会社設立時の定款附則は削除してよい?発起人・設立時取締役と現行定款の整備

設立時の定款附則と現行定款|発起人・設立時取締役の附則を削除するには株主総会の特別決議が必要
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公開日:2026年8月22日/執筆・監修:司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光 康太

結論

会社設立時の定款には、発起人、設立に際して出資される財産の価額、設立時取締役、最初の事業年度など、会社設立時に必要となる事項が「附則」としてまとめられていることがあります。これらの多くは、会社の成立や最初の事業年度の終了といった一定の時点を経て役割を終えます。もっとも、会社法に、役割を終えた附則の条文が当然に定款から消える旨の規定はありません。残っていること自体が違法になるわけでもなく、附則に置かれた条項のすべてが設立時限りのものとも限りません。

設立時の附則を現行定款から外して整理する場合は、原則として株主総会の特別決議による定款変更として行います。当事務所が実務でむしろ気になるのは、附則が残っていることよりも、原始定款にはあった附則が、会社が「現行定款」として管理しているWordやPDFではいつの間にか消えていて、その経緯を確認できないケースです。

1.会社設立時の「定款附則」とは?まず記載例で確認する

附則には、一般に一時的な規定や経過措置が置かれます。原始定款では、その中でも会社設立時に必要となる事項がまとめて記載されます。

会社法が「設立時の事項は附則という章に記載しなければならない」と定めているわけではありません。もっとも、日本公証人連合会は、附則にはどのような規定が置かれるのかという説明の中で、附則には一時的な規定、経過措置のような規定など、将来不必要となるようなものが記載されるとし、その理由を、各章の関係条文の位置に置くと将来削除する際に条数の変更などが煩雑になるためと説明しています。同会の定款等記載例でも、いずれの例でも最後に「第6章 附則」が置かれ、設立に際して出資される財産の価額、成立後の資本金の額、最初の事業年度、設立時取締役等、発起人の氏名・住所がそこにまとめられています。

ここで押さえておきたいのは、附則に入るのは設立時限りの事項だけとは限らないということです。同会の説明でも、現物出資、財産引受、発起人の報酬、設立費用といった変態設立事項(会社法第28条)が附則に置かれることが挙げられており、財産引受のように会社の成立後に履行が予定されているものもあります。

実際の会社設立でも、定款の作成から設立登記までの中で、会社の内容に応じてこれらの設立時事項を定款に置きます。

記載例|設立時の附則(本記事用に簡略化したモデル)

第6章 附則

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第30条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。

(最初の事業年度)
第31条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和9年7月31日までとする。

(設立時取締役)
第32条 当会社の設立時取締役は、次のとおりとする。
 設立時取締役 甲野太郎

(発起人の氏名ほか)
第33条 発起人の氏名、住所、設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりとする。
 大阪府大阪市○○区○○一丁目1番1号 発起人 甲野太郎 60株 金60万円
 大阪府大阪市○○区○○二丁目2番2号 発起人 乙野花子 40株 金40万円

(法令の準拠)
第34条 この定款に規定のない事項は、会社法その他の法令に従う。

※日本公証人連合会「株式会社定款記載例」を参考に、本記事用に条数・内容を簡略化したモデルです。実際の条文は会社ごとに異なります。

2.附則に置かれる事項は、会社法上どのような位置付けか

「設立時の附則」に入る事項は、すべてが同じ法的性質ではありません。

会社法第27条は、株式会社の定款に必ず記載・記録しなければならない事項(絶対的記載事項)として、目的、商号、本店の所在地のほか、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(4号)と「発起人の氏名又は名称及び住所」(5号)を挙げています。設立の際に作成する定款(原始定款)にこれらの記載を欠くと、その定款は無効です。

ここで注意したいのは、「絶対的記載事項」とは、設立の際に作成する定款に必ず書かなければならないという意味であって、会社の成立後もその記載を永久に残し続けなければならないという意味ではないという点です。設立に際して出資される財産の価額や発起人に関する記載は、設立手続のための事項だからです。

一方、会社法第32条第1項は、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、株式と引換えに払い込む金銭の額、成立後の資本金・資本準備金の額に関する事項について、定款に定めがある事項を除き、発起人全員の同意で定めるとしています。つまり、これらは定款に書いてもよいし、発起人の同意書で定めてもよい事項です。法務省の発起設立の案内でも同じ整理がされています。

また、設立時取締役等は、会社法第38条第4項により、定款で設立時取締役として定められた者は出資の履行が完了した時に選任されたものとみなされます。附則に設立時取締役を書いておくのは、この規定を使って選任手続を省くためです。

整理すると、附則に置かれる主な事項と会社法上の位置付けは次のとおりです。

附則に置かれる主な事項 主な根拠 会社法上の位置付け
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 会社法27条4号 設立時の定款の絶対的記載事項
発起人の氏名又は名称及び住所 会社法27条5号 設立時の定款の絶対的記載事項
発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数 会社法32条1項1号 定款に定めがなければ発起人全員の同意で決定
株式と引換えに払い込む金銭の額 会社法32条1項2号 同上
成立後の資本金・資本準備金の額に関する事項 会社法32条1項3号 同上
設立時取締役等 会社法38条4項 定款で定めると、出資の履行完了時に選任されたものとみなされる
最初の事業年度 会社法29条 任意的記載事項(定款に定めた以上、変更には定款変更が必要)

なお、定款は「書いてもよいこと」を書ける書面でもあります。会社法29条は、絶対的記載事項のほかに、会社法の規定により定款の定めがなければ効力を生じない事項(相対的記載事項)と、会社法の規定に違反しないその他の事項(任意的記載事項)を記載できると定めています。増資の場面で出てくる定款の「別段の定め」も、こうした相対的記載事項の一例です(会社法204条2項は、譲渡制限株式の割当先を決める機関について法定の原則を置いたうえで、定款に別段の定めがある場合の例外を認めています)。

3.会社が成立したら、設立時の附則は自動的に消える?

役割を終えることと、定款から条文が消えることは別の話です。

附則も定款の一部です。会社法には、会社の成立によって設立時の附則が文面上当然に定款から削除される、という一般的な規定はありません。個々の条項が設立手続上の役割を終えることと、その記載が定款から自動的に消えることは、別の問題です。

したがって、削除の定款変更をしていないのであれば、管理用のWordやPDFから条文だけを消すのではなく、定款変更の経緯と整合する形で管理するのが適切です。

例えば、設立時の資本金が100万円だった会社が、その後の増資で資本金1億円になったとしても、附則の「当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする」を1億円に書き換えることはしません。この条文は現在の資本金を表示するものではなく、会社成立時の事実についての定めだからです。

よくある誤解
「今は使わない条文」=「Wordから消してよい条文」ではありません。使わなくなった条文であっても、定款から外すには定款変更の手続が必要です。

会社成立後の定款変更については、会社法第466条が「株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる」と定め、会社法第309条第2項第11号により、原則として株主総会の特別決議が必要になります。

したがって、設立時の事項だからという理由だけで管理用のWordから消すのではなく、削除するのであれば株主総会の定款変更決議として行い、その議事録を残すのが基本です。

また、削除にあたっては、対象の条項が本当に役割を終えているかを個別に確認します。最初の事業年度の定めはその事業年度が終了するまで意味を持ちますし、財産引受のように会社の成立後に履行が予定されている条項もあります。

もっとも、原始定款の附則自体に「本附則は、会社成立後○年を経過した時に削除されたものとする」といった失効の定めが置かれていることもあります。その場合は、まずその条文の内容を確認します。

4.実務で気になるのは「残っている附則」より「いつの間にか消えている定款」

当事務所が気にしているのは、附則が残っていること自体より、削除の経緯を確認できないことです。

会社の定款や株主総会議事録を確認していると、設立時の附則がそのまま残っている会社を目にします。発起人や最初の事業年度の条文が残っていても、それだけで日々の会社運営に支障が出るわけではありません。

一方で、次のようなケースに出会うことがあります。

  • 公証人の認証を受けた原始定款には、発起人・設立時取締役等の附則がある
  • 会社から「現行定款」として提示されたWordやPDFでは、その附則がなくなっている
  • 過去の株主総会議事録を確認しても、いつ削除したのかが分からない

ここで確認したいのは、「附則がないこと」ではなく、「現在の定款が、どの会社の意思決定によってこの内容になったのか」です。会社法第31条は、株式会社に定款を本店等へ備え置き、株主・債権者の閲覧等に応じる義務を課しています。定款は社内の管理文書ではなく、外に対して示す書面でもあります。

では、変更の経緯を確認できない場合には、どう整理していくのでしょうか。

5.現行定款と過去の決議が合わないときの整備の進め方

まず変更履歴を確認し、確認できない事実を推測で補わず、必要に応じて現時点から正式に整備するのが基本です。

  1. 原始定款と現在の定款を突き合わせる

    どの条文が追加・変更・削除されているかを確認します。設立時の附則だけでなく、商号、目的、発行可能株式総数、株式の譲渡制限、機関設計、役員の任期などにも不一致がないかを見ます。

  2. 過去の株主総会議事録等を確認する

    定款変更の経緯を、保存されている株主総会議事録その他の資料から確認します。資料が足りない場合には、確認できた事実と確認できない事項を分けて整理します。

  3. 必要に応じて、現在の意思決定として整備する

    附則削除の根拠となる決議を確認できない場合には、現在の株主総会で改めて定款を整理する方法を検討します。過去の経緯を推測して作るのではなく、いま確認できる事実を基礎に対応します。

    過去の議事録が見当たらないときの注意
    実際には開催されていない会議を開催したものとして過去の日付の議事録を作成したり、確認できない内容を推測で補ったりすることは適切ではありません。具体的な整備の方法は、当時の資料、株主構成、他の会社行為への影響などを確認して個別に検討します。詳しくは議事録整備・法務デューデリジェンス対応をご覧ください。

設立時の附則を削除する場合の議案例

例えば、第30条から第33条までが設立時の事項で、第34条に「法令の準拠」が残っている定款であれば、次のような定款変更議案が考えられます。

前提の確認
次の例は、最初の事業年度が既に終了しているなど、削除の対象とする各条項が既に役割を終えていることを前提としています。事業年度の定めは決算期や税務申告にも関係するため、「使わなくなった条項の削除」とまとめて扱わず、個別に確認してください。

記載例|株主総会の定款変更議案

第○号議案 定款一部変更の件

会社設立時に関する規定を整理するため、現行定款第30条(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)、第31条(最初の事業年度)、第32条(設立時取締役)及び第33条(発起人の氏名ほか)を削除し、第34条を第30条とする。

※実際の議案は、現在の定款の内容、他の附則の有無、同時に行う定款変更の有無に応じて作成します。条番号の繰上げや章立ての整理も、定款全体の構成に合わせて検討します。

過去の決議の効力そのものに争いがある場合や、株主間で事実関係に争いがある場合は、法的評価が必要になります。当事務所では、弁護士へのご相談が適切と考えられる場合はその旨をお伝えしています。税務上の取扱いについては税理士へご相談ください。

株主総会の招集、議案の設計、議事録の作成まで含めて整理する場合は、株主総会・取締役会の運営支援の対象になります。

6.定款整備は「最新版のWordを作る」作業ではない

現行定款で大切なのは、見た目を新しくすることではなく、いまの内容を裏付ける会社の意思決定を確認できることです。

定款整備というと、古い条文を消し、条番号を振り直し、Wordを最新版にする作業に見えます。しかし司法書士として確認したいのは、現在の文面だけではなく、そこに至るまでの変更履歴です。

例えば、取締役の任期が現在5年と書かれているのであれば、原始定款から現在までのどの定款変更で5年になったのかを確認します。任期そのものの考え方は、取締役の任期は何年がよい?1年から10年までの決め方で解説しています。

この視点は設立時の附則だけの話ではなく、役員変更・各種変更登記のご依頼でも、現在の定款と登記・議事録の関係を確認する場面があります。

資金調達、M&A、IPO準備などでは、現行定款だけでなく過去の定款や議事録を確認する機会が増えます。特にスタートアップのように短期間で増資や機関設計の変更を重ねる会社では、変更履歴の本数自体が多くなります。ただし、「IPO前には設立時の附則を必ず削除しなければならない」という会社法上のルールがあるわけではありません。設立時の附則は、会社法関係書類全体の整合性を確認する中で気付きやすい論点の一つ、と捉えるのが実際に近いところです。

7.司法書士として実際に確認しているポイント

当事務所では、定款変更の対象条文だけでなく、可能な範囲で現行定款全体と変更履歴を確認します。

確認の方向は、大きく分けて次の2つです。

① 決議 → 定款過去の定款変更決議が、現在の定款に正しく反映されているか。
② 定款 → 決議現行定款で原始定款から変わっている部分について、その根拠となる決議を確認できるか。

設立時の附則は、この②の方向で確認しているときに気付きやすいポイントです。あわせて、目的、株式の内容、機関設計、役員の任期、登記記録との整合性も確認します。

8.よくあるご質問

設立時の附則が定款に残っています。すぐに削除した方がよいですか。

残っていることだけで直ちに問題が生じるとは限りません。削除は義務ではなく、他の定款変更を行う機会に、定款全体を確認したうえであわせて整理する方法も考えられます。

附則を削除するには、どのような手続が必要ですか。

定款の変更にあたるため、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法466条、309条2項11号)。決議した内容は議事録に残し、変更後の定款を本店等に備え置きます。

現在の定款から附則が消えていますが、いつ削除したか分かりません。どうしますか。

まず原始定款、過去の定款、株主総会議事録その他の資料を確認し、変更の経緯を整理します。削除の根拠となる決議を確認できない場合は、確認できない過去を推測で補うのではなく、現時点でどのような対応が可能かを個別に検討します。

附則を削除すると、法務局への変更登記が必要ですか。

附則の削除によって会社法第911条第3項に掲げる登記事項に変更が生じない場合は、その削除自体について変更登記を申請するものではありません。同時に商号、目的、発行可能株式総数、機関設計などの登記事項を変更した場合は、会社法第915条第1項により、原則として2週間以内の変更登記が必要です。

会社成立後に定款を変更したら、もう一度公証人の認証が必要ですか。

必要ありません。会社法第30条が認証を求めているのは設立の際に作成する定款(原始定款)で、会社成立後の定款変更は株主総会の決議によって効力が生じます。

9.まとめ|現行定款は、会社の意思決定の積み重ね

設立時の附則には、発起人、設立時取締役、最初の事業年度など、会社の成立後には役割を終える事項が記載されています。役割を終えても、条文が自動的に消えるわけではありません。

これらを現行定款から外して整理する場合は、原則として株主総会の特別決議による定款変更として行い、議事録を残します。

特に確認したいのは、原始定款にはあった条文が現行定款では消えているのに、その経緯を確認できないケースです。

現行定款は、単なる「最新版のWord」ではなく、原始定款とその後の会社の意思決定の積み重ねです。当事務所では、過去の経緯を推測で補うのではなく、確認できる資料を基礎に、現在の定款と会社法関係書類を整理しています。

現行定款と過去の議事録の整合性を確認します

原始定款はあるものの、その後の定款変更の履歴が分からない場合や、資金調達・M&A・IPO準備に向けて会社法関係書類を整理したい場合もご相談いただけます。まずは現在保管されている資料から確認します。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

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本記事について

本記事は、2026年8月時点の会社法、法務省および日本公証人連合会の公表資料をもとに、司法書士法人LSOが会社法・商業登記実務の観点から一般的な考え方を整理したものです。設立時の附則の取扱いは、個別の定款文言や過去の会社の意思決定によって検討が異なる場合があります。過去の株主総会決議の有無・効力について争いがある事案など、法的評価が必要な場合は、具体的な資料・事実関係に基づく検討が必要です。

主な根拠法令・参考資料

会社法第27条第29条第30条第31条第32条第38条第309条第466条第911条第3項第915条第1項法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」日本公証人連合会「定款等記載例」同「附則には、どのような規定が置かれるのですか。」同「株式会社の定款の記載事項について」

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