株主名簿とは?会社法121条の記載事項・書き方を見本で解説

結論
株主名簿とは、会社の株主が誰で、それぞれ何株を持っているかを記録した帳簿です。株主が1人の会社も含め、株式会社には作成が義務づけられています(会社法121条)。
記載するのは、株主の氏名と住所、持っている株式の数、株式を取得した日の3つが基本です。定款で株券を発行すると定めている会社では、実際に発行した株券の番号も記載します。
書式の決まりはありません。株主全員について、これらの事項を1つの表にまとめた形で作成できます。
1.株主名簿とは?まず会社法121条を読む
株主名簿とは、株式会社が誰を株主として扱い、その株主が何株を保有しているかを管理するための帳簿です。
会社が株主総会の招集通知を送るときや、株式を譲り受けた人を株主として扱うときなど、株主に関する事務は株主名簿をもとに行います。
『会社法コンメンタール』第3巻は、株主名簿を作成する義務を負うのは、取締役会設置会社では代表取締役、取締役会を置かない会社では取締役であるとしています。
何を記載するかは、会社法121条が定めています。まず条文を確認しましょう。
会社法121条(株主名簿)
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
121条の4つの事項は何を意味する?
121条の4つの事項を、どの会社に必要か、どこに注意するかとあわせて整理すると、次の表のとおりです。
すべての株式会社会社から株主への通知は、株主名簿の住所(株主が別の連絡先を会社に知らせていれば、その連絡先)に宛てて発すれば足ります(会社法126条1項)。法人の代表者名について、『会社法コンメンタール』第3巻は、記載する必要はなく、任意に記載することは差し支えないとしています。
すべての株式会社種類株式を発行している会社(種類株式発行会社)では、株式の種類と、種類ごとの数を記載します。種類株式を発行していない会社が「普通株式」と書くのは、分かりやすさのための任意の補足です。
すべての株式会社設立のときの取得か、増資での取得か、他の株主からの譲受けかによって、どの日を記載するかの考え方が異なります(本記事の第3章で説明します)。
つまり、株券を発行していない一般的な会社で記載が必要なのは、1号〜3号の「誰が株主か」「何株を持っているか」「いつ取得したか」の3点です。
このほか、株式に質権を設定した株主の請求による質権者の氏名・住所などの記載(会社法148条)や、株主の請求による、株式が信託財産に属する旨の記載(会社法154条の2。株券発行会社には適用されません)のように、121条以外の規定に基づいて株主名簿に記載する事項もあります。
法律上の記載事項と、会社が任意に管理する項目は別です。株主番号、持株比率、備考欄、株式の取得原因(増資・譲渡など)は、121条が求める事項ではありません。『会社法コンメンタール』第3巻は、法定の事項以外を記載することもでき、株式を複数人で共有する場合の権利行使者(会社法106条)、株主の法定代理人、外国に住む株主の常任代理人などを記載することが一般に行われている、と紹介しています。
なお、株主名簿は登記事項証明書とは役割の異なる書類です。登記事項証明書で確認できるのは発行済株式の総数などで(会社法911条3項9号)、個々の株主の氏名や保有株式数は登記されません。また、将来の出資比率などを検討する資本政策表も実務上重要ですが、資本政策表が会社法121条の株主名簿の代わりになるわけではありません。
2.株主名簿の見本|121条の各号と記載欄を対応させる
第1章で見た121条の事項が、実際の株主名簿ではどの欄に当たるのかを、見本で確認します。
見本は、定款に株券を発行する旨の定めがない会社(株券不発行会社。会社法214条)の株主名簿です。そのため、株券の番号(121条4号)の欄はありません。
見本の前提(架空の例)
(株券不発行会社)
4月1日設立の登記。
設立のときに山田太郎が500株、佐藤花子が400株を取得
9月15日山田太郎が100株を追加で取得
株主名簿
サンプル株式会社
2026年(令和8年)10月1日現在
| 氏名又は名称121条1号 | 住所121条1号 | 株式の種類及び数121条2号 | 株式取得年月日121条3号 |
|---|---|---|---|
| 山田 太郎 | 大阪市北区○○町一丁目1番1号 | 普通株式 600株 | 2026年(令和8年)4月1日 500株 2026年(令和8年)9月15日 100株 |
| 佐藤 花子 | 大阪市中央区○○町二丁目2番2号 | 普通株式 400株 | 2026年(令和8年)4月1日 400株 |
| 合計 | 普通株式 1,000株 | ||
※すべて架空の例です。見出しの下の「121条1号」などは、会社法121条の各号との対応を示すために付けたもので、実際の株主名簿には記載しません。スマートフォンでは、見本を左右にスクロールできます。
なお、この見本からは、9月15日の100株が、会社が新たに発行した株式を山田太郎が引き受けたものか、他の株主から譲り受けたものかは分かりません。株主名簿に取得の原因を記載する義務はないためです。しかし、名簿に「株式を取得した日」として何日を書くかは、その取得の原因によって変わります。
株主名簿を作成する際には、迷いやすい点が2つあります。第3章と第4章で、1つずつ順に見ていきます。
株主名簿の作成時の迷いどころ
3.作成時の迷いどころ|株式を取得した日はいつ?設立・増資・譲渡で分けて考える
株式を取得した日は、設立・増資・譲渡などの取得の原因によって考え方が異なります。
ここで扱うのは、第1章で見た会社法121条のうち、3号の「株式を取得した日」です。条文全体の中での位置を、もう一度確認しておきましょう。
会社法121条(株主名簿)
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
条文の「第一号の株主」は、1号により株主名簿に氏名・住所を記載した株主を指します。
株主名簿に記載する「株式を取得した日」について、会社の設立日を書けばよいのか、株式譲渡契約を結んだ日を書けばよいのか、迷われる方は多いと思います。設立のときに1回だけ株式を取得した株主であれば、取得日は会社が成立した日(設立の登記の日)になるため、迷うことはあまりありません。一方、増資で株式を追加で引き受けたり、他の株主から株式を譲り受けたりして、株式を何回かに分けて取得した場合には、それぞれの取得日をいつとし、名簿にどう記載すればよいのか悩まれる方が多いのではないでしょうか。
この章では、まず取得日を記載する理由を確認し、そのうえで取得の原因ごとに、どの日が「株式を取得した日」になるのかを見ていきます。何回かに分けて取得した株式を名簿にどのような形で記載するかは、第4章で、第2章の見本とあわせて確認します。
なぜ取得日を記載するのか
『会社法コンメンタール』第3巻は、株主名簿に取得日を記載させる理由として、次の2点を挙げています。
- 株式の譲渡があった場合、会社は、株主名簿上の取得の日以降、譲渡人ではなく譲受人を株主として扱わなければなりません(会社法130条1項)。どの時点からその効果が生じるかを明らかにする必要があります。
- 株式の発行が判決で無効とされた場合に、どの株式が無効なのかを特定するためです。株券を発行していない会社では、株主名簿に記載された取得日によって特定するほかないとされています。
取得の原因ごとの「取得した日」
『会社法コンメンタール』第3巻(121条の解説)の整理のうち、主な例を表にまとめると、次のとおりです。
上の表のうち、2行目の「設立後の募集株式の発行(増資)」には、取得日を記載するときに注意したい点があります。増資では、払込期日を定めたか、払込期間を定めたかによって、株主になる日が変わります。払込期日を定めた場合は、その期日までに払込みをした引受人が、払込期日に株主になります。これに対して、払込期間を定めた場合は、引受人ごとに、実際に払込み(出資の履行)をした日に株主になります(会社法209条1項)。そのため、払込期間を定めた増資では、同じ増資で株式を取得した株主でも、取得日が人によって異なることがあります。なお、払込みを伴う通常の募集株式の発行では、株式を割り当てた日(割当日)が、そのまま株主になる日になるわけではありません。
このように、正しい取得日を確かめるには、取得の原因を知る必要があります。取得の経緯は、増資の議事録や払込みの資料、株式の譲渡承認の書類、名義書換の請求書などの関連資料で確認できます。
特に注意が必要なのは、第三者から株式を譲り受けた場合です。『会社法コンメンタール』第3巻の整理によれば、この場合の取得日は、株式譲渡契約を結んだ日ではなく、株主名簿の名義書換がなされた日とされます。そのため、株式譲渡契約書の日付を、そのまま株主名簿に転記すればよいとは限りません。譲渡承認や名義書換請求の資料とあわせて確認することが大切です。
参考:『会社法コンメンタール』第3巻〔株式(1)〕(山下友信編、商事法務)121条の解説〔前田雅弘〕267〜269頁
4.作成時の迷いどころ|株主名簿の形式は?株主全員を1つの名簿にまとめる
株主名簿には、株主全員について会社法121条の事項を記載します。第2章の見本のように、株主全員を1つの表にまとめた「一覧形式」で作成すると、全体を一度に確認できます。
株主名簿(サンプル株式会社)
第2章の見本を簡略化したものです(住所・株式取得年月日の欄は省略)。第2章の見本の全体を見る
会社法121条は、株式会社に対し、株主名簿を作成し、これに1号から4号の事項を記載することを求めています。記載する事項は定めていますが、用紙やレイアウトは指定していません。
同じ株主が複数回にわたって株式を取得したときに、取得日をどのような形で記載するかまでは、会社法121条は定めていません。第2章の見本では、一覧形式の中で、山田太郎の普通株式600株を取得日ごとに500株と100株に分けて記載しています。これは記載例の一つで、同じ書式が法律上必須という意味ではありません。
株主ごとに株式の異動を記録する場合
株主の数が増えたり、同じ株主が増資や他の株主からの譲受けで何度も株式を取得したりすると、一覧形式の株主名簿だけでは、株主ごとの株式の異動(株式の発行や譲渡などによって、誰が何株を持っているかが変わること)を追いにくくなります。創業者が設立のときの普通株式に加えて増資で株式を追加で取得し、さらにA種優先株式も保有しているような場合が、その例です。
そのため実務では、一覧形式の株主名簿とは別に、株主ごとに1枚ずつ、株式の異動を時系列で記録したものを作ることがあります。第2章の見本の山田太郎について作ると、たとえば次のようになります。
株主ごとの異動の記録(株主名簿とは別の補助的な記録)
株主 山田 太郎
※架空の例です。9月15日の100株は、増資で引き受けたものとしています。
ただし、上の記録は、住所など121条の事項の一部を省略した補助的な資料です。この記録だけでは、株主名簿の記載事項を満たしません。
株主ごとの記録を作る場合も、株主全員について121条の事項をまとめた一覧形式の株主名簿を別に作成し、両者の内容に食い違いがないように管理しておくのがよいと考えています。株主全員と保有株式数を、一度に確認できるためです。
5.司法書士として実際に確認しているポイント
司法書士法人LSOでは、登記などのご依頼の際に株主名簿をお預かりしたときは、定款・登記記録・議事録などと食い違いがないかを、できるだけ確認するようにしています。確認することが多い点の例です。
1取得日が、取得原因の資料と合っているか
設立・増資・株式譲渡など、取得の原因を議事録や払込みの資料、名義書換の資料で確認し、名簿上の日付と照らし合わせるようにしています。
2株式数の合計が、発行済株式の総数と一致するか
株主ごとの株式数と、会社が持っている自己株式の数を合計し、登記事項証明書に載っている発行済株式の総数と一致するかを確認するようにしています。
3種類株式の記載が、定款・登記と食い違っていないか
種類株式を発行している会社では、名簿上の株式の種類と種類ごとの数が、定款や登記事項証明書の内容と矛盾しないかを確認するようにしています。
4登記申請の「株主リスト」と食い違っていないか
株主総会の決議が必要な登記を申請するときは、議決権の割合が上位の株主(10名か、割合を多い順に足して3分の2に達するまでの人数の、いずれか少ない人数)の氏名・住所・株式数・議決権数などを記載した書面、いわゆる株主リストを添付します(商業登記規則61条3項)。株主リストを作るときは、株主名簿の記載と食い違いがないかを確認するようにしています。
株式の移転の経緯は、株主名簿とは別に整理しておく
設立のときにはA・B・C・Dの4人が株主だった会社で、後にC・Dが全株式を譲渡した場合、現在の株主名簿にはA・Bだけが載っていることがあります。現在の名簿が正しくても、それだけで設立以来の移転の経緯や、各取得の原因を説明できるとは限りません。
株式譲渡契約書は、通常、譲渡の当事者が保管します。会社に譲渡承認の請求書や議事録が残っている場合でも、すべての株式異動を一件ずつたどるのは容易ではありません。株主名簿に載っている人と実際の株主が異なる、いわゆる名義株が見つかることもあります(名義株とは?解消方法と確認書の作り方)。
現在の株主名簿とは別に、いつ・誰から誰へ・何株が・どのような原因で移転したのかを「株式異動履歴」として整理し、根拠となる資料と対応づけておく方法が有効だと考えています。これは121条が定める株主名簿の書式ではなく、将来の資金調達や会社記録DDに備えるための、実務上のご提案です。
6.よくあるご質問
株主名簿の作成や管理について、ご質問の多い点を整理します。
- 株主が1人しかいない株式会社にも、株主名簿は必要ですか?
-
必要です。会社法121条は、株主が1人であることや非公開会社であることを理由に、作成の義務を免除していません。
- 株主名簿は、どこに保管すればよいですか?
-
株式会社は、株主名簿を本店に備え置かなければなりません(会社法125条1項)。株主名簿管理人(会社に代わって株主名簿の作成や備置きなどの事務を行う者で、定款で定めて置くことができます。会社法123条)を置いている場合は、その営業所に備え置きます。
- 株主名簿はExcelで作ってもよいですか?
-
会社法は、株主名簿を電磁的記録(電子データ)で作成することも認めており、決まった様式もありません。ただし、121条の事項が記録されていて、株主や債権者から閲覧・謄写の請求があったときに、その内容を紙面や画面に表示できる状態にしておくことが前提です(会社法125条2項)。
- 株主名簿に代表取締役の署名・押印は必要ですか?
-
会社法121条は、株主名簿そのものへの署名・押印を求めていません。一方、株主が自分についての記載事項を記した書面の交付を会社に請求した場合(株主名簿記載事項証明書。会社法122条)、その書面には代表取締役の署名または記名押印が必要です。なお、122条は株券発行会社には適用されません。
- 株主名簿を作っていないと、過料の対象になりますか?
-
株主名簿に記載すべき事項を記載しなかった場合や、虚偽の記載をした場合、株主名簿を法定の場所(本店、または株主名簿管理人の営業所)に備え置かなかった場合は、過料の対象となり得ます(会社法976条7号・8号)。『会社法コンメンタール』第3巻は、記載をしなかった場合などに過料の制裁を受けるのは、取締役(指名委員会等設置会社では執行役)または株主名簿管理人であるとしています。
7.まとめ|株主名簿の記載事項と書き方
- 記載する事項株主名簿には、株主の氏名(名称)と住所、株式の数(種類株式発行会社では種類ごとの数)、株式を取得した日、株券を実際に発行している場合の株券の番号を記載します(会社法121条)。
- 書式決まった書式はなく、株主全員について121条の事項が記載されていれば足ります。第2章の見本のように、株主全員を1つの表にまとめた一覧形式で作成できます。
- 取得日取得日の考え方は、設立・増資・譲渡などの取得の原因によって異なり、譲渡による取得では株式譲渡契約の日付と一致するとは限りません。同じ株主が時期を分けて取得したときは、取得日ごとに株式数を分けておくと経緯を確認しやすくなります。
続編では「株主名簿を実際にどう作るか」へ進みます。司法書士法人LSOのExcelひな形を無料で公開し、各欄の書き方に加え、121条の記載事項と任意で管理する取得原因の分け方、株式異動履歴の残し方を実例で解説します。
根拠条文
- 会社法49条(株式会社の成立)
- 会社法106条(共有者による権利の行使)
- 会社法121条(株主名簿)
- 会社法122条(株主名簿記載事項を記載した書面の交付等)
- 会社法123条(株主名簿管理人)
- 会社法125条(株主名簿の備置き及び閲覧等)
- 会社法126条(株主に対する通知等)
- 会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
- 会社法148条(株主名簿の記載等)
- 会社法154条の2(信託財産に属する株式)
- 会社法209条(株主となる時期等)
- 会社法214条(株券を発行する旨の定款の定め)
- 会社法215条(株券の発行)
- 会社法282条(株主となる時期等)
- 会社法911条(株式会社の設立の登記)
- 会社法976条(過料に処すべき行為)
- 商業登記規則61条(添付書面)
関連するご案内・コラム
本記事について
本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法と公表されている資料をもとに、司法書士法人LSOが株主名簿の基本的な記載事項と作成方法を整理したものです。株式を取得した日の具体的な記載については、取得の原因や名義書換の経緯を確認する必要があります。株式の帰属などに争いがある場合の法律判断については、弁護士にご相談ください。
主な参考資料:『会社法コンメンタール』第3巻〔株式(1)〕(山下友信編、商事法務)121条・122条の解説〔前田雅弘〕
来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています
対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。
商業登記・企業法務 料金表を見る

