会社の設立日はいつにする?土日・祝日も選べる新制度を司法書士が解説

会社の設立日は、会社にとっての「誕生日」です。創業者の誕生日、事業を始めた記念日、大安や一粒万倍日など、思い入れのある日を設立日にしたいと考える方は少なくありません。
これまでは、原則として法務局が開いている平日しか設立日にできませんでした。しかし2026年2月2日から制度が変わり、一定の要件を満たせば、土曜日・日曜日・祝日などを会社の設立日として指定できるようになりました。
本記事では、会社の設立日が法律上どのように決まるのか、土日・祝日を設立日にする方法と要件、設立日を決める際の実務上の注意点を、根拠条文とあわせて解説します。
会社の設立日は法律上いつ決まる?
株式会社は、定款を作成した日や資本金を払い込んだ日に成立するわけではありません。会社法第49条は、株式会社の成立について次のように定めています。
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。(会社法第49条)
合同会社を含む持分会社についても、会社法第579条に同様の規定があります。
持分会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。(会社法第579条)
つまり株式会社や合同会社は、本店所在地を管轄する法務局において設立の登記をすることにより、初めて法人として成立します。定款を作成した日、公証役場で定款認証を受けた日、資本金を払い込んだ日が、そのまま設立日になるわけではありません。
そして登記簿に記載される「会社成立の年月日」が、会社の正式な設立日となります。なお、設立日と、法務局の審査が完了する日は異なります。審査の完了までには一定の日数がかかりますが、原則として登記が完了した日ではなく、設立登記を申請した日が設立日となります。
2026年2月2日から土日・祝日も設立日に指定できます
2026年2月2日に施行された商業登記規則等の改正により、一定の要件を満たす場合には、行政機関の休日を会社の「設立の登記の日」として指定できるようになりました。この制度の直接の根拠となるのが商業登記規則第35条の4です。
同条では、設立登記を申請する者は、申請日の翌日が行政機関の休日である場合に、その休日を設立の登記の日とするよう求めることができると定められています。土日・祝日が連続する場合には、その連続する休日のうちいずれか1日を指定することも可能です。
例えば、金曜日の翌日から土曜日・日曜日・月曜日の祝日と休日が続く場合には、所定の要件を満たすことで、土曜日・日曜日・月曜日のいずれかを設立日に指定できます。
これにより、創業者の誕生日が日曜日に当たる場合や、会社にとって大切な記念日が祝日に当たる場合でも、その日を設立日として登記簿に記載できるようになりました。
「休日に登記申請できる制度」ではありません
この制度について最も誤解されやすいのが、土日・祝日に法務局へ登記申請できるようになった制度ではないという点です。
正確には、休日の直前の開庁日に設立登記を申請し、申請書において特定の休日を「設立の登記の日」とするよう求める制度です。日曜日を設立日にしたい場合には、通常その直前の金曜日に設立登記を申請します。月曜日の祝日を設立日にしたい場合も、通常は直前の金曜日に申請することになります。
オンライン申請や郵送申請の場合も、単に直前の開庁日に発送・送信すればよいわけではありません。指定する休日の直前の開庁日の開庁時間内に申請が到達し、その日付で受け付けられる必要があります。
設立日に指定できる「行政機関の休日」とは?
商業登記規則第35条の4にいう「行政機関の休日」は、行政機関の休日に関する法律第1条第1項に定められています。具体的には次の日が対象です。
- 土曜日および日曜日
- 国民の祝日に関する法律に定める休日
- 12月29日から翌年1月3日までの日
そのため制度上は、土日・祝日だけでなく、1月1日などの年末年始を設立日に指定することも可能です。ただし、希望する休日の直前の開庁日に登記申請を行い、必要な記載を正しく行うことが前提となります。
休日を設立日にするための5つの要件
土日・祝日などを会社の設立日に指定するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 設立登記によって成立する会社または法人であること
- 指定する日が行政機関の休日であること
- 指定する休日の直前の開庁日に設立登記を申請すること
- 申請書に特例の適用を求める旨を記載すること
- 申請書の登記すべき事項に、希望する会社成立年月日を記載すること
注意したいのは、定款や設立時取締役の決定書などに希望日を記載するだけでは、この特例は適用されないという点です。書面申請の場合には申請書の余白に、オンライン申請の場合には「その他の申請書記載事項」欄に、登記の年月日を指定した日付とするよう求める旨を記載します。さらに「登記すべき事項」欄の「会社成立の年月日」に、希望する休日の日付を記載する必要があります。
会社の設立日を決める5つのポイント
設立日は自由に決められますが、記念日や縁起だけでなく、設立後の予定も考慮して決めることが大切です。
1. 覚えやすい日・記念日から選ぶ
創業者の誕生日、事業を始めた日、サービスを公開した日などを設立日にする方法があります。会社の沿革を説明する際にも分かりやすく、毎年の創立記念日としても覚えやすいという利点があります。
2. 大安などの縁起の良い日から選ぶ
会社設立のご依頼では、大安、一粒万倍日、天赦日などを希望される方もいらっしゃいます。また「8」は漢字で「八」と書くと末広がりになることから、8日・18日・28日を選ばれることもあります。
縁起の良い日と土日・祝日が重なっていても、新しい制度を利用すれば、その日を設立日にできる可能性があります。
3. 事業年度との関係を確認する
設立日を決める際には、定款で定める事業年度との関係も確認しましょう。設立日によって第1期の事業年度の長さが変わります。決算日の直前に会社を設立すると第1期が非常に短くなり、設立後すぐに決算や税務申告の準備が必要になることがあります。
税務上どの日が有利かは、売上見込み、資本金、インボイス登録の有無などによっても異なるため、必要に応じて税理士へのご確認をおすすめします。
4. 契約・融資・許認可の予定を確認する
取引先との契約、金融機関での法人口座開設、創業融資、補助金申請、許認可申請などで、登記事項証明書の提出を求められることがあります。
設立日を迎えても、直ちに登記事項証明書を取得できるとは限りません。「この日までに登記簿が必要」という予定がある場合には、設立日だけでなく、登記が完了するまでの日数も考慮してスケジュールを組む必要があります。
5. 設立準備が間に合うかを確認する
株式会社を設立する場合には、一般的に次のような準備が必要です。
- 商号、本店所在地、事業目的などの決定
- 定款の作成
- 公証役場での定款認証
- 資本金の払込み
- 役員や本店所在地に関する書類の作成
- 設立登記申請書類の作成
希望する設立日だけを先に決めても、必要書類の準備が間に合わなければ、その日に設立することはできません。特に土日・祝日を設立日にする場合には、直前の開庁日までに設立手続を完了させておく必要があります。
土日・祝日を設立日にする場合の注意点
申請書類は直前の開庁日までに完成させる
休日を設立日に指定する場合でも、設立登記の添付書類は、登記を申請する日までに作成されていなければなりません。休日を指定したからといって、申請後に不足書類を準備できるわけではありません。
記載に不備があると休日指定が無効になることがある
休日を設立日にするための記載に不備があり、登記官が定めた期間内に補正できない場合には、休日を設立日とする特例の求めがなかったものとして扱われます。その結果、希望していた休日が設立日にならない可能性があります。記念日など設立日を確実に指定したい場合には、申請書の記載や添付書類を事前に慎重に確認する必要があります。
定款認証と登記を同時にオンライン申請する場合
株式会社の電子定款認証と設立登記をオンラインで同時に申請する方法でも、休日を設立日にする特例を利用できます。ただし、申請した日のうちに定款認証を完了させる必要があります。事前に公証役場と調整し、申請日当日に公証人とのテレビ電話による面談を行えるよう予約しておく必要があります。
設立希望日のどのくらい前から準備すればよい?
設立する会社の内容がシンプルな場合でも、設立希望日の1か月前を目安に準備を始めることをおすすめします。事業目的の内容確認、定款案の調整、公証役場との日程調整、資本金の払込みなどに時間がかかることがあるためです。
種類株式、ストックオプション、投資契約、創業株主間契約などを予定しているスタートアップの場合には、定款や資本政策の検討にさらに時間を要することがあります。設立日を優先する場合には、早い段階で司法書士へ相談し、設立日から逆算して手続を進めることが重要です。
まとめ
2026年2月2日から、一定の要件を満たすことにより、土曜日・日曜日・祝日などを会社の設立日にできるようになりました。ただし休日当日に登記申請を行う制度ではありません。指定する休日の直前の開庁日に登記申請を行い、申請書に特例の適用を求める旨と希望する設立日を正しく記載する必要があります。
設立日を決める際には、次の点を総合的に確認しましょう。
- 創業者にとって思い入れのある日か
- 大安などの縁起の良い日か
- 第1期の事業年度が極端に短くならないか
- 契約、融資、許認可等の予定に間に合うか
- 直前の開庁日までに必要書類を準備できるか
会社の設立日は、一度登記されると原則として後から変更することはできません。設立日にこだわりがある場合には、余裕をもって準備を始めることをおすすめします。
根拠法令・公的資料
本記事は、次の法令および法務省の公表資料をもとに作成しています。
- 会社法第49条(株式会社の成立)
- 会社法第579条(持分会社の成立)
- 商業登記規則第35条の4(設立の登記の申請の特例)
- 行政機関の休日に関する法律第1条第1項(行政機関の休日)
- 法務省「休日を会社等の設立の日とすることが可能になりました」
※本記事の法令・制度に関する記載は、本ページの最終更新日現在の情報に基づいています。
会社設立をご検討の方へ
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種類株式、ストックオプション、J-KISS、投資契約を予定している場合には、設立時の定款や株式設計が、その後の資金調達に大きく影響することがあります。単に会社を設立するだけでなく、設立後の資金調達や事業成長を見据えた手続をサポートいたします。
設立希望日が決まっている場合には、できるだけ早めにご相談ください。大阪・梅田の司法書士法人LSOが、設立日から逆算したスケジュールをご提案します。
執筆・監修:司法書士法人LSO 代表社員・司法書士 金光 康太
本記事は、会社法、商業登記規則および法務省の公表資料を確認したうえで、会社設立登記の実務に基づいて執筆しています。


