上げることができます)
具体的な手続は、次の流れで進みます。
-
変更する目的を確定する
現在の定款と登記事項証明書を確認し、追加・削除・修正する目的を整理します。許認可が関係する場合は先に文言を確認します。
-
株主総会で定款変更を決議する
株主総会を開き、上の要件を満たす特別決議で定款を変更します。取締役会設置会社で株主総会を開く場合は、原則として、取締役会の決議で株主総会の招集を決めます(会社法298条4項)。また、議決権を行使できる株主の全員が、書面又は電磁的記録で議案に同意したときは、実際に株主総会を開かずに決議があったものとみなす決議の省略を利用できる場合もあります(会社法319条1項)。定款変更の効力は原則として決議の時に生じますが、決議で将来の日を効力発生日と定めることもあるため、決議要件とあわせて効力発生日を確認します。
-
申請書と添付書類を準備する
通常は変更登記申請書・株主総会議事録・株主リストなどが必要です。代理申請では委任状も用意します。決議の省略を利用した場合は、議事録に代えて、決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面を添付します(商業登記法46条3項)。この場合も株主リストが必要です。登記すべき事項には、変更した部分だけでなく、変更後のすべての目的を記載します。
-
変更登記を申請する
変更の効力が生じた日から原則2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ登記を申請します(会社法915条1項)。この2週間は、株主総会の開催日から数えるとは限りません。決議で将来の日を効力発生日と定めたときは、その日が基準になります(詳しくは変更登記の2週間の期限と登記義務)。登記完了後は更新後の登記事項証明書を確認します。
添付書類等の根拠は、法務局の株式会社「目的の変更」申請書様式、商業登記法46条2項、商業登記規則61条3項をご参照ください。株主総会の運営については株主総会・取締役会の運営支援もご案内しています。
7.目的変更登記の費用
目的変更登記の登録免許税は、目的を何項目変更しても、目的変更の登記1件につき原則3万円です。
司法書士法人LSOにご依頼いただく場合の費用の目安は、次のとおりです。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 当事務所の報酬 | 55,000円〜(税込) |
| 登録免許税 | 30,000円 |
| 登記事項証明書・通信費などの実費 | 約5,000円 |
| 総額の目安 | 90,000円〜 |
当事務所の報酬には、現在の定款・登記事項の確認、変更する目的の文言の検討、株主総会議事録・株主リストの作成、変更後の定款の作成、登記申請・進行管理が含まれます。
目的変更では、変更する目的の文言、株主総会の決議、定款、登記の内容がそろっている必要があります。そのため当事務所では、目的の文言の検討から変更後の定款の作成、登記申請までを一括でお引き受けすることを基本としています。
弁護士などの専門家が関与していて、決議書類や定款の変更案がすでに整っている場合は、業務の範囲に応じて個別にお見積りします。
複数の種類の変更登記をあわせて申請する場合は、登録免許税や報酬が変わることがあります。
当事務所の料金が「〜円から」となっている理由(料金表の考え方より)
- 標準的なケースを基準にした金額です。目的変更の場合は、取締役会・監査役などの機関の設置・廃止や、株式・資本金に関する変更をあわせて行う場合、特殊な定款変更を伴う場合などに、加算が生じることがあります。主な加算の条件は料金表に掲載しています。
- 報酬と実費を分けて表示しています。料金表の金額は、当事務所にお支払いいただく司法書士報酬(税込)です。登録免許税などの実費は法務局等にお支払いいただくもので、当事務所の収入ではありません。
- 確認する事項が多い案件は加算のうえお受けしています。上場会社・上場準備会社、資本金1億円以上の会社、種類株式(優先株式)を発行している会社などが当たります。
- 着手前に総額をご案内します。ご依頼前に、加算や登録免許税などの実費を含んだ費用の総額をご案内し、ご了承をいただいてから着手します。
記載の金額は2026年(令和8年)10月時点のものです。加算の条件を含む最新の料金は、料金表(役員変更・各種変更登記)をご覧ください。
8.司法書士として実際に確認しているポイント
変更登記の書類を作る前に、「なぜ変更するのか」を確認することが重要だと考えています。
目的変更のご相談で、できるだけ確認するようにしている点の例です。
- 変更の必要性:既存の目的で対応できるか。追加以外に、整理・削除した方がよい目的はないか。
- 目的の記載方針:ピボットへの柔軟性と、第三者への事業内容の伝わりやすさをどう両立するか。
- 関連手続:許認可の事前確認が必要か。ベンチャーキャピタルなどの投資家と結んだ投資契約で、定款を変更する前に投資家の承諾を得ることとされていないか。種類株式を発行している会社で、種類株式の内容として、定款の変更に種類株主総会の決議も必要と定められていないか(会社法323条)。
- 決議と登記の整合性:定款、株主構成、決議要件、効力発生日、議事録・株主リスト・登記内容に不整合がないか。
大阪・梅田の司法書士法人LSOでは、事業内容や変更の背景を伺ったうえで、必要な会社法上の手続と商業登記をご案内しています。
9.よくあるご質問
- 新しい事業を始めるときは、必ず目的変更登記が必要ですか?
-
いいえ。現在の目的に新しい事業が含まれている場合は、目的変更が不要なこともあります。ただし、許認可や取引先から具体的な目的の記載を求められる場合は別途確認が必要です。
- 使っていない目的を削除することもできますか?
-
はい。株式会社では、原則として株主総会の特別決議による定款変更と目的変更登記により削除できます。許認可や既存の取引への影響も確認してください。
- 目的を複数追加・削除すると、登録免許税は増えますか?
-
目的変更のみを1件として申請する場合、変更する項目数によらず登録免許税は3万円です。
- 合同会社の目的変更も登記が必要ですか?
-
はい。合同会社でも目的は登記事項です(会社法914条1号)。ただし、株式会社と異なり、定款変更には原則として総社員の同意が必要です(同法637条。定款に別段の定めがある場合を除きます)。
10.まとめ――会社の事業に合った目的変更登記を
- 目的を見直す機会になる目的変更登記は、単に事業目的を追加する手続ではありません。新規事業、ピボット、許認可、上場準備を機に、現在の事業と今後の方向性を踏まえて目的を見直す機会でもあります。
- 会社に合った目的を検討する柔軟性を重視するか、具体的な事業内容を伝えるか。法律上の手続を踏まえつつ、会社に合った目的を検討することが大切です。
- 文言が固まる前でも相談できる目的の文言がまだ固まっていない段階でも、現在の定款・登記事項証明書と、変更したい事業の内容をお知らせいただければ、必要な手続をご案内します。
大阪の会社の目的変更登記は、司法書士法人LSOへ
目的の追加・削除・修正、株主総会の決議書類、商業登記の申請まで。大阪を拠点に、全国からのご相談に対応しています。
関連するご案内
根拠法令・一次資料
- 会社法:27条1号、298条4項、309条2項11号、319条、323条、466条、637条、911条3項1号、914条1号、915条1項
- 商業登記法:1条、46条2項・3項
- 商業登記規則:61条3項
- 登録免許税法:別表第一第24号(一)ツ
- 法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」Q15
- 法務局「株式会社(目的の変更)登記申請書」
- 大阪労働局「有料職業紹介事業(法人)新規許可・提出書類一覧」
- 日本取引所グループ「上場審査基準概要(グロース市場)」
※目的の記載例は説明のための架空例です。個別事業に必要となる許認可等の要否は、事業の実態に応じて確認する必要があります。許認可の申請・許可の判断は所管行政庁や行政書士等へ、上場審査に関する判断は主幹事証券会社等へご確認ください。
本記事は2026年(令和8年)10月時点の法令・公表資料にもとづいて作成しています。
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