株主の権利とは?種類一覧と自益権・共益権、単独株主権・少数株主権の違い

結論
株主の権利(株主権)とは、株主が、持っている株式にもとづいて会社に対して持つ権利です。配当を受け取る、株主総会で議決権を行使する、会社の議事録や帳簿を見せてもらう、といったものがあります。
これらの権利は、2つの見方で分けられます。
「何のための権利か」で分けると、自益権と共益権。
「株式や議決権をどれだけ持っていれば使えるか」で分けると、単独株主権と少数株主権です。
ただし、実際に権利を使えるかどうかは、権利ごとの条件や定款の定め、公開会社かどうか・取締役会を置いているかといった会社の仕組みによって変わります。
1.株主の権利とは?まず全体像を知ろう
株主になると、会社から配当を受ける権利のほか、株主総会で議決権を行使する権利や、会社の記録を確認する権利などが認められます。その出発点になるのが、会社法105条です。
会社法105条(株主の権利)
株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
1項が挙げる基本的な権利は、次の3つです。
ただし、株主であれば、いつでも配当を請求できるわけではありません。配当をするには株主総会の決議などの手続が必要で、配当できる金額にも上限があります。詳しくは剰余金の配当と分配可能額の解説をご覧ください。
105条以外にも、株主にはさまざまな権利がある
1項に「その他この法律の規定により認められた権利」とあるとおり、株主の権利はこの3つだけではありません。会社の記録を見せてもらう権利や、株主総会を開くよう求める権利なども、会社法の別の条文で認められています。例えば、次のような権利です。
(会社法125条)
(会社法318条)
(会社法433条)
(会社法297条)
※実際に権利を使うには、持株のほかにも、請求の理由や保有期間などの条件があります。
このように、株主の権利には、持っている株式の割合にかかわらず使えるものと、一定の割合以上の議決権や株式を持っていないと使えないものがあります。また、配当を受ける権利と、会社の記録を確認する権利とでは、何のための権利かという目的も違います。
株主の権利を整理する2つの見方
そこで、株主の権利は、一般に次の2つの見方で整理されます。
共益権 会社の経営に参加・監督するための権利
少数株主権 一定の割合・数以上の保有が必要な権利
※いずれも条文の言葉ではなく、権利の性質や使うための条件を整理するための分け方です。
まず、見方1の「目的」による分け方から見ていきます。
2.権利の目的で分ける|自益権と共益権
自益権と共益権の違いは、株主自身が経済的な利益を受けるための権利か、会社の経営に参加・監督するための権利かです。代表的な例は次のとおりです。
・剰余金の配当を受ける権利・残余財産の分配を受ける権利・一定の場合に、会社へ株式の買取りを請求する権利
・株主総会での議決権・株主総会議事録の閲覧・謄写の請求・会計帳簿の閲覧・謄写の請求
例えば、配当を受け取るのは自益権、株主総会で役員の選任に賛成・反対するのは共益権です。
共益権のうち、株主総会議事録と会計帳簿の閲覧は、どちらも会社の記録を見せてもらう権利です。しかし、株主総会議事録は一定の持株割合がなくても閲覧を請求できるのに対し、会計帳簿の閲覧には、原則として議決権または株式の3%以上が必要です。このように、権利を使うための条件に着目した分け方が、見方2の単独株主権と少数株主権です。
3.行使条件で分ける|単独株主権と少数株主権
単独株主権と少数株主権の違いは、一定の割合・数以上の株式(議決権)を持っている必要があるかどうかです。
単独株主権|一定の持株割合がなくても行使できる
持っている株式の割合にかかわらず使える権利です。ただし、無条件ではなく、権利ごとに次のような条件があります。
(会社法125条)
(会社法318条)
(会社法371条)
(会社法847条)
少数株主権|一定割合・一定数以上の保有が必要
「少数」と付いていますが、少しの株式でも使えるという意味ではありません。会社法が定める割合・数以上の株式(議決権)を持つ株主だけが使える権利です。代表的な権利の要件は次のとおりです。
(会社法433条)
(会社法297条)
(会社法358条)
表の割合・期間は、会社法が定める原則的な基準です。定款でこれより低い割合・短い期間を定めている場合は、その定めによります。また、次の場合には、表の要件の一部がかかりません。
主な権利の一覧|2つの分け方を組み合わせる
第2章・第3章で見た主な権利を、2つの分け方で並べると次のとおりです。1つの権利が、2つの分け方の両方に当てはまります。
ただし、この一覧のとおりに権利を使えるとは限りません。株式の内容や定款の定めによって、権利の内容が変わることがあるからです。
4.株式の種類や定款の定めによって権利は変わる
同じ会社の株主でも、持っている株式の種類や定款の定めによって、権利の内容が変わることがあります。主な例は次のとおりです。
種類株式
種類株式は、剰余金の配当や、株主総会で議決権を行使できる事項などについて、内容の異なる株式です。例えば、議決権を制限した株式があります。決議の内容によっては、種類株主総会の決議が必要になることもあります。
ただし、配当を受ける権利と残余財産の分配を受ける権利の両方を一切与えない定款の定めは、効力を持ちません(会社法105条2項)。
非公開会社の「属人的な定め」
非公開会社では、株式の種類を分けなくても、配当・残余財産の分配・議決権の3つについて、株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができます。一般に「属人的な定め」と呼ばれます。
単元未満株式
単元株式数を定款で定めている会社では、1単元に満たない数の株式を持つ株主は、その株式について議決権を行使できません。定款で、そのほかの権利の一部を行使できないと定めることもできます(同条2項)。
投資契約・株主間契約で定める権利
情報提供を受ける権利などは、契約にもとづく権利です。会社法上の株主の権利とは分けて考え、その内容は、それぞれの契約書の定めによります。
5.司法書士として実際に確認しているポイント
株主の権利が問題になる場面では、権利の名前より先に、「誰が、どの株式を、どれだけ持っているか」と「その会社が公開会社か、取締役会を置いているかなど」を正しく押さえることが出発点になります。
当事務所が株主総会・取締役会の運営支援や会社記録DD・議事録整備で、株主からの請求への対応に関わるときに、できるだけ確認するようにしている点の例です。会社の状況によっては、ここに挙げていない点の確認が必要になることもあります。
1請求している人が、株主名簿に載っている株主か
株式を譲り受けた人は、株主名簿に氏名・住所を記載または記録しなければ、その譲渡を会社に対抗できません(会社法130条1項)。
そこで、請求している人が株主名簿に載っているか、載っている株式の数と種類が最新の状態かを確認するようにしています。譲渡制限株式の場合は、譲渡の承認の手続が済んでいるかもあわせて確認することがあります。
2持株の割合を、条文どおりの分母で計算しているか
少数株主権の割合は、権利ごとに「議決権で数えるか、株式数で数えるか」と「分母から何を除くか」が条文で決まっています。例えば会社法433条1項では、議決権で数えるときは議決権を全く行使できない株主の議決権を、株式数で数えるときは自己株式を、それぞれ分母から除きます。株主総会の招集の請求では、その議題について議決権を行使できない株主の議決権を分母から除きます(297条3項)。
このように2つの割合は一致しないことがあるため、分けて計算するようにしています。
3公開会社か、取締役会設置会社かなどを、登記事項証明書で確かめているか
権利を使うための条件は、会社によって変わります。次の3つは、いずれも登記事項証明書で確かめられる事項です(会社法911条3項7号・15号・17号)。
(すべての株式に譲渡制限の定めがあるか)
登記事項証明書の監査役の欄に「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」と記録されている会社は、会社法2条9号の監査役設置会社に当たらず、取締役会議事録の閲覧に裁判所の許可は要りません(371条2項・3項)。欄の名前だけで判断しないよう、定款とあわせて確認するようにしています。
4定款にしか書かれていない定めを、最新の定款で確かめているか
次のような定めは、登記事項証明書には記録されません。そのため、最新の定款で確認するようにしています。
- 持株の割合や保有期間を、会社法の基準より低く・短くする定め
- 非公開会社で、株主ごとに異なる取扱いをする定め(会社法109条2項)
- 単元未満株主の権利を制限する定め(189条2項)
定款を変更した株主総会の決議が、保管されている定款に反映されていないこともあるため、株主総会議事録とあわせて確認することがあります。
株主から請求を受けた会社も、請求をしようとする株主も、まず「その請求ができる株主か」を、株主名簿・登記事項証明書・定款の3つで確かめておくことが、手続の誤りを防ぐうえで大切だと考えています。
なお、請求に応じるかどうかをめぐって会社と株主の間で争いがある場合や、訴訟になっている場合は、弁護士へのご相談が必要になることがあります。
6.よくあるご質問
- 1株しか持っていなくても、株主の権利はありますか?
-
はい。例えば株主総会議事録の閲覧・謄写は、一定の持株割合がなくても請求できます。ただし、株主名簿の閲覧・謄写では請求の理由を明らかにする必要があるなど、権利ごとの条件があります。また、単元株式数を定めている会社で1単元に満たない株式しか持っていない場合は、その株式について議決権がなく、定款でほかの権利の一部が制限されていることもあります。
- 株主なら、会社の会計帳簿を自由に見ることができますか?
-
いいえ。会計帳簿の閲覧・謄写の請求には、原則として議決権の3%以上または発行済株式(自己株式を除く)の3%以上を持っていることが必要で、請求の理由を明らかにする必要もあります(会社法433条1項)。また、請求の目的などによっては、会社が請求を拒めることもあります(同条2項)。
- 少数株主権には、必ず6か月の保有期間が必要ですか?
-
いいえ。例えば会計帳簿の閲覧・謄写の請求には、会社法433条上、6か月の継続保有の要件はありません。株主総会の招集の請求のように6か月の要件がある権利でも、非公開会社ではその要件がありません。必要な期間は、権利ごと・会社ごとに異なります。
- 会社法でいう「公開会社」は、上場会社のことですか?
-
いいえ。会社法上の公開会社かどうかは、発行する株式の全部について、譲渡に会社の承認が必要と定款で定めているかどうかで決まります(会社法2条5号)。一部の株式でも譲渡制限を定めていなければ公開会社に当たるため、上場していなくても公開会社に当たる場合があります。
7.まとめ|「目的」と「行使条件」の2つで考える
- 目的で分ける:自益権と共益権配当や残余財産の分配を受けるなど、株主自身が利益を受けるための権利が自益権、議決権や議事録の閲覧など、会社の経営に参加・監督するための権利が共益権です。
- 条件で分ける:単独株主権と少数株主権持っている株式の数にかかわらず使える権利が単独株主権、議決権や株式数の一定割合以上を持つ株主だけが使える権利が少数株主権です。
- 実際に使えるかは個別に確かめる保有期間や請求の理由などの条件は権利ごとに違い、定款の定め、株式の内容、取締役会や監査役を置いているかなどの会社の形によっても変わります。
根拠条文(会社法)
- 会社法2条5号(公開会社の定義)
- 会社法2条9号(監査役設置会社の定義)
- 会社法105条(株主の権利)
- 会社法108条(異なる種類の株式)
- 会社法109条(株主の平等)
- 会社法125条(株主名簿の備置き及び閲覧等)
- 会社法130条(株式の譲渡の対抗要件)
- 会社法189条(単元未満株式についての権利の制限等)
- 会社法297条(株主による招集の請求)
- 会社法303条(株主提案権)
- 会社法304条
- 会社法305条
- 会社法318条(議事録)
- 会社法358条(業務の執行に関する検査役の選任)
- 会社法371条(議事録等)
- 会社法433条(会計帳簿の閲覧等の請求)
- 会社法847条(株主による責任追及等の訴え)
- 会社法911条3項(株式会社の設立の登記)
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本記事について
本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法をもとに、株式会社の株主の権利を原則的な内容で解説したものです。個別の権利の行使には、定款、株式の内容、機関設計、保有期間、請求の方法などによる条件や例外があります。
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