名義株とは?解消方法と確認書の作り方を司法書士が解説

結論
名義株とは、株主名簿に名前が載っている人と、実際の株主とが異なる株式のことです。典型例は、会社をつくるときに、親族や知人の名前を借りて株式を引き受けたケースです。会社法に「名義株」という定義はなく、実務で一般にこう呼ばれています。
整理するときは、株式を引き受けた当時の経緯を資料で確かめ、名義人と実際の株主の双方が確認した内容を書面に残したうえで、会社が株主名簿を実際の権利関係に合わせて整えるのが基本的な流れです。
1.名義株とは?生じた背景と放置するリスク
名義株が生じる典型例は、創業者が親族や知人の承諾を得て、その人の名前で株式を引き受けたケースです。
具体的な場面で考えてみましょう。
創業者Aさんが、知人Bさんの承諾を得て、Bさん名義で普通株式100株を引き受け、払込みのお金もAさんが出したとします。株主名簿にはBさんの名前が載っていますが、引受けの実態によっては、Bさんではなく、Aさんが株主と判断されることがあります(判断の基準は第2章で説明します)。
こうした名義借りが多く生まれた背景には、かつての商法の規定があります。平成2年(1990年)の商法改正前は、株式会社を設立するには最低7人の発起人(会社の設立を企画し、設立時に株式を引き受ける人)が必要で、各発起人が1株以上を引き受けなければなりませんでした(この要件は、この改正でなくなりました)。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」(第3版)は、この規定などが原因で、他人の名義を用いて株式を引き受ける例が生じ、名義株が多く発生したと説明しています。
同ガイドラインは、名義株を放置した場合のリスクとして、面識のない「自称」株主から突然株主の権利を主張されて紛争になることや、将来M&Aを行おうとするときに、名義株主が自分こそ真の株主だと主張して譲渡を拒んだり、対価を求めたりすることを挙げています。名義人本人だけでなく、名義人が亡くなった後に、その相続人から株主の権利を主張されるおそれもあります。
では、株主名簿に載っている人と実際の株主が異なるとき、どちらが株主なのかはどのように判断されるのでしょうか。
2.名義株の本当の株主は誰?判例と判断のポイント
他人の承諾を得てその名義で株式を引き受けた場合、株主になるのは、名義を貸した人ではなく、実際に株式を引き受けた人とされています。
この考え方を示したのが、最高裁判所の昭和42年(1967年)11月17日の判決です。新株の引受けで他人の名義が使われた事件で、最高裁判所は次のように判断しました。
最高裁判所第二小法廷 昭和42年(1967年)11月17日判決(民集21巻9号2448頁)※抜粋
他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当である。
出典:裁判所|裁判例結果詳細(昭和42(オ)231)。判決当時の商法201条が参照法条です。
東京地方裁判所が公表している「株主権確認訴訟の記載例」も、会社の設立時と新株発行時のどちらについても、この判決を参照して同じ考え方を示しています。
ただし、払込みのお金を出した人が、それだけで必ず株主と判断されるわけではありません。同じ記載例は、実質上の株主を認定するときは、一般的に、次の7つの事情のほか、諸般の事情を総合的に判断するとしています。
- 株式を取得するための資金を、誰が出したか
- 名義を貸した人と借りた人の関係、両者の間の合意の内容
- 株式を取得した目的
- 取得後の配当金や新株などが、誰に帰属してきたか
- 名義を貸した人・借りた人と、会社との関係
- 名義を借りた理由に合理性があるか
- 株主総会で、誰が議決権を行使してきたか
なかでも、株式を取得するための資金を誰が出したかが重視される傾向にあると説明されています(加藤真朗編著『非上場株式の相続と会社法―評価・遺産分割・換価・経営参加の法律実務―』第1章Q10)。
このため、名義株を整理するときは、定款(設立時の原始定款)、株式の申込みや払込みの記録、過去の株主名簿、株主総会議事録などを照らし合わせ、株式を取得した当時の事情を確認することが出発点になります。
3.名義株を解消する3つの手順
当初から誰が株主だったのかを資料で確認でき、関係者の間に争いがない場合は、次の3つの手順で整理する方法が考えられます。
手順の全体像は次のとおりです。
-
取得当時の事情を調べる
誰が、いつ、何株を引き受けたのかを確認します。その後に増資や株式分割があった場合は、現在の株式数までたどります。
-
当事者の確認を書面に残す
名義人と実際の株主の双方の認識を確かめ、株式が当初から実際の株主に帰属していたことと、株主名簿の訂正への承諾を、確認書にまとめます(見本は第4章)。
-
会社が株主名簿を整える
会社が根拠資料を確認したうえで、実際の権利関係に合わせて株主名簿を整えます。確認書と、訂正前後の株主名簿も保管しておきます。
株主名簿について、会社法は、株主の氏名・住所や株式の数などを記載するよう定め(会社法121条)、株式を発行したときの記載義務を次のように定めています。
会社法132条1項(株主の請求によらない株主名簿記載事項の記載又は記録)※抜粋
株式会社は、次の各号に掲げる場合には、当該各号の株式の株主に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録しなければならない。
一 株式を発行した場合
この条文は、名義株を訂正する方法を直接定めたものではありません。加藤真朗編著『非上場株式の相続と会社法―評価・遺産分割・換価・経営参加の法律実務―』第1章Q10では、名義人の協力が得られる場合は、名義株であることを確認する確認書を作成し、名義人と共同で会社に株主名簿の名義書換を請求する方法が説明されています(会社法133条2項)。また、会社の設立時や新株の発行時に株式を引き受けた株主(原始株主)は、132条1項に基づいて、会社に株主名簿への記載を請求できると解されているとして、裁判例も紹介されています。いずれも、当初からAさんに株式が帰属していたことを前提とするもので、BさんからAさんへ新たに株式を譲り渡すものではありません。
名義の訂正と株式の譲渡は、別の手続です
Aさんが当初から株主だったと確認して名簿を直す場合と、名簿上の株主であるBさんから、Aさんが新たに株式を譲り受ける場合とでは、必要な手続が異なります。
譲渡で整理する場合は、株主名簿の書換えに加え、譲渡制限株式であれば会社の譲渡承認、株券発行会社であれば株券の取扱いなどを確認する必要があります(会社法128条・130条・133条・136条など)。会社が譲渡を承認しない場合の流れは、譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しないとどうなる?で解説しています。
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」(第3版)も、名義株があれば、弁護士などの専門家に相談のうえ、名義上の株主との間で合意を結ぶなどして、権利関係を明確にしておくべきだとしています。
2つ目の手順で作る確認書の見本を、次の章で紹介します。
4.名義株確認書の書き方と見本
名義株の確認書には、対象となる株式、名義を借りた経緯、当初から誰に株式が帰属していたか、株主名簿の訂正への承諾を書いておくのが基本です。
公的な様式例としては、農林水産省が公開している「農業の経営継承に関する手引き」(同省の令和3年度(2021年度)の委託事業として作成)の様式例13「名義株確認書兼名義書換承諾書」があり、同省の経営継承のページではWord形式でも公開されています。手引きは、支援機関や専門家が実情に応じて記載内容を修正することも想定しています。農業法人向けの資料ですが、一般の株式会社でも書き方の参考になると当事務所では考えています。
次の見本は、この様式例を参考に、名義人だけでなく実際の株主も署名して確認する形にした当事務所の参考例です。法律で定められた様式ではありません。
見本|当初から誰に株式が帰属していたかを資料で確認でき、名義人も協力する場合
名義株確認書兼株主名簿訂正承諾書
株式会社〇〇 御中
株主名簿上の名義人B(以下「甲」といいます。)および実質上の引受人A(以下「乙」といいます。)は、次のとおり確認します。
第1条(対象株式)
貴社の株主名簿に甲名義で記載されている普通株式100株(以下「本株式」といいます。)を本書の対象とします。
第2条(当初の引受けと帰属)
本株式は、〇年〇月〇日の貴社設立の際に、乙が甲の承諾を得て甲の名義を用いて引き受け、払込みの資金も乙が負担したものであり、当初から乙に帰属していたことを、甲乙双方で確認します。
第3条(株主名簿の訂正)
甲は、貴社が本株式について、株主名簿の名義を甲から乙に訂正することを承諾します。
第4条(本書の目的)
本書は、従前からの権利の帰属を確認するものであり、本書の作成によって、甲乙間で新たに株式を売買または贈与するものではありません。
〇年〇月〇日
甲(名義人)
住所 ____________
氏名 ____________(自署) 実印
乙(実質上の引受人)
住所 ____________
氏名 ____________(自署) 印
添付書類の例:甲の印鑑証明書
※当初から乙に株式が帰属していたことを、資料で裏付けられる場合の見本です。確認書を作っただけで、株式の帰属や税務上の取扱いが確定するわけではありません。
農林水産省の様式例の注記は、後日のトラブルを防ぐ観点から、名義人の印鑑証明書を添付してもらうことと、確定日付(文書がその日に存在していたことを公証役場などで証明してもらうもので、記載内容が真実であることまで証明するものではありません)を取得することを勧めています。いずれも法律上一律に求められる要件ではありませんが、後日の紛争に備えて証拠を補強する方法として検討する価値があると考えています。
もっとも、事実関係によっては、確認書だけでは整理できないこともあります。次の章で、注意が必要な場面を見ていきます。
5.名義株を整理するときの注意点(相続・争い・税務)
名義人が亡くなっている場合や、名義人やその相続人が自分こそ株主だと主張している場合は、確認書だけで整理できるとは限りません。
名義人が亡くなっている場合
名義人本人に当時の経緯を確認できないため、名義人の相続人との関係で、誰に何を確認するかから検討することになります。資料が乏しいときは、整理の方法そのものを専門家と相談しておくことをおすすめします。
株主の権利をめぐって争いがある場合
名義人や相続人が株主であると主張している場合は、当事者の合意で整理することは難しくなります。株主であることの確認は、最終的には訴訟(株主権確認訴訟)で争われることもあるため、紛争がある場合は、弁護士による検討が必要になることがあります。
税務に関わる場合
法人税申告書の別表二との関係:名義株の整理によって、たとえば、それまで株主名簿に7人の株主が載っていた会社で、株式が実際には2人に帰属していたと確認されることも考えられます。このような場合は、株主名簿だけでなく、法人税申告書の別表二(同族会社等の判定に関する明細書)との関係も確認が必要です。
国税庁の法人税基本通達1-3-2(名義株についての株主等の判定)は、同族会社の判定の基礎となる株主等は株主名簿などに記載された株主等によるが、その株主等が単なる名義人で、ほかに実際の権利者がいる場合は、その実際の権利者を株主等とする、という取扱いを示しています。
株主名簿の訂正と、新たな株式の譲渡や贈与とでは、税務上の取扱いが異なる可能性があります。確認書の有無だけで判断されるものではないため、実際の権利関係や過去の資料を確認し、顧問税理士と連携して進めることが重要です。
税務の業務範囲:税務申告、贈与税・相続税の課否、株式の評価などの判断は、当事務所では行っていません。税理士へご相談ください。
6.司法書士として実際に確認しているポイント
司法書士法人LSOでも、名義株の整理に関わった際、名義人に実印で押印いただき、印鑑証明書を添えて関係書類を整えたことがあります。
実務では、対象となる株式を正しく特定できるか、確認書の内容が当初の引受けや払込みの資料と合っているか、訂正後の株主名簿が株主総会議事録などの会社の記録と矛盾しないかを、できるだけ確認するようにしています。別表二の記載については、顧問税理士にご確認いただくようお願いすることがあります。
名義株を整理する目的は、株主名簿の名前を変えることだけではなく、なぜその人が株主なのかを、後から資料で説明できる状態にすることだと考えています。
株主名簿や議事録など会社の記録全体の確認については、会社記録DDで確認する登記・定款・株主名簿・議事録でも解説しています。
7.よくあるご質問
- 名義株を整理すると、商業登記は必要ですか?
-
株主の氏名は登記事項証明書に記載される登記事項ではないため、名義株の整理として株主名簿を訂正するだけであれば、通常、商業登記の申請は必要ありません。整理とあわせて役員や定款の変更などを行う場合は、その内容に応じた登記が必要になることがあります。
- 株主名簿が見当たらない場合、名義株の整理はできますか?
-
会社は株主名簿を作成しなければなりませんが(会社法121条)、古い会社では名簿が見当たらないこともあります。その場合、当事務所では、原始定款、株式の申込みや払込みの記録、過去の株主総会議事録、法人税申告書の別表二などから、当時の株主構成を確認することがあります。
8.まとめ
- 名義株とは株主名簿の名義人と実際の株主が異なる株式です。平成2年(1990年)の商法改正前に、発起人の人数をそろえるために生じた例が多くあります。
- 株主の判断基準他人の承諾を得てその名義で株式を引き受けた場合は、実際に引き受けた人が株主とされ、資金の出どころや合意の内容などを総合して判断されます。
- 整理の進め方当時の資料で事実を確認し、確認書を作り、会社が株主名簿を整えます。争いや相続、税務が関わる場合は、弁護士や税理士と相談しながら進めます。
名義株・株主名簿の整理は、司法書士法人LSOへ
名義株の確認書や株主名簿の整備をはじめ、会社法関係の書類の確認・整備についてご相談を承っています。大阪を拠点に、全国からのご相談に対応しています。
関連するご案内
根拠法令・参考資料
- 会社法121条(株主名簿)
- 会社法128条(株券発行会社の株式の譲渡)
- 会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
- 会社法132条(株主の請求によらない株主名簿記載事項の記載又は記録)
- 会社法133条(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
- 会社法136条(株主からの承認の請求)
- 最高裁判所第二小法廷 昭和42年(1967年)11月17日判決(民集21巻9号2448頁)
- 東京地方裁判所「株主権確認訴訟の記載例」
- 中小企業庁「事業承継ガイドライン」(第3版、令和4年(2022年)3月改訂)「名義株の整理」の項
- 農林水産省「農業の経営継承に関する手引き」(様式例13「名義株確認書兼名義書換承諾書」)
- 国税庁「法人税基本通達1-3-2」(名義株についての株主等の判定)
- 加藤真朗編著『非上場株式の相続と会社法―評価・遺産分割・換価・経営参加の法律実務―』(新日本法規出版、2025年(令和7年))第1章「Q10 名義株主から真の株主への名義変更手続」(38~40頁)
- 永渕圭一著『株主リストの添付と株主名簿整備の実務―平成28年商業登記規則改正による―』(日本法令、2016年(平成28年))第2章「⑤ 名義株について」(98~101頁)
本記事は、2026年(令和8年)10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。具体的な株式の帰属や必要な手続は、個別の事情によって異なります。
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