実質的支配者リスト(BOリスト)とは?取得方法・必要書類を見本で解説|銀行口座開設での扱いと公証役場の証明書との違い

結論
実質的支配者リスト(BOリスト)は、株式会社が作成した「会社を実質的に支配する人」の一覧を、法務局の登記官が株主名簿などと照らし合わせて保管し、その写しを交付する制度です。申出は会社の任意で、本店所在地を管轄する法務局に、会社が作成した一覧と株主名簿の写しなどを提出して行います。郵送でも申し出ることができ、法務局の手数料はかかりません。
銀行は、法人口座の開設時などに実質的支配者を確認します。法令は、確認の方法として、会社の代表者などから申告を受けること(一定の取引では株主名簿などの書類も確認すること)を定めており、BOリストの提出までは義務付けていません。BOリストの写しを提出書類として求めるか、どのような条件で受け付けるかは、金融機関によって異なります。
なお、実質的支配者の情報の届出を法人等に義務付ける法律案が、令和8年(2026年)10月23日に国会に提出されました。ただし、令和8年(2026年)11月1日時点では成立しておらず、現在のBOリストは会社の任意で利用する制度のままです。
1.実質的支配者リスト(BOリスト)とは
実質的支配者リスト(BOリスト)は、令和4年(2022年)1月31日に始まった制度です(法務省「実質的支配者リスト制度の創設」)。株式会社が作成した「実質的支配者情報一覧」を、本店所在地を管轄する法務局の登記官が添付書面と照合して保管し、その写しを交付します。
根拠は、法務省の告示である「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則」(令和3年法務省告示第187号。以下「規則」といいます)で、2条に次のとおり定められています。
規則2条(柱書・抜粋)
第二条 株式会社は、その本店の所在地を管轄する登記所(…以下「商業登記所」という。)の登記官に対し、当該株式会社に係る次に掲げる情報を記載した書面(以下「実質的支配者情報一覧」という。)の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をすることができる。
出典:法務省|商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則(令和7年法務省告示第66号による改正後の溶け込み版・PDF)。その後、令和7年法務省告示第119号(PDF)で13条2項が改正されていますが、2条の文言は変わっていません。
条文が「申出をすることができる」としているとおり、申出は会社の任意です。登記のような申請義務はなく、会社が申し出たときに限って一覧が保管され、写しが交付されます。申出ができるのは株式会社(特例有限会社を含みます)のうち、第3章で説明する実質的支配者がいる会社で、合同会社などの持分会社や、一般社団法人・一般財団法人は対象外です(前掲・法務省「実質的支配者リスト制度の創設」)。
BOは「実質的支配者」のこと
BOは、Beneficial Owner(実質的支配者)の略です。実質的支配者とは、会社の議決権を一定以上持つなどして、会社の事業経営を実質的に支配できる立場にある自然人をいいます。
例えば、議決権の70%を持つ甲野さんと、代表取締役の乙山さんがいる会社では、通常、実質的支配者は甲野さんです。代表者と実質的支配者は、同じ人とは限りません。誰が実質的支配者に当たるかの基準は、第3章で条文とあわせて確認します。
BOリスト制度がつくられた理由
会社の登記簿には役員は載りますが、その会社を実際に支配しているのが誰かまでは分かりません。法務省は、BOリスト制度をつくった経緯を次のように説明しています。
法務省「実質的支配者リスト制度の創設」(冒頭部分)
公的機関において法人の実質的支配者…に関する情報を把握することについては、法人の透明性を向上させ、資金洗浄等の目的による法人の悪用を防止する観点から、FATF(金融活動作業部会。 Financial Action Task Force)の勧告や金融機関からの要望等、国内外の要請が高まっているところです。
こうした要請を踏まえ、法人設立後の継続的な実質的支配者の把握についての取組の一つとして、実質的支配者リスト制度を創設し、令和4年1月31日から制度を開始しています。
「資金洗浄」は、マネー・ローンダリングとも呼ばれ、犯罪で得たお金の出どころを分からなくすることをいいます。こうした行為を防ぐための法律が「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯罪収益移転防止法」といいます)で、1条に目的が定められています。
犯罪収益移転防止法1条(抜粋)
第一条 この法律は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えるものであること、…から、犯罪による収益の移転を防止すること(以下「犯罪による収益の移転防止」という。)が極めて重要であることに鑑み、特定事業者による顧客等の本人特定事項(…)等の確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより、…犯罪による収益の移転防止を図り、…もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
会社を実際に支配している人が分からないままだと、実体のない会社や名義だけの会社が資金洗浄に使われるおそれがあります。銀行などが口座開設の際に実質的支配者を確認するのは、この法律に基づく確認の一つです(第2章)。法務省の説明のとおり、BOリスト制度は、会社の設立後も実質的支配者を継続的に把握するための取組の一つとして設けられました。この取組をさらに進め、届出を義務化しようとするのが、第8章で取り上げる法律案です。
BOリストの写しのイメージ
法務局から交付される写しは、会社が作成した一覧に、登記官が「保管している一覧の写しである」旨の認証文を付け、職印を押したものです(規則7条2項)。写しの全体像は、次の図のとおりです(当事務所が作成した架空の会社の例です)。
BOリストの写しのイメージ(当事務所作成・架空の会社の例)
図は横にスクロールして見られます。
- 会社が作成する一覧です。作成者として代表者が記名します(代表者と実質的支配者が同じ人とは限りません)。
- 申出の日前1か月以内の、ある日現在の情報を記載します。
- 実質的支配者の住居・氏名・国籍等・生年月日・議決権割合と、照合に使った添付書面の名称が載ります。
- 登記官の認証文と職印が付きます(実際の写しは、偽造防止措置が施された専用紙で作成されます)。
- 記載内容が事実であることまで証明するものではない旨の注意書きが入ります。
画像を押すと、原寸で表示できます。
※当事務所が説明用に簡略化して作成した架空の例で、法務省の正式な様式ではありません。実際の写しの体裁は、法務省「実質的支配者リストの写し(みほん)」(PDF)でご確認ください。
登記官は、一覧の内容が添付書面や登記簿の記載と整合していることを確認したうえで、写しを交付します(規則7条1項)。写しの末尾の注意書きにも、添付書面と整合することを確認して保管したものの写しであり、記載内容が事実であることを証明するものではない旨が書かれています。法務局が独自に株主を調査するわけではありません。
登記事項証明書・株主名簿との違い
会社の登記事項証明書には、株主の氏名や持株数は記載されません。株主を確認する書類としては会社が作成する株主名簿がありますが、法務局が内容を確認した書類ではありません。3つの書類の違いは、次の表のとおりです。
| 書類 | 作成・交付する者 | 主に分かること |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局が、登記記録に基づいて交付 | 商号、本店、役員、発行済株式の総数など |
| 株主名簿 | 会社が作成し、管理する | 株主の氏名・住所、保有する株式の種類と数など |
| BOリストの写し | 会社が作成した一覧を、法務局が添付書面と照合して保管し、写しを交付 | 実質的支配者の氏名・住居・国籍等・生年月日・議決権割合など |
2.銀行口座開設でBOリストは必要?|法令上の扱い
銀行が法人口座の開設時に実質的支配者を確認するのは、犯罪収益移転防止法4条1項が、銀行などの特定事業者に取引時の確認を義務付けているためです。同項は、確認する事項の一つとして次の事項を挙げています。
犯罪収益移転防止法4条1項4号
四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項
条文の「事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者」が、実質的支配者です。誰が当たるかは、この主務省令に当たる犯罪収益移転防止法施行規則11条2項に定められています。つまり、銀行などの特定事業者は、法人の顧客について、会社そのものだけでなく、その実質的支配者の本人特定事項(自然人であれば氏名・住居・生年月日)も確認しなければなりません。
特定事業者とは|金融機関のほか司法書士などの士業も
「特定事業者」とは、犯罪収益移転防止法2条2項に列挙された事業者です。特定事業者は、同法4条1項により、顧客と一定の取引(特定取引)を行う際に取引時確認をしなければならず、顧客が法人であれば、その実質的支配者の確認も含まれます(弁護士・弁護士法人の扱いは、表の下の※のとおりです)。同法2条2項には1号から49号までがあり、銀行などの金融機関だけでなく、金融機関以外の事業者や士業も含まれます。次の表は、各号を3つに分けて主なものを挙げた要約です。正確な範囲は条文をご確認ください。
表を開く:特定事業者の主な例(2条2項1号〜49号)
| 区分 | 主な特定事業者 | 2条2項 |
|---|---|---|
| 金融機関など | 銀行、信用金庫、信用協同組合、農業協同組合、保険会社、金融商品取引業者(証券会社など)、信託会社、貸金業者、資金移動業者、暗号資産交換業者、両替業者など | 1号〜38号 |
| 金融機関以外の事業者 | ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、カジノ事業者、宅地建物取引業者、貴金属・宝石の売買業者、郵便物受取・電話受付の代行業者 | 39号〜44号 |
| 士業 | 弁護士・弁護士法人※、司法書士・司法書士法人、行政書士・行政書士法人、公認会計士・監査法人、税理士・税理士法人 | 45号〜49号 |
※弁護士・弁護士法人について:4条1項の取引時確認の対象からは除かれ、司法書士の例に準じて日本弁護士連合会の会則で定める措置によるとされています(同法4条1項・12条1項)。
司法書士・行政書士・公認会計士・税理士が取引時確認を行うのは、すべての業務ではなく、同法の別表で定める「特定受任行為の代理等」に係る取引です。司法書士の場合は、顧客のためにする次の3つの行為又は手続の代理又は代行が対象で、その範囲は犯罪収益移転防止法施行令でさらに具体的に定められています。次の表は、別表の文言と、政令で定められた範囲や主な例を並べたものです。
表を開く:司法書士が取引時確認を行う対象(別表・施行令)
| 別表の号 | 対象となる行為又は手続 | 政令による範囲・主な例 |
|---|---|---|
| 1号 不動産の売買 |
宅地又は建物の売買に関する行為又は手続 | 不動産の売買に伴う所有権移転登記の代理などが当たります。 |
| 2号 会社の組織・運営・管理 |
会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続 | 株式会社では、次の事項に関する行為又は手続です(施行令8条2項1号)。 ・設立 ・組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転 ・定款の変更 ・取締役・執行役の選任、代表取締役・代表執行役の選定 合同会社などの持分会社や、一般社団法人・一般財団法人、特定非営利活動法人なども、同様に定められています(同項2号・同条3項・4項)。 |
| 3号 財産の管理・処分 |
現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。) | 財産の価額が200万円以下のものは、特定取引に当たりません(施行令9条1項)。また、成年後見人など、裁判所等に選任された者が職務として行う財産の管理又は処分は除かれます(施行令8条1項4号)。 |
※1号〜3号に共通して除かれるもの:租税、罰金・科料、過料などの納付の代理又は代行は、対象から除かれます(施行令8条1項1号〜3号)。
これらの代理又は代行を行うことを内容とする契約の締結など、政令で定める取引を行う際には、司法書士も、銀行と同じく4条1項各号の事項を確認します。お客様が法人であれば、実質的支配者の本人特定事項(4号)の確認も含まれます。
特定事業者が実質的支配者を確認する方法|原則は代表者等からの申告
特定事業者が実質的支配者をどのように確認するかは、犯罪収益移転防止法施行規則11条1項に次のとおり定められています。
犯罪収益移転防止法施行規則11条1項
第十一条 法第四条第一項に規定する主務省令で定める方法のうち同項第四号に掲げる事項に係るものは、当該顧客等の代表者等から申告を受ける方法とする。
この方法は、銀行などの金融機関だけでなく、司法書士などの士業を含め、4条1項の取引時確認を行う特定事業者に共通です。ただし、なりすましの疑いがある取引など、犯罪収益移転防止法4条2項に定める取引では、申告を受けるだけでは足りません。株式会社などの資本多数決法人については、株主名簿や有価証券報告書など、議決権の保有状況を示す書類又はその写しを確認したうえで、申告を受ける方法によることとされています(犯罪収益移転防止法施行規則14条3項1号)。
このように、法令は、実質的支配者の確認方法として、代表者等からの申告や株主名簿などの書類の確認を定めていますが、BOリストの提出を義務付けてはいません。
金融機関での口座開設|BOリストの写しを求められることも
法令上の義務はなくても、金融機関は、法人口座の開設の際に、申告の内容を確かめるため、株主名簿やBOリストの写しなどの資料の提出を、独自の取扱いとして求めることがあります。
例えば、京都銀行の公式案内(京都銀行「口座開設の必要書類等」、令和8年(2026年)11月1日確認)では、実質的支配者リストの写しは発行日より1年以内のもの、定款認証の際の申告書(写)と申告受理証明書は設立より3年以内の法人に限るとされています。法人税確定申告書の別表二を使う場合は、実質的支配者の本人確認書類(写)もあわせて求められます。提出できる書類や期間の条件は、金融機関ごとに異なります。
BOリストの写しは、口座開設の際に実質的支配者を説明する資料の一つとして使えるものと考えています。ただし、BOリストを提出すれば口座開設が認められるというものではありません。申出の準備を始める前に、申込先の金融機関に、どの書類が必要か、発行日などの条件があるかを確認していただくのがよいと考えています。
3.実質的支配者は誰か|議決権50%超・25%超の判定
BOリストに記載する実質的支配者は、規則2条2号により、犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号に当たる自然人(同条4項により自然人とみなされる上場会社等などを含みます)です。判定の要点は、次のとおりです。
- 議決権の50%を超えて持つ自然人がいれば、その人だけが実質的支配者です。
- 50%を超える人がいなければ、25%を超えて持つ自然人の全員が実質的支配者です。25%「ちょうど」は含みません。
- 割合は、株式の数ではなく議決権の数で計算します。事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな人は除かれます。
- 株主に法人がいる場合は、その法人が支配法人(ある人が議決権の50%を超えて持つ法人など)に当たれば、その人について、その法人を通じた保有(間接保有)も合計して判定します。
なお、50%を超えて持つ人に事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合でも、25%を超えて持つ他の人が、BOリストに記載する実質的支配者になるわけではありません(法務省Q&A 1-13)。
例えば、4人が各25%を持つ会社には犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号に当たる人がいないため、一覧に記載する実質的支配者がおらず(規則2条2号)、BOリストを利用できません。このような会社について、金融機関と相談のうえ、当事務所が株主構成を確認した結果をまとめた報告書で対応した例もあります。
議決権の数え方、除かれる場合、間接保有の事例(BOリストを利用できない例を含みます)や添付書面は、「実質的支配者は誰か?BOリストの判定基準と間接保有」で詳しく解説しています。
4.公証役場で発行される「申告受理及び認証証明書」との違い
株式会社の設立(発起設立・募集設立)では、発起人が作成した定款について公証人の認証を受けます(会社法30条1項)。この定款認証の際、公証人は、認証を依頼した人(嘱託人)に、設立する会社の実質的支配者となるべき者を申告させることとされています。根拠は、公証人法施行規則46条1項です。この規定は、令和7年(2025年)10月1日に施行された改正(令和7年法務省令第40号)より前は、同規則13条の4に置かれていました。
公証人法施行規則46条1項(抜粋)
第四十六条 公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。
一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日
二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が…暴力団員…に該当するか否か(以下略)
この申告に関して公証人が発行する書類は、規則で「申告受理及び認証証明書」と呼ばれています(規則4条1項2号ロ)。以下、この書類を「公証役場の証明書」といいます。BOリストとは、根拠も、交付する人も、情報の時点も、記載される実質的支配者の範囲も異なります。主な違いは、次の表のとおりです。
| 項目 | 公証役場の証明書 | BOリストの写し |
|---|---|---|
| 根拠 | 公証人法施行規則46条(定款認証の際の申告) | 規則(令和3年法務省告示第187号) |
| 交付する人 | 公証人 | 法務局の登記官 |
| 情報の時点 | 定款認証の時点で申告された、法人の成立時に実質的支配者となるべき者 | 申出の日前1か月以内のある日現在(設立登記と同時の申出なら申出日現在。規則2条2号・12条) |
| 記載される実質的支配者 | 犯罪収益移転防止法4条1項4号の実質的支配者となるべき者。議決権の50%超・25%超の自然人がいなければ、支配的な影響力を有する自然人、それもいなければ会社を代表して業務を執行する自然人 | 犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号の自然人(議決権の50%超・25%超の自然人)のみ |
| 対象となる法人 | 定款認証を受ける株式会社・一般社団法人・一般財団法人 | 株式会社(特例有限会社を含む) |
例えば、4人が議決権を25%ずつ持つ形で株式会社を設立する場合、定款認証の際には、支配的な影響力を有する自然人がいなければ、会社を代表して業務を執行する自然人(代表取締役など)を実質的支配者となるべき者として申告します(公証人法施行規則46条1項1号、犯罪収益移転防止法施行規則11条2項4号)。一方、同じ株主構成のままBOリストを申し出ようとしても、記載する実質的支配者がいないため利用できません(第3章)。
公証役場の証明書をBOリストの添付書面に使える期間
BOリストの申出では、一覧の内容を裏付ける書面を添付します。公証役場の証明書もその一つに挙げられていますが、使える期間が限られています。添付する書面の種類と、それぞれを使える期間は、規則4条1項2号に次のとおり定められています。
規則4条1項2号
二 申出会社に係る次に掲げる書面のいずれか
イ 第二条の申出をする日における株主名簿の写し
ロ 公証人が発行する申告受理及び認証証明書(設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)
ハ 第二条の申出をする日の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書(…)に添付された法人税法施行規則(…)第三十四条第二項に規定する別表二の写し(設立後最初の事業年度を経過している場合に限る。)
公証役場の証明書を添付書面に使えるのは、設立後最初の事業年度を経過するまでです。経過した後は、株主名簿の写しか、直前の事業年度の法人税確定申告書に添付した別表二の写しを使います。これはBOリストを申し出るときの添付書面のルールで、金融機関に公証役場の証明書を提出できる期間は、第2章で触れたとおり金融機関ごとに定められています。
5.組織変更・株式移転などをした会社とBOリスト
第4章で確認したとおり、公証役場での実質的支配者の申告は、会社法30条1項などによる定款認証の際に行うものです。ところが、合同会社から株式会社への組織変更や、株式移転による持株会社の設立では、この定款認証がありません。
合同会社から株式会社への組織変更
合同会社などの持分会社が株式会社に組織変更する場合、組織変更後の株式会社の定款で定める事項は、組織変更計画の中で定めます(会社法746条1項1号・2号)。組織変更の手続を定める会社法第5編第1章には、公証人による定款の認証を求める規定がないため、公証役場での実質的支配者の申告も行われません。
合同会社のままではBOリストを利用できませんが、組織変更後の株式会社は、第3章の実質的支配者がいれば申出ができます。
株式移転・新設合併・新設分割で設立する会社
株式移転などで設立する会社については、会社法814条1項が、設立に関する規定の一部を適用しないと定めています。
会社法814条1項
第八百十四条 第二編第一章(第二十七条(第四号及び第五号を除く。)、第二十九条、第三十一条、第三十七条第三項、第三十九条、第六節及び第四十九条を除く。)の規定は、新設合併設立株式会社、新設分割設立株式会社又は株式移転設立完全親会社(以下この目において「設立株式会社」という。)の設立については、適用しない。
適用しないとされる第2編第1章には30条が含まれ、括弧書きの例外にも30条は挙げられていません。そのため、株式移転で設立する持株会社や、新設合併・新設分割で設立する株式会社では、公証人による定款の認証を受けず、公証役場の証明書もありません。
これらの会社が、設立後最初の事業年度を経過する前にBOリストを申し出る場合、第4章で見た規則4条1項2号の書面のうち、公証役場の証明書(ロ)はなく、別表二の写し(ハ)もまだ使えません。そのため、裏付け書面として、申出の日における株主名簿の写し(イ)を添付することになります。
組織変更をした後の株式会社や、株式移転などで設立された株式会社は、公証役場の証明書を持たないため、金融機関に実質的支配者を説明する資料として、BOリストが役立つ場面があると考えています。当事務所では、組織変更・株式移転などの登記をご依頼いただいた際に、BOリストの申出をあわせてご案内することがあります。
組織変更・株式移転を含む組織再編の全体像は、「組織再編とは?」で解説しています。
6.BOリストの取得方法|必要書類・費用・受取方法
公証役場の証明書がない会社でも、第3章の実質的支配者(犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号の自然人)がいる株式会社であれば、BOリストを申し出ることができます。申出は、本店所在地を管轄する法務局(商業登記所)の登記官に対して行います(規則2条)。申出書の記載事項は規則3条に、添付書面は4条から6条に定められています。手続の流れは次のとおりです。
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株主と議決権の確認
株主名簿、定款、登記記録を照らし合わせ、誰が実質的支配者に当たるかを確認します。
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一覧と申出書の作成
一覧には、申出の日前1か月以内のある日現在の情報を記載し、作成者として代表者が記名します(規則2条2号・4条1項1号)。申出書には、写しの利用目的や必要な通数などを記載します(規則3条)。
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添付書面とあわせて提出
法務局の窓口に提出するほか、郵送でも申し出ることができます。司法書士などの代理人が申し出る場合は、委任状(代理権限を証する書面)を添付します(規則5条)。
郵送で申し出た場合の申出年月日は、法務局が申出書と添付書面を受け取った日になります(法務省Q&A 2-4-1)。一覧には申出の日前1か月以内のある日現在の情報を記載するため(規則2条2号)、一覧の基準日から法務局に届くまでの日数にも注意が必要です。
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写しの受取
窓口で受け取るほか、郵送で受け取ることもできます(規則9条)。郵送の場合は、送付先を本店、申出人、代理人のいずれかの住所から選び、その送付先を書いて切手を貼った返信用封筒を同封します(法務省「申出書(みほん)」(PDF))。また、同じ申出書の様式には、「申出の日から1か月以内に実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合は,廃棄して差し支えありません。」と記載されています。
必要書類の一覧
申出書に添付する書面と、それぞれが必要かどうかは次のとおりです。※の付いた書面は、表の下で補足しています(※を押すと補足へ移動します)。
| 添付する書面 | 添付の要否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 実質的支配者情報一覧 | 必要 | 規則4条1項1号 |
| 株主名簿の写しなどの裏付け書面※1 | 必要(いずれか1つ) | 規則4条1項2号 |
| 一覧と裏付け書面の内容が合わない理由を明らかにする書面※2 | 内容が合わない場合に必要 | 規則4条1項3号 |
| 代表者の本人確認書面※3 | 申出書又は委任状に登記所届出印を押さない場合に必要 | 規則6条 |
| 委任状(代理権限を証する書面) | 代理人が申し出る場合に必要 | 規則5条 |
| 実質的支配者本人の本人確認書面※4 | 任意 | 規則4条2項1号 |
| 支配法人の株主名簿の写しなど(間接保有がある場合) | 任意(添付した書面の内容が一覧と合わない場合は、その理由を明らかにする書面もあわせて添付) | 規則4条2項2号 |
※1(株主名簿の写しなどの裏付け書面)申出の日における株主名簿の写しのほか、設立後最初の事業年度を経過していない場合は公証役場の申告受理及び認証証明書、経過している場合は直前の事業年度の別表二の写しも使えます(第4章)。株主名簿の写しに、代表者が原本と相違ない旨を記載する必要はありません(法務省Q&A 3-1)。 ↑表に戻る
※2(一覧と裏付け書面の内容が合わない理由を明らかにする書面)株主名簿の写しなどに載っている持株の割合どおりに判定すると、一覧の記載と合わない場合に添付する書面です。法務省は、合わない場合として、定款の定め(会社法109条2項。公開会社でない株式会社が、議決権などについて株主ごとに異なる取扱いを定めたもの)により議決権を行使できない株主がいる場合や、事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有しない人がいる場合(犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号)などを挙げています。理由を明らかにする書面には、定款や、合わない理由を記載した代表者作成の証明書(上申書)などが当たるとされています(法務省Q&A 3-2)。代表者作成の証明書には、実質的支配者に該当しない旨のほか、該当しない具体的な理由を記載します(法務省Q&A 3-9)。
例えば、夫・妻・子が3分の1ずつ株式を持っていても、実際は社長の夫が全額を出資していて、妻と子には事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合は、夫のみを実質的支配者として一覧に記載します。この場合は、妻と子がその意思又は能力を有していない旨の代表者作成の証明書などを添付します(法務省Q&A 1-12)。
なお、株式数の変更が登記されていないなど、一覧の内容が登記記録と合わない場合は、その事情を説明する書面を付けても申出はできないとされています(法務省Q&A 2-9。第9章)。 ↑表に戻る
※3(代表者の本人確認書面)申出書や委任状への押印そのものは必要ありませんが、申出書(代理人が申し出る場合は委任状)に、登記所に届け出ている代表者印を押せば、この書面は不要です(法務省Q&A 2-3)。押さない場合、法務省は、運転免許証の表裏両面のコピー、マイナンバーカードの表面のコピー、住民票記載事項証明書などを例に挙げています。コピーには、原本と相違ない旨を記載し、代表者が記名します(法務省「添付書面」(PDF))。代表者印の届出が任意になった経緯は、「会社実印がなくても登記はできる?」で解説しています。 ↑表に戻る
※4(実質的支配者本人の本人確認書面)添付は任意です。規則4条2項は、この書面を「添付することができる」ものとしており、法務省も、添付しなくてもよい書面で、任意に添付した場合には実質的支配者リストの確認資料になると説明しています(前掲・法務省「添付書面」)。本人のマイナンバーカードなどがなくても、申出はできます。
添付する場合は、一覧と同じ氏名・住居が記載された、市町村長などが職務上作成した証明書を使います。法務省は、運転免許証の表裏両面のコピーや住民票の写しを例に挙げています。コピーを付けるときは、実質的支配者本人が原本と相違ない旨を記載します。添付した書面の名称は、一覧の「実質的支配者の本人確認の書面」欄に記載します(前掲・法務省「添付書面」)。岡山地方法務局の案内では、あわせて本人の記名も求めています(岡山地方法務局「実質的支配者リスト制度について」)。
添付しない場合は、一覧の「実質的支配者の本人確認の書面」欄を空欄にせず、「なし」と記載します(前掲・岡山地方法務局)。 ↑表に戻る
BOリストの申出にかかる費用
法務局に納める手数料はかかりません。郵送で申し出たり受け取ったりする場合の郵送費や、司法書士に依頼する場合の報酬は別途必要です。当事務所の報酬は、料金表(実質的支配者リスト(BOリスト)の申出)に掲載しています。
設立登記と同時の申出・オンラインでの申出
株式会社の設立の登記の申請と同時に申し出ることもできます(規則12条)。この場合、申出書に会社法人等番号を記載する必要はなく、一覧には申出の日現在の情報を記載します。設立後すぐに法人口座を開設したいスタートアップ企業などでは、設立登記とあわせてBOリストを準備する方法もあります。
令和7年(2025年)3月21日からは、登記のオンライン申請と同時であれば、BOリストの申出もオンラインでできるようになりました(規則13条)。BOリストの申出だけを単独でオンラインで行うことはできず、写しも郵送又は窓口で受け取ります(法務省「オンラインによる実質的支配者情報一覧の保管及び写しの交付の申出について」)。
7.書式見本|申出書と実質的支配者リストの記載例
申出書の正式な名称は「実質的支配者情報一覧の保管及び写し交付申出書」です。どこに何を書くかは、次の記入イメージのとおりです(当事務所が作成した架空の会社の例です)。
申出書の記入イメージ(当事務所作成・架空の会社の例)
図は横にスクロールして見られます。
記入のポイント
- 会社法人等番号・商号・本店は、登記記録のとおりに記載します。
- 届出済みの代表者印を押さない場合は、代表者の本人確認書面を添付します。
- 郵送で受け取るときは、返信用封筒と郵便切手を同封します。
画像を押すと、原寸で表示できます。
※当事務所が説明用に簡略化して作成した架空の例で、法務省の正式な様式ではありません。
一覧の記入イメージは、第1章の写しのイメージをご覧ください。実際に申し出るときは、法務省が公開している様式と記載例を使います。主な記載例は次のとおりです。
Word形式の様式は、法務省「実質的支配者リスト制度の創設」のページからダウンロードできます。
8.実質的支配者の届出を義務化する法律案|期限と公開範囲
ここまでは、会社の任意で利用する現行のBOリストについて見てきました。実質的支配者の情報については、令和8年(2026年)10月23日、届出を義務化する「法人等の実質的支配者に係る情報の把握等に関する法律案」(以下「法律案」といいます。内閣官房の概要では「法人実質的支配者透明化法案」と呼ばれています)が国会に提出されましたが、令和8年(2026年)11月1日時点では成立していません(衆議院「議案審議経過情報」)。
法律案は、国会審議で修正される可能性があり、届出の方法など細かな点は、成立後に政令・法務省令で定められます。内閣官房が公表した法律案の本文(PDF)と要綱(PDF)によると、会社に関係する主な内容は次のとおりです。
届出をする法人等と届け出る事項
届出の義務は、法律案5条1項に定められています。
法律案5条1項(柱書)
第五条 法人等は、法務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を法務大臣に届け出なければならない。
誰が、何を、どこに届け出るのかは、次のとおりです。
| 項目 | 法律案の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出をする法人等 | 上場会社や国・地方公共団体などを除く法人のほか、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、国内における代表者を定めた外国会社、国内に事務所を設けた外国法人、国内の土地・建物の所有者として登記されている外国の法人などの団体も含まれます(上場会社などを除きます)。株式会社だけでなく、現行のBOリストの対象外である合同会社や一般社団法人なども、届出の対象です。 | 法律案2条1項 |
| 届け出る事項 | 法人等の商号又は名称・住所、会社法人等番号、実質的支配者の氏名・住所(上場会社などが実質的支配者に当たる場合は名称・住所)など | 法律案5条1項各号・3条各号 |
| あわせて提供する情報 | 実質的支配者の氏名・住所や、どの区分の実質的支配者に当たるかを証する情報など | 法律案5条2項 |
| 届出先 | 法務大臣(その権限は法務局長などに委任できるとされています) | 法律案5条1項・23条1項 |
内閣官房の概要での説明:届け出る情報は氏名・住所・生年月日・国籍等、届出先は法務局と説明されています。
実質的支配者の範囲|議決権25%超の保有者など
実質的支配者の定め方も、現行の制度とは異なります。第3章で見た「50%を超える人がいれば、その人だけ」という段階的な判定ではないため、25%を超える議決権を持つ人が複数いれば、いずれも実質的支配者に当たると読めます。現行のBOリストと比べると、次のようになります。
| 比べる点 | 現行のBOリスト | 法律案の届出 |
|---|---|---|
| 判定の基準 | 議決権の50%を超える人がいればその人だけ、いなければ25%を超える人の全員(犯罪収益移転防止法施行規則11条2項1号) | 議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有する自然人など(法律案2条3項1号。算定方法は政令で定めます) |
| 例:Aさん60%・Bさん40%(直接保有で、例外的な事情がない場合) | Aさんのみ | Aさん・Bさんの2人と読めます |
| 25%を超える人がいない場合 | BOリストは利用できません(施行規則11条2項2号・4号の人は、BOリストの対象外です) | 出資・融資・取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を有する自然人など(法律案2条3項2号)。それもいなければ、法人等を代表し、その業務を執行する自然人(同項4号) |
| 例:4人が各25%(直接保有で、例外的な事情がない場合) | 記載する人がいないため、利用できません | 2号に当たる人がいなければ、会社を代表して業務を執行する自然人(株式会社では代表取締役など)と読めます |
届出のために必要なときは、会社は、実質的支配者に当たると考えられる人や、実質的支配者を知っていると考えられる株主などに照会することができ、照会を受けた人は、正当な理由がない限り情報を提供しなければなりません(法律案4条1項・3項)。情報を提供しなかったり、虚偽の情報を提供したりした人は、10万円以下の過料の対象になります(法律案30条)。
届出の期限
届出の期限は、次のとおりです。いずれも30日以内とされていますが、起算日が場面ごとに異なります。※を押すと、表の下の補足へ移動します。
| 届出の場面 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 施行の際に既にある会社など | 施行の日から30日以内※1 | 法律案附則2条1項 |
| 法律の施行後に成立する会社など | 成立の日から30日以内※2 | 法律案5条3項1号 |
| 届け出た事項に変更や誤りがあったとき | そのことを知った日から30日以内 | 法律案6条1項 |
※1(施行の際に既にある会社など)施行日前に届け出ることもでき、その場合は施行日に届出をしたものとみなされます(法律案附則2条2項)。施行日前の届出ができるようになるのは、公布の日から1年以内で政令で定める日からです(法律案附則1条2号)。 ↑表に戻る
※2(法律の施行後に成立する会社など)株式会社などの設立では、定款の認証の際に公証人へ申告した実質的支配者となるべき者の情報が法務大臣に提供され、会社が成立した日に届出をしたものとみなされる仕組みも設けられています(情報の提供から1年以内に会社が成立した場合に限ります。整備法案(PDF)13条による改正後の公証人法58条の2第3項・4項・8項)。定款の認証を受けない合同会社などは、成立の日から30日以内に、会社自身が届け出ることになります。 ↑表に戻る
また、会社が取引先の金融機関など(特定事業者のうち法務省令で定める者)や国の機関に、取引や手続の中で実質的支配者の情報を提供している場合には、その機関から説明を受けて会社が同意すれば、その機関が法務大臣に情報を提供することができます。提供されたときは、会社は同意をした日に届出をしたものとみなされます(法律案7条1項・3項)。施行日前でもこの方法による提供ができ、その場合は施行日に届出をしたものとみなされます(法律案附則2条4項)。
届け出た情報を見られる人(公開性)
法律案には、届け出た情報を一般に公開する規定はありません。内閣官房の法律案の概要(PDF)も、閲覧は行政機関が法令で定める事務の遂行上必要な場合と、特定事業者が法人の同意を得た場合に限定されると説明しています。ただし、法律案の条文では、特定事業者のうち銀行などの金融機関は、法人等の同意がなくても閲覧などを請求できるとされています(法律案12条1項ただし書。下の表の※)。法務大臣が作成する「実質的支配者情報ファイル」(法律案8条1項)の閲覧などを請求できる者は、次のとおり条文で限られています。
| 閲覧などを請求できる者 | 請求できる場合・範囲 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出をした法人等 | 自社に係る記録の閲覧(手数料がかかります) | 法律案10条 |
| 実質的支配者として記録された人 | 自分に係る記録の閲覧(手数料がかかります) | 法律案10条 |
| 国・地方公共団体の機関 | 法令で定める事務(実質的支配者の情報の把握を要するもの)の遂行に必要な場合。請求事由などを明らかにして、閲覧や電子的な方法による提供を請求します | 法律案11条 |
| 特定事業者(犯罪収益移転防止法の取引時確認などを行う事業者のうち、法務省令で定める者) | 同法の措置を講ずるために必要な場合で、あらかじめ法人等の同意を得たとき※ | 法律案12条 |
※特定事業者のうち銀行などの金融機関について:法人等の同意は不要です(法律案12条1項ただし書)。
このうち、銀行などとの関係を定めているのが12条1項です。
法律案12条1項(柱書・抜粋)
第十二条 特定事業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律第二章の規定による措置を講ずるために必要である場合には、法務省令で定めるところにより、あらかじめ法人等の同意を得て、法務大臣に対し、実質的支配者情報ファイルに記録されている事項又は情報(法務省令で定めるものを除く。)であって当該法人等に係るものについて、次に掲げる請求をすることができる。ただし、特定事業者が預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関その他これに準ずるものとして政令で定める者である場合には、当該法人等の同意を要しない。
条文の「預金保険法2条1項に規定する金融機関」は、銀行・信用金庫・信用協同組合・労働金庫などです(預金保険法2条1項)。請求した特定事業者は、得た情報を犯罪収益移転防止法の措置以外の目的に利用・提供してはならず(法律案12条4項)、不正な手段による閲覧や目的外の利用には過料の定めがあります(法律案29条)。
また、国・地方公共団体の機関や特定事業者は、ファイルに記録された事項に変更や誤りがあることを知ったときは、その事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合を除き、法務大臣に通報しなければなりません(法律案13条)。株主構成が変わったのに変更の届出をしていない場合、取引先の金融機関などから法務大臣に通報される可能性があるということです。
届出をしなかった場合の措置
法務大臣は、記録された事項に変更・漏れ・誤りがあることを知ったときなどは、届出をすべき法人等に対し、期間を定めて届出を催告します(法律案14条)。そのうえで、法律案には次の措置が定められています。
| どのような場合か | 措置 | 根拠 |
|---|---|---|
| 催告の期間内に正当な理由なく届出をしなかったとき・虚偽の届出をしたとき | 6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその併科。代表者や従業者などが法人等の業務に関して違反したときは、法人等にも罰金刑が科されます | 法律案25条1号・26条1項 |
| 代表者などが正当な理由なく届出をしなかったとき | 100万円以下の過料 | 法律案27条 |
| 届出(変更の届出を含みます)をしないまま、その期限から3年を経過したとき | 法務大臣は、登記官に対し、登記の閉鎖などの措置を命ずることができます | 法律案19条 |
施行の時期:法律案は、一部の規定を除き、公布の日から1年6か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行されます(法律案附則1条)。
司法書士法人LSOでは、法律の成立・施行後、会社設立や増資などの登記手続、株式譲渡に伴う株主構成の変更などに関連して、実質的支配者の届出(変更の届出を含みます)のお手伝いをする予定です。届出の方法や添付する情報は今後の法務省令で定められるため、具体的なご案内と料金は、内容が明らかになった時点で、このコラムと料金表に掲載する予定です。
9.司法書士として実際に確認しているポイント
第1章で見たとおり、登記官は、一覧の内容が株主名簿などの添付書面や登記記録と整合していることを確認できたときに、写しを交付します(規則7条1項)。当事務所では、一覧と申出書を作る前に、できるだけ次の点を確認しています。
1株主名簿が最新の状態になっているか
増資や株式譲渡が反映されているかを確認します。全株主が記載された株主名簿の写しを添付する場合は、記載された株式数の合計が、登記記録の発行済株式の総数と一致している必要があります(法務省Q&A 3-4)。一覧の内容や登記情報と整合していれば、株主名簿の抜粋を添付することもできます(同Q&A 3-3)。
2登記していない変更がないか
増資などの登記が済んでおらず、登記記録と実際の株式数が異なる場合は、その事情を説明する書面を付けても申出はできないとされています(法務省Q&A 2-9)。この場合、BOリストを申し出るには、先に変更登記を済ませる必要があります。
3株式の数ではなく議決権の数で判定しているか
種類株式を発行している会社では、議決権のない株式などを除いて、議決権の数で割合を計算しているかを確認します。
4名義株や法人株主がないか
名義株がある場合は、株主名簿の記載と実態が異なるおそれがあるため、先に名義株の整理をご提案することがあります。法人株主がいる場合は、その法人の株主名簿などで、議決権の2分の1を超える関係がどこまでつながるかを確認します(法人株主をどこまでさかのぼるかは、「実質的支配者は誰か?」の第6章で解説しています)。間接保有があるときは、支配法人の株主名簿の写しなども、任意の添付書面としてあわせて用意することがあります。
5提出先の金融機関の条件
金融機関が求める書類や発行日の条件を、お客様を通じて、できるだけ事前に確認しています。
第8章の法律案が成立すれば、上場会社などを除く多くの会社が施行日から30日以内に届出をし、その後も、株式の譲渡や増資などで実質的支配者が変わるたびに変更の届出をすることになります。届出の前提は、株主名簿や議決権の数から実質的支配者を正しく判定することなので、ここで挙げた確認ポイントは、届出でも重要になると考えています。
株主名簿・登記記録・議事録の整合性の確認は、会社記録DD・議事録整備の業務案内もご覧ください。
10.BOリストについてよくあるご質問
- 株主が変わったら、BOリストを申し出し直す必要がありますか?
-
いいえ。申出をした後に実質的支配者が変わっても、改めて申し出る義務はありません。最新の情報による写しが必要な場合は、新しく一覧を作成して申し出ることができます(法務省Q&A 5-2)。これは現行のBOリストの取扱いで、第8章の法律案では、届け出た事項に変更があったときは、知った日から30日以内に変更の届出をすることとされています。ただし、この法律案は令和8年(2026年)11月1日時点で成立していません。株式譲渡のときに必要な手続全体は、株式譲渡に登記は必要?で解説しています。
- BOリストの写しは再交付してもらえますか?
-
法務局に保管されている最新の一覧について、再交付の申出ができます(規則8条1項)。ただし、商号や本店が変わった場合や、一覧を作成した代表者が退任した場合などは再交付を受けられず、新しい一覧での申出が必要です(法務省Q&A 4-1〜4-3)。
- BOリストの写しに有効期限はありますか?
-
規則には、写しの有効期限の定めはありません。ただし、写しに載るのは一覧に記載した基準日(申出の日前1か月以内のある日)現在の情報なので、提出先の金融機関が、発行日からの期間を指定していることがあります。
- 外国会社は、BOリストを申し出ることができますか?
-
できません。申出ができる株式会社は、日本の会社法などによって設立された株式会社に限られ、外国会社は、日本で登記をしていても申出ができないとされています(法務省Q&A 2-6)。
- 申出書の「利用目的」は、金融機関への提出に限られますか?
-
限られません。利用目的は、他の機関に提出することを前提とするものに限られないとされています(法務省Q&A 2-7)。「その他」を選ぶ場合は、チェックを付けるだけでなく、括弧内に具体的な利用目的を記載します(法務省Q&A 2-8)。
- 一覧や申出書を書き間違えたときは、訂正できますか?
-
申出書は、「何字削除何字加入」のように元の文字が見える方法(いわゆる見え消し)で訂正できます。一方、一覧(実質的支配者リスト)は、この方法による訂正が認められていないため、書き間違えたときは一覧を作り直します(法務省Q&A 2-11・法務省Q&A 2-12)。
11.まとめ|仕組み・判定基準・銀行での扱い・法律案
- 法務局が保管し写しを交付する任意の制度株式会社が作成した実質的支配者の一覧を、登記官が添付書面と照合して保管し、認証文付きの写しを交付します。法務局の手数料はかかりません。
- 議決権50%超、いなければ25%超の自然人法人株主が支配法人(ある人が議決権の50%を超えて持つ法人など)に当たる場合は、その人について、支配法人が持つ議決権も合計して判定します。株式の数ではなく議決権の数で計算します。
- 銀行での扱いは金融機関ごとに異なる法令は、代表者等からの申告などによる確認を定めていますが、BOリストの提出は義務付けていません。BOリストの写しを求めるか、どの条件で受け付けるかは、申込先の金融機関によって異なります。
- 届出を義務化する法律案が国会に提出上場会社などを除く法人等に、実質的支配者の情報を法務大臣へ届け出る義務を設ける法律案が、令和8年(2026年)10月23日に提出されました。法律案では、届け出た情報を一般に公開する仕組みはとられておらず、閲覧などができる者は限られています。令和8年(2026年)11月1日時点で、法律案は成立していません。
根拠条文・公的資料
- 商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則(溶け込み版・PDF)
- 同規則の一部を改正する告示(令和7年法務省告示第119号・PDF)(第13条第2項の改正。上の溶け込み版は、令和7年法務省告示第66号による改正までを反映しています)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律1条(目的)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律2条(定義)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条(取引時確認等)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律12条(弁護士等による取引時確認等に相当する措置)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律 別表
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令8条(司法書士等の特定業務)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令9条(司法書士等の特定取引)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条(実質的支配者)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則14条(厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引に際して行う確認の方法)
- 公証人法施行規則46条(定款認証時の申告)
- 会社法30条(定款の認証)
- 会社法109条(株主の平等)
- 会社法746条(持分会社の組織変更計画)
- 会社法814条(株式会社の設立の特則)
- 預金保険法2条(定義)
- 法務省「実質的支配者リスト制度の創設」
- 法務省「実質的支配者リスト制度Q&A」
- 岡山地方法務局「実質的支配者リスト制度について」
- 法務省「オンラインによる実質的支配者情報一覧の保管及び写しの交付の申出について」
- 内閣官房「第222回 臨時国会」の提出法案一覧
- 法人等の実質的支配者に係る情報の把握等に関する法律案・理由(PDF)
- 同法律案の要綱(PDF)
- 同法律案の概要(PDF)
- 同法律案の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案・理由(PDF)
本記事について
本記事は、令和8年(2026年)11月1日時点の「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則」(令和7年法務省告示第119号による改正後のもの)、犯罪収益移転防止法・同法施行令・同法施行規則、公証人法施行規則、会社法、法務省・法務局の公表資料と、内閣官房が公表した法律案・整備法案の資料をもとに、司法書士法人LSOが整理したものです。写しと申出書の図は、当事務所が作成した架空の会社の例で、法務省の正式な様式ではありません。金融機関の提出書類や口座開設の審査は、各金融機関にご確認ください。本文で触れた法律案・整備法案は、基準日時点で成立しておらず、国会審議で内容が修正される可能性があります。
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