【ひな形付き】株主名簿の閲覧・謄写請求と誓約書|会社側の実務対応

【ひな形付き】株主名簿の閲覧・謄写請求と誓約書 会社側の実務対応
HOME›コラム›企業法務の基礎知識›【ひな形付き】株主名簿の閲覧・謄写請求と誓約書|会社側の実務対応

結論

株主や会社の債権者から「株主名簿を見せてほしい・写させてほしい」と求められたとき(株主名簿の閲覧・謄写の請求)、会社は、請求の理由を確認し、会社法125条3項が定める4つの場合(請求を拒むことができる場合)のどれにも当たらなければ、請求に応じなければなりません。

株主の住所などが目的外に使われないよう、誓約書の提出をお願いすることは考えられます。ただし、誓約書を出さないこと自体はこの4つに挙げられていないため、それだけを理由に断ることはできません。

1.株主名簿の閲覧・謄写の請求とは?まず会社法125条2項を確認

株主名簿の閲覧・謄写の請求は、株主と会社の債権者が、会社の本店に備え置かれた株主名簿を見たり、写したりすることを会社に求める権利です。

株主名簿には、株主の氏名・名称と住所、持株数、株式を取得した日などが記載されます(会社法121条)。会社は、この株主名簿を本店(株主名簿管理人がある場合は、その営業所)に備え置く必要があり(会社法125条1項)、閲覧・謄写の請求については同じ条の2項が定めています。まずは条文を確認してみましょう。

会社法125条2項

株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。

一 株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求

二 株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

出典:会社法125条|e-Gov法令検索。「電磁的記録」は電子データのことで、「法務省令で定める方法」は、記録された事項を紙面または画面に表示する方法です(会社法施行規則226条6号)。

条文から読み取れる要件は、次の3点です。

  • 請求できる人:株主と、会社の債権者です。株主について、持株数や保有割合の要件は定められていません(原則として議決権または発行済株式の3%以上を持つ株主に限られる会計帳簿の閲覧請求とは、この点が異なります)。
  • 請求できる時間:会社の営業時間内であれば、いつでも請求できます。
  • 請求の方法:請求する人は、請求の理由を明らかにする必要があります。

このほか、親会社の株主など(親会社社員)も、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、株主名簿の閲覧・謄写を請求できます(会社法125条4項)。

「閲覧」は株主名簿を見ること、「謄写」は請求した人が自分で書き写すことです。実務書では、謄写の方法として、書き写すほかに写真撮影なども挙げられています(東京証券代行株式会社『改訂版 これ1冊でOK! 中小企業の株式実務』〔日本法令〕。以下、この書籍は『中小企業の株式実務』と表記します)。

株主が行使できる権利の全体像は、株主の権利とは?種類一覧と単独株主権・少数株主権の違いで整理しています。

2.会社が請求を拒めるのは?会社法125条3項の4つの拒絶事由

会社が株主名簿の閲覧・謄写の請求を拒めるのは、会社法125条3項が定める4つの事由のどれかに当たる場合です。

条文は次のとおりです。

会社法125条3項

株式会社は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない。

一 当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。

二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

三 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。

四 請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

出典:会社法125条|e-Gov法令検索。「権利の確保又は行使に関する調査」は、株主や債権者としての権利を守ったり使ったりするための調べもののことです。

たとえば、名簿に載った住所を名簿業者に売るための請求は、3号に当たり得ます。一方で、経営陣と意見が対立している株主からの請求であること自体は、4つの事由に挙げられていません。

株主の住所などの個人情報が含まれることも、それだけでは拒む理由になりません。個人情報保護委員会は、会社法に基づく適法な閲覧請求に応じることは個人情報保護法27条1項1号の「法令に基づく場合」に当たり、全株主の同意がないことは閲覧請求を拒否する理由にはならないとしています(個人情報保護委員会 Q&A Q7-15)。

取締役などが正当な理由がないのに株主名簿の閲覧・謄写を拒んだときは、100万円以下の過料の対象になります(会社法976条4号)。

拒絶事由に当たるかどうかの判断が必要な場合や、請求をめぐって株主と争いになっている場合は、弁護士へのご相談をご検討ください。

3.【ひな形】株主名簿閲覧・謄写請求書

会社法125条は、請求をどの書式で行うかまでは定めていません。実務では、請求の理由と対象を確認するため、会社所定の請求書を出してもらうのが一般的とされ、閲覧の理由としては、株主権の共同行使(他の株主と一緒に権利を行使すること)などが想定されるとされています(『中小企業の株式実務』)。

請求書には、会社法125条2項が求める「請求の理由」を書く欄を設けます。会社が株主に渡す請求書の記載例は、次のとおりです。

株主名簿閲覧・謄写請求書の記載例

令和  年  月  日

株主名簿閲覧・謄写請求書

(該当する□にレ印を付けてください)

株式会社〇〇〇〇 御中

請求者

住所:〒

氏名(名称):

連絡先:

私は、会社法第125条第2項に基づき、下記のとおり貴社株主名簿の閲覧・謄写を請求します。

記

1.請求者の資格:□ 株主 □ 債権者

2.希望する方法:□ 閲覧 □ 謄写

3.閲覧・謄写を希望する株主名簿の範囲・内容:

4.請求の理由(具体的にご記入ください):

(記入例:次回の定時株主総会で私が提案する議案について、他の株主に委任状を勧誘するため。)

以上

【お願い】閲覧・謄写の際は、ご本人であることを確認できる書類(個人の方は運転免許証など顔写真付きの証明書、法人の方は登記事項証明書)をお持ちください。代理人の方がお越しになる場合は、代理権を証する書類(委任状など)もお持ちください。

※『中小企業の株式実務』の書式を参考に、当事務所が作成した記載例です。記入例の理由は一例で、実際の理由は請求する人の事情に応じて記載します。

株主名簿閲覧・謄写請求書をダウンロード(Word形式)記入例を除いた空欄のひな形です。

4.【ひな形】株主名簿の閲覧・謄写に関する誓約書

株主名簿には株主の住所や氏名が載っているため、実務では、閲覧・謄写で知った情報を閲覧の目的以外に使わないことを約束する誓約書を、請求書とあわせて出してもらうことが考えられるとされています(『中小企業の株式実務』)。

請求する人の権利の行使を妨げないよう、目的を「請求の理由として明らかにした目的」に結び付けた記載例は、次のとおりです。

誓約書の記載例

令和  年  月  日

誓 約 書

株式会社〇〇〇〇 御中

誓約者

住所:〒

氏名(名称):

私は、貴社に対する株主名簿の閲覧・謄写の請求によって知り得た、株主の氏名・名称、住所その他の貴社株主名簿に記載された情報について、当該請求の理由として明らかにした目的以外には使用しないことを誓約します。

本誓約は、会社法その他の法令に基づく権利の行使を制限する趣旨のものではありません。

以上

【お願い】本誓約書は、株主名簿閲覧・謄写請求書とあわせてご提出ください。

※『中小企業の株式実務』の書式を参考に、権利の行使を妨げない文言に整えた当事務所の記載例です。

誓約書をダウンロード(Word形式)記入例を除いた空欄のひな形です。

誓約書は、法律で提出が義務付けられた書類ではありません。会社が提出をお願いすることはできますが、出さないこと自体は、第2章で確認した会社法125条3項の4つの場合に挙げられていません。

誓約書の文言を広げすぎない

なお、誓約書を使うときの注意点として、情報の使い道を制限する文言は、請求の理由として示された権利の行使を妨げない範囲にとどめることが大切です。

たとえば、株主総会の議案について他の株主と連絡を取ることが請求の理由なら、他の株主への連絡そのものを禁じる条項は、その権利の行使を妨げることになりかねません。

5.会社側の対応の流れ|申出の受付から閲覧の実施まで

株主名簿の閲覧・謄写の申出を受けてから、閲覧を実施するまでの会社側の流れの例は、次のとおりです。

  1. 申出の受付株主や債権者から、株主名簿を閲覧・謄写したいという申出を受けます。
  2. 請求書と誓約書の提出のお願い第3章・第4章の請求書と誓約書の提出をお願いします(どちらも法律が定める書式ではなく、誓約書の提出は任意です)。
  3. 請求者と請求の理由の確認請求者が株主名簿に載っている株主か、会社の債権者か(親会社社員の場合は、裁判所の許可を得ているか)を確認し、請求の理由を確認します。
  4. 拒絶事由の確認請求の理由が、会社法125条3項の4つの事由のどれかに当たらないかを確認します。
  5. 閲覧の準備閲覧の日時と場所を調整し、閲覧に供する株主名簿を準備します。株主や債権者は営業時間内であれば「いつでも」請求できるため(会社法125条2項)、日時の調整が閲覧の先延ばしにならないよう注意します。
  6. 本人確認と閲覧・謄写の実施本人確認書類(代理人の場合は委任状など)を確認してから閲覧・謄写をしてもらい、対応の内容を記録します。

※『中小企業の株式実務』の手続の流れを参考に、当事務所で整理したものです。

手順5で注意したいのは、株主名簿に、会社法121条の記載事項以外の情報を書き込んでいる場合です。実務書では、法定の記載事項以外で株主名簿に記載している事項(配当金の振込口座の情報など)があるときは、閲覧の目的に関係のないものを閲覧に供しないよう留意するとされています(『中小企業の株式実務』)。

株主名簿以外の会社の書類(定款・議事録・計算書類など)は、請求できる人や条件が書類ごとに違います。書類ごとの違いは、株主・債権者に開示すべき会社書類一覧で確認できます。

6.司法書士として実際に確認しているポイント

閲覧・謄写の請求を受けてから慌てないためには、株主名簿が会社法121条の記載事項に沿って整っていることが前提になります。

当事務所が株主総会の準備や会社記録の確認・議事録の整備で株主名簿を見るときに、できるだけ確認するようにしている点の例です。

  • 株主の変動の反映:増資・株式の譲渡・相続などによる株主の変動が、株主名簿に反映されているか。
  • 株式の種類と数:種類株式を発行している会社では、株主名簿に記載された株式の種類ごとの合計数が、登記事項証明書に記載された発行済株式の種類ごとの数や議事録と合っているか。
  • 法定の記載事項とそれ以外の情報:会社法121条の記載事項と、会社が独自に管理している情報(連絡先・振込口座など)が、区別できる形になっているか。

当事務所は、株主名簿や議事録の整備、会社法の手続、商業登記を中心にお手伝いしています。閲覧・謄写をめぐる株主との交渉や裁判手続は、当事務所の業務には含まれません。

7.よくあるご質問

請求書の「請求の理由」に「株主の権利を行使するため」としか書かれていない場合は、どうすればよいですか?

会社法125条2項は、請求の理由を明らかにして請求することを求めています。東京地方裁判所民事第8部(商事部)が公表している「株主名簿の閲覧謄写の仮処分」の記載例・留意事項は、請求の理由は、会社が閲覧・謄写の目的を認識できる程度に具体的に示す必要があると解されている、としています。理由の例として挙げられているのは、少数株主権を行使するための同調者集め、委任状の勧誘、公開買付けの勧誘、株式を買い集めるために他の株主を把握することなどです。理由がこれより抽象的なときは、どのような目的で閲覧したいのかを具体的に書いてもらうよう、請求者に求めることが考えられます。

株主名簿をExcelなどの電子データで作っている場合は、どう見せればよいですか?

株主名簿を電子データで作っている場合は、記録された事項を紙面または画面に表示したものを閲覧・謄写してもらいます(会社法125条2項2号、会社法施行規則226条6号)。画面で見てもらうか、印刷して見てもらう方法が考えられます。

8.まとめ|株主名簿の閲覧・謄写の請求を受けたとき

  1. 請求できる人と方法株主(持株数の要件なし)と会社の債権者が、営業時間内に、請求の理由を明らかにして請求できます(会社法125条2項)。
  2. 会社が請求を拒める4つの場合会社が拒めるのは、請求が株主・債権者としての権利の確保や行使のための調査以外の目的によるとき、会社の業務を妨げたり株主の共同の利益を害したりする目的によるとき、名簿で知った事実を利益を得て第三者に知らせる目的によるとき、請求者が過去2年以内にそうした通報をしたことがあるときに限られます(会社法125条3項)。株主の個人情報が含まれることだけでは、拒む理由になりません。
  3. 請求書と誓約書は実務上の書類請求書と誓約書は、請求の理由や情報の扱いを確認するための実務上の書類です。誓約書の文言は、請求の理由として示された権利の行使を妨げない範囲にとどめます。

株主名簿の整備・株主総会の準備のご相談

司法書士法人LSOでは、株主名簿の整備、会社法の手続、株主総会の準備、登記の申請をお手伝いしています。

お問い合わせ料金表を見る

当サイトの記事で当事務所が作成した図表は、出典(司法書士法人LSO・記事タイトルと記事へのリンク)を記載していただければ、ご連絡なく転載していただけます。条件は引用・転載・リンクについてをご覧ください。

司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度・2026年度)。

詳しいプロフィールを見る

本記事について

2026年(令和8年)10月時点の会社法・会社法施行規則などをもとにした一般的な説明です。記載例は、個別の事情に応じて調整してください。

参考資料:会社法121条・125条・976条(e-Gov法令検索)/会社法施行規則226条(e-Gov法令検索)/個人情報保護委員会 Q&A Q7-15/東京地方裁判所民事第8部(商事部)「株主名簿の閲覧謄写の仮処分」記載例・留意事項(裁判所ウェブサイト)/東京証券代行株式会社『改訂版 これ1冊でOK! 中小企業の株式実務』(日本法令)「株主名簿の閲覧請求権、閲覧拒否事由」の項と書式。

来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています

対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。

商業登記・企業法務 料金表を見る