電子定款とは?印紙税4万円が不要になる理由と認証手数料

結論
定款を電子データで作成して電子署名を付すと、紙の定款に必要な収入印紙4万円が不要になります。印紙税は「文書」に課される税金で、電子データは文書にあたらないためです。
ただし株式会社は、電子定款であっても公証人の認証は必要です。認証手数料は2024年12月1日の改正で区分が細かくなり、資本金の額と会社の作り方によって1万5,000円から5万円まで変わります。合同会社は認証自体が不要なので、電子定款にする効果は印紙税4万円の節約に絞られます。
電子定款とは|紙の定款と何が違うのか
電子定款とは、定款をPDFなどの電子データで作成し、そこに電子署名を付したものです。書かれている内容そのものは、紙の定款と変わりません。
会社法は、定款を電磁的記録で作成することを正面から認めています(会社法26条2項)。つまり電子定款は例外的な扱いではなく、紙と並ぶ正規の作成方法です。現在の会社設立の実務では、むしろ電子定款のほうが一般的になっています。
紙と電子で違うのは、次の3点だけです。
- 印紙税……紙は4万円、電子は0円
- 署名の方法……紙は発起人の実印による押印、電子は電子証明書による電子署名
- 保管の形……紙は原本を綴じて保管、電子はデータで保管
記載しなければならない事項(商号・目的・本店所在地・設立に際して出資される財産の価額・発起人の氏名住所など)は、どちらでも同じです。会社の目的をどこまで書くかといった中身の設計は、紙か電子かとは別の問題として検討する必要があります。
印紙税4万円が不要になるのはなぜか
印紙税は、紙の「文書」を作成したことに対して課される税金です。電子データは文書にあたらないため、そもそも課税の対象になりません。
印紙税法の別表第一・第6号文書には「定款」が挙げられており、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の設立のときに作成する定款の原本に4万円の印紙税がかかります。ここで課税されるのは、あくまで紙で作成した原本です。
電子定款はこの「文書」に該当しないため、印紙を貼る必要がありません。裏技や節税スキームではなく、課税対象の定義から素直に導かれる結論です。
印紙税がかからないのは電子データで作成した定款そのものです。電子定款を作ったあとで、控えとして紙に印刷したものに印紙税はかかりません(原本ではないため)。逆に、紙で作成した原本に印紙を貼り忘れると、過怠税の対象になります。
株式会社の定款認証手数料|2024年12月から1万5,000円の区分ができた
株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。これは電子定款でも同じで、印紙税が不要になっても認証手数料は別途かかります。
この認証手数料は、2024年12月1日施行の公証人手数料令の改正で区分が細かくなりました。改正前は資本金100万円未満が一律3万円でしたが、小規模な設立について半額の1万5,000円の区分が新設されています。
| 資本金の額等 | 認証手数料 |
|---|---|
| 100万円未満(下記3要件をすべて満たす場合) | 15,000円 |
| 100万円未満(上記以外) | 30,000円 |
| 100万円以上300万円未満 | 40,000円 |
| 300万円以上 | 50,000円 |
※公証人手数料令35条。2024年12月1日以降に認証を受けるものに適用されます。
1万5,000円の区分が使えるのは、次の3つをすべて満たす場合です。
- 発起人が全員自然人で、かつ3人以下であること
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款に記載されていること
- 取締役会を置かないこと
法人が発起人に入っている場合、発起人が4人以上いる場合、設立時から取締役会を置く場合は、資本金が100万円未満でも1万5,000円にはなりません。資本金の額だけで決まるわけではない点にご注意ください。
このほか、電子定款では電磁的記録の保存手数料300円がかかり、書面の謄本を請求する場合は1通700円+20円×枚数が加算されます。資本金をいくらにするかは、この認証手数料にも影響します。
合同会社は定款認証が不要|それでも電子定款にする意味
合同会社の定款には、公証人の認証が必要ありません。会社法が認証を求めているのは株式会社の定款だけだからです。
そのため合同会社の設立では、認証手数料そのものが発生しません。ただし紙の定款を作れば印紙税4万円は同じようにかかるため、電子定款にする意味は合同会社でもそのまま残ります。むしろ、認証手数料という他の費用がない分、4万円の重みは相対的に大きくなります。
電子署名を付した定款は、設立登記の添付書類としてそのまま使えます。株式会社と合同会社のどちらで設立するか迷っている場合は、株式会社と合同会社の違いもあわせてご覧ください。
電子定款をご自身で作成する場合に必要なもの
電子定款は自分でも作成できます。ただし、電子署名を付すための環境を一式そろえる必要があります。
- 電子証明書……マイナンバーカードの署名用電子証明書、または商業登記電子証明書
- ICカードリーダー……マイナンバーカードを読み取る機器(対応するスマートフォンで代用できる場合もあります)
- PDFを作成できる環境……定款をPDF形式にするためのソフト
- 電子署名に対応したソフト……PDFに電子署名を付すためのもの
ここでつまずきやすいのが、電子証明書の有効期限です。マイナンバーカードの署名用電子証明書は、発行から5回目の誕生日までという期限があり、期限が切れていると署名できません。設立の直前に気づくと、市区町村の窓口で更新する時間が必要になります。
環境をそろえる費用(数千円〜数万円)と手間を考えると、1回きりの設立のためにご自身で用意するのが必ずしも得とは限りません。当事務所では電子定款に標準対応しており、料金表の設立費用に電子定款の作成が含まれています。
もうひとつ注意が必要なのは、電子署名を付したあとに内容を直すと、署名をやり直す必要があることです。紙のように一部を差し替えるという対応ができないため、署名の前に内容を固めきることが重要になります。
定款認証の流れ|ウェブ会議でも受けられる
株式会社の定款認証は、公証役場に出向く方法と、ウェブ会議(テレビ電話)による方法のどちらでも受けられます。
- 定款の内容を確定する……商号・目的・本店・資本金・機関設計・事業年度などを決めます。
- 公証役場に事前確認を依頼する……作成した定款案を送り、内容のチェックを受けます。ここで修正が入ることが多いため、電子署名は確認が終わってから行います。
- 発起人が電子署名を付す……確定した定款のPDFに、発起人(または代理人である司法書士)が電子署名します。
- オンラインで送信する……署名済みの定款データを公証役場へ送信します。
- 認証を受ける……ウェブ会議または来所で、公証人による認証を受けます。
ウェブ会議による認証は全国の公証役場で利用でき、発起人が遠方にいる場合や、複数の発起人が別々の場所にいる場合に有効です。認証済みデータの受け取りにUSBメモリなどを持参する必要もありません。
この一連の流れは、司法書士が代理人として行うこともできます。当事務所にご依頼いただく場合、公証役場との事前確認から認証、その後の払込証明書の作成、設立登記の申請までを一続きで進めます。会社の設立日を特定の日に合わせたい場合は、逆算してスケジュールを組みます。
紙と電子で費用はいくら変わるか
資本金300万円・発起人1名・取締役会を置かない株式会社を例にすると、紙と電子の差は印紙税4万円です。
| 項目 | 紙の定款 | 電子定款 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 40,000円 | 0円 |
| 定款認証手数料 | 50,000円 | 50,000円 |
| 電磁的記録の保存 | — | 300円 |
| 謄本1通(定款10枚+奥書1枚の場合) | 2,750円 | 920円 |
| 定款関係の小計 | 約92,750円 | 約51,220円 |
※資本金300万円以上の区分を前提とした一例です。謄本の用紙代は、紙の定款が1枚250円、電子定款が1通700円+1枚20円で、定款の枚数によって変わります。資本金の額と会社の作り方によって認証手数料も変わります。登録免許税(株式会社は資本金の0.7%・最低15万円)は別途必要です。
差額は約4万1,500円です。印紙税の4万円に、謄本の用紙代の差(紙は1枚250円、電子は1枚20円)が上乗せされます。設立の総額については、会社設立のページに司法書士報酬と実費を分けて記載しています。そちらでは資本金100万円未満で1万5,000円の区分に当てはまる場合を前提にしているため、定款認証関係費用を約17,000円と記載しています。前提が違うと金額も変わりますので、あわせてご確認ください。
司法書士が電子定款の作成時に実際に確認しているポイント
電子定款の作業自体は定型的です。実務で時間をかけているのは、署名する前に定款の中身が後々困らない形になっているかを確かめる部分です。
1万5,000円の区分に当てはまるかを先に確認する
資本金を100万円未満で考えているお客様には、発起人の人数・法人が入っていないか・取締役会を置く予定がないかを設立の設計段階で確認します。あとから機関設計を変えると、認証手数料の区分が変わってしまうためです。
目的の書きぶりが許認可と法人口座に耐えるか
事業目的は、登記された後で変更するには株主総会の決議と変更登記が必要になります。許認可を予定している場合は所管官庁が求める文言に合っているか、金融機関の法人口座開設で不自然に見えないかを確認します。
発起人の住所・氏名が印鑑証明書と一致しているか
定款に記載する発起人の住所と氏名は、印鑑証明書の記載と一致している必要があります。番地の表記(「1-2-3」と「一丁目2番3号」)の違いで補正になることがあります。
電子署名の前に公証役場の確認を通しているか
署名後の修正は再署名になるため、事前確認が終わるまで署名しません。当たり前のようですが、ご自身で手続をされた方が最もつまずきやすいのがここです。
設立後すぐに必要になる書類まで見通しているか
定款の謄本は、法人口座の開設や許認可の申請でも使います。何通必要になりそうかを設立前に伺い、認証時にまとめて取得しておきます。
創業融資の審査で有利になるか、税務上どちらが有利かといった点については、当事務所では判断していません。融資は金融機関・認定支援機関へ、税務は税理士へご相談ください。なお、電子定款か紙の定款かによって創業融資の審査結果が変わることは通常ありません。定款の事業目的と創業計画書の内容に食い違いがないようにしておくことのほうが重要です。
よくあるご質問
- 電子定款にすると、会社の信用度や登記の扱いに違いは出ますか。
違いはありません。会社法が電磁的記録による定款を正面から認めているため、電子定款で設立した会社と紙の定款で設立した会社とで、登記事項も法的な効力もまったく同じです。登記事項証明書を見ても、どちらで設立したかは分かりません。
- 電子定款でも、紙の定款は手元に残りますか。
公証人から交付される謄本(同一情報の提供)を書面で請求すれば、紙の形で受け取れます。法人口座の開設や許認可の申請で提出を求められるため、通常は必要な通数を認証時にまとめて取得します。
- 資本金を100万円未満にすれば、認証手数料は必ず1万5,000円になりますか。
なりません。発起人が全員自然人で3人以下であること、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨が定款に記載されていること、取締役会を置かないことの3つをすべて満たす必要があります。いずれかを欠くと3万円です。
- 合同会社でも電子定款にしたほうがよいですか。
費用面では電子定款のほうが有利です。合同会社は公証人の認証が不要なので認証手数料はかかりませんが、紙で作成すれば印紙税4万円は同じようにかかります。電子定款にすればこの4万円が不要になります。
- 定款の内容は、設立後に変更できますか。
変更できます。株主総会の特別決議で定款を変更でき、変更後の定款について公証人の認証を受け直す必要もありません。ただし商号・目的・本店所在地など登記事項にあたるものを変更した場合は、別途、変更登記の申請と登録免許税が必要になります。
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本記事は2026年8月時点の法令および公証人手数料令にもとづいて作成しています。手数料の区分や取扱いは改正されることがありますので、実際の手続にあたっては公証役場または当事務所にご確認ください。創業融資・税務に関する事項は、それぞれ金融機関・税理士へご相談ください。
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