株主総会の検査役選任申立てとは?議決権1%の要件と手続を解説|会社法306条

株主総会の検査役とは 選任申立ての要件と手続 議決権1%の要件と、株主総会の前にする申立て
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株主の権利・実務解説シリーズ共益権・少数株主権

結論

株主総会の検査役選任申立ては、株主総会の招集や採決の手続が実際にどのように行われたかを調べて報告する人(検査役)を、裁判所に選んでもらう制度です(会社法306条)。申し立てることができるのは、会社自身と、定款で緩和していない限り総株主の議決権の1%以上を持つ株主です(公開会社では、申立ての6か月前から引き続き持っていることも必要)。

申立ては、調べてもらいたい株主総会が開かれる前に、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所にします。

1.株主総会の検査役とは?招集の手続と決議の方法を調べる第三者

株主総会の検査役(総会検査役)は、株主総会の招集の手続と決議の方法を調べて報告するために、裁判所が選ぶ人です。

まずは、制度の根拠となる会社法306条1項を確認してみましょう。

会社法306条1項

株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。

出典:e-Gov法令検索|会社法306条1項

条文のとおり、検査役が調べるのは、株主総会の「招集の手続」と「決議の方法」です。条文には、誰が(会社または一定の議決権を持つ株主)、いつ(その株主総会の前に)、どこへ(裁判所へ)申し立てるかも定められています。

なお、会社の業務や財産の状況を調べる検査役(会社法358条)もありますが、こちらは業務の執行に不正の行為などがあると疑うに足りる事由がある場合に使う、別の制度です(業務執行検査役の記事で解説しています)。

2.Aさんの事例|取締役の解任を審議する株主総会の手続が心配なとき

具体例|X社の議決権の5%を持つAさんの場合架空の非公開会社X社を想定しています

X社は、東京都千代田区に本店がある非公開会社(発行するすべての株式に譲渡制限がある会社)で、Aさんは総株主の議決権の5%を持っています。Aさんは、取締役Bさんの解任を審議してもらうため、X社に臨時株主総会の招集を請求していました(シリーズ第1回の事例です)。

その後、X社の取締役は、「取締役B解任の件」を議題とする臨時株主総会を招集することを決めました。ところが、X社の株主の間では、Bさんを支持する株主と解任に賛成する株主の対立が続いています。Aさんは、「議決権を持つすべての株主に、期限までに招集通知が発せられるのか」「委任状や賛否は正しく数えられるのか」と心配しています。

議決権5%を持つX社の株主Aさんが、臨時株主総会の手続について机で考え込んでいるイラスト
Aさんは、この臨時株主総会の手続を、中立の立場の人に調べてもらうことができるのでしょうか?

このようなときに検討できるのが、検査役の選任の申立てです。シリーズの第1回の株主総会招集請求権は株主総会を「開いてもらう」ための権利、第2回の株主提案権は議題や議案を「提案する」ための権利でした。今回の検査役の選任の申立ては、開かれる株主総会の手続を「調べてもらう」ための制度です。

3.申立ての要件|議決権1%と、公開会社での6か月の継続保有

株主が申し立てるには、定款で緩和していない限り、総株主の議決権の1%以上が必要です。公開会社では、その議決権を申立ての6か月前から引き続き持っていることも必要です。

冒頭で確認した会社法306条1項の要件は、会社に取締役会があるかどうかと、公開会社かどうかによって、2項で読み替えられます。条文を確認してみましょう。

会社法306条2項

公開会社である取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」と、「有する」とあるのは「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とし、公開会社でない取締役会設置会社における同項の規定の適用については、同項中「株主総会において決議をすることができる事項」とあるのは、「第二百九十八条第一項第二号に掲げる事項」とする。

出典:e-Gov法令検索|会社法306条2項

2項の前半は、公開会社(発行する株式の全部または一部に譲渡制限がない会社。上場しているかどうかとは別の区分です)である取締役会設置会社に、6か月の継続保有を求めています。公開会社は取締役会を置かなければならないため(会社法327条1項1号)、公開会社には、すべてこの前半の読替えが適用されます。後半は、非公開会社のうち取締役会設置会社について、議決権の数え方だけを読み替えています。まとめると、次のとおりです。

要件公開会社
(取締役会あり)
非公開会社
(取締役会あり)
取締役会なし
議決権の割合
公開会社(取締役会あり)総株主の議決権の1%以上
非公開会社(取締役会あり)総株主の議決権の1%以上
取締役会なし総株主の議決権の1%以上
保有期間
公開会社(取締役会あり)申立ての6か月前から引き続き保有
非公開会社(取締役会あり)継続保有の要件なし
取締役会なし継続保有の要件なし
総株主の議決権から除く株主
公開会社(取締役会あり)その株主総会の目的である事項(会社法298条1項2号)の全部について議決権を行使できない株主
非公開会社(取締役会あり)その株主総会の目的である事項(298条1項2号)の全部について議決権を行使できない株主
取締役会なし株主総会で決議できる事項の全部について議決権を行使できない株主
定款による緩和
公開会社(取締役会あり)1%より低い割合、6か月より短い保有期間を定款で定めることができる
非公開会社(取締役会あり)1%より低い割合を定款で定めることができる
取締役会なし1%より低い割合を定款で定めることができる

議決権1%は、株式の数ではなく議決権の数で計算

1%の基準は、株式の数ではなく議決権の数です。上の表の「総株主の議決権から除く株主」の議決権は、分母に数えません。たとえば、分母となる議決権の総数が10,000個なら、1%は100個です。議決権を制限した種類株式を発行している会社では、定款で株式の内容を確認したうえで計算します。

共同での申立てと、会社自身による申立て

1人では1%に届かなくても、複数の株主の議決権を合わせて1%以上になる場合は、その株主が共同で申し立てることができます(東京地方裁判所「チェックリスト(総会検査役選任申立事件)」)。また、306条1項は株式会社自身も申し立てることができると定めているため、会社が申し立てる場合には、議決権の要件はありません。

株主提案権と違い、「300個以上」で足りるという要件はありません。取締役会設置会社での株主提案権(会社法303条・305条)の要件は「1%以上または300個以上」ですが、306条の要件は割合(1%)だけです。

なお、旧有限会社である特例有限会社には、会社法301条から307条までの規定が適用されないため(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律14条5項)、306条による申立てはできません。

Aさんの場合:X社は非公開会社なので、取締役会を置いているかどうかにかかわらず、6か月の継続保有は求められません。Aさんの議決権5%は1%以上に当たるため、議決権の数え方に特別な事情がなければ、Aさんは単独で申し立てることができます。

改正の審議:法制審議会の部会では、申立てができる者に取締役・執行役・監査役を加える案が審議されています(法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会 部会資料14、2026年(令和8年)8月26日の第17回会議)。2026年(令和8年)10月時点で、306条は改正されていません。

4.申立ての手続|株主総会の前に、本店所在地の地方裁判所へ

申立ては、調べてもらいたい株主総会の前に、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に申立書を提出して行います(会社法868条1項)。

申立てから調査までの主な流れは、次のとおりです。

  1. 調べてもらいたい株主総会の確認

    株主総会の日時と議題を、招集通知などで確認します。東京地方裁判所のチェックリストでは、申立ての趣旨の例として「関係人の令和○○年○○月○○日開催予定の臨時株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため検査役の選任を求める」が示されています。

  2. 申立書と証拠書類の準備

    同じチェックリストでは、証拠書類の例として、会社の登記事項証明書、定款、議決権の要件を示す資料(株主名簿、会社が発行した証明書、株券、上場会社の株式では個別株主通知済通知書)、総会の開催を示す資料(招集通知、招集を決めた取締役会の議事録)が挙げられています。

  3. 裁判所による検査役の選任

    裁判所が検査役を選びます。どのような場合に選ばれるかは、この後、会社法306条3項で確認します。

  4. 招集の手続・決議の方法の調査と、裁判所への報告

    選ばれた検査役が調査を行い、その結果を裁判所に報告します。

306条3項は、次のように定めています。

会社法306条3項

前二項の規定による検査役の選任の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

出典:e-Gov法令検索|会社法306条3項

つまり、議決権などの要件を満たした適法な申立てであれば、裁判所は検査役を選ばなければなりません。業務の執行に関する検査役(会社法358条1項)と違い、306条1項は、不正の疑いがあることを申立ての要件にしていません。

東京地方裁判所では、総会まで1か月以内の申立ては事前に連絡

東京地方裁判所の商事部(民事第8部)は、申立日が株主総会の日まで1か月以内の場合には、事前に連絡するよう案内しています(東京地方裁判所 民事第8部「よくある質問(Q&A)」)。非公開会社では、書面や電磁的方法による議決権の行使を定めた場合や電子提供措置をとる場合(いずれも2週間前まで)を除き、招集通知は株主総会の日の1週間前までに発すればよく、取締役会を置かない会社では定款でさらに短くすることもできます(会社法299条1項、325条の4第1項、非公開会社の招集期間)。そのため、招集通知が届いてから総会まで時間がないこともあります。

申立ての費用と、検査役の報酬

申立てには、裁判所所定の申立手数料(収入印紙)と予納郵券(郵便切手)が必要です。額は、申立先の裁判所の案内で確認します(東京地方裁判所の場合は、チェックリストと民事第8部「よくある質問(Q&A)」に記載があります)。

検査役の報酬は、この手数料や郵券とは別のものです。報酬は、会社が検査役に支払うものとして、裁判所がその額を定めることができます(会社法306条4項)。申し立てる人が、申立ての際に報酬などの費用を前もって納めるよう求められるかどうかも、申立先の裁判所に確認します。

Aさんの場合:X社の本店は東京都千代田区にあるので、申立先は東京地方裁判所です。臨時株主総会の日より前に申し立て、申立日が株主総会の日まで1か月以内になる場合は、事前に裁判所へ連絡します。

5.検査役が調べること|調査の内容と、裁判所が命じる措置

検査役は、株主総会の招集の手続と決議の方法を調べ、その結果を書面などで裁判所に報告します(会社法306条5項)。報告を受けた裁判所は、必要があると認めるときは、取締役に株主総会の招集などを命じます。

何が「招集の手続」と「決議の方法」に当たるかは、会社法の規定から考えることができます。たとえば、次のような点です。

調査の報告と、裁判所が命じる措置

検査役は、裁判所に報告したときは、報告の書面の写しを会社に交付します(電磁的記録で報告したときは、記録された内容を提供します)。申立てをしたのが株主であれば、その株主にも交付・提供します(会社法306条7項)。報告を受けた裁判所の措置は、会社法307条1項が定めています。

会社法307条1項

裁判所は、前条第五項の報告があった場合において、必要があると認めるときは、取締役に対し、次に掲げる措置の全部又は一部を命じなければならない。

一 一定の期間内に株主総会を招集すること。

二 前条第五項の調査の結果を株主に通知すること。

出典:e-Gov法令検索|会社法307条1項

裁判所が1号の株主総会の招集を命じた場合、取締役は、その株主総会で検査役の報告の内容を開示しなければなりません。あわせて、取締役(監査役設置会社では取締役と監査役)は、報告の内容を調べ、その結果をその株主総会に報告します(会社法307条2項・3項)。

検査役が選ばれても、株主総会が中止されたり、決議が自動的に無効になったりするわけではありません。決議の効力を争うには、決議の取消しの訴え(会社法831条1項)など、別の手続が必要です。

6.会社側の対応|株主の申立てで検査役が選ばれたときの備え

株主の申立てで検査役が選ばれたときは、会社は、検査役の調査に応じられるよう、招集手続の資料と株主総会当日の運営を見直しておくことが大切です。

取締役などが検査役の調査を妨げたときは、100万円以下の過料の対象になります(会社法976条5号)。

あわせて、招集通知の議題・議案と当日に審議する内容が合っているか(議題と議案の違い)、受付での委任状の確認や賛否の集計の方法が決まっているかを、事前に確認しておきます。株主との対立が深まっている場合は、総会の運営について弁護士に相談しておくと安心です。

7.司法書士として実際に確認しているポイント

司法書士法人LSOでは、株主総会・取締役会の運営支援で株主総会の書類を整えるとき、定款・招集通知・議決権の集計・議事録が互いに食い違っていないかを、できるだけ確認するようにしています。

検査役が選ばれた株主総会に関わる場合も、確認する点は変わりません。主な点の例です。

1定款と株主名簿

定款と株主名簿で、議決権を行使できる株主と議決権の数、種類株式の有無、定足数・決議の要件を確認するようにしています。

2招集の決定と招集通知

招集を決めた機関とその議事録、招集通知の内容と、招集通知を発した日が法令や定款で定める期限に間に合っているかを確認するようにしています。

3当日の受付と集計

委任状の有効性、同じ議決権を二重に数えていないか、出席した株主の数と議決権の数が合っているかを確認するようにしています。

4決議後の議事録と登記

議事録の記載が集計の結果と合っているかを確認し、取締役の解任などが決議された場合は、2週間以内にする役員変更の登記(会社法915条1項)の要否を確認するようにしています。

当事務所の考え方

検査役の選任そのものは、登記をする事項ではありません。ただ、検査役の調査の対象となった株主総会では、後で決議の効力が争われることも考えられます。当事務所では、そのような株主総会ほど、招集通知・議事録・登記の申請書の記載をそろえておくことが大切だと考えています。

当事務所の運営支援には、裁判所への申立てや、株主との紛争への対応は含まれません。検査役の選任の申立てを考えている場合や、株主総会の運営をめぐって争いになっている場合は、弁護士へのご相談をご検討ください。

8.よくあるご質問

株主総会が終わった後でも、検査役の選任を申し立てられますか?

申し立てられません。会社法306条1項は、「当該株主総会に先立ち」申し立てると定めています。終わった株主総会の手続に問題があると考える場合は、決議の日から3か月以内に提起する決議の取消しの訴え(会社法831条1項)など、別の手続を検討することになります。

検査役を選ぶ裁判所の決定に、会社は不服を申し立てられますか?

申し立てられません。会社法874条1号は、検査役の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができないと定めています。

種類株主総会についても、検査役の選任を申し立てられますか?

申し立てることができます。306条は種類株主総会に準用され、その場合、議決権1%の基準となる「総株主」は、その種類の株式の株主に限られます(会社法325条)。

9.まとめ|検査役の選任は、株主総会の手続を裁判所が選ぶ検査役に調べてもらう制度

  1. 申立てができる者会社自身と、総株主の議決権の1%以上を持つ株主です(定款で緩和できます)。公開会社では、申立ての6か月前から引き続き持っていることも必要です。
  2. 申立ての時期と申立先調べてもらいたい株主総会の前に、本店所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。要件を満たす適法な申立てであれば、裁判所は検査役を選ばなければなりません。
  3. 検査役の役割招集の手続と決議の方法を調べて、裁判所に報告します。検査役が選ばれても、株主総会が中止されたり、決議が自動的に無効になったりするわけではありません。

Aさんの場合も、検査役の選任はBさんの解任を決めるものではなく、解任を審議する臨時株主総会の手続を調べてもらうためのものです。

シリーズ|株主の権利・実務解説

株主の権利を一つずつ取り上げ、条文と実務の流れを解説するシリーズです。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

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本記事について

本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法と、東京地方裁判所の公表資料などをもとに、司法書士法人LSOが株式会社(特例有限会社を除きます)における総会検査役の選任の申立ての一般的な取扱いを整理したものです。申立ての可否や費用の扱いは、定款、株式の内容、申立先の裁判所の運用などによって異なります。Aさん・Bさん・X社は架空の事例です。なお、申立てができる者の範囲については、法制審議会の部会で見直しが審議されていますが、改正の内容は確定していません。

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