会社法施行規則63条7号とは?議案の概要が必要な16項目と招集通知の記載例

会社法施行規則63条7号とは? 議案の概要と対象の16項目 株主総会の招集で決める事項 招集通知の記載例
HOME›コラム›株主総会・取締役会の運営支援›会社法施行規則63条7号とは?議案の概要が必要な16項目と招集通知の記載例

結論

株主総会で役員の選任や定款の変更などを取り扱うときは、議題(何を取り扱うか)だけでなく、「議案の概要」(具体的にどう決めるかという提案の骨子)まで、株主総会を招集する際に決めておかなければならない場合があります。

必要になるのは、書面投票・電子投票を採用しない株主総会で、会社法施行規則63条7号が挙げる16項目のいずれかを議題にするときです。取締役会を置く会社では、決めた議案の概要を招集通知にも記載します(電子提供措置をとる会社では、電子提供措置で提供します)。

1.「議案の概要」とは?議題との違いを例で確認

株主総会で「何を取り扱うか」を示すのが議題、「具体的にどう決めるか」の骨子を示すのが議案の概要です。定款に事業の目的を追加する場合を例に比べると、次のようになります。

議題|何を取り扱うか

定款一部変更の件

株主総会で取り扱うテーマです。

議案の概要|どう決めるか

定款第2条(目的)に「ソフトウェアの企画、開発及び販売」を追加する

何をどう変えようとしているのかが分かります。

会社法の条文では、議題は「株主総会の目的である事項」と表現されています(会社法298条1項2号)。議題と議案そのものの違いは、株主総会の議題と議案の違いを解説したコラムで詳しく説明しています。

2.議案の概要を決める根拠は施行規則63条7号

議案の概要を招集の際に決めることは、会社法そのものではなく、会社法から委ねられた法務省令(会社法施行規則)に定められています。まず、株主総会を招集するときに決める事項を定めた会社法298条1項を確認しましょう。

会社法298条1項株主総会の招集の際に決める事項

条文の書き出し(柱書)取締役(中略)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

号 条文 決めること
1号 株主総会の日時及び場所 いつ、どこで開くか
2号 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項 議題(何を取り扱うか)
3号 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨 書面投票を採用するかどうか
4号 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨 電子投票を採用するかどうか
5号 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項 議案の概要はここ
会社法施行規則63条で定める事項。議案の概要(同条7号)も、この5号に含まれます

誰が決める?取締役会を置く会社では、株主が自ら招集する場合を除き、1号〜5号の事項は取締役会の決議で決めます(同条4項)。

会社法298条1項と4項の全文を読む

取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

一株主総会の日時及び場所

二株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

三株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

四株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

五前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

出典:e-Gov法令検索・会社法298条

5号を受けた会社法施行規則63条は、1号から7号まで、招集の際に決める事項を並べています。このうち、議案の概要を定めているのが7号です。

会社法施行規則63条(柱書・7号)議案の概要を決める根拠

条文

法第二百九十八条第一項第五号に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

七 第三号に規定する場合以外の場合において、次に掲げる事項が株主総会の目的である事項であるときは、当該事項に係る議案の概要(議案が確定していない場合にあっては、その旨)

7号の言葉 意味
「第三号に規定する場合以外の場合において」 書面投票・電子投票を採用しない株主総会で(第4章で説明します)
「次に掲げる事項が株主総会の目的である事項であるときは」 イ〜タの16項目のいずれかが議題になるときは(第3章で一覧にしています)
「当該事項に係る議案の概要」 その議題についての議案の概要を決める(書き方は第6章で説明します)
「(議案が確定していない場合にあっては、その旨)」 議案がまだ固まっていないときは、確定していない旨を決める

つまり、書面投票・電子投票を採用しない株主総会で、16項目のいずれかを議題にするときは、その議題の議案の概要を招集の際に決めます。

出典:e-Gov法令検索・会社法施行規則63条7号

3.議案の概要が必要な議題は16項目|施行規則63条7号イ〜タ

施行規則63条7号が挙げているのは、次のイからタまでの16項目です。書面投票・電子投票を採用しない株主総会でこのいずれかを議題にするときは、その議題の議案の概要(議案が確定していないときはその旨)を招集の際に決めます。取締役会を置く会社では、決めた議案の概要を招集通知にも記載します。手順と例外は、一覧の下で整理しています。

役員に関するもの

イ役員等の選任

ロ役員等の報酬等

株式・新株予約権に関するもの

ハ全部取得条項付種類株式の取得

ニ株式の併合

ホ法第百九十九条第三項又は第二百条第二項に規定する場合における募集株式を引き受ける者の募集補足:募集株式の有利発行の場合に限られます(一覧の下で説明します)

ヘ法第二百三十八条第三項各号又は第二百三十九条第二項各号に掲げる場合における募集新株予約権を引き受ける者の募集補足:募集新株予約権の有利発行の場合に限られます(一覧の下で説明します)

定款に関するもの

チ定款の変更

事業譲渡・組織再編に関するもの

ト事業譲渡等

リ合併

ヌ吸収分割補足:吸収分割で、権利義務を承継させる会社の側

ル吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継補足:吸収分割で、権利義務を承継する会社の側

ヲ新設分割

ワ株式交換補足:株式交換で、完全子会社となる会社の側

カ株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得補足:株式交換で、完全親会社となる会社の側

ヨ株式移転

タ株式交付

出典:e-Gov法令検索・会社法施行規則63条7号(イ〜タは条文の文言のまま掲載し、分類と補足は当事務所で付けています)

ホ(募集株式)とヘ(募集新株予約権)は、株式や新株予約権を発行するすべての場合を指しているわけではありません。ホは会社法199条3項・200条2項、ヘは238条3項各号・239条2項各号に定める場合で、いずれも、払込金額(決定を委任する場合はその下限)や、金銭の払込みを要しないとする条件が、引き受ける人に特に有利な場合(いわゆる有利発行)を指しています。

業務範囲について:払込金額などが「特に有利」に当たるかどうか(株式の価値の評価)や、税務上の取扱いについては、当事務所では判断していません。必要に応じて、税理士・公認会計士などにご確認ください。

書面投票・電子投票を採用しない株主総会で、16項目のいずれかを議題にするときにすること

1

招集の際に、その議題の議案の概要を決める取締役会を置く会社では、取締役会の招集決議で議題とあわせて決めます(施行規則63条7号、会社法298条4項)。

2

決めた議案の概要を、招集通知に記載する取締役会を置く会社は、招集通知を書面(株主の承諾を得た場合は電子メールなど)で発しなければならないため、その招集通知に記載します(会社法299条2項2号・3項・4項)。

注意:書面投票・電子投票を採用する株主総会では、7号ではなく、株主総会参考書類についての規定(施行規則63条3号)によります(第4章)。取締役会を置かない会社では、2の招集通知への記載は法律上の義務ではありません。また、電子提供措置をとる会社では、2の議案の概要は招集通知ではなく電子提供措置で提供します(いずれも第5章)。

4.どんな株主総会で必要?2つの確認事項

ここまで見た条文に当てはめると、議案の概要を招集の際に決める必要があるかどうかは、2つの点を順に確認すると判断できます。

1つ目は、7号の冒頭にある「第三号に規定する場合以外の場合」に当たるかどうかです。3号は次のように定めています。

会社法施行規則63条3号7号の「第三号に規定する場合」とは

三 法第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときは、次に掲げる事項(中略)

イ 次款の規定により株主総会参考書類に記載すべき事項(中略)

この条文のポイント書面投票・電子投票を採用するとき(298条1項3号・4号の事項を定めたとき)は、株主総会参考書類に記載する事項などを招集の際に決めます。7号は、この3号の場合を除いた株主総会、つまり書面投票・電子投票を採用しない株主総会についての規定です。
施行規則63条3号(イ〜ト)の全文を読む

三 法第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときは、次に掲げる事項(定款にロからニまで及びヘに掲げる事項についての定めがある場合又はこれらの事項の決定を取締役に委任する旨を決定した場合における当該事項を除く。)

イ次款の規定により株主総会参考書類に記載すべき事項(第八十五条の二第三号、第八十五条の三第三号、第八十六条第三号及び第四号、第八十七条第三号及び第四号、第八十八条第三号及び第四号、第八十九条第三号、第九十条第三号、第九十一条第三号、第九十一条の二第三号並びに第九十二条第三号に掲げる事項を除く。)

ロ特定の時(株主総会の日時以前の時であって、法第二百九十九条第一項の規定により通知を発した日から二週間を経過した日以後の時に限る。)をもって書面による議決権の行使の期限とする旨を定めるときは、その特定の時

ハ特定の時(株主総会の日時以前の時であって、法第二百九十九条第一項の規定により通知を発した日から二週間を経過した日以後の時に限る。)をもって電磁的方法による議決権の行使の期限とする旨を定めるときは、その特定の時

ニ第六十六条第一項第二号の取扱いを定めるときは、その取扱いの内容

ホ第九十四条第一項の措置をとることにより株主に対して提供する株主総会参考書類に記載しないものとする事項

ヘ一の株主が同一の議案につき次に掲げる場合の区分に応じ、次に定める規定により重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を定めるとき(次号に規定する場合を除く。)は、その事項
(1)法第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合 法第三百十一条第一項
(2)法第二百九十八条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合 法第三百十二条第一項

ト株主総会参考書類に記載すべき事項のうち、法第三百二十五条の五第三項の規定による定款の定めに基づき同条第二項の規定により交付する書面(第九十五条の四において「電子提供措置事項記載書面」という。)に記載しないものとする事項

出典:e-Gov法令検索・会社法施行規則63条3号

3号にいう書面投票・電子投票は、株主が株主総会に出席せず、書面やインターネットなどで自ら議決権を行使する方法です(会社法298条1項3号・4号)。委任状を渡して代理人に出席・行使してもらう方法とは別の制度です。なお、議決権を持つ株主が1,000人以上の会社は、上場会社で一定の要件を満たす場合を除き、書面投票を採用しなければなりません(会社法298条2項)。

この3号を踏まえると、次の流れで判断できます。

株主総会を招集する(議題を決める)

確認1その株主総会で、書面投票・電子投票を採用する?

採用する→

ここで判断終了7号は適用されません。施行規則63条3号により、株主総会参考書類に記載する事項などを招集の際に決めます

採用しない確認2へ

確認2議題に、施行規則63条7号イ〜タの16項目のいずれかが含まれる?

含まれない→

ここで判断終了7号による決定は不要です。ただし、日時・場所や議題など、ほかの事項は招集の際に決めます

含まれる

該当する議題ごとに、議案の概要(議案が確定していないときはその旨)を招集の際に決めます(施行規則63条7号)

書面投票・電子投票を採用する場合の株主総会参考書類は、招集通知に同封する書類を解説した招集手続⑤のコラムで説明しています。

この2つの確認では、取締役会を置いているかどうかは問いません。施行規則63条は、会社法298条1項5号の事項を定めた規定で、取締役会を置かない会社を除いていないためです。

5.議案の概要は招集通知にも記載する?会社法299条4項

議案の概要を招集の際に決めること(施行規則63条7号)と、株主に送る招集通知に記載することは、別の条文で定められています。記載について定めているのは、招集通知を書面で発しなければならない場合を定めた会社法299条2項と、記載する事項を定めた4項です。まず、この2つの項を確認しましょう。

会社法299条2項・4項招集通知に記載する事項

2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

一 前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

二 株式会社が取締役会設置会社である場合

4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

この条文のポイント4項の「前二項の通知」は、書面で発しなければならない招集通知(2項)と、株主の承諾を得て、書面に代えて電子メールなどで発する招集通知(3項)のことです。「前条第一項各号に掲げる事項」には5号も含まれるため、施行規則63条7号の議案の概要も記載します。
会社法299条1〜4項の全文を読む

株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

2 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

一前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合

二株式会社が取締役会設置会社である場合

3 取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。

4 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

出典:e-Gov法令検索・会社法299条

取締役会を置く会社は、株主総会の招集通知を書面で発する(または株主の承諾を得て、電子メールなどの電磁的方法で発する)必要があるため(会社法299条2項2号・3項)、議案の概要も招集通知に記載します(電子提供措置をとる場合の特則は、この章の後半で説明します)。

一方、取締役会を置かない会社が書面投票・電子投票を採用しない場合は、招集通知を書面で発する義務がなく(口頭や電話で招集することもできます)、通知に記載する事項を定めた会社法299条4項の対象になりません。その場合でも、議案の概要を招集の際に決めること(施行規則63条7号)は必要です。岩原紳作編『会社法コンメンタール第7巻 機関(1)』(商事法務、2013年)も、取締役会を置かない会社で書面投票・電子投票を定めない場合について、299条は通知事項を特に定めていないと説明しています(85頁)。

当事務所の考え方

取締役会を置かない会社でも、書面で招集通知を発するときは、招集の際に決めた議案の概要を通知に記載しておくのがよいと考えています。株主が、株主総会で何をどう決めようとしているのかを事前に知ることができるためです。

電子提供措置をとる会社では、招集通知ではなく電子提供措置で提供

株主総会の資料を自社のウェブサイトなどに掲載して株主に提供する制度を、電子提供措置といいます。定款に定めを置いた会社がとることができます(会社法325条の2)。電子提供措置をとる場合は、招集通知への記載について、次の特則があります。

会社法325条の4第2項(前段)電子提供措置をとる場合の特則

第二百九十九条第四項の規定にかかわらず、前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合には、第二百九十九条第二項又は第三項の通知には、第二百九十八条第一項第五号に掲げる事項を記載し、又は記録することを要しない。

この条文のポイント電子提供措置をとる場合は、招集通知に298条1項5号の事項、つまり施行規則63条7号の議案の概要を記載する必要がありません。そのかわり、議案の概要を含む298条1項各号の事項は、電子提供措置で提供します(325条の3第1項1号)。

出典:e-Gov法令検索・会社法325条の4

招集通知への記載が不要になっても、招集の際に議案の概要を決めることは変わりません。決めた議案の概要は、電子提供措置で株主に提供します(会社法325条の3第1項1号)。

6.議案の概要はどこまで書く?定款変更・役員選任・役員報酬の例

施行規則63条7号は「議案の概要」と定めるだけで、どこまで書けばよいかの基準は条文にありません。岩原紳作編『会社法コンメンタール第7巻 機関(1)』(商事法務、2013年)は、議案の概要を、議案の内容上の要点または基本的な内容と説明し、どのような記載が求められるかは議題ごとに異なるとしています。また、定款の変更については、どの規定を変更するのかを示すことが求められるとしています(87頁)。

16項目のうち「チ 定款の変更」「イ 役員等の選任」「ロ 役員等の報酬等」を例に、書き方の例を紹介します。

例1|定款に事業の目的を追加する

第1号議案 定款一部変更の件

(議案の概要)新規事業の開始に伴い、定款第2条(目的)に「ソフトウェアの企画、開発及び販売」を追加する。

例2|取締役を新たに選任する

第2号議案 取締役選任の件

(議案の概要)経営体制の強化のため、鈴木花子氏を新たに取締役に選任する。

例3|取締役の報酬等の上限額を改定する

第3号議案 取締役の報酬等の額改定の件

(議案の概要)取締役の員数の増加に伴い、取締役の報酬等の額を、年額2,000万円以内から年額3,000万円以内に改定する。

当事務所の考え方

役員の選任などほかの議題でも、議題名(「取締役選任の件」など)を繰り返すだけでは、株主は、株主総会で何をどう決めようとしているのかを知ることができません。役員の選任なら「誰を選任するか」が分かる程度に書いておくのがよいと考えています。

議題ごとに、議案の概要として記載を検討する情報の例です。会社の状況によって、ここに挙げていない情報を記載したほうがよいこともあります。

議題 記載を検討する情報の例
定款の変更 変更する条と、変更の内容(追加・削除・変更後の内容)
役員等の選任 選任する役員の種類と、候補者の氏名
役員等の報酬等 改定後の報酬等の額(上限額など)

施行規則63条7号は、定款変更の変更案の全文や新旧対照表を招集通知に添えることまでは求めていません。ただし、変更する条が多いときなど、概要だけでは内容が伝わりにくい場合は、新旧対照表などを別紙で添えることも検討するとよいと考えています。

議案が確定していない場合:施行規則63条7号は、議案が確定していない場合には「その旨」を決めると定めています。確定していない内容を、確定した議案のように招集通知に書くと、株主の誤解を招くおそれがあります。

7.記載例|取締役会の招集決議と株主総会招集ご通知

招集の際に決めた議案の概要と、株主に送る招集通知の記載は一致している必要があります。取締役会を置く非公開会社を例に、取締役会議事録(招集決議の部分)と招集通知の記載例を示します。

架空事例の前提 株式会社エル・サンプル(架空の会社です)は、取締役会を置く非公開会社です。書面投票・電子投票は採用せず、電子提供措置もとりません。2026年(令和8年)11月9日(月)の取締役会で招集を決め、11月10日(火)に書面で招集通知を発し、11月20日(金)に臨時株主総会を開きます。

この事例のように、書面投票・電子投票を採用せず、電子提供措置もとらない非公開会社では、招集通知は株主総会の日の1週間前までに発する必要があります(会社法299条1項)。11月10日に発すれば、発した日と株主総会の日の間に9日あるため、この期間を満たします(数え方は招集期間の数え方を解説した招集手続①のコラムをご覧ください)。

2つの書類の役割は、次のように分かれます。

取締役会の招集決議

議題と議案の概要を決める(会社法298条1項・4項、施行規則63条7号)

株主総会招集ご通知

決めた議題と議案の概要を株主に知らせる(会社法299条4項)

下の記載例で、緑の線を付けた部分が議案の概要です。記載例は説明のための一例で、法律で決められた書式ではありません。

記載例1|取締役会議事録(招集決議の部分)を開く

2026年(令和8年)11月9日

取締役会議事録(招集決議の部分の抜粋)

第1号議案 臨時株主総会招集の件

議長は、次の内容で臨時株主総会を招集したい旨を述べ、その承認を求めたところ、出席取締役の全員一致をもって承認可決した。

1.日時 2026年(令和8年)11月20日(金)午前10時

2.場所 大阪市北区○○一丁目○番○号 当社本店会議室

3.会議の目的事項(決議事項)

第1号議案 定款一部変更の件

(議案の概要)新規事業の開始に伴い、定款第2条(目的)に「ソフトウェアの企画、開発及び販売」を追加する。

第2号議案 取締役選任の件

(議案の概要)経営体制の強化のため、鈴木花子氏を新たに取締役に選任する。

4.書面投票・電子投票 採用しない。

5.招集通知 2026年(令和8年)11月10日に書面で発する。

※招集決議の部分の記載例です。取締役会議事録全体には、ほかにも法令が定める記載事項があります。

記載例2|臨時株主総会招集ご通知を開く

2026年(令和8年)11月10日

株主各位

大阪市北区○○一丁目○番○号
株式会社エル・サンプル
代表取締役 山田一郎

臨時株主総会招集ご通知

拝啓 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、当社臨時株主総会を下記のとおり開催いたしますので、ご出席くださいますようご通知申し上げます。なお、ご出席いただけない場合は、同封の委任状用紙をご利用ください。

敬具

記

1.日時 2026年(令和8年)11月20日(金)午前10時

2.場所 大阪市北区○○一丁目○番○号 当社本店会議室

3.会議の目的事項(決議事項)

第1号議案 定款一部変更の件

(議案の概要)新規事業の開始に伴い、定款第2条(目的)に「ソフトウェアの企画、開発及び販売」を追加する。

第2号議案 取締役選任の件

(議案の概要)経営体制の強化のため、鈴木花子氏を新たに取締役に選任する。

4.同封書類 委任状用紙

以上

※委任状による議決権の代理行使は、書面投票とは別の制度です。

8.司法書士として実際に確認しているポイント

株主総会の招集手続や議事録の作成をお手伝いするときに、議案の概要について当事務所ができるだけ確認するようにしている点の例です。会社の状況によって、ここに挙げていない点の確認が必要になることもあります。

1書面投票・電子投票を採用するか、電子提供措置をとるか

施行規則63条3号と7号のどちらが当てはまるか、招集通知に議案の概要を記載するかが変わるため、招集を決める前に確認するようにしています。

2議題が施行規則63条7号の16項目に当たるか

募集株式や募集新株予約権の発行では、ホ・ヘが払込金額などの特に有利な場合に限られるため、会社がどのような条件で発行を予定しているかもお聞きするようにしています。

3取締役会議事録に、議案の概要(または確定していない旨)が記載されているか

招集を決めた取締役会の議事録に、議題だけでなく議案の概要まで記載されているかを確認するようにしています。

4招集通知の議案の概要が、取締役会で決めた内容と一致しているか

招集通知を発する前に、取締役会議事録の議案の概要と照らし合わせるようにしています。

5議案の内容が、株主総会議事録や登記の申請書類と食い違っていないか

定款の変更案や取締役の候補者が、招集通知、株主総会で決議された内容、議事録、登記の申請書類のあいだで一致しているかを確認するようにしています。

9.よくあるご質問

招集通知に議案の概要を記載し忘れた場合、株主総会の決議はどうなりますか?

株主総会の招集の手続が法令に違反するときは、株主などは、決議の日から3か月以内に、決議の取消しの訴えを起こすことができます(会社法831条1項1号)。岩原紳作編『会社法コンメンタール第7巻 機関(1)』(商事法務、2013年)も、招集通知に必要な議案の概要の記載がなかった場合は、この取消しの事由になるとしています(87頁)。ただし、違反する事実が重大でなく、決議に影響を及ぼさないと認められるときは、裁判所は請求を棄却することができます(同条2項)。記載漏れが棄却されるほど軽微なものに当たるかどうかは個別の事情によるため、招集通知を発する前に確認しておくことが大切です。

取締役会を置いていない会社でも、議案の概要を決める必要がありますか?

はい。施行規則63条7号は、取締役会を置いているかどうかで適用を分けていません。書面投票・電子投票を採用しない株主総会で16項目のいずれかを議題にするときは、取締役が招集の際に議案の概要を決めます。ただし、取締役会を置かない会社が書面投票・電子投票を採用しない場合、招集通知への記載を定めた会社法299条4項の対象にはなりません。それでも、書面で招集通知を発するときは、決めた議案の概要を記載しておくのがよいと考えています。

10.まとめ|議案の概要を決める場面と招集通知への記載

  1. 必要になる株主総会書面投票・電子投票を採用しない株主総会で、役員の選任や定款の変更など、施行規則63条7号の16項目のいずれかを議題にするときです。
  2. 決める内容該当する議題ごとに、議案の概要(議案が確定していないときはその旨)を招集の際に決めます。議題名を繰り返すのではなく、何をどう決めるのかが分かるように書くのがよいと考えています。
  3. 招集通知への記載取締役会を置く会社では、招集通知(株主の承諾を得て電子メールなどで発する場合を含みます)に議案の概要を記載します(会社法299条4項)。電子提供措置をとる会社では、招集通知ではなく電子提供措置で提供します。

株主総会の招集手続・議事録の作成をご相談ください

司法書士法人LSOでは、株主総会の議題・議案の整理、招集手続の確認、議事録の作成から、決議にもとづく商業登記まで対応しています。

お問い合わせ株主総会・取締役会の運営支援

司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

詳しいプロフィールを見る

本記事について

本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法・会社法施行規則をもとに、司法書士法人LSOが、株主総会の招集の際に決める「議案の概要」(会社法施行規則63条7号)を整理したものです。記載例は架空の会社・日付を用いた説明用のもので、実際の書類は、定款の定めや個別の招集手続に合わせて作成する必要があります。

参考文献:岩原紳作編『会社法コンメンタール第7巻 機関(1)』(商事法務、2013年)(会社法298条・299条の解説)。『会社法コンメンタール第7巻』は2013年の刊行で、その後の改正により施行規則63条7号の対象の項目が追加されているため、対象の項目は本記事の第3章(e-Govの現行条文)でご確認ください。

来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています

対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。

商業登記・企業法務 料金表を見る