定款とは?記載事項・定款変更・登記簿との違い

定款とは 記載事項・定款変更・登記簿との違い
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結論

定款(ていかん)とは、会社の名前や事業の内容、株式の扱い、役員の任期など、「その株式会社をどのようなルールで運営するか」を定めた基本的な文書です。

定款は会社を設立するときに作成しますが、設立後も、原則として株主総会の決議によって変更されていきます。そのため、会社の今のルールを確かめるには、設立時の定款ではなく、その後の変更を反映した現在の定款を見る必要があります。

また、定款は登記簿(登記事項証明書)と同じものではありません。定款にしか書かれていないルールもあるため、会社のルールを確かめるときは、定款と登記簿の両方を確認します。

定款とは?株式会社を運営するための基本ルール

定款とは、株式会社の組織や運営について、その会社の基本的なルールを定めたものです。会社を設立するときは、発起人(会社をつくる人)が定款を作成します(会社法26条1項)。

「会社の憲法」と例えられることもありますが、定款が法律より優先するという意味ではありません。会社法などの法令に反しない範囲で、それぞれの会社が自社のルールを定めます。

設立時に作成する最初の定款を、実務では「原始定款」と呼びます。株式会社の原始定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。紙ではなく電子データで作成する「電子定款」も認められており、その仕組みと費用は「電子定款とは?印紙税4万円が不要になる理由と認証手数料」で解説しています。

会社が成立した後は、定款を本店と支店に備え置かなければなりません(会社法31条1項)。株主や債権者は、会社の営業時間内であれば定款の閲覧を請求でき、会社が定めた費用を支払えば写し(謄本・抄本)の交付も請求できます(同条2項)。定款を電磁的記録(電子データ)で作成し、支店で閲覧等に応じられる一定の措置をとっている会社は、本店に備え置けば足ります(同条4項)。定款は作って終わりの書類ではなく、会社が続くかぎり管理しておく資料です。

本記事は株式会社の定款を前提にしています

合同会社などの持分会社や、一般社団法人・一般財団法人にも定款があります。ただし、記載する事項、公証人の認証の要否、変更の手続は法人の種類によって異なります。たとえば合同会社の定款は、公証人の認証を受ける必要がありません(株式会社との違いは「株式会社と合同会社の違いを比較」をご覧ください)。本記事では、特に断りのない限り、株式会社の定款について解説します。

定款はどんな場面で必要になる?

定款は、会社のルールを確かめる必要がある場面で、そのつど確認される資料です。設立のときだけ使う書類ではありません。

代表的な場面は次のとおりです。

  • 登記の手続:役員の任期、株式の譲渡制限、発行可能株式総数など、手続の前提となるルールを定款で確かめます
  • 株主総会の運営:定時株主総会の招集時期や議長などを定款で定めている会社が多くあります(株主総会の基本は「株主総会について|非公開会社を中心に基本を解説」)
  • 許認可の申請や金融機関での手続:申請先や金融機関によっては、定款の写しの提出を求められます。必要書類は手続ごとに異なります
  • 資金調達やM&Aスタートアップが出資を受ける場面や会社の売買では、出資者や買い手が、会社の法的な状態を確かめる基本資料として定款を確認します

どの場面でも問われるのは、「今、この会社にどのようなルールが適用されているか」です。登記簿だけでは分からないルールがあるため、定款の確認が必要になります。

定款には何が書いてある?3種類の記載事項

定款に書かれる事項は、①必ず書かなければならない「絶対的記載事項」、②定款に書かなければ効力が生じない「相対的記載事項」、③会社が任意に書く「任意的記載事項」の3つに分けて説明されます。

① 絶対的記載事項|必ず書く5つの事項

必ず書かなければならない事項は、会社法27条に定められています。次の条文です。

会社法27条(定款の記載又は記録事項)

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所

出典:会社法27条|e-Gov法令検索。「目的」は会社が行う事業、「商号」は会社の名前のことです。

このうち4号の出資額と5号の発起人は、設立時の事実を書く事項です。設立後に株主が入れ替わっても、定款に書かれた発起人が現在の株主に書き換わるわけではありません。設立時だけの事項を現在の定款からどう整理するかは「会社設立時の定款附則は削除してよい?」で解説しています。

また、会社が発行できる株式の上限である「発行可能株式総数」も、会社の成立の時までに定款で定めておかなければなりません(会社法37条1項)。

② 相対的記載事項|定款に書かなければ効力が生じない事項

相対的記載事項は、会社法の規定により、定款に定めなければその効力が生じない事項です。会社法29条の「この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項」がこれに当たります。

代表例が、株式を譲り受けるときに会社の承認を必要とする定め(株式の譲渡制限)や、取締役会・監査役を置く定めです。設立時の現物出資など、会社法28条が定める事項も、定款に書かなければ効力を生じません。なお、すべての株式に譲渡制限を定めている会社を、実務では「非公開会社」と呼びます。

③ 任意的記載事項|会社独自の運営ルール

法律に反しない範囲で、会社が任意に定める事項です(会社法29条の「その他の事項でこの法律の規定に違反しないもの」)。定時株主総会の招集時期、株主総会の議長、取締役の員数、事業年度などがよく定められています。

「任意」といっても、いったん定款に書けばその会社のルールになります。変えるときは、定款変更の手続が必要です。

一般的な定款の構成

実際の定款では、3種類の事項を区別して並べるのではなく、テーマごとの章に分けて書くのが一般的です。一般的な株式会社の定款を例にすると、次のような構成です。

章(一般的な例) 定められている内容の例
総則 商号、目的、本店の所在地、公告方法
株式 発行可能株式総数、株式の譲渡制限、株券を発行するかどうか
株主総会 招集の時期、議長、決議の方法
取締役・監査役など 取締役会・監査役を置くか、員数、任期
計算 事業年度
附則 設立に際して出資される財産の価額、発起人の氏名・住所など、設立時の事項

章の立て方や名称は会社ごとに異なります。同じ株式会社でも、規模・株主構成・機関設計によって、定款の内容は大きく変わります。

定款は設立後も変わる|定款変更の基本

会社が成立した後は、株主総会の決議によって定款を変更できます。根拠は次の条文です。

会社法466条

株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。

出典:会社法466条|e-Gov法令検索(第2編第6章「定款の変更」)。株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立します(会社法49条)。

定款変更の決議は、原則として株主総会の特別決議によります(会社法309条2項11号)。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で決める方法です(定足数は定款で3分の1まで下げることができ、賛成の割合は定款で引き上げることができます)。株式の譲渡制限を新たに設ける場合など、変更の内容によっては、さらに厳しい要件が定められています。

商号の変更、目的の追加、発行可能株式総数の変更、取締役会の設置・廃止など、会社が成長する中で、定款は何度も変わることがあります。設立から10年、20年たった会社では、原始定款と現在の定款の内容が大きく違っていることもあります。

なお、定款を変更したときに登記が必要かどうかは、変更した事項によって異なります。詳しくは「定款を変更すると登記が必要?必要・不要なケース」で解説しています。

「定款変更」と「ファイルの書き換え」は別のもの

定款変更の効力は、株主総会の決議など会社法が定める手続によって生じます。会社で保管しているWordやPDFのファイルを書き換えても、それだけで定款が変わるわけではありません。

反対に、株主総会で定款変更を決議したのに、保管しているファイルに反映されていないこともあります。そこで、有効に行われた変更をすべて反映した1つの文書を「現行定款」として整えておくことが大切です。

定款と登記簿(登記事項証明書)の違い

定款は「会社の基本ルール」を定めたもの、登記簿は「法律で登記すると決められた会社の情報」を公示するもので、役割が違います。内容が重なる事項もありますが、どちらか一方だけで会社の状態をすべて確かめることはできません。

株式会社の登記事項は、会社法911条3項に定められています。定款との関係を代表的な例で整理すると、次の表のとおりです。

区分 代表的な例
定款にも登記簿にも出てくる 商号、目的、発行可能株式総数、株式の譲渡制限、取締役会・監査役を置く旨、公告方法(※)
定款に定めても登記されない 役員の任期、事業年度、定時株主総会の招集時期、株主総会の議長
登記されるが、定款には通常書かない 現在の取締役・代表取締役の氏名、資本金の額、発行済株式の総数

※ 公告方法は、定款で定めていない会社でも登記されます。定款に定めがない場合は官報に掲載する方法が公告方法となり、その旨が登記されます(会社法911条3項29号)。

記載が完全に一致しなくても、誤りとは限らない

定款と登記では、書く範囲が違う事項があります。たとえば本店は、定款では「大阪市」のように市区町村までを定め、登記では番地まで記録されていることがあります。文言が一致しないからといって、直ちに問題があるわけではありません。

一方、商号、目的、発行可能株式総数、株式の譲渡制限、機関設計などについて、手元の定款と現在の登記が明らかに食い違う場合は、原因を確かめる必要があります。手元の定款が古いままで、その後の変更が反映されていないこともあるからです。

旧商法の時代から続く会社の定款で注意したいこと

会社法の施行前に設立された会社では、手元の定款の文章だけを見て、現在のルールを判断できないことがあります。

現在の会社法は、2006年(平成18年)5月1日に施行されました。それ以前に設立された株式会社は、旧商法のもとで定款を作成しています。会社法の施行にあわせて、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」)で、多くの経過措置が設けられました。

その中には、定款を変更していなくても、法律上その定款を一定の内容のものとして扱う規定があります。たとえば、会社法の施行の際に存在していた有限会社(旧有限会社法のもとで設立された会社)は、会社法の施行後は株式会社として存続しています。その定款は株式会社の定款とみなされ、定款に書かれた「社員」「持分」も、それぞれ「株主」「株式」とみなされます(整備法2条1項・2項)。

つまり、手元に残っている定款の文章と、法律上その会社に適用されている定款のルールが、見た目のうえでは一致しないことがあります。旧商法の時代から続く会社では、現在の会社法だけでなく、施行時の経過措置まで確認が必要になることがあります。

司法書士として実際に確認しているポイント

古い定款しか残っていない場合や、定款と登記が合わない場合でも、当事務所では現在の登記に合わせて定款のファイルを書き直すことから始めないようにしています。まず、なぜ今の状態になったのかを時系列でたどります。

確認の流れは、次のとおりです。

設立時の原始定款を確認する株主総会議事録などで、その後の定款変更を確認する法改正・経過措置による取扱いを確認する会社が保管している定款と、現在の登記を照らし合わせる有効な変更をすべて反映した現行定款に整理する

資料としては、原始定款、各時点の定款、株主総会議事録、現在と過去の登記記録(閉鎖された登記記録を含みます)などを突き合わせます。

ただし、定款変更のすべてが登記されるわけではありません。役員の任期や事業年度を変更しても、その内容自体は登記されないため、登記記録だけでは定款の変遷を復元できません。株主総会議事録や各時点の定款が、重要な手掛かりになります。

すべての資料がそろうとは限りませんが、確認できる範囲で「いつ、何が、どのような根拠で変わったのか」を整理し、その結果をご依頼者にお伝えしたうえで、現行定款の整備を進めます。目的は定款の見た目を新しくすることではなく、現在その会社に適用されているルールを、確認できる状態にすることです。

定款や議事録の整備は「議事録整備・法務デューデリジェンス対応」でご案内しています(費用は料金表をご覧ください)。

よくあるご質問

定款を変更したら、必ず登記が必要ですか?

必ずではありません。商号・目的・発行可能株式総数のように登記事項に当たる事項を変更したときは変更の登記が必要ですが、事業年度や役員の任期のように、定款に定めていても登記事項ではないものもあります。ただし、事業年度や任期の変更によって役員の任期が満了する時期が動き、役員の改選と登記の要否を確認する必要が生じることがあります。

定款は法務局で誰でも取得できますか?

登記事項証明書のように、誰でも法務局で取得できるものではありません。株主と債権者は、会社に対して、定款の閲覧や写しの交付を請求できます(会社法31条2項)。また、登記の申請書に添付された定款などの書類(登記簿の附属書類)は、利害関係を有する者に限り、法務局で閲覧を請求できます(商業登記法11条の2)。ただし、閲覧できるのは実際の登記申請に添付され、保存されている書類です。その会社の現在の定款が、法務局に常に保管されているわけではありません。

定款を変更したら、公証人の認証をもう一度受ける必要がありますか?

会社の成立後の定款変更であれば、必要ありません。公証人の認証を受けなければ効力を生じないとされているのは、会社の設立の際に発起人が作成する定款です(会社法30条1項)。会社の成立後に株主総会の決議などで定款を変更する場合、改めて公証人の認証を受ける手続はありません。

まとめ|定款は「今の会社のルール」を確かめる基本資料

定款とは、株式会社をどのようなルールで運営するかを定めた基本的な文書です。

  • 定款には、必ず書く「絶対的記載事項」、定款に書かなければ効力が生じない「相対的記載事項」、任意に書く「任意的記載事項」がある
  • 設立後も、原則として株主総会の決議で変更される。効力はファイルの書き換えではなく、決議などの手続で生じる
  • 定款と登記簿は役割が違い、定款にしか書かれていないルールがある
  • 旧商法の時代から続く会社では、経過措置があるため、手元の定款の文章だけでは現在の取扱いを判断できないことがある

定款は、会社をつくったときの記録であると同時に、「今、この会社はどのようなルールで動いているのか」を確かめるための基本資料です。手元の定款が古い、登記と合わないという場合は、書き換える前に、過去から現在までの変更の経緯を確認することをおすすめします。

定款の確認・整備からご相談いただけます

「手元の定款が最新か分からない」「定款と登記の内容が合わない」「旧商法の時代の定款しかない」といった段階からご相談いただけます。原始定款・議事録・登記記録をもとに、現在の定款の内容を整理します。

司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

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主な根拠法令

本記事について

2026年9月時点の会社法、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、商業登記法の規定をもとに、株式会社の定款の基本を解説したものです。個別の会社の定款の内容や有効性は、その会社の定款・株主総会議事録・登記記録を確認したうえで判断する必要があります。

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