会社記録DDとは?司法書士法人LSOが確認する登記・定款・株主名簿・議事録

会社記録DDとは 司法書士法人LSOが確認する登記・定款・株主名簿・議事録
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結論

司法書士法人LSOでは、定款・株主名簿・登記記録と、それらを裏付ける議事録などの書類を時系列で照合し、現在の会社の状態を過去の記録から説明できるかを確認する調査を「会社記録DD」と呼んでいます。

設立、株式譲渡、増資、株主総会、役員変更、定款変更など、会社に生じた出来事を順に整理し、①必要な決議・手続が行われているか、②その結果が定款・株主名簿・登記記録に正しく反映されているかを確認します。結果は「会社記録DD報告書」にまとめ、確認できた事項、資料だけでは確認できない事項、記録上の不備と、今とれる会社手続・登記を整理してご報告します。

※「会社記録DD」は法令上の用語ではなく、司法書士全般が同じ調査を行っているという意味でもありません。当事務所の会社記録DDは、契約・労務・知的財産・許認可・紛争等を含む法務DD全体に代わるものではありません。株式の発行・譲渡の手続に必要な範囲を超えて契約の内容を評価することや、当事者の間で争いのある事項についての判断も含みません。

1.会社記録DDとは|何を、どこまで調査するのか

当事務所の会社記録DDでは、一般的な法務DD(法律面の調査)で確認される事項のうち、株主・株式、会社の意思決定、役員、定款・登記などの会社記録に対象を絞って調査します。

書類を1つずつ見るのではなく、会社に起きた出来事を時系列に並べて、記録どうしが食い違っていないかを確かめます。ここが、単なる書類のチェックとの違いです。

調査の対象|4つの会社記録

確認するのは、次の4つの会社記録です。対象にしないものとあわせて示します。

確認する会社記録

1定款原始定款と現在の定款、その間の変更の履歴
2株主名簿・新株予約権原簿株主・株式と新株予約権の現在の状態を示す記録
3登記記録履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書などで確認できる登記の履歴
4裏付けとなる書類株主総会・取締役会の議事録、取締役の決定書、書面決議の同意書、株式の引受け・払込み・譲渡に関する書類のほか、必要に応じて法務局に保存されている登記申請書・添付書類など

根拠:会社法31条(定款)・121条(株主名簿)・249条(新株予約権原簿)・318条・371条(議事録)など

対象外

  • 会計帳簿・計算書類(財務DDの対象)
  • 事業上の契約
  • 労務・知的財産・許認可・紛争・個人情報など
  • 税務・株価算定
  • 株主の地位や決議の効力について、当事者の間で争いがある場合の判断・交渉

必要に応じて、弁護士・税理士・公認会計士等にご相談ください。

このうち、株主の地位や決議の効力について争いがある場合や、争いになりそうな場合は、どの点が、なぜ記録だけでは判断できないのかを整理したうえで、弁護士へのご相談をおすすめします。

4つ目を議事録に限らないのは、たとえば取締役会を置かない会社の増資で、株主総会から委任を受けた取締役が発行の条件を決めることがあるからです(会社法200条1項)。この場合、取締役の決定書まで見ないと手続がつながりません。

「会社記録DD」という名称について

「会社記録DD」は、当事務所がこの調査を説明するために用いている名称です。海外のDDの資料には、定款に当たる基本文書や取締役会・株主総会の議事録、株式の台帳などを「Corporate Records」という項目にまとめて確認を求める例があります(IPOのDD資料請求リストのサンプル(Ropes & Gray)など)。当事務所では、こうした表現も参考に、日本の株式会社について、定款・株主名簿・登記記録と、それらを裏付ける議事録などの書類を照合する調査を「会社記録DD」と呼んでいます。

会社が備える記録の種類は国ごとの法制度によって異なるため、海外の「Corporate Records」と、上の4つの会社記録がそのまま対応するわけではありません。DD全体の意味や種類は「DD(デューデリジェンス)とは?」で解説しています。

2.会社記録DDが活用される事例

会社記録DDは、主に出資を受けるときと、M&Aのときに活用されています。

それぞれの事例は次のとおりです。

出資を受けるとき

出資の前に、投資家から定款・株主名簿・議事録などの会社記録の提出を求められることがあります。当事務所では、この提出にあわせて会社記録DDを行うケースが多くなっています。

M&Aのとき

売り手が買い手のDDに備えて記録を整えるときや、買い手が買収先の株主構成や過去の手続を確かめるときに活用されます。

どこまで確認するかは、ご依頼者が案件に応じて決めます。

3.調査の方法|出来事を時系列でつなぎ、相互に照合

調査の対象とする期間の出来事を記録で復元し、出来事ごとに4つの記録を照合します。

調査は、次の流れで進めます。

1資料を集める調査の対象とする期間について、4つの記録を集めます。設立から現在までを対象とする場合は、設立時の資料から確認します。
2出来事を時系列に並べる設立、定時株主総会、株式譲渡、増資、新株予約権の発行、役員変更、定款変更などに「No.000、001、002…」と番号を付け、日付順に並べます。
3出来事ごとに照合し、一覧にまとめる必要な決議や手続が行われているか、その結果が定款・株主名簿・登記記録に反映されているかを確かめ、確認結果を「会社記録タイムライン」(第5章)にまとめます。

架空の会社(取締役会・会計監査人を置かない非公開会社)で出来事を並べると、たとえば次のようになります。

出来事を時系列に並べた例(架空)

No.000設立会社設立発行済株式 1,000株
No.0011期定時株主総会決算承認
No.0022期株式譲渡株主Cから株主Dへ100株
No.0032期定時株主総会決算承認・取締役の選任
No.0043期第三者割当増資200株を発行 → 1,200株
No.0054期新株予約権の発行株式数は変わらない
現在現在の定款・株主名簿・登記記録ここまでの記録と照合

資料が足りない場合|法務局の附属書類まで調べる

会社に資料が残っていない場合は、必要に応じて、当時の登記申請書や添付書類の閲覧を管轄法務局に請求します。閲覧できるのは利害関係を有する者に限られ、手数料がかかります(商業登記法11条の2)。申請書その他の附属書類の保存期間は、原則として受付の日から10年間です(商業登記規則34条4項)。それでも裏付けが取れない点は、「要確認」として報告書に記載します。

確認できない事実を推測で補って、過去の日付の議事録を作成することはありません。

4.確認する4つの観点|司法書士として実際に確認しているポイント

出来事ごとの照合では、①株主・株式、②株主総会・取締役会の決議、③役員、④定款・登記の4つの観点から確認します。確かめる観点は、当事務所が日常的に扱っている増資・種類株式・新株予約権・株主総会・組織再編などの手続で、書類を作るときと共通しています。

①株主・株式|現在の株主と持株数を確認する

株式の譲渡では、次の3点を記録で確かめます。

1譲渡の承認

譲渡制限株式の譲渡では、会社の承認が必要な場合に、その承認が行われているかを確認します。承認するかどうかを決める機関は、原則として株主総会(取締役会を置く会社では取締役会)ですが、定款で別に定めることもできます。定款で承認機関を確かめたうえで、その機関の議事録を確認します。

根拠:会社法136条・137条・139条1項

2株券の交付

株券発行会社では、株券を渡さないと譲渡の効力が生じません(自己株式の処分を除きます)。株券を発行した覚えがないという会社でも、定款と登記で株券発行会社に当たらないかを確かめます。

根拠:会社法128条1項

3株主名簿への記載

取得した人の氏名(名称)と住所を株主名簿に記載しないと、譲渡を受けたことを会社や第三者に主張できません(株券発行会社では会社に対して)。

根拠:会社法130条1項・2項

増資では、募集事項の決定、申込みと割当て(または総数引受契約。会社法205条)、払込み、株主名簿への記載、変更登記を順にたどります。こうした確認を積み重ねて、現在の株主と持株数を記録から説明できる状態にします。新株予約権や種類株式がある場合は、原簿や定款の定めとのつながりも確かめます。記録上の株主構成と持株数の確認は、決議の要件を確かめる前提でもあります。商業登記でも株主の氏名や議決権の数を記載した書面(株主リスト)の添付が求められる場合があります(商業登記規則61条2項・3項)。

②株主総会・取締役会|招集手続・決議手続と決議要件を確認する

株主総会・取締役会については、必要な招集手続・決議手続が行われ、決議要件を満たしているかを、議事録などの記録の上で確認します。要件は、決議の当時の法令と定款によります。

招集

招集を誰が決め、誰が招集したか(取締役会を置く会社では、取締役会の決議があるか)、通知をいつ・どの方法で発したか。株主全員の同意で招集の手続を省いた場合は、その同意があるか根拠:会社法296条3項・298条4項・299条1項・300条

決議の要件

出席した議決権の数と賛成の数が、決議の種類(普通決議・特別決議など)と定款の定めに照らして足りているか。取締役会では、特別の利害関係がある取締役が決議に加わっていないか根拠:会社法309条・369条

決議の省略

株主総会の決議を書面などで省略した場合は、議決権を持つ株主全員の同意がそろっているか。取締役会で省略した場合は、それを認める定款の定めと、議決に加わることができる取締役全員の同意があるか(監査役がいる会社では、監査役が異議を述べていないかも)根拠:会社法319条1項・370条

決議できる事項

取締役会を置く会社の株主総会が、会社法と定款で定めた事項の範囲で決議しているか根拠:会社法295条2項

③役員|選任・任期・重任と登記の整合性を確認する

役員ごとに、選任の決議と就任の承諾、任期の満了と改選(重任)、辞任などによる退任の記録をたどり、登記記録と照合します。任期は会社法と定款の定めによって決まるため、選任した時点の定款に加え、その後の定款変更で任期が満了していないか(譲渡制限の定めの廃止など)も確かめます。任期が満了しているのに改選の記録や登記がない場合や、議事録上の役員と登記上の役員が一致しない場合は、報告書に記載します。

根拠:会社法329条1項・332条(7項)・336条(4項)・915条1項

④定款・登記|変更の履歴が現在の記録につながっているかを確認する

定款の変更の決議を時系列でたどり、その内容が現在の定款に反映されているかを確認します。商号・目的・発行可能株式総数など、登記が必要な定款変更については、変更登記がされているかも照合します。あわせて、登記上の発行済株式の総数と、株主名簿の株式数の合計が一致しているかも確かめます。

根拠:会社法466条・911条3項・915条1項

5.会社記録DD報告書|会社記録タイムラインと3段階の確認結果

調査の結果は「会社記録DD報告書」にまとめてご提出します。中心になるのは、当事務所が「会社記録タイムライン」と呼んでいる一覧表です。

調査の対象とする期間に会社に生じた出来事を時系列に並べ、それぞれについて、株主と持株数、登記上の株式数、確認結果とメモを一覧にします。単に会社の沿革を並べるのではなく、いつ何があり、それが現在の会社記録にどうつながっているかを確認できるようにしたものです。第3章の例で作ると、次のようになります。

会社記録タイムラインのイメージ|株式会社サンプル(架空)

表は横にスクロールできます

No. 000 001 002 003 004 005
時期 設立 1期 2期 2期 3期 4期
主な出来事 設立 定時総会 株式譲渡 定時総会(取締役選任) 第三者割当増資 新株予約権の発行
株主と持株数 (単位:株)
株主A代表取締役 600 600 600 600 600 600
株式会社B 300 300 300 300 300 300
株主C 100 100 ― ― ― ―
株主D ― ― 100 100 100 100
投資家E ― ― ― ― 200 200
合計 1,000 1,000 1,000 1,000 1,200 1,200
登記上の発行済株式の総数 1,000 1,000 1,000 1,000 1,200 1,200
確認結果 確認済 確認済 要確認 不備あり 確認済 要確認
メモ ― 招集通知あり 譲渡承認の議事録が見当たらない 招集通知の発出が法定の期間後/欠席株主あり(決議の日から3か月の出訴期間は経過) 変更登記済 割当契約書が未提出

※説明用に作成した架空の例です。実際の会社記録タイムラインでは、各株主総会の出席株主と議決権の数、役員の顔ぶれなども記録します。

確認の結果は、次の3段階で示します。

確認済

記録上、要件を満たすと確認できたもの
不備あり

提出された記録から、法令・定款上必要な要件を満たしていないことが確認できたもの

どの要件を欠くかを特定し、今とれる手続(改めて決議し直す、登記を是正するなど)を整理します。株主総会の決議取消しの訴えは決議の日から3か月以内に提起しなければならないため、その期間を過ぎているかも記載します。なお、招集手続などの瑕疵の程度によっては、決議取消しの問題にとどまらず、決議の不存在が問題となる場合もあります。根拠:会社法830条1項・831条1項

要確認

記録だけでは判断できないもの

必要な資料が見当たらないものや、招集通知をいつ・どの方法で発したかを確認できる資料がない場合、委任状の作成の経緯など、書面だけでは確認できない事実があるものです。判断を保留し、その理由を記載します。書面だけで結論は出しません。

タイムラインの後には、確認結果のまとめと、残っている確認事項を記載します。上の例では、次のようになります。

発行済株式1,200株のうち、株主A・株式会社B・投資家Eの1,100株は、記録から説明できる状態です。株主Dの100株は、No.002の譲渡承認の記録が確認できるまで「要確認」です。この結果に加え、株主名簿の記載や基準日の定めの有無などによっては、No.003の株主総会で誰を株主として扱うべきだったか(株主CかDか)も確認が必要になります。No.005は、割当契約書の提出を待っています。No.003の招集手続の不備は、決議取消しの訴えの出訴期間が経過していることもあわせて記載しています。

実際の調査では、株主名簿と登記の株式数の食い違い、取締役の任期が満了しているのに、改選の記録や重任の登記がない、定款変更が手元の定款に反映されていない、といった点が見つかることがあります。

報告書は、調べた会社記録についての確認結果です。法務DD全体の評価や、会社の価値・リスクについての意見ではなく、資料に表れない事情までは含みません。

報告書のあと|是正の手続と記録の活用

「不備あり」とした事項について、改めて行う決議の書類の作成や、必要な登記の申請は、ご依頼に応じて当事務所で行います。

整理した株主構成は、株主名簿を整える資料や、今後の増資を計画する資本政策表の出発点になります。法務局に申し出る実質的支配者リスト(BOリスト)を作るときの基礎資料にもなります(株式会社Bのような法人株主の背後にいる人は、別に確認が必要です)。

よくあるご質問

依頼するときは、どんな資料を用意すればよいですか。

第1章の4つの記録のうち、会社で保管しているものをご用意ください。そろっていなくても構いません。登記事項証明書などは当事務所でも取得できます。

株主構成の確認だけなど、調査の範囲を絞って依頼できますか。

はい。確認する期間や対象は、案件の目的に応じてご相談のうえで決めます。たとえば、出資を受ける前に株主構成と増資の履歴だけを確かめる、といった進め方もできます。

設立から年数がたっている会社や、株主が多い会社でも依頼できますか。

はい。出来事の数や資料の残り具合によって必要な期間が変わるため、まず保管されている資料と登記事項証明書を拝見して、進め方をご提案します。

まとめ|会社の「今」を、過去の記録から説明できるか

  • 当事務所の会社記録DDは、4つの会社記録(定款、株主名簿・新株予約権原簿、登記記録、裏付けとなる書類)を時系列でつないで照合する調査です
  • 株主・株式、株主総会・取締役会、役員、定款・登記の4つの観点から、記録上の株主構成・持株数や、招集手続・決議手続・決議要件などを確認します
  • 結果は、3段階の確認結果を付けた「会社記録タイムライン」を中心とする「会社記録DD報告書」にまとめ、今とれる手続・登記につなげます

「今どうなっているか」だけでなく、「なぜ今そうなっているか」を説明できる状態にする。これが、当事務所の会社記録DDで重視している点です。

会社記録の確認・DDへの備えについてご相談ください

出資やM&Aの話が正式に始まる前でも、今保管されている資料から確認を始めることができます。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

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本記事について

本記事は、2026年9月時点の法令・公表資料および司法書士法人LSOの実務上の確認方法をもとに作成しています。「会社記録DD」は法令上の用語や、司法書士業界で一般に確立したサービス名称ではありません。海外の資料は、名称の参考として紹介しているもので、各国の制度の説明を目的とするものではありません。契約、知的財産、労務、許認可、紛争等については弁護士その他の専門家、税務・会計・株価算定については税理士・公認会計士等へご相談ください。

根拠法令

会社法31条(定款の備置き)/121条(株主名簿)/128条/130条/136条/137条/139条/200条/205条/249条(新株予約権原簿)/295条/296条/298条/299条/300条/309条/318条(株主総会の議事録)/319条/329条/332条/336条/369条/370条/371条(取締役会の議事録)/466条/830条/831条/911条/915条
商業登記法11条の2/商業登記規則34条4項/61条

主な参考資料

Ropes & Gray|Sample Due Diligence Request List(2025)

来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています

対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。

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