商業登記とは?会社の何が登記されるのか、期限と費用、申請先をわかりやすく解説

1.商業登記とは|会社の基本情報を法務局で公開する制度
商業登記とは、主に会社の基本情報を法務局の記録(登記簿)に載せて公開する制度です。流れは次のとおりです。
なぜ公開するのかは、次の商業登記法1条に書かれています。
商業登記法1条(目的)
この法律は、商法(明治三十二年法律第四十八号)、会社法(平成十七年法律第八十六号)その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする。
「公示」は広く一般に知らせること、「商号」は会社の名前のことです。出典:商業登記法1条|e-Gov法令検索
会社の情報が公開されていれば、取引の相手は、その会社が実在するか、誰が代表者か、資本金がいくらかを自分で確かめられます。会社にとっても、登記は信用を示す手段になります。
会社の登記簿は、会社の種類ごとに分かれていて、株式会社は「株式会社登記簿」、合同会社は「合同会社登記簿」に記録されます(商業登記法6条)。
2.商業登記で何が登記される?|株式会社の主な登記事項
では、具体的に何が登記されるのでしょうか。株式会社が設立のときに登記し、その後も内容が変われば登記し直す事項の中心は、会社法911条3項に定められています。主なものは次のとおりです。
| 登記されること | 会社法911条3項 |
|---|---|
| 会社の目的(事業の内容) | 1号 |
| 商号(会社の名前) | 2号 |
| 本店と支店の所在場所 | 3号 |
| 資本金の額 | 5号 |
| 発行可能株式総数(会社が発行できる株式の数の上限) | 6号 |
| 発行する株式の内容(種類株式を発行する会社では、各種類の内容など) | 7号 |
| 発行済株式の総数(種類株式を発行している会社では、種類ごとの数も) | 9号 |
| 新株予約権を発行したときは、その内容など | 12号 |
| 取締役の氏名 | 13号 |
| 代表取締役の氏名と住所 | 14号 |
| 取締役会を置いているときは、その旨 | 15号 |
| 監査役を置いているときは、その旨と監査役の氏名など | 17号 |
| 公告方法(官報・新聞・電子公告のどれを使うか) | 27号〜29号 |
※ 911条3項の登記事項から主なものを抜き出し、読みやすく言い換えています。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では、取締役などの登記の内容が一部異なります。正確な内容はe-Govの条文でご確認ください。
登記された内容は、誰でも見られる
手数料を納めれば、誰でも登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本・商業登記簿謄本)を取って、登記の内容を確認できます(商業登記法10条1項)。自社だけでなく、取引先など他の会社の証明書も取れます。
なお、代表取締役の住所は、代表取締役の住所を登記する申請(設立や就任・住所変更の登記など)と同時に、所定の書面を添えて申し出れば、証明書に表示する範囲を市区町村までにとどめることができます(代表取締役等住所非表示措置)。住所そのものは、これまでどおり登記されます。
次の見本は、登記事項証明書のうち「履歴事項全部証明書」です。会社の商号・本店・目的などが記録され、内容が変わったときは、変更の日と登記の日も記載されます。

下線が引かれているのは抹消された事項(ここでは変更前の内容)で、その下に変更後の内容が記録されています。
株主の氏名や事業年度は登記されない
911条3項には、株主の氏名や持株数、事業年度(決算期)を登記する号がありません。そのため、株式会社の株主が誰かは、登記事項証明書を見ても分かりません。株主は、会社が作成する株主名簿で確認します。株主名簿は登記事項証明書と違って誰でも見られるものではなく、閲覧などを請求できるのは株主や債権者などに限られます(会社法125条)。
3.商業登記が必要になる場面と期限|原則は変更から2週間以内
登記が必要になる主な場面は、会社をつくるとき、登記した内容が変わったとき、会社を解散・清算するときです。
株式会社は、設立の登記をすることで成立します(会社法49条)。その後、登記した内容が変わったときの期限は、次の条文で決まっています。
会社法915条1項(変更の登記)
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
「第九百十一条第三項各号」は、第2章で見た911条3項の登記事項です(表はその主なもの)。出典:会社法915条|e-Gov法令検索
つまり、変更が生じた時から2週間以内に、登記を申請する必要があります。役員の就任なら就任した時、決議で効力発生日を決めた変更ならその効力発生日が、「変更が生じた時」です。新株予約権の行使による変更のように、毎月末日の時点の内容を、その末日から2週間以内にまとめて登記すれば足りる例外もあります(同条3項)。
よくある場面と、通常必要になる登記は次のとおりです。
よくある例を挙げたものです。表にない場面でも、登記が必要になることがあります。
| 場面 | 通常必要になる登記 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 役員の任期が満了し、同時に同じ人が再任された | 役員変更登記(重任の登記) | 重任登記とは? |
| 役員が辞任した、新しい役員が就任した | 役員変更登記 | 役員変更・各種変更登記(業務案内) |
| 本店を移転した | 本店移転の登記 | 本店移転登記とは? |
| 会社の目的や商号を変えた | 目的変更・商号変更の登記 | 会社の目的変更登記とは? |
| 増資(募集株式の発行)をした | 資本金の額と発行済株式の総数の変更の登記 | 増資・資金調達の手続と登記(業務案内) |
| 会社を解散し、清算を終えた | 解散と清算人の登記、清算結了の登記 | 株式会社の解散から清算結了までの流れ |
※「通常」は、一般的な内容の定款を前提にした取扱いです。
なお、目的や商号に限らず、定款変更をしたときに登記が必要かどうかは、変えた内容が登記事項に当たるかで決まります。
4.登記をしないとどうなる?|取引相手に主張できない・過料
登記をしないままでいると、その内容を取引の相手に主張できないことがあります。期限を過ぎれば、過料の対象にもなります。
事情を知らない取引相手に主張できないことがある
登記していない内容をどこまで主張できるかは、次の会社法908条1項で決まっています。
会社法908条1項(登記の効力)
この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
「善意の第三者」は事情を知らない第三者、「対抗することができない」は主張できない、という意味です。出典:会社法908条|e-Gov法令検索
たとえば、代表取締役が辞任したのに登記をしないままでいると、辞任を知らずにその人と取引した相手に対して、会社は「その人はもう代表取締役ではない」と主張できない場合があります。
100万円以下の過料の対象になる
登記を怠ったときは、取締役などが100万円以下の過料に処せられることがあります(会社法976条1号)。変更登記は期限を過ぎても申請できるので、気づいた時点で必要な手続を確認することが大切です。
5.商業登記は誰が・どこに申請する?|申請先の法務局と費用の目安
登記は、会社の代表者(代表取締役など)が会社を代表して、本店の所在地を管轄する法務局に申請します。役員が替わっても、本店を移しても、会社が申請しなければ、原則として登記簿は書き換わりません(商業登記法14条)。
なお、別の法務局の管轄へ本店を移すときは、新しい本店の分の登記も、旧本店を管轄する法務局を通して、旧本店の分と同時に申請します(商業登記法51条)。
申請は、法務局の窓口や郵送のほか、登記・供託オンライン申請システムでもできます。司法書士に手続を任せることもできます(司法書士法3条1項1号)。
大阪府内に本店がある会社の登記をどの法務局が受け付けているかは、大阪の会社の商業登記と管轄の法務局にまとめています。
費用|登録免許税と、司法書士に依頼する場合の報酬
登記を申請するときは、登録免許税を納めます。税額は登記の種類ごとに決まっていて、主な変更登記では次のとおりです(登録免許税法 別表第一第24号)。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 役員変更 | 1万円(資本金の額が1億円を超える会社は3万円) |
| 商号変更・目的変更 | 3万円 |
| 本店移転(同じ法務局の管轄内) | 3万円 |
| 本店移転(別の法務局の管轄へ) | 6万円(旧本店分・新本店分の登記に3万円ずつ) |
※ 同時に申請する登記の組み合わせによって、合計額が変わります。たとえば商号変更と目的変更を一緒に申請すると、合わせて3万円です。
司法書士に依頼する場合は、これに報酬が加わります。当事務所の報酬は、商業登記の業務案内(手続・期限・料金の一覧)に、手続ごとに登録免許税とあわせて載せています。
6.司法書士として実際に確認しているポイント
当事務所では、ご依頼の登記に関係する範囲で、ほかの登記に漏れがないかもできるだけ確認しています。次は、その例です。
定款を変えたのに、登記していないことはないか
最新の定款と履歴事項全部証明書を見比べ、目的や発行可能株式総数などで、定款だけ変えて登記していないものがないかを確認します。
任期が切れたままの役員はいないか
取締役の任期を10年にしている会社(非公開会社)は、満了の時期を忘れがちです。今回の登記とあわせて、役員の改選と登記の要否をご案内することがあります。
2週間の期限に間に合うか
議事録の日付や効力発生日から、期限内に申請できるかを確認します。期限を過ぎていても、まずは申請の準備を進めていただくようお伝えすることが多いです。
まとめて申請できるものはないか
近い時期に別の登記を予定しているときは、まとめて申請できるかを確認します。組み合わせによって登録免許税の額が変わることもあるため、日程とあわせてご案内することがあります。
7.よくあるご質問
- 株式譲渡で株主が変わったときも、登記は必要ですか?
-
株式の譲渡で株主が入れ替わっただけなら、登記は必要ありません。第2章で見たとおり、株主の氏名は登記されないためです。その代わり、株主名簿を書き換えます。株主名簿に記載されるまで、株式を取得した人は、譲渡を会社などに主張できません(会社法130条1項)。株券を発行している会社では、譲渡に株券の交付が必要になるなど、扱いが異なります(会社法128条1項・130条2項)。譲渡制限株式の場合は、会社の承認の手続も必要です(会社法136条・137条)。一方、会社が新しく株式を発行して出資を受けるとき(増資)は、資本金の額と発行済株式の総数が変わるため、変更の登記が必要です(会社法911条3項5号・9号、915条)。株式譲渡のあとに必要な手続は、株式譲渡に登記は必要?で詳しく解説しています。
- 登記を申請してから完了するまで、どのくらいかかりますか?
-
法務局の混み具合や登記の内容によって変わります。法務局の多くは、申請日ごとの「登記完了予定日」をホームページで公表しているので、申請の前に目安を確認できます。たとえば大阪法務局では、商業・法人登記を扱う本局と北大阪・東大阪・堺の各支局の予定日が掲載されています(大阪法務局「登記完了予定日」)。ただし、申請に不備があるときや、管轄の違う法務局へ本店を移すときなどは、予定日より遅れることがあります。取引先への提出や融資の手続などで、登記事項証明書が必要な日が決まっているときは、その日から逆算して早めに申請することをおすすめします。
8.まとめ
- 会社の基本情報を公開する制度商業登記は、主に会社の名前・所在地・目的・資本金・役員などを法務局の登記簿に記録し、誰でも確認できるようにする制度です。会社の信用を保ち、取引の相手が安心して取引できるようにすることが目的です。
- 変わったら、原則2週間以内に登記会社は、つくるときや、登記した内容が変わったときなどに登記を申請します。変更の期限は原則として2週間以内です。登記をしないままでいると、事情を知らない取引の相手にその内容を主張できないことがあり、期限を過ぎれば過料の対象にもなります。
- 申請は本店所在地の法務局へ登記は、会社の代表者が会社を代表して、本店の所在地を管轄する法務局に申請します。登録免許税がかかり、司法書士に依頼する場合は報酬が加わります。
根拠条文
- 商業登記法1条(目的)
- 商業登記法6条(商業登記簿)
- 商業登記法10条1項(登記事項証明書の交付等)
- 商業登記法14条(当事者申請主義)
- 商業登記法51条(本店移転の登記)
- 会社法49条(株式会社の成立)
- 会社法125条(株主名簿の備置き及び閲覧等)
- 会社法128条1項(株券発行会社の株式の譲渡)
- 会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
- 会社法136条・137条(譲渡制限株式の譲渡の承認の請求)
- 会社法908条1項(登記の効力)
- 会社法911条3項(株式会社の設立の登記)
- 会社法915条1項・3項(変更の登記)
- 会社法976条1号(過料に処すべき行為)
- 司法書士法3条1項1号(業務)
- 登録免許税法 別表第一第24号
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本記事について
本記事は、2026年(令和8年)10月時点の商業登記法・会社法・司法書士法・登録免許税法と、法務局の公表資料をもとに、司法書士法人LSOが、商業登記の仕組みと、登記される内容・期限・費用を整理したものです。主に株式会社を前提にしています。個別の事案については、登記の前に専門家へご確認ください。
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