株式会社の解散から清算結了までの流れ|期間・手続き・届出先をZさんの事例で解説

結論
解散登記だけでは会社を閉じる手続きは終わりません。官報公告、会社財産の整理、税務申告、必要に応じた社会保険・労働保険の届出を進め、借入金・未払金・税金などの債務を支払った後に、残った財産(残余財産)を株主へ分配します。最後に決算報告の承認を受け、清算結了登記を申請します。
架空の経営者Zさんを例に「誰が・いつ・どこへ・何をするか」を説明します。
まず全体像|Zさんの会社が清算結了するまで
Zさんの会社を例に、解散前の準備から清算結了までを「誰が・どこへ・何をするか」で整理します。
本記事のモデルケース|すべて架空
Z株式会社
Zさんは事業を終了し、2026年(令和8年)4月1日付で会社を解散することにしました。手続きを順に追っていきます。
※会社名・人物・金額・状況は説明用の架空の設定です。
本記事は、会社の財産で債務をすべて支払える通常清算の例です。会社の財産で債務を完済できないことが明らかになったときは、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければなりません(会社法484条1項)。債務超過の疑いがあるときも、清算人は特別清算開始の申立てをしなければなりません(511条2項)。このような場合は通常清算のまま進めず、速やかに弁護士へ相談してください。
Zさんが最初に相談・連絡する相手は?
官報公告、財産調査、税務申告、労務手続きは並行して進みます。下のSTEPの順番どおりに一つずつ完了させる必要はありません。
この事例では、Zさんが1人で株主と取締役を兼ね、解散後は清算人になります。そのため、どのSTEPも手続きを進めるのはZさんです。
各STEPには、何をするかと、提出先や相手、Zさんが相談する専門家の例を示しています。STEPをタップ(クリック)すると開きます。
必須は、Zさんの会社のように株主総会の決議で解散し、通常清算を進める場合に、原則として必要になる手続きです。個別催告のように、相手(知れている債権者)がいなければ行わないものもあります。税務署への主な届出・申告は税務署①〜税務署④の4つです(①④の異動届出書は、国税庁が「異動等後速やかに」提出するよう案内している届出です)。都道府県・市町村にも届出・申告をします。清算が1年を超える場合など、会社の状況によってはほかの届出・申告も必要です。
この表は、Zさんの会社(株主1名・従業員2名・借入金などを全額返せる通常清算)を例にした一般的な流れです。すべての会社にそのまま当てはまるものではありません。会社の規模や事業内容、許認可・従業員・債務の状況によって、必要な手続きや順序、期限は変わります。
STEP1|解散前の準備(財産・契約などの整理)例:2026年(令和8年)3月中
預金、不動産、売掛金、未払金、従業員などを確認
会社法上の義務ではない実務上の連絡
債権者への法定の「個別催告」は、解散後にSTEP3で清算人が行う
会社の状況に応じて相談先を選ぶ
債務超過の疑いや、会社の財産で債務を払いきれない可能性があれば、そのまま通常清算を進めず、特別清算・破産等の要否を検討
STEP2|株主総会の解散決議と清算人例:2026年(令和8年)4月1日
原則として特別決議(会社法309条・471条)
この事例では、定款の定めや別の選任がないため、取締役だったZさんが清算人になる(会社法478条)。以後の財産の回収・債務の弁済・残余財産の分配は清算人が行う
STEP3|解散登記・公告・異動届出解散後すみやかに開始(並行する業務)
原則、解散日から2週間以内
把握していない債権者にも申出の機会を与え、支払うべき債務を確定させる。2か月以上の申出期間が必要(会社法499条)
知れている債権者がいる場合に行う。事業終了の一般的な連絡とは別の法定手続き
STEP5の解散確定申告とは別
届出の要否・期限・提出先は許認可ごとに異なる
STEP4|財産目録・貸借対照表の作成と承認清算人就任後遅滞なく着手
清算を始める時点で、何がいくらあり何をいくら払うかを確かめる書類。財産は処分価格で計上(解散確定申告の決算書とは別。使う資料は共通)
調査・作成の後でよく、解散決議と同じ日である必要はない(会社法492条)
STEP5|税務申告・保険手続き・財産回収解散前から清算中まで/各手続きの期限を確認
期首から解散日までを1つの事業年度として申告。原則、解散日の翌日から2か月以内。法人住民税・事業税も申告。消費税は課税事業者なら原則申告。異動届出とは別
役員・従業員の加入状況や資格喪失日による
退職日・事業所廃止日等による。解散前に必要になる場合もある
債権申出期間中の弁済は原則制限。裁判所の許可による例外あり(会社法500条)
実際の廃止日から原則1か月以内
貸借対照表は承認、事務報告は報告(会社法494条・497条)
STEP6|債務の精算・最後の確定申告・残余財産の分配債権申出期間満了後が基本
原則として債権申出期間の満了後
最終申告・納税の時期は税理士等と調整
この事例では、会社の財産500万円−債務・税金・費用300万円=200万円(金額は説明用の仮定)
残余財産の確定日の翌日から1か月以内(その間に最後の分配をするなら分配日の前日まで)。法人税の申告期限の延長特例は使えない。法人住民税・事業税も申告。消費税は課税事業者なら原則申告
源泉徴収が必要なら税務署へ納付。支払調書の提出・支払通知書の交付も確認(金額により提出を省略できる場合あり)。残余財産の額がそのまま株主の手取額になるとは限らない
株主が複数いれば、原則として持株数に応じて分配(会社法504条)
STEP7|決算報告承認と清算結了登記清算事務の終了後(債権申出期間の満了後、かつ解散決議から2か月以上後)
清算事務の結果を株主に報告する。承認の議事録が清算結了登記の添付書面になる(会社法507条、商業登記法75条)。解散時の財産目録等の承認とは別
決算報告の承認日から2週間以内(会社法929条)
異動届出書などで届け出る。帳簿資料は清算人が清算結了登記から10年間保存(会社法508条)
官報公告には2か月以上の債権申出期間が必要です(会社法第499条)。そのため、解散直後に清算結了することはできません。
ここからは、STEP1からSTEP7まで、それぞれの手続きを順番に詳しく解説します。
STEP1|解散前の準備(財産・契約などの整理)
解散の前に、会社の財産・負債・契約・従業員の状況を整理しておくと、解散後の手続きを進めやすくなります。
Zさんの最初の一手
会社の預金・借入金・売掛金・買掛金・不動産や賃貸借契約を整理。納品やサービスの終了日、退職日、契約の終了方法も確認し、税理士・司法書士・社労士等に相談します。
また、Zさん個人が銀行借入れを保証している場合、会社の解散だけで個人保証が当然に消えるわけではありません。借入先と保証契約も確認します。
取引先や借入先には、解散前に知らせる必要がある?
会社法には、解散の前に取引先や借入先へ知らせなければならないという規定はありません。もっとも、借入れの契約やリース・賃貸借契約などには、通知の方法や解約の予告期間が定められていることがあります。契約書を確認したうえで、必要に応じて事業終了の予定を伝えておくと、代金の精算や契約の終了を進めやすくなります。
なお、解散後に、会社が把握している債権者へ個別に催告する手続き(会社法499条に基づく個別催告)は、これとは別の法定の手続きです。STEP3で説明します。
STEP2|株主総会で解散を決議し、清算人を確定する
Zさんは2026年(令和8年)4月1日付の解散を株主総会で決議し、会社の清算を担当する清算人を確定します。
Zさんの次の一手
株主総会議事録を作成し、清算人の就任方法を定款等で確認。登記に使う資料を司法書士に渡します。
株主総会決議による解散には原則として特別決議が必要です(会社法309条2項11号、471条3号)。
解散後は清算人が会社の財産を回収・処分し、債務を弁済して、残余財産を株主に分配します。今回の事例では、特別な定款の定めや別の選任がなく、従前の取締役Zさんが清算人になる設定です(会社法478条)。
関連:株主総会の基本 / 非公開会社の招集期間
STEP3|解散登記・官報公告・税務署への届出
解散後は、登記・債権者への公告・税務署等への届出を並行して進めます。
Zさんの次の一手
司法書士に解散・清算人の登記と官報公告を相談。帳簿・契約書から未払先や借入先を洗い出し、清算人として個別催告する相手を確認します。税理士には解散日を伝えます。
法務局|解散・清算人の登記
Zさんまたは代理人の司法書士が申請。解散と清算人の登記は、原則として解散日から2週間以内に申請します(会社法926条・928条)。登録免許税は計39,000円(解散の登記30,000円+清算人の登記9,000円)です(登録免許税法別表第一第24号)。
官報・債権者|公告と催告
清算人は解散後遅滞なく官報公告を行い、会社が把握している債権者には各別に催告します。公告には2か月以上の債権申出期間が必要です(会社法499条)。銀行、未払代金のある仕入先などが対象になり得ます。公告は、会社が把握していない債権者にも申し出る機会を与え、支払うべき債務を確定させるための手続きです。期間内に申し出なかった債権者(知れている債権者を除く)は、清算から除斥されます(会社法503条)。
税務署・自治体|解散の届出
会社が解散したことを知らせる異動届出書などを提出します。提出先・様式は税務署や自治体に確認します。
税務署への「解散の異動届出書」と「解散確定申告(解散時の法人税の確定申告)」は別です。異動届出書を提出しただけでは、確定申告を済ませたことにはなりません。申告期限はSTEP5で説明します。
建設業や飲食店営業など、許認可を受けて事業をしている会社では、廃業届などの届出が必要になることがあります。届出の要否・期限・提出先は許認可ごとに異なるため、所管の窓口や行政書士に確認します。
官報公告中の借入金や未払金は返済できる?
官報公告で設けた2か月以上の債権申出期間中、清算株式会社は原則として債務を弁済できません(会社法500条1項)。Zさんの会社にも銀行借入金200万円と未払金50万円がありますが、資金に余裕があっても、すぐに返済してよいわけではありません。
もっとも、すべての支払いが禁止されるわけではありません。少額の債務、担保権で担保された債務、その他弁済しても他の債権者を害するおそれがない債務は、裁判所の許可を得て期間中に弁済できる場合があります(同条2項)。
税金・給与・清算に必要な公共料金なども事情に応じて検討されます。ただし、少額だから、税金だからという理由だけで自由に支払えるものではありません。支払期日が近いときは専門家と許可の要否を確認しましょう。弁済制限によって支払遅延の責任まで当然に免れるわけでもありません(同条1項後段)。
STEP4|財産目録・貸借対照表を作成し、株主総会の承認を受ける
清算人は、解散日時点の財産・負債を調べ、財産目録と貸借対照表を作成します。
Zさんの次の一手
預金残高、売掛金、借入金、不動産などの資料を集め、清算人として書類を作成。資料はSTEP5の解散確定申告と共通するため、税理士と一緒に準備します。完成後に株主総会で承認します。
会社法第492条は、清算人の就任後遅滞なく調査・作成し、株主総会の承認を受けることを定めています。解散決議の日に承認する必要はなく、官報公告や税務申告と並行して進められます。
財産目録・貸借対照表は何のために作る?
財産目録等は、清算を始める時点で会社に何がいくらあり、何をいくら支払う必要があるかを確かめ、株主に示すための書類です。Zさんの会社でいえば、預金のほか、不動産や売掛金がいくらで換金できそうか、銀行借入金・未払金がいくら残っているかを一覧にします。この内容が、STEP6で債務を支払い、株主に分配できる金額を計算する出発点になります。
財産目録には、原則として解散日時点の処分価格(売却したらいくらになるか)を付けます(会社法施行規則144条2項)。そのため、STEP5の解散確定申告(解散日までの事業年度の法人税申告)で使う決算書とは別の書類です。ただし、預金残高や売掛金・借入金の残高など使う資料は共通するため、Zさんは解散時の申告とあわせて税理士に相談し、一緒に準備します。
STEP5|税務申告・社会保険の届出と財産回収
税務・社会保険・労働保険の期限は、それぞれ解散日や退職日、事業所の廃止日などを基準に判断します。
Zさんの次の一手
税理士に解散時の申告期限を確認し、社労士等に、従業員2名の退職に伴う届出が済んでいるかと、最終の保険料を確認します。あわせて、売掛金の回収や不動産の売却を進めます。
税理士に確認する申告
解散確定申告(解散日までの事業年度)
事業年度の途中で解散すると、期首から解散日までが1つの事業年度になります(法人税法14条1項1号)。この期間について行う確定申告が、いわゆる解散確定申告です。法人税は原則として解散日の翌日から2か月以内に申告します(同法74条)。Zさんの例では6月1日が期限です。法人住民税・事業税の申告も必要です。消費税も、課税事業者であれば原則として申告が必要です(課税取引も納付税額もない課税期間は申告不要。消費税法45条1項)。 国税庁の法人税申告案内参照。
清算中・残余財産確定時
清算期間が長引いて事業年度が終了する場合や、残余財産が確定した場合にも確定申告が必要です(残余財産確定時のものは、実務で「清算確定申告」と呼ばれることもあります)。残余財産確定時の申告は原則として確定日の翌日から1か月以内で、その期間内に最後の分配を行う場合は分配日の前日までです。この期限には、法人税法75条の2による申告期限の延長の特例は使えません。Zさんの例では、STEP6で行います。
代表者からの借入金がある場合:中小企業では、会社が代表者から借入れをしていることがよくあります。清算のために代表者がその債権を放棄(債務免除)すると、会社に債務免除益が生じ、法人税がかかることがあります。残余財産がないと見込まれるときは、一定の要件のもとで、いわゆる期限切れ欠損金を損金に算入できる制度があります(法人税法59条4項)。Zさんの例では代表者からの借入金はない設定ですが、該当する会社は解散前に税理士と確認しておきます。
従業員・社会保険の届出先
Zさんの会社では、従業員2名は解散前に退職済みという設定です。実際の退職日や事業所廃止日によって必要な手続きが変わります。
年金事務所等
健康保険・厚生年金の被保険者資格喪失届、適用事業所全喪届など。全喪届は該当する事実の発生から原則5日以内です。解散日と資格喪失日が必ず一致するわけではありません。日本年金機構の案内。
ハローワーク
雇用保険の資格喪失届・離職票関係、事業所廃止届など。資格喪失届は該当事実の翌日から10日以内、事業所廃止届は原則廃止日の翌日から10日以内です。厚生労働省の手続一覧。
労働基準監督署・労働局等
労働保険の保険関係が消滅するときは、確定保険料申告・精算が必要です。原則として保険関係消滅日から50日以内です(労働保険徴収法19条)。
給与支払事務所等を廃止するときは、税務署へ給与支払事務所等の廃止届を原則1か月以内に提出します(国税庁の案内)。最終給与に関する源泉所得税・住民税の精算も確認しておきます。
また、法人税・消費税・法人住民税(赤字でも課税されることがある均等割を含む)や、社会保険料・労働保険料の支払いが残る場合があります。Zさんは税理士・社労士等と納付額と納付予定日を整理し、STEP6の最終的な財産分配に備えます。
売掛金の回収と不動産の売却
税務・労務の手続きと並行して、Zさんは清算人として取引先から売掛金を回収し、会社名義の不動産を売却して現金に換えます(会社法481条)。債権申出期間中に制限されるのは会社の債務の弁済で、売掛金の回収や売却代金の受領は進められます。回収したお金は、STEP6で債務の支払いと残余財産の分配に充てます。
清算が長期化する場合:清算中の申告に加え、清算事務年度ごとに貸借対照表・事務報告等を作成し、定時株主総会に提出して所要の承認・報告をする手続きもあります(会社法494条・497条)。本記事のZさんの例は短期間で清算が終わる想定です。
税務申告・税額計算は税理士、社会保険・労働保険の具体的な手続きは社労士や各行政機関にご確認ください。当事務所ではこれらの個別判断は行っていません。
STEP6|債務を精算し、最後の確定申告をして残余財産を分配する
Zさんは債権申出期間の満了を確認したうえで、借入金・未払金・税金・保険料などを精算し、最後に株主へ渡せる金額を計算します。
Zさんの次の一手
STEP5で回収した売掛金や不動産の売却代金を確認。借入金・税金・社会保険料・清算費用を支払って株主に渡せる金額を計算し、最後の確定申告を済ませてから分配します。
具体例|Zさんの会社の500万円をどうする?
① 会社の財産として確保できたお金
| もともと会社の口座にあった預金 | 200万円 |
| 会社名義の不動産の売却代金 | 250万円 |
| 取引先から回収した売掛金 | 50万円 |
| 合計 | 500万円 |
② 会社が支払うお金
| 銀行借入金の返済 | 200万円 |
| 取引先への未払金の支払い | 50万円 |
| 税金(法人税・法人住民税等) | 25万円 |
| 最後の社会保険料など | 15万円 |
| 官報公告・登記等の清算費用 | 10万円 |
| 合計 | 300万円 |
※金額は説明用の仮定です。残余財産確定時の申告で必要になる税金や清算費用も含め、すべて精算でき、追加債務はないものとします。実際の分配額は、最終的な税額や未払費用を税理士と確認して決めます。なお、もともとあった預金200万円は、決算報告に書く清算中の「収入」(財産の売却や債権の回収で得たお金)には含めません。
この例では会社に残るのは200万円。Zさんが普通株式100株すべてを保有するため、1株当たり2万円(200万円÷100株)をZさんに分配する計算です(会社法第504条)。
ただし、会社の債務は原則として弁済してから分配します(会社法第502条)。未払税金・社会保険料や今後の納付予定も確認したうえで、清算人が分配を進めます。不動産は現物分配も可能ですが、本例では売却して現金化しています(会社法第505条)。
分配の前に、最後の確定申告をする
残余財産の額が確定したら、その日までの事業年度について残余財産確定事業年度の確定申告をします。STEP5の解散確定申告とは別の、最後の確定申告です。実務では「清算確定申告」と呼ばれることもありますが、2010年(平成22年)の税制改正で廃止された清算所得課税の申告とは別のもので、清算中も通常の所得課税による確定申告をします。期限は確定日の翌日から1か月以内で、その期間内に最後の分配をするときは分配日の前日までです(法人税法74条2項)。法人税法75条の2による申告期限の延長の特例は使えません。法人住民税・事業税も原則として同じ時期に申告し、消費税も課税事業者であれば原則として申告します(消費税法45条4項)。具体的な期限や例外は、税理士や提出先の自治体に確認します。
不動産を売却した場合など、清算中の取引によって税金が生じることもあります。Zさんは税理士と申告・納税を済ませてから、株主への分配に進みます。
200万円が、そのままZさんの振込額になるとは限らない
200万円は会社法上の残余財産の分配額です。税務上「みなし配当」が含まれる場合は、会社側に源泉徴収・納付などの事務が生じ、実際の振込額が変わることがあります。分配額のうち、税務上の資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当となり(所得税法25条)、個人株主への非上場株式のみなし配当には、原則として20.42%(所得税・復興特別所得税)の源泉徴収が必要です。Zさんは分配前に税理士と計算・納付予定を確認し、必要な資金を確保します(国税庁の源泉徴収資料)。みなし配当がある場合は、「配当等とみなす金額に関する支払調書」の税務署への提出や、株主への支払通知書の交付についても、期限を確認します(所得税法225条)。支払調書は、金額によっては提出を省略できる場合があります。
会社名義の銀行口座は、最後の納税や振込みにも使います。Zさんは銀行と相談し、必要な入出金が終わった段階で解約を進めます。
STEP7|決算報告の承認を受け、清算結了登記をする
清算人が財産分配などの清算事務を終えたら、決算報告書を作成し、株主総会の承認を受けます。
Zさんの最後の一手
決算報告書を作って株主として承認し、議事録等を司法書士へ渡して清算結了登記を依頼します。登記が済んだら、税務署や自治体へ清算結了の届出をします。
決算報告書には、清算中の収入・費用、残余財産の額、1株当たりの分配額、分配を終えた日などを記載します(会社法第507条、会社法施行規則第150条)。Zさんの「残余財産200万円・100株」という計算も、作成時の基礎資料になります。
株主総会で承認を受けた日から2週間以内に法務局へ清算結了登記を申請します(会社法第929条)。承認を受けた株主総会の議事録は、この登記の添付書面になります(商業登記法75条)。登録免許税は2,000円です(登録免許税法別表第一第24号)。
また、法務局は、清算結了の際の決算報告の承認は、解散の決議をした日から2か月以上の期間を置いてする必要があると案内しています(法務局「よくあるご質問等<商業・法人登記関係>」Q18)。Zさんの例でも、解散を決議した日から2か月が経たないうちに決算報告を承認することはできないため、官報公告の申出期間とあわせて日程を組みます。債権申出期間は官報に公告を載せた後に2か月以上設けるため、公告の掲載が遅れると、決算報告の承認もその分だけ後になります。
清算結了へ進む前に、借入金・未払金だけでなく、法人税・消費税・法人住民税、社会保険料などの未払分も確認します。残余財産が確定した後に必要になる申告・納付もあるため、税理士・社労士等と相談し、必要な申告・納税を済ませて清算事務を終えてから、決算報告の承認と清算結了登記へ進みます。未納の国税があるまま残余財産を分配し、会社から徴収しきれない場合は、清算人や株主が、分配した財産・受けた財産の価額を限度として第二次納税義務を負うことがあります(国税徴収法34条)。
清算結了登記後も、帳簿等は原則10年間保存します(会社法第508条)。
清算結了の届出(税務署・都道府県・市町村)
清算結了の登記が済んだら、税務署・都道府県税事務所・市町村役場に、清算が結了したことを異動届出書などで届け出ます。解散のときに出した届出(STEP3)とは別に、もう一度提出するものです。税務署への提出時期は「異動等後速やかに」とされ、自治体によっては清算結了の記載がある登記事項証明書(閉鎖事項全部証明書)の添付を求められます。様式や添付書類は、提出先や税理士に確認します(国税庁:異動届出書)。
関連:解散・清算結了の登記案内 / 料金表
司法書士として実際に確認しているポイント
解散登記が済んだことと、会社の清算事務が終了したことは別です。
当事務所では、解散・清算結了のご依頼で、たとえば次の点ができるだけ食い違わないように確認するようにしています。会社の状況によって、ここに挙げていない点を確認することもあります。
- 官報公告の期間と決算報告の承認日債権申出期間を2か月以上とっているか、解散の決議から決算報告の承認まで2か月以上の期間を置いているかを見ます(STEP7)。
- 2つの承認の議事録解散時の財産目録・貸借対照表の承認と、最後の決算報告の承認は別の手続きです。それぞれの議事録の日付と内容が、清算の流れとつながっているかを見ます。
よくあるご質問
- 解散登記が終われば、すぐ会社はなくなりますか?
-
いいえ。解散後も清算の目的の範囲で会社は存続します。官報公告や財産整理等を行い、最後に決算報告の承認と清算結了登記が必要です。
- 借入金がなくても官報公告は必要ですか?
-
必要です。会社法499条1項は、債権者がいない場合などに公告を省略できる例外を定めていません。公告では2か月以上の債権申出期間を設けます。
- 会社の預金や売却代金で借金を返せない場合は?
-
Zさんのような通常清算では進められません。清算人は、破産手続開始や特別清算開始の申立てをしなければならない場合があります(会社法484条1項・511条2項)。株主への分配を進めず、速やかに弁護士に相談してください。
- 従業員がいなければ社会保険の手続きは不要ですか?
-
一概にはいえません。代表者自身の加入状況や、適用事業所でなくなった時点などに応じて確認します。
まとめ|解散後は複数の手続きを並行して進める
解散登記の後も、官報公告・税務申告・社会保険等の届出・財産の整理は並行して進みます。清算人は債務や税金・社会保険料の精算、残余財産の分配、決算報告の承認までを見通し、最後に清算結了登記を行います。必要な対応は会社の状況で異なるため、税理士・司法書士・社労士等と相談しながらスケジュールを組むことが大切です。
関連するご案内
解散・登記の業務案内
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主な根拠法令・行政機関の資料
- 解散時の財産目録・貸借対照表:会社法第492条 / 残余財産の分配:会社法第504条 / 清算結了登記:会社法第929条
- 会社法第499条(債権者への公告)
- 解散の決議:会社法第309条2項 / 会社法第471条 / 清算人:会社法第478条
- 債務の弁済の制限:会社法第500条 / 債務の弁済前の分配の制限:会社法第502条 / 残余財産の分配の方法:会社法第505条
- 決算報告:会社法第507条 / 帳簿資料の保存:会社法第508条
- 労働保険徴収法第19条(確定保険料)
- 会社法施行規則第150条(決算報告)
- 会社法施行規則第144条(財産目録) / 会社法第503条(清算からの除斥) / 商業登記法第75条(清算結了の登記)
- 東京地方裁判所:債権者への公告等と債務の弁済
- 法務局:よくあるご質問等<商業・法人登記関係>(Q17 解散・清算人の登録免許税、Q18 決算報告の承認時期)
- 解散の登記:会社法第926条・第928条(清算人の登記) / 登録免許税:登録免許税法別表第一第24号
- 国税庁:法人税確定申告等
- 日本年金機構:適用事業所全喪届
- 厚生労働省:雇用保険の手続き一覧
- 国税庁:異動届出書(解散・清算結了)
- 国税庁:清算中の消費税申告・納付期限
- 東京都主税局:解散法人の法人住民税・事業税Q&A
- 日本年金機構:健康保険・厚生年金保険料の納付
- 日本税務研究センター:未納法人税と清算結了 / 国税徴収法第34条(清算人等の第二次納税義務)
- 会社法第484条・第511条(返済不能・債務超過の疑い)
- 会社法第494条・第497条(清算事務年度の書類)
- 国税庁:残余財産分配と源泉徴収
- 国税庁:給与支払事務所等の廃止届
本記事について
本記事は2026年(令和8年)10月時点の法令・公表資料を参考にした一般的な解説です。会社・人物・金額はすべて架空の設定で、債務を完済できる株式会社の通常清算を例示しています。会社の財産・雇用・税務・許認可・債務状況によって必要な手続きや期限は異なります。税額や申告、社会保険等の具体的な判断、特別清算・破産等は、それぞれの専門家や所管官庁にご相談ください。
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