株式譲渡に登記は必要?不要な理由と、株主が変わったときの手続

株式譲渡に登記は必要? 不要な理由と、株主名簿の書換え・譲渡承認の手続を条文から解説
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結論

株式会社の株式を譲渡して、株主が入れ替わっただけであれば、登記の申請は必要ありません。株主の氏名や持株数は、登記される事項ではないためです(会社法911条3項)。

その代わりに、株主名簿の書換えが必要です。譲渡制限株式であれば、会社の承認の手続も必要です。なお、株式譲渡にあわせて役員が交代するときは、役員変更の登記が必要です。

あわせて、株式譲渡で実質的支配者が変わっても、法務局に保管されたBOリスト(実質的支配者リスト)は自動では書き換わりません。今のBOリストには申出をし直す義務はありませんが、国会に提出されている法律案では、実質的支配者の変更を知った日から30日以内に届け出ることとされています。

1.株式を譲渡しても登記がいらない理由|株主は登記されない

株式会社が登記する事項の中心は、会社法911条3項に定められています。会社の目的・商号・本店・資本金の額・発行済株式の総数・役員などが並んでいますが、株主の氏名や持株数は、登記する事項に入っていません。

株主は登記されない仕組みなので、株式を譲渡して株主が入れ替わっても、登記簿に書き換わるところはなく、商業登記の申請もいりません。株式譲渡の前と後で、何が変わるかを並べると次のとおりです。

書類 株式譲渡で変わるか
登記簿(登記事項証明書) 変わらない(株主は記録されていない)
株主名簿 変わる(株主の氏名・住所、株式の数、取得した日などを書き換える)

株主が誰かは、会社が作成する株主名簿で管理します(会社法121条)。株式譲渡で書き換えるのは、登記簿ではなく、この株主名簿です。

2.登記の代わりに必要な手続|株主名簿の書換えと譲渡承認

登記はいりませんが、何もしなくてよいわけではありません。株式を譲り受けた人が、株主であることを会社に主張するには、株主名簿の書換えが必要です。根拠は次の条文です。

会社法130条1項(株式の譲渡の対抗要件)

株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。

「対抗することができない」は、会社やその他の第三者に対して、株式を譲り受けたことを主張できないという意味です。株券発行会社では、会社に対して主張するために書換えが必要です(同条2項)。出典:会社法130条|e-Gov法令検索

株主名簿の書換えは、株式を譲り受けた人が会社に請求します。この請求は、原則として、株主名簿に株主として載っている人(株式を譲り渡した人)と共同で行います(会社法133条1項・2項)。ただし、相続などで取得した場合や、株券発行会社で株券を示して請求する場合など、法務省令で定める場合は、取得した人が単独で請求できます(会社法施行規則22条)。

譲渡制限株式は、会社の承認も必要

定款で「株式を譲渡により取得するには、会社の承認を要する」という趣旨を定めている会社の株式を、譲渡制限株式といいます。譲渡制限株式を譲渡で取得した人は、原則として、譲渡の承認を受けていなければ、株主名簿の書換えを請求できません(会社法134条)。承認を受けていない譲渡も、譲渡の当事者の間では有効とされていますが(最高裁昭和48年6月15日判決)、会社に対しては株主であることを主張できません。承認をするのは、定款に別段の定めがなければ、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)です(会社法139条1項)。承認されなかったときの流れは、譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しないとどうなる?で解説しています。

株券を発行していない会社で、譲り渡す株主が先に承認を受けてから譲渡する場合の主な流れは、次のとおりです。

株式を譲り渡す株主が、会社に譲渡の承認を請求する→会社が、株主総会や取締役会などで承認を決め、請求した株主に通知する→株主と譲り受ける人が、株式を譲渡する(譲渡契約・代金の支払など)→譲り渡した株主と譲り受けた人が共同で、会社に株主名簿の書換えを請求する→会社が、株主名簿を書き換える

株主名簿の書換えの請求は、たとえば次のような書面で行います。

見本

株主名簿書換請求書

令和8年11月10日

株式会社○○ 御中

下記の株式を取得しましたので、株主名簿の記載事項の書換えを請求します。

記

株式の数
貴社の株式 100株
取得の原因
株式譲渡(令和8年11月5日)
譲渡承認を受けた日2
令和8年11月4日
株式取得者
大阪市北区○○一丁目○番○号
乙山 次郎

以上

株主名簿上の株主(譲渡人)1大阪市中央区○○二丁目○番○号
甲野 太郎印
株式取得者(譲受人)1大阪市北区○○一丁目○番○号
乙山 次郎印
  • 1原則として、株主名簿に載っている株主(譲渡人)と、株式を取得した人(譲受人)が共同で請求します(会社法133条2項)。
  • 2譲渡制限株式は、譲渡の承認を受けていなければ、書換えを請求できません(会社法134条)。

※ 説明用の架空の見本です。請求の方法や書式は、会社によって異なることがあります。譲渡承認の議事録や通知書、株式譲渡契約書などは、別に用意します。

株券を発行している会社は、株券の交付も必要

※ 株券を発行していない会社は、この項を読み飛ばしても差し支えありません。

定款で株券を発行すると定めている会社(株券発行会社)では、株券を発行した後の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力が生じません(会社法128条1項)。株券発行会社かどうかは、登記事項証明書に株券を発行する旨の記載があるかで確認できます。

会社法の施行(2006年(平成18年)5月1日)より前に設立された会社は注意

登記上は株券発行会社なのに、実際には株券を発行していない会社があります(会社法整備法76条4項、会社法215条4項)。

株券を発行する前の譲渡は、譲渡の当事者の間では効力が否定されませんが(最高裁令和6年4月19日判決)、会社に対しては効力を生じません(会社法128条2項)。

このような会社で新たに株式を譲渡するときは、株券を発行して交付する方法か、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する方法(会社法218条)を検討します。廃止するときは、効力が生じる日の2週間前までに、株主への通知などが必要です。

株券に記載する事項は、会社法216条で決められています。次の見本で、①〜⑤が会社法216条で求められている記載、⑥が印紙税法による収入印紙です。

見本

収入印紙200印

6第001号1

株券

株式会社○○2

100株3

当会社の株式を譲渡により取得するには、
取締役会の承認を要する。4

令和8年4月1日株式会社○○
代表取締役 甲野 太郎印5
  • 1株券の番号
  • 2会社の商号(会社法216条1号)
  • 3その株券が表す株式の数(同条2号)
  • 4譲渡による取得に会社の承認が必要と定めているときは、その旨(同条3号)
  • 5代表取締役の署名または記名押印(同条柱書)
  • 6収入印紙と消印。株券は印紙税がかかる文書(第4号文書)で、券面金額(1株当たりの払込金額×株数)に応じた印紙を貼り、株券と印紙にかけて消印します(印紙税法8条)。見本は、1株5万円で払い込んだ株式100株(券面金額500万円)を想定した200円です。払込金額がない場合などは、券面金額の計算方法が異なります。

※ 説明用の架空の見本です。種類株式を発行している会社では、株式の種類と内容も記載します(同条4号)。実際の株券の用紙や地紋とは異なります。

3.株主が変わったら確認したいBOリスト(実質的支配者リスト)

株式譲渡で株主が変わると、会社の実質的支配者も変わることがあります。登記とは別に確認しておきたいのが、BOリスト(実質的支配者リスト)です。

BOリストは、会社が申し出ると、法務局が実質的支配者(議決権の割合などで決まる、会社を実質的に支配する個人)の一覧を保管し、その写しを交付する制度です。手数料はかかりません(法務省「実質的支配者リスト制度の創設」)。

国会に提出されている法律案は、今のBOリストとは別の、新しい届出の仕組みです。実質的支配者が変わったときの扱いを比べると、次のとおりです。

今のBOリスト(法務局が一覧を保管) 法律案の届出制度(成立・施行された後)
申出・届出 会社の任意 法人の義務(上場企業等を除く)
実質的支配者が変わったとき 保管された一覧は自動では変わらない。新しい内容の写しが必要なときに、改めて申出をする(法務省Q&A 5-2) 実質的支配者の情報の変更を知った日から、30日以内に届け出る(法律案6条1項)

※ 法律案は2026年(令和8年)10月23日に国会に提出されたもので(内閣官房「法律案・理由」(PDF))、本記事の作成時点では成立していません。

BOリストの申出の方法と必要書類、法律案の内容は実質的支配者リスト(BOリスト)とは?で、誰が実質的支配者になるかの判定は実質的支配者は誰か?BOリストの判定基準で解説しています。

当事務所の考え方

株式譲渡で株主構成が変わった会社は、金融機関などに実質的支配者を説明する場面に備えて、BOリストの申出を改めて検討する価値があると考えています。当事務所では、株式譲渡の手続をご依頼いただいた際に、BOリストの申出もあわせてご案内することがあります(株式譲渡サポートパックには、株式譲渡後の株主構成でのBOリストの申出が含まれています)。

4.司法書士として実際に確認しているポイント

当事務所では、株式譲渡のご相談を受けたとき、ご依頼の手続に関係する範囲で、できるだけ次の点を確認するようにしています。

① 株主名簿

株主名簿が最新になっているか

譲り渡す株主の持株数が、株主名簿と合っているかを確認します。過去の譲渡や相続で書換えが漏れていたり、名義株が残っていたりすることがあります。

② 承認機関

誰が譲渡を承認するか

定款で、譲渡の承認をする機関を確認します。株主総会か取締役会か、定款に別の定めがあるかで、用意する議事録が変わります。取締役会で承認するときは、譲渡の当事者である取締役が決議に加われないことがあります(会社法369条2項)。

③ 株券

株券を発行する会社か

登記事項証明書と定款で、株券発行会社かどうかを確認します。株券発行会社であれば、株券の交付を含めて、手続の順番をご案内します。

④ 役員の交代

株式譲渡にあわせて役員が交代しないか

株式を譲り受けた人が取締役や代表取締役になる、それまでの役員が退任するといった場合は、役員変更の登記が必要です。期限は原則として変更が生じた日から2週間以内なので(会社法915条1項)、株式譲渡の日程とあわせてご案内することがあります。

5.よくあるご質問

株主が亡くなり、相続人が株式を引き継いだときも、登記はいりませんか?

株主が変わったこと自体の登記は、必要ありません。ただし、亡くなった株主が取締役などの役員だった場合は、退任の登記が必要です(会社法915条1項)。株券を発行していない会社なら、株主名簿の書換えは、相続人が相続を証する書面を出して単独で請求でき(会社法施行規則22条1項4号)、譲渡制限株式でも会社の承認はいりません(会社法134条4号)。株券発行会社では、原則として株券を示して請求します(会社法施行規則22条2項1号)。

合同会社の持分を譲渡したときも、登記はいりませんか?

合同会社では、株式ではなく「持分」を譲渡し、原則として他の社員全員の承諾が必要です(会社法585条1項)。登記されるのは、業務を執行する社員と、会社を代表する社員です(会社法914条6号・7号)。業務を執行しない社員が入れ替わるだけなら登記はいりませんが、業務を執行する社員や代表する社員が変われば、変更の登記が必要です。定款で業務を執行する社員を定めていない会社では、社員全員が業務を執行するため(会社法590条1項)、社員が入れ替われば登記が必要になります。

6.まとめ

  1. 株式譲渡だけなら登記は不要株主の氏名や持株数は登記されないため、株式を譲渡して株主が入れ替わっただけなら、登記の申請はいりません。
  2. 株主名簿の書換えと、譲渡承認株式を譲り受けた人は、株主名簿の書換えを受けないと、譲渡を会社などに主張できません。譲渡制限株式なら、会社の承認も必要です。
  3. 役員が交代するなら登記が必要株式譲渡にあわせて役員が交代するときは、原則2週間以内に役員変更の登記をします。
  4. BOリストと実質的支配者の届出BOリストの申出は任意で、株式譲渡で実質的支配者が変わっても、保管された一覧の内容は自動では変わりません。国会に提出された法律案では、実質的支配者の情報の変更を、知った日から30日以内に届け出ることとされています。

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司法書士法人LSOは、大阪・梅田の司法書士事務所です。株式譲渡の承認手続の書類、株主名簿の整備、あわせて必要になる役員変更などの登記、BOリストの申出まで、まとめてご相談いただけます。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度・2026年度)。

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本記事について

本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法・会社法施行規則と、法務省の公表資料をもとに、司法書士法人LSOが、株式会社の株式を譲渡したときに登記が必要かどうかと、あわせて必要になる手続を整理したものです。個別の事案での手続は、定款や株主名簿の内容によって異なります。

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