株主総会の決議要件とは?普通決議・特別決議・特殊決議の違いと決議事項の一覧をわかりやすく(非公開会社を中心に)

結論
株主総会で物事を決めるときに必要な出席と賛成の数(決議要件)は、決める内容によって変わり、一般に次の3つに分けて説明されます。どの要件も定款で一定の範囲で変えられるため、自社の定款もあわせて確認する必要があります。
① 普通決議
議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した議決権の過半数の賛成で可決されます。計算書類の承認や役員の選任などが当たります。
② 特別決議
議決権の過半数を持つ株主が出席し(普通決議と同じ)、出席した議決権の3分の2以上の賛成で可決されます。定款の変更(③に当たるものを除く)や、非公開会社の第三者割当増資の募集事項の決定(またはその委任)などが当たります。
③ 特殊決議
議決権の数に加えて、株主の人数でも数えます。非公開会社が株主ごとに異なる取扱い(属人的定め)を定款に設ける定款の変更は、総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要です。
1.株主総会の決議要件の一覧|普通決議・特別決議・特殊決議の違い
株主総会の決議要件は、「出席の条件」と「賛成の条件」の2段階で決まります。出席の条件は一般に「定足数」と呼ばれ、決議をするために出席していなければならない議決権の数をいいます。賛成の条件は、議案が可決されるために必要な賛成の数です。
数えるのは、原則として株主の人数ではなく議決権の数です。株主は、株主総会で、持っている株式1株につき1個の議決権を持つためです(会社法308条1項。単元株式数を定款で定めている会社では、1単元につき1個)。会社が持っている自社の株式(自己株式)には、議決権がありません(同条2項)。また、会社が別の会社の議決権の4分の1以上を持っているなど、その別の会社の経営を実質的に支配できる場合には、株主である別の会社は、その会社の株主総会で議決権を持ちません(同条1項かっこ書き。範囲は法務省令で定めています)。ただし特殊決議では、議決権の数に加えて、株主の人数も数えます。
普通決議・役員の選任と解任の決議・特別決議は、出席の条件(定足数)と賛成の条件の両方を満たして、はじめて可決されます。出席の条件を満たさない株主総会では、出席した株主が全員賛成しても、これらの決議はできません。特殊決議は、出席した株主ではなく株主全体を基準に数えるため、条文に出席の条件はありません。
会社法が定める決議要件を一覧にすると、次の表のとおりです。表の要件は、定款で別の定めをしていない場合のものです。定款で変えられる範囲は、それぞれの章で説明しています。
| 決議の種類 | 出席の条件(定足数) | 可決に必要な賛成 |
|---|---|---|
| 普通決議 (会社法309条1項) |
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席 | 出席した議決権の過半数 |
| 役員の選任・解任の決議 (普通決議の特則。監査役の解任などを除く。341条) |
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席 | 出席した議決権の過半数 |
| 特別決議 (309条2項) |
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席 | 出席した議決権の3分の2以上 |
| 特殊決議 (309条3項。種類株式発行会社を除く) |
出席の条件はなく、議決権を行使できる株主全体を基準に数える | 議決権を行使できる株主の半数以上で、その株主の議決権の3分の2以上 |
| 特殊決議 (309条4項) |
出席の条件はなく、総株主を基準に数える | 総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上 |
種類株式を発行している会社では、株主総会とは別に、種類株主総会の決議が必要になることがあります。種類株主総会の決議要件は会社法324条が定めており、本記事では扱いません。詳しくは「種類株主総会とは?必要となる場面・決議要件・手続」で解説しています。また会社法には、株主総会の決議ではなく、株主全員の同意を求める手続もあります(3章)。
一覧の次に確認したいこと
一覧が示しているのは、決議要件ごとの数え方です。実際に株主総会で決議をするときは、決める内容がどの決議要件に当たるのか、自社の株主構成では誰が出席し、誰が賛成すれば可決されるのかも確かめる必要があります。それぞれ、次の章で説明しています。
| 確認したいこと | 説明している章 |
|---|---|
| 普通決議で決める主な事項、役員の選任・解任の特則、定款で変えられる範囲 | 2章 |
| 特別決議が必要な事項(会社法309条2項各号)、定款で変えられる範囲、株主全員の同意が必要な手続 | 3章 |
| 特殊決議が必要な事項、株主の人数の数え方、定款で変えられる範囲 | 4章 |
| 株主3人の会社で、3つの決議を計算した例 | 5章 |
| 決議の前に当事務所が確認していること | 6章 |
2.普通決議の要件と、普通決議で決める主な事項
普通決議は、会社法が特別の決議要件を定めていない事項を株主総会で決めるときの、基本となる決議要件です。まず、条文を確認しましょう。
会社法309条1項(株主総会の決議)
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
「議決権を行使することができる株主の議決権」には、その株主総会で議決権を行使できない株式(自己株式など)の議決権は含みません。出典:会社法309条|e-Gov法令検索
条文の「過半数」は、半分を超えることをいいます。議決権が全部で1,000個の会社なら、501個以上を持つ株主の出席が必要です。出席した議決権が600個なら、301個以上の賛成で可決されます。
条文の冒頭にある「定款に別段の定めがある場合を除き」は、普通決議の要件を定款で変えられることを示しています。条文は、どこまで変えられるかを数字では定めていません。定款で変える例として、出席の条件を外し、「出席した株主の議決権の過半数」だけで決めると定めている会社があります。
役員の選任・解任は、定款でも出席の条件を3分の1未満にできない
取締役・会計参与・監査役(341条を含む会社法の役員の選任・解任の節では、この3つを「役員」と呼びます。会社法329条1項)を選任・解任する決議も普通決議ですが、出席の条件に特則があります(「特則普通決議」と呼ばれることもあります)。条文を確認しましょう。
会社法341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
309条1項の普通決議では、定款で出席の条件を外すこともできますが、役員の選任・解任の決議では、定款で定めても、出席の条件を議決権の3分の1より下げることはできません。賛成の割合は、定款で過半数より引き上げることができます。
ただし、役員の解任のうち次の2つは、普通決議ではなく特別決議が必要です(会社法309条2項7号)。
普通決議で決める主な事項
普通決議で決める事項の例です。ここに挙げていない事項でも、普通決議で決めるものがあります。また、会社の機関設計や定款の定めによって、決める機関が株主総会ではなくなる事項もあります。
| 決める事項(例) | 根拠条文 |
|---|---|
| 取締役・会計参与・監査役の選任 | 会社法329条1項・341条 |
| 取締役・会計参与の解任(累積投票で選任された取締役と、監査等委員である取締役を除く) | 339条1項・341条 |
| 定時株主総会での計算書類の承認(会計監査人設置会社で、一定の要件を満たす場合は、承認ではなく報告になります。439条) | 438条2項 |
| 剰余金の配当(金銭以外の財産で配当し、株主に金銭分配請求権を与えない場合は特別決議。309条2項10号) | 454条1項 |
| 取締役の報酬等(定款で定めていない場合) | 361条1項 |
| 株主との合意による自己株式の取得(特定の株主から取得する場合は特別決議。309条2項2号) | 156条1項 |
3.特別決議の要件と、特別決議が必要な事項
特別決議は、定款の変更や、非公開会社の募集株式の発行など、会社法309条2項の各号に挙げられた事項を決めるときの決議要件です。まず、309条2項の柱書(各号の前の部分)を確認しましょう。
会社法309条2項(株主総会の決議)
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
一〜十二(略。下の表で要約しています)
1つ目のマーカーは、出席の条件を定款で3分の1以上の割合に変えられること(3分の1未満にはできない)、2つ目のマーカーは、賛成の割合を定款で3分の2より引き上げられることを示しています。出典:会社法309条|e-Gov法令検索
出席の条件(議決権の過半数を持つ株主の出席)は普通決議と同じで、この条件を満たしたうえで、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。条文の後段により、議決権の割合に加えて、「株主の人数の過半数の賛成も必要」といった条件を定款で加えることもできます。
特別決議が必要な事項(会社法309条2項各号)
309条2項は、特別決議が必要な事項を1号から12号まで挙げています。次の表は、各号に当たるよくある場面と、条文の内容を読みやすく言い換えた要約です。正確な要件は、e-Govの会社法309条2項の本文をご確認ください。
| 号 | よくある場面 | 条文の内容(要約) |
|---|---|---|
| 1号 | 譲渡を承認しない場合の買取り | 譲渡制限株式の譲渡などを承認しないときに、会社がその株式を買い取ることの決定(140条2項)と、買い取る人(指定買取人)を株主総会で指定する場合の決議(同条5項。取締役会設置会社では取締役会が指定し、定款で別の定めもできます) |
| 2号 | 特定の株主からの自己株式の買取り | 特定の株主から自己株式を取得するときの、取得に関する事項の決定(156条1項。160条1項により特定の株主を定める場合) |
| 3号 | 全部取得条項付種類株式の取得、相続人への売渡請求 | 全部取得条項付種類株式の取得(171条1項)と、相続人などに対する株式の売渡しの請求(175条1項) |
| 4号 | 株式の併合 | 株式の併合(180条2項) |
| 5号 | 第三者割当増資など | 募集株式の発行の募集事項の決定と、その決定の委任など(199条2項・200条1項・202条3項4号・204条2項・205条2項) |
| 6号 | ストックオプションなど | 募集新株予約権の募集事項の決定と、その決定の委任など(238条2項・239条1項・241条3項4号・243条2項・244条3項) |
| 7号 | 監査役などの解任 | 累積投票で選任された取締役、監査等委員である取締役、監査役の解任(339条1項) |
| 8号 | 役員等の責任の一部免除 | 役員等の責任の一部免除(425条1項) |
| 9号 | 減資 | 資本金の額の減少(447条1項)。ただし、定時株主総会で決め、減らす額が欠損の額(法務省令で定める方法で算定した額)を超えない場合は、特別決議の対象から外れ、普通決議で足ります |
| 10号 | 金銭以外の財産での配当 | 金銭以外の財産で剰余金を配当し、株主に金銭分配請求権(配当財産の代わりに金銭を請求できる権利)を与えない場合(454条4項) |
| 11号 | 定款の変更、事業譲渡、解散、会社の継続 | 会社法第2編第6章〜第8章の規定で株主総会の決議が必要な場合。定款の変更(466条)、事業の全部の譲渡などの事業譲渡等(467条1項)、株主総会の決議による解散(471条3号)、会社の継続(473条)など |
| 12号 | 合併・会社分割などの組織再編 | 会社法第5編の規定で株主総会の決議が必要な場合。合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付などの組織再編 |
決める内容によっては、特別決議ではなく、4章で説明する特殊決議や、株主全員の同意が必要になるものもあります。株主全員の同意が必要な例として、種類株式発行会社でない会社が、発行するすべての株式を、一定の事由が生じたときに会社が取得できる株式(取得条項付株式)にする定款の変更(会社法110条)があります。また、株式会社から合同会社などの持分会社への組織変更は、株主総会の決議ではなく、総株主の同意で行います(776条1項)。
株式の発行(5号)は、公開会社かどうかで決める機関が変わる
5号の募集事項の決定は、公開会社かどうかで決める機関が変わります。会社法199条2項は、すべての株式会社について、募集事項を株主総会の決議で決めることを原則としています。この決議は特別決議です(309条2項5号)。そのうえで公開会社では、払込金額が引き受ける人に特に有利な金額である場合(199条3項)を除き、取締役会で決めると定めています(201条1項)。
そのため、非公開会社が第三者割当増資をするときは、原則として株主総会の特別決議が必要です。決定を取締役(取締役会)に委ねる方法は、「募集株式の「募集事項」とは?増資条件を取締役・取締役会に委任する方法」で解説しています。
4.特殊決議の要件|株主の人数でも数える2つの決議
特殊決議は、議決権の数に加えて、株主の人数の条件も満たすことを求める決議要件です。会社法309条3項と4項の2種類があり、出席した株主ではなく、株主全体を基準に数える点が、普通決議・特別決議と違います。3項の決議はいずれも公開会社が関わる場面で、非公開会社で主に問題になるのは4項です。
特殊決議が必要な場面(会社法309条3項・4項)
特殊決議が必要な場面を一覧にすると、次の表のとおりです。条文の内容を読みやすく言い換えた要約なので、正確な要件はe-Govの会社法309条3項・4項の本文をご確認ください。
| 条文 | 決議が必要な場面(要約) | 数える基準 | 必要な賛成 |
|---|---|---|---|
| 3項1号 | 全部の株式に譲渡制限を設ける定款の変更(公開会社が非公開会社になるとき) | その株主総会で議決権を行使できる株主 | 半数以上で、その株主の議決権の3分の2以上 |
| 3項2号 | 吸収合併で消滅する会社・株式交換をする会社が公開会社で、株主に交付する金銭等の全部または一部が譲渡制限株式等であるときの、契約の承認(783条1項) | その株主総会で議決権を行使できる株主 | 半数以上で、その株主の議決権の3分の2以上 |
| 3項3号 | 新設合併・株式移転をする会社が公開会社で、株主に交付する金銭等の全部または一部が譲渡制限株式等であるときの、契約・計画の承認(804条1項) | その株主総会で議決権を行使できる株主 | 半数以上で、その株主の議決権の3分の2以上 |
| 4項 | 非公開会社が、株主ごとに異なる取扱い(属人的定め)を設けたり変えたりする定款の変更(廃止する場合を除く) | 総株主 | 総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上 |
3項は、種類株式発行会社の株主総会には適用されません。3項・4項とも、人数・議決権の割合を定款で引き上げることはできますが、引き下げることはできません。
309条3項:全部の株式に譲渡制限を設ける定款の変更など
3項は、表の3つの決議について、その株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上で、その株主の議決権の3分の2以上の賛成を求めています。柱書と1号を確認しましょう。
会社法309条3項(株主総会の決議)
前二項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会(種類株式発行会社の株主総会を除く。)の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二・三(略。上の表で要約しています)
1号は、種類株式発行会社でない会社が、発行するすべての株式に譲渡制限(株式を譲り受けるときに会社の承認がいる定め)を設けて、非公開会社になるときの定款の変更です。3項で基準になるのは、出席した株主ではなく「その株主総会で議決権を行使できる株主」です。
309条4項:株主ごとに異なる取扱いを定款で設けるとき
非公開会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会での議決権について、株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができます。たとえば、特定の株主について、1株につき複数の議決権を持たせるといった定めです。こうした定めは、一般に「属人的定め」と呼ばれます。
属人的定めを設けたり変えたりする定款の変更には、309条4項の特殊決議が必要です(「特別特殊決議」と呼ばれることもあります)。309条4項は109条2項の定款の定めを指しているので、2つの条文を続けて確認しましょう。
会社法309条4項(株主総会の決議)
前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
会社法109条2項(株主の平等)
前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
「第百五条第一項各号に掲げる権利」は、剰余金の配当を受ける権利(1号)、残余財産の分配を受ける権利(2号)、株主総会における議決権(3号)です。出典:会社法109条|e-Gov法令検索、会社法105条|e-Gov法令検索
309条4項が基準にしているのは、3項の「その株主総会で議決権を行使できる株主」ではなく、総株主です。株主総会に出席しなかった株主も人数と議決権の数に含まれるため、欠席した株主は、結果として賛成しなかったのと同じ扱いになります。
なお、条文の括弧書きのとおり、属人的定めを廃止する定款の変更は309条4項の対象から外れているため、3章の特別決議(309条2項11号)で行います。
5.株主3人の会社で、3つの決議の違いを計算する
同じ株主構成の会社でも、決議の種類によって、誰が出席し、誰が賛成すれば可決されるかは変わります。架空の非公開会社「株式会社見本」で確認しましょう。
株式会社見本の株主と持株数は、次の図のとおりです。発行済株式は1,000株で、自己株式はありません。
そのほかの前提は、次のとおりです。
- 1株につき1個の議決権を持つ。種類株式・単元株式数・属人的定めはない
- 定款に、決議要件についての別の定めはない
この会社で、決議の種類ごとに、必要な出席・賛成と、可決される例・されない例を並べると、次のとおりです。
議決権501個以上を持つ株主が出席し、出席した議決権の過半数が賛成
可決される例:Aだけが出席して賛成(出席600個のうち600個)
可決されない例:BとCだけが出席(出席400個で、出席の条件を満たさない)
議決権501個以上を持つ株主が出席し、出席した議決権の3分の2以上が賛成
可決される例:3人とも出席し、AとCが賛成(出席1,000個のうち700個=70%)
可決されない例:3人とも出席し、Aだけが賛成(出席1,000個のうち600個=60%)
総株主3人の半数以上(2人以上)が賛成し、その議決権が総株主の議決権の4分の3以上(750個以上)
可決される例:AとBが賛成(2人・900個)
可決されない例:AとCが賛成(2人・700個で、750個に届かない)
特別決議では、出席した議決権が基準になる点にも注意が必要です。3人とも出席すると、Aだけの賛成(600個)では3分の2に届きません。一方、BとCが欠席し、Aだけが出席した場合は、出席した600個のうち600個が賛成するので、出席の条件と賛成の条件の両方を満たし、可決されます。
309条4項の特殊決議は総株主を基準にするため、BやCが欠席しても、必要な人数(2人以上)と議決権の数(750個以上)は変わりません。
6.司法書士として実際に確認しているポイント
当事務所で、株主総会の議事録の作成や、株主総会の決議にもとづく登記のご依頼を受けたときに、できるだけ確認している点の例です。
定款で決議要件を変えていないか
定款で、普通決議の出席の条件を外していないか、特別決議の出席の条件を3分の1などに下げていないか、役員の選任・解任について別の定めを置いていないかを、最新の定款で確認します。決議要件の定めは、登記簿には載っていないためです。
議決権を行使できる株主と、議決権の数
株主名簿をもとに、株主ごとの株式数と議決権の数を確認します。自己株式には議決権がなく(会社法308条2項)、決議の内容によっては、特定の株主が議決権を行使できないこともあります。たとえば、譲渡の承認を請求した株主は、会社がその株式を買い取ることを決める株主総会では、原則として議決権を行使できません(140条3項)。属人的定めや、議決権を制限した種類株式があるときは、定款の定めに沿って数えます。
議案ごとに、どの決議要件に当たるか
議案ごとに、普通決議・特別決議・特殊決議のどれに当たるかを条文で確認します。役員の解任のように、同じ種類の議案でも、対象によって決議要件が変わるもの(監査役の解任は特別決議)には特に注意しています。
7.よくあるご質問
- 議決権行使書面や委任状で議決権を行使した株主は、「出席した株主」に数えますか?
-
書面(議決権行使書面)で行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入すると定められています(会社法311条2項)。電磁的方法(電子投票)で行使した議決権も、同じく出席した議決権に算入されます(312条3項)。代理人による議決権の行使(310条1項)は、株主の議決権を代理人を通じて行使するものなので、代理人が株主総会に出席して議決権を行使したときは、その株主の議決権を、出席した議決権として数えます。委任状と議決権行使書面の違いは、「委任状と議決権行使書面は何が違う?」で解説しています。
- 出席して棄権した株主や、賛成と反対が同数のときは、どう数えますか?
-
条文は、普通決議と特別決議の賛成の割合を、出席した株主の議決権を基準に計算すると定めています(会社法309条1項・2項)。この文言のとおりに計算すると、出席して棄権した株主の議決権も基準(分母)に含まれるため、賛成しなかったのと同じ結果になります。賛成と反対が同数のときは、賛成が過半数に達しないため、普通決議では可決されません。
- 株主全員が書面で同意すれば、特別決議が必要な事項でも、株主総会を開かずに決められますか?
-
決められます。取締役または株主が株主総会の目的である事項(議題)について提案し、その事項について議決権を行使できる株主の全員が、書面または電子データで同意したときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。条文は、決議要件の種類によってこの方法を制限していません。要件と議事録の作り方は、「株主総会のみなし決議(書面決議)とは?」で解説しています。
8.まとめ
- 決議要件は「出席」と「賛成」の2段階株主総会の決議要件は、決議をするための出席の条件と、可決に必要な賛成の条件で決まります。数えるのは原則として議決権の数で、普通決議・特別決議・特殊決議で条件が違います。
- 普通決議は過半数、特別決議は3分の2以上の賛成どちらも、議決権の過半数を持つ株主の出席が必要です。出席した議決権の過半数(普通決議)か、3分の2以上(特別決議)の賛成で可決されます。定款の変更(特殊決議が必要なものなどを除く)や、非公開会社の第三者割当増資の募集事項の決定(またはその委任)などは、特別決議です。
- 特殊決議は株主の人数でも数える非公開会社が株主ごとに異なる取扱いを定款に設けるときは、総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要です。総株主を基準に数えるため、株主総会を欠席した株主は、賛成しなかったのと同じ扱いになります。
根拠条文(29件)を見る
主な根拠条文
- 会社法105条1項(株主の権利)
- 会社法109条2項(株主の平等)
- 会社法308条(議決権の数)
- 会社法309条(株主総会の決議)
- 会社法319条1項(株主総会の決議の省略)
- 会社法341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
- 会社法342条6項(累積投票による取締役の選任)
その他の関連条文
- 会社法110条(定款の変更の手続の特則)
- 会社法140条(株式会社又は指定買取人による買取り)
- 会社法156条1項(株式の取得に関する事項の決定)
- 会社法160条1項(特定の株主からの取得)
- 会社法199条2項・3項(募集事項の決定)
- 会社法201条1項(公開会社における募集事項の決定の特則)
- 会社法310条1項(議決権の代理行使)
- 会社法311条2項(書面による議決権の行使)
- 会社法312条3項(電磁的方法による議決権の行使)
- 会社法324条(種類株主総会の決議)
- 会社法329条1項(選任)
- 会社法339条1項(解任)
- 会社法361条1項(取締役の報酬等)
- 会社法438条2項(計算書類等の定時株主総会への提出等)
- 会社法439条(会計監査人設置会社の特則)
- 会社法447条1項(資本金の額の減少)
- 会社法454条1項・4項(剰余金の配当に関する事項の決定)
- 会社法466条(第2編第6章「定款の変更」)
- 会社法467条1項(事業譲渡等の承認等)
- 会社法471条(解散の事由)
- 会社法473条(株式会社の継続)
- 会社法776条1項(株式会社の組織変更計画の承認等)
株主総会の決議・議事録のご相談
司法書士法人LSOでは、定款と株主名簿を確認しながら、株主総会の決議要件の確認、招集通知・議事録・株主リストの作成から、決議にもとづく登記の申請まで対応しています。全国の会社からオンラインでご相談いただけます。
関連するご案内・コラム
本記事について
本記事は、2026年(令和8年)11月時点の会社法をもとに、司法書士法人LSOが、株主総会の決議要件(普通決議・特別決議・特殊決議)を整理したものです。主に、種類株式を発行していない非公開会社を対象としています。種類株主総会の決議要件(会社法324条)は扱っていません。株式会社見本は説明のための架空の会社です。個別の事案については、決議の前に専門家へご確認ください。
来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています
対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。
商業登記・企業法務 料金表を見る

