取締役会への報告の省略とは?会社法372条の要件と、省略できない3か月に1回の職務執行の報告

取締役会への報告の省略とは 会社法372条の要件と、省略できない3か月に1回の職務執行の報告
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結論

取締役会では、会社のことを決める「決議」のほかに、取締役会に知らせるべきことがらを伝える「報告」も行われます。報告は、報告する取締役などがその内容を取締役(会社によっては監査役も)の全員に通知すれば、取締役会で改めて行わなくてよくなります。この仕組みは、会社法372条(取締役会への報告の省略)に定められています。

ただし、代表取締役などが3か月に1回以上、取締役会に行わなければならない「自己の職務の執行の状況」の報告は、この方法では省略できません(会社法372条2項・363条2項)。

そのため、取締役会を置いている会社は、少なくとも3か月に1回は実際に取締役会を開き、この報告を行う必要があります。決議を、会社法370条の「取締役会の決議の省略」(一般に「みなし決議」と呼ばれます)で済ませている場合でも同じです。

1.取締役会への報告の省略とは|会社法372条の条文

取締役会への報告の省略とは、取締役会で報告すべきことがらを、取締役全員(監査役設置会社では、取締役と監査役の全員)に通知したときに、その事項を取締役会で報告しなくてよいとする制度です。

会社法372条は、1項で報告の省略を認め、2項でその例外を定めています。まずは条文を確認してみましょう。

会社法372条(取締役会への報告の省略)〔抜粋〕

1 取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。

2 前項の規定は、第三百六十三条第二項の規定による報告については、適用しない。

「第三百六十三条第二項の規定による報告」は、代表取締役などが3か月に1回以上行う職務執行の状況の報告のことです(2章)。3項(指名委員会等設置会社についての読替えの規定)は省略しています。出典:会社法372条|e-Gov法令検索

1項を読むと、報告の省略は次の3つの要素で組み立てられていることが分かります。

要素 条文の定め
誰が通知するか 取締役・会計参与・監査役・会計監査人
誰に通知するか 取締役の全員。監査役設置会社では、取締役と監査役の全員
何が不要になるか 通知した事項を、取締役会で報告すること

通知先に監査役が含まれるかは、その会社が「監査役設置会社」に当たるかで決まります。監査役設置会社は会社法2条9号で定義されており、監査役を置いていても、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限る旨を定款で定めている会社は、監査役設置会社に当たりません。その場合、372条1項の通知先は取締役の全員です。

報告の省略に、定款の定めや取締役の同意はいらない

372条1項の要件は、報告すべき事項を通知先の全員に通知することです。条文には、定款の定めや取締役の同意を求める文言はありません。そのため、定款に定めがない会社でも、取締役の同意を得ることなく、取締役会への報告を省略できます。

省略できる報告の例

たとえば、競業取引や利益相反取引(会社法356条1項各号の取引)をする場合、取締役は、取引の前に取締役会の承認を受け(会社法365条1項)、取引の後には、遅滞なく、その取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(同条2項)。このうち、取引の後の報告は372条2項の例外に当たらないため、通知によって取締役会での報告を省略できます。一方、取引の前の承認は報告ではなく取締役会の決議なので、報告の省略の対象にはなりません。

372条1項は、通知の方法(書面・メールなど)を定めていません。

当事務所の考え方

後から通知の内容・日付・通知した相手を確認できるよう、メールや書面など記録の残る方法で通知していただくのがよいと考えています。

2.省略できないのは、3か月に1回以上の職務執行の報告(会社法363条2項)

ただし、報告の省略には例外があります。代表取締役などが3か月に1回以上、取締役会に行わなければならない「自己の職務の執行の状況」の報告は、取締役全員などに通知しても省略できません。

会社法372条2項は、この報告(「第三百六十三条第二項の規定による報告」)には1項を適用しないと定めています。本記事では、この報告を「職務執行の報告」と呼びます。報告する人と回数は、次の条文に定められています。

会社法363条(取締役会設置会社の取締役の権限)

1 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。

一 代表取締役

二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

2 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。

「前項各号に掲げる取締役」は、1号の代表取締役と、2号の取締役会で選定された業務を執行する取締役のことです。出典:会社法363条|e-Gov法令検索

報告しなければならないのは、代表取締役と、取締役会の決議で業務を執行する取締役に選ばれた取締役です。それ以外の取締役には、この報告の義務はありません。取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければならないため、取締役会を置いている会社には、この報告をしなければならない取締役がいます(会社法362条3項。監査等委員会設置会社では399条の13第3項)。

なお、職務執行の報告は、各事業年度について作成する事業報告(会社法435条2項)とは別のものです。

3.報告の省略を使っていても、取締役会は3か月に1回以上開く

職務執行の報告には報告の省略が使えないため、取締役会を置いている会社は、少なくとも3か月に1回は取締役会を開き、この報告をする必要があります。

たとえば、取締役A(代表取締役)・B・Cと監査役Dがいる監査役設置会社では、報告によって、通知で済むものと取締役会を開いて行うものが、次のように分かれます。

通知で済む報告と、取締役会を開いて行う報告(例)

1月15日

取締役会を開く

代表取締役Aが、職務執行の報告をする

取締役会で報告通知では省略できない(372条2項)

2月20日

取締役Bが会社と取引をした

Bは、取引の後、遅滞なく、取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない(365条2項)。Bは、取締役全員と監査役Dにメールで通知する

通知で済む取締役会での報告は不要(372条1項)

4月10日

取締役会を開く

代表取締役Aが、職務執行の報告をする。内容を事前にメールで送っていても、取締役会での報告は省略できない

取締役会で報告通知では省略できない(372条2項)

※ B・Cは、業務を執行する取締役に選ばれていないものとします(選ばれていれば、Aと同じく職務執行の報告をします)。Bの取引は、事前に取締役会の承認(会社法365条1項)を受けているものとします。日付は一例です。

3か月に1回は、会社法363条2項が求める回数の下限です。当事務所が関与している会社では、取締役会を月に1回開いているところが多く見られます。

なお、決議をみなし決議(会社法370条の「取締役会の決議の省略」)で行っている会社でも、職務執行の報告は取締役会を開いて行う必要があります。370条は「取締役会の決議の目的である事項」についての制度で、報告はその対象になっていないためです。みなし決議の要件は、取締役会のみなし決議とは?会社法370条の要件・議事録で解説しています。

4.議事録の書き方|報告の省略をしたとき・職務執行の報告をしたとき

報告の省略をして取締役会を開かなかったときも、会社は取締役会の議事録を作ります。

取締役会の議事録の作成は会社法369条3項が定め、その議事録の作り方を会社法施行規則101条が定めています(同条1項)。報告の省略をした場合の記載事項は、次の4項2号です。

会社法施行規則101条4項(取締役会の議事録)〔抜粋〕

4 次の各号に掲げる場合には、取締役会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。

二 法第三百七十二条第一項(同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項

イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容

ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日

ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

「法第三百七十二条第一項」は会社法372条1項のことです。1号(みなし決議の場合の記載事項)は省略しています。出典:会社法施行規則101条|e-Gov法令検索

開催日時・場所や議事の経過を中心に書く通常の取締役会の議事録(同条3項)とは、記載する事項が違います。上のイ〜ハを記載すると、たとえば次のようになります。

記載イメージ(報告の省略の議事録)

取締役会議事録

1.取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
取締役○○ ○○が当会社との間で行った○○の取引についての重要な事実

2.取締役会への報告を要しないものとされた日
令和○年○月○日

3.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
取締役 ○○ ○○

令和○年○月○日、取締役○○ ○○が、取締役(及び監査役)の全員に対して上記の事項を通知したので、会社法372条1項の規定により、当該事項を取締役会へ報告することを要しないものとされた。

※ 1には、「重要な事実」とだけ書くのではなく、通知した事項の内容(取引の日・内容・金額など)を具体的に記載します。
※ 2の日付は、通知先の全員への通知が済んだ日です(372条1項は「全員に対して…通知したとき」と定めています)。
※ 監査役設置会社でない場合、「(及び監査役)」は記載しません。

職務執行の報告は、通常の議事録に記載する

職務執行の報告は実際に開いた取締役会で行うため、通常の取締役会の議事録に、会社法施行規則101条3項4号の「議事の経過の要領及びその結果」として記載します。

当事務所の考え方

「代表取締役○○ ○○から、会社法363条2項に基づき、職務の執行の状況について、次のとおり報告があった。」と書いたうえで報告の要点を続けるなど、誰が、どの条文に基づく報告をしたのかと、何が報告されたのかが後から分かるように記載しておくのがよいと考えています。

5.司法書士として実際に確認しているポイント

取締役会の議事録の作成や登記のご依頼を受けたときに、できるだけ確認するようにしている点の例です。

① 開催の記録

実際に開いた取締役会の日付

議事録を時系列で並べ、実際に開いた取締役会で、3か月に1回以上、職務執行の報告がされているかを確認します。

② 通知先

監査役の有無と監査の範囲

監査役設置会社に当たるかによって、報告の省略の通知先に監査役が含まれるかが変わるため、登記事項証明書と定款で確認します。

③ 報告事項

取締役会規程で定めた報告事項と開催の頻度

定期的に開く取締役会(いわゆる定時取締役会)の議事録では、職務執行の報告や、取締役会規程で定めた報告事項の記載が抜けていることが少なくありません。議事録を確認するときは、取締役会規程もあわせて読み、報告事項や開催の頻度の定めに沿っているかを、できるだけ確認します。

④ 通知の記録

報告の省略の通知と議事録

報告の省略をした場合は、通知の内容・日付・通知した相手が分かる記録と、施行規則101条4項2号に沿った議事録がそろっているかを確認します。

6.よくあるご質問

職務執行の報告では、何を報告すればよいですか?

会社法363条2項は、報告する内容を「自己の職務の執行の状況」と定めるだけで、具体的な項目までは定めていません。取締役会規程などの社内規則で、報告する事項や報告の時期を定めている会社もあるため、まずは自社の取締役会規程をご確認ください。規程に定めがない場合は、どのような内容を報告するかを取締役会で決めておくとよいと、当事務所では考えています。

決議することがない時期でも、取締役会を開く必要がありますか?

取締役会を置いている会社は、決議する事項がなくても、職務執行の報告のために、少なくとも3か月に1回は取締役会を開く必要があります(会社法363条2項)。決議する事項がなければ、職務執行の報告だけを行う取締役会を開くこともできます。

取締役会を置いていない会社にも、3か月に1回の職務執行の報告は必要ですか?

必要ありません。363条2項は、取締役会設置会社の代表取締役などが、取締役会に職務の執行の状況を報告することを定めた規定です。自社が取締役会を置いているかどうかは、定款の定め(会社法326条2項)と、登記事項証明書(取締役会設置会社である旨が登記されます。会社法911条3項15号)で確認できます。

7.まとめ

  1. 通知すれば、取締役会での報告を省略できる取締役会で報告すべきことがらは、職務執行の報告を除き、取締役全員(監査役設置会社では監査役も)に通知すれば、取締役会で報告しなくてよくなります(会社法372条1項)。定款の定めや取締役の同意は必要ありません。
  2. 3か月に1回以上の職務執行の報告は省略できない代表取締役と、選定された業務を執行する取締役が行う職務執行の報告は、報告の省略の対象から外されています(372条2項・363条2項)。
  3. 取締役会は3か月に1回以上開く報告の省略やみなし決議を使っている会社でも、職務執行の報告のために実際に取締役会を開き、その内容を議事録に記載します。
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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度・2026年度)。

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本記事について

本記事は、2026年(令和8年)11月時点の会社法・会社法施行規則をもとに、司法書士法人LSOが、取締役会への報告の省略と、省略できない職務執行の報告の関係を整理したものです。指名委員会等設置会社以外の取締役会設置会社を前提に説明しています。個別の事案については、手続の前に専門家へご確認ください。

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