非公開会社の株主総会の招集手続⑤|招集通知には何を同封する?株主総会参考書類と議案説明資料を解説

非公開会社の株主総会の招集手続⑤ 招集通知には何を同封する 株主総会参考書類と議案説明資料を解説
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結論

非公開会社の株主総会では、招集通知そのものはどの会社でも原則として必要ですが、招集通知と一緒に株主へ渡す書類は、①その株主総会で書面投票・電子投票(出席しない株主が、書面や電子的な方法で投票する制度)を採用するか、②取締役会設置会社の定時株主総会か、で決まります。①なら株主総会参考書類の交付(書面投票では議決権行使書面も)、②なら計算書類・事業報告等の提供が必要です。どちらにも当たらない委任状方式の株主総会では、会社法上、必ず渡さなければならない書類はありませんが、当事務所では、法定の書類ではなくても、議案の説明資料をできるだけ添えることをおすすめしています(会社法299条1項会社法301条1項会社法302条1項会社法437条)。

1.招集通知はどの株式会社でも原則必要|記載事項と書き方

株主総会を開くには、取締役が、株主総会の日の一定期間前までに株主に対して招集通知を発します(会社法299条1項)。この義務はどの株式会社にも共通で、省略できるのは株主全員の同意がある場合だけです(会社法300条。ただし、書面投票・電子投票を採用する株主総会では省略できません)。

この記事の前提

  • 会社法上の公開会社(発行する株式の全部または一部に譲渡制限の定めがない株式会社。会社法2条5号)ではなく、かつ、上場もしていない株式会社(本記事ではこれを「非公開会社」といいます)で、議決権を行使できる株主が1,000人未満(書面投票が義務づけられる会社ではありません。会社法298条2項。取締役会設置会社では同条3項の読替えによります)
  • 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社ではなく、会計監査人も置いていない
  • 定款に、電子提供措置(株主総会資料をウェブサイトに掲載する制度)をとる旨の定めがない
  • 種類株主総会ではなく、通常の株主総会
  • 計算書類・事業報告そのものの内容(何を書くか)は扱いません

株主数の少ない非公開会社を想定した前提です。当てはまらない会社では、本記事と異なる定めが適用される場面があります。

書面で発する場合と、メール等で発することができる場合

取締役会設置会社の株主総会と、書面投票・電子投票を採用する株主総会では、招集通知は書面で発します(会社法299条2項)。株主の承諾を得れば、書面に代えてメールなどの電磁的方法で発することもできます(同条3項)。いつまでに発するかはシリーズ第1回第2回、メール等で発する方法は第3回で解説しました。

招集通知に書くこと|日時・場所・議題と、法務省令で定める事項

書面(または電磁的方法)による招集通知には、次の事項を記載します(会社法298条1項、会社法299条4項)。

  • 株主総会の日時と場所
  • 議題(株主総会の目的である事項)
  • 書面投票・電子投票を採用するときは、その旨
  • そのほか法務省令で定める事項。一定の議題についての「議案の概要」などです(下で説明します)

会社法が記載事項としているのは「株主総会の目的である事項」(会社法298条1項2号)で、実務ではこれを議題と呼びます。議案は、その議題について可決を求める具体的な提案です。会社法施行規則63条7号が「当該事項に係る議案の概要」と書き分けているのが、この関係を示しています。招集通知が伝える基本の事項は議題です。議案の内容がどこに書かれるかは、①下で説明する「議案の概要」として招集通知に書く場合、②法定の参考書類に書く場合(本記事の第3章)、③任意の議案説明資料に書く場合(第4章)があり、その株主総会がどれに当たるかで決まります。

一定の議題では、「議案の概要」まで決める|取締役会の有無を問わない

書面投票・電子投票を採用しない場合、次の議題については、取締役会の有無にかかわらず、招集を決定する段階で「議案の概要」(議案が確定していないときは、その旨)を定めます(会社法298条1項5号、会社法施行規則63条7号)。対象となる主な議題は次のとおりです。

  • 役員等の選任、役員等の報酬等
  • 定款の変更
  • 特に有利な払込金額での募集株式の発行と、その募集事項の決定の委任(会社法199条3項会社法200条2項
  • 特に有利な条件での募集新株予約権の発行と、その募集事項の決定の委任(会社法238条3項会社法239条2項
  • 株式の併合、合併などの組織再編、事業譲渡

取締役会設置会社では、招集通知を書面(株主の承諾があれば電磁的方法)で発する必要があるため、会社法299条4項により、この招集の決定事項がそのまま招集通知の記載事項になります

一方、取締役会を置かず、書面投票・電子投票も採用しない会社では、招集通知を書面で発する義務がないため(会社法299条2項)、同条4項による招集通知への記載義務はありません。ただし、招集の決定事項として議案の概要を定める必要があること自体は変わりません。当事務所では、この場合も、議案の概要が分かる資料を株主にお渡しすることをおすすめしています。

なお、書面投票・電子投票を採用する場合は、この7号ではなく、会社法施行規則63条3号により、原則として、株主総会参考書類に記載すべき事項が招集の決定事項になります。その内容を参考書類に記載して提供したときは、同規則73条4項により、招集通知への重複記載を省略できます。

サンプルで確認する

文章だけではイメージしにくいので、招集通知のサンプルを示します。

本記事のサンプルは、架空の一例です。取締役会と監査役を置く非公開会社が、委任状方式(欠席する株主が、代理人に議決権の行使を委任する方法)で定時株主総会を開く場合を想定しています。実際の文面は、定款と議案に合わせて作成します。

サンプル① 招集通知(本体)

2026年9月10日

株主各位

大阪市北区○○一丁目1番1号
株式会社サンプル
代表取締役 甲野 太郎

第○回定時株主総会招集ご通知

拝啓 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、当社第○回定時株主総会を下記のとおり開催いたしますので、ご出席くださいますようご通知申し上げます。
なお、当日ご出席願えない場合は、同封の議案説明資料をご検討のうえ、委任状用紙に議案に対する賛否をご表示いただき、ご署名・ご押印のうえ、ご返送くださいますようお願い申し上げます。

敬具

1.日時 2026年9月18日(金曜日)午前10時
2.場所 大阪市北区○○一丁目1番1号 当社本店会議室
3.会議の目的事項
 報告事項 第○期(2025年7月1日から2026年6月30日まで)事業報告の内容報告の件
 決議事項
  第1号議案 第○期計算書類承認の件
  第2号議案 取締役2名選任の件
   (議案の概要)取締役候補者は、甲野太郎および乙山花子の2名です。
4.添付書類 第○期事業報告、計算書類、監査報告/議案説明資料/委任状用紙

以上

※第2号議案の「議案の概要」は、上で説明した、役員の選任などの議題で招集通知に記載する事項です。サンプルは、金子登志雄『総務・法務担当者のための会社法入門』(中央経済社)第1章第3話・第4話の中小企業の例を参考に、本記事の前提に合わせて作成しています。

本記事では、この招集通知に何を一緒に渡すかを、法律上必要な書類と、実務で同封する書類に分けて整理します。

2.招集通知と一緒に渡す書類は、場面で決まる

会社法が、招集通知に際して交付・提供を義務づけている書類は、①法定の参考書類(と議決権行使書面)、②計算書類・事業報告等の2種類です。どちらも、すべての株主総会で必要になるわけではありません。

本記事では「計算書類・事業報告等」と書きます。会社法436条1項・2項の監査を受ける会社(監査役を置く会社など)では、この「等」に監査報告や会計監査報告などが含まれます会社法437条の括弧書き)。本記事のサンプル会社は監査役を置き、会計監査人を置いていないため、監査役の監査報告が含まれます。

場面ごとに整理すると、次の表のとおりです。

場面 法律上、招集通知に際して交付・提供が必要な書類
書面投票を採用する株主総会 法定の参考書類+議決権行使書面
電子投票を採用する株主総会 法定の参考書類
※会社法299条3項の承諾をした株主に電磁的方法で招集通知を発するときは、議決権行使書面に記載すべき事項も電磁的方法で提供します(会社法302条3項。本記事の第3章)
取締役会設置会社の定時株主総会 計算書類・事業報告等(❶❷にも当たるときは、両方)
※取締役会を置かない会社に、招集通知に際しての事前提供の義務はありません(定時株主総会への提出は必要です)
❹ 上のどれにも当たらない株主総会(委任状方式の臨時株主総会、取締役会を置かない会社の株主総会など) なし
❺ 株主総会を開かない書面決議 なし(招集通知そのものがありません)

根拠は、❶❷が会社法301条1項会社法302条1項、❸が会社法437条です。❺の書面決議は、株主全員の同意で決議があったものとみなす手続です(会社法319条1項)。株主総会を招集しないので、301条・302条が働く場面ではありません。

❶❷の場合に渡す書類は本記事の第3章、❹の場合に実務で同封する書類は第4章で説明します。

書面投票・電子投票を採用しているかは、招集の決定で確認する

書面投票・電子投票は、定款ではなく株主総会ごとの招集の決定事項です(会社法298条1項3号・4号)。採用しているかどうかは、その株主総会の招集を決めた取締役会議事録(取締役会を置かない会社では、招集についての取締役の決定の内容)で確認します。委任状を同封しているだけでは、書面投票を採用したことにはなりません。委任状と書面投票の区別は、シリーズ第4回で解説しています。

計算書類・事業報告等|取締役会設置会社の定時株主総会で必要

取締役会設置会社では、定時株主総会の招集通知に際して、計算書類・事業報告等も株主に提供します(会社法437条)。書面投票・電子投票を採用していない会社でも必要です。本記事はこれ以上立ち入りませんが、事業報告に何を書くかは、会社法施行規則118条と事業報告の記載事項のコラムで解説しています。

取締役会を置かない会社には、招集通知に際してのこの提供義務はありません。会社法437条が「取締役会設置会社においては」と定めているためです。もっとも、計算書類・事業報告を定時株主総会に提出し、または提供すること自体は、取締役会を置かない会社でも必要です(会社法438条1項)。提出または提供された計算書類は定時株主総会の承認を受け(同条2項)、事業報告はその内容を報告します(同条3項)。

「提供しなくてよい」ことと「備え置かなくてよい」ことは別です。計算書類、事業報告、これらの附属明細書は、会社法436条1項・2項の適用がある会社では監査報告・会計監査報告とあわせて、取締役会設置会社では定時株主総会の日の2週間前の日から、取締役会を置かない会社では1週間前の日から、5年間、本店に備え置きます会社法442条1項1号)。株主と債権者は、営業時間内であればいつでも閲覧などを請求できます(同条3項)。取締役会を置かない会社に提供義務がないのは、あくまで招集通知に際して事前に渡す義務の話です。

ただし、当事務所では、取締役会を置かない会社でも、計算書類・事業報告を招集通知に同封して事前に送ることをおすすめしています。株主が事前に内容を確認できないと、当日の審議が進みにくいためです。投資契約や株主間契約で、株主への提供について定めがある場合もあります。その場合は、契約の定めに従って提供します。

なお、附属明細書は、株主へ提供する書類にも、定時株主総会に提出する書類にも含まれません。会社法437条・438条1項が対象としているのは、計算書類と事業報告だからです。附属明細書は、作成したうえで(会社法435条2項)、上の会社法442条により本店に備え置きます。

また、株主へ提供するのは株主総会の承認を受ける前の計算書類ですが、取締役会設置会社では、あらかじめ取締役会の承認を受けた計算書類・事業報告を提供します(会社法436条3項・437条)。会社法上の計算書類は貸借対照表・損益計算書だけではなく、会社法435条2項会社計算規則59条1項により、株主資本等変動計算書・個別注記表を含みます。

計算書類の作成や会計処理の内容については、当事務所では判断していません。税理士・公認会計士へご相談ください。

3.書面投票・電子投票を採用する場合|法定の参考書類と議決権行使書面

書面投票または電子投票を採用した株主総会では、非公開会社でも、招集通知に際して株主総会参考書類を交付します。書面投票では議決権行使書面もあわせて交付します(会社法301条1項会社法302条1項)。条文は次のとおりです。

会社法301条1項・302条1項(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)

第三百一条 取締役は、第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この節において「株主総会参考書類」という。)及び株主が議決権を行使するための書面(以下この節において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。

第三百二条 取締役は、第二百九十八条第一項第四号に掲げる事項を定めた場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、株主総会参考書類を交付しなければならない。

会社法298条1項(株主総会の招集の決定)

取締役(略)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一・二 (略)
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 (略)

301条1項の「第二百九十八条第一項第三号に掲げる事項」が書面投票、302条1項の「第四号に掲げる事項」が電子投票です。「第二百九十九条第一項の通知」は招集通知を指します。
出典:会社法301条会社法302条会社法298条|e-Gov法令検索

条文は、株主総会参考書類を「議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類」と定義しています。あわせて交付する議決権行使書面は、株主が議案への賛否を記入して会社へ返送する書面です。書面投票・電子投票の株主は、会場で説明を聞かないまま賛否を決めるため、これらの書類が判断の手がかりになります。

書くこと|「議案」と「提案の理由」が基本

記載事項は、会社法施行規則73条以下で決まっています。会社法301条1項・302条1項の委任を受けた同規則65条1項が、記載事項は「次款の定めるところによる」(=73条以下)としているためです。すべての議案に共通する73条1項は、次のとおりです。

会社法施行規則73条1項

第七十三条 株主総会参考書類には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 議案
二 提案の理由(議案が取締役の提出に係るものに限り、株主総会において一定の事項を説明しなければならない議案の場合における当該説明すべき内容を含む。)
三 議案につき法第三百八十四条、第三百八十九条第三項又は第三百九十九条の五の規定により株主総会に報告をすべきときは、その報告の内容の概要

3号は、監査役などが議案を調査し、株主総会に報告すべき事項があるときの定めです。
出典:会社法施行規則73条|e-Gov法令検索

「議案」は、決議してもらう内容そのものです。定款の変更なら変更前後の条文、取締役の選任なら候補者、というように、株主がそれだけを見て賛否を決められる形で書きます。

「提案の理由」は、なぜその議案を提出するのかの説明です。会社法が株主総会での説明を義務づけている議案では、その説明すべき内容もここに書きます。たとえば次の場合です。

  • 募集株式を特に有利な払込金額で発行する場合の、その払込金額で募集をすることを必要とする理由(会社法199条3項
  • 取締役の報酬等を定める議案、または改定する議案の、その事項を相当とする理由(会社法361条4項)

払込金額が「特に有利な金額」に当たるかどうかの判断や、株価の算定は、当事務所では行っていません。税理士・公認会計士等へご相談ください。

議案の種類ごとに加わる事項|非公開会社は記載事項が少ない

議案の種類によっては、追加の記載事項があります(会社法施行規則74条以下)。たとえば取締役の選任議案では、候補者の氏名・生年月日・略歴などを書きます(74条1項1号)。このほか、就任の承諾を得ていないときはその旨(同項2号)、責任限定契約・補償契約・役員等賠償責任保険契約に関する事項(同項4号から6号)など、候補者や会社の状況に応じた記載事項があります。

公開会社では、これに加えて、候補者が持つ自社の株式の数や重要な兼職なども記載します(同条2項)。非公開会社にはこの項が適用されないため、記載事項はその分少なくなります。定めは議案の種類ごとに異なるため、作成するときは議案ごとに条文を確認します。

計算書類の承認議案では、取締役会設置会社で取締役会の意見があるときは、その意見の内容の概要も記載事項になります(会社法施行規則85条2号)。なお、第4章で示すサンプル②は、書面投票・電子投票を採用しない場合の任意の議案説明資料であり、ここでいう法定の株主総会参考書類ではありません。

スタートアップで多い定款の変更、募集株式の発行、新株予約権の発行には、議案の種類ごとの定めがありません。73条の「議案」と「提案の理由」を、どこまで具体的に書くかが中心になります。ただし、新株予約権(ストックオプション)を取締役に報酬として付与する場合は、取締役の報酬等に関する議案にも当たるため、報酬議案の記載事項(会社法施行規則82条1項。報酬等の算定の基準など)も確認します。

渡し方|招集通知と同じタイミングで交付する

法定の参考書類は、招集通知に際して交付します。書面投票・電子投票を採用した株主総会では、非公開会社でも、招集通知は株主総会の日の2週間前までに発します(会社法299条1項)。法定の参考書類も、この日までに完成している必要があります。

招集通知をメールなどの電磁的方法で受け取ることを承諾した株主には、書類の交付に代えて、記載すべき事項を電磁的方法で提供できます。書面投票の場合は法定の参考書類と議決権行使書面について(会社法301条2項)、電子投票の場合は法定の参考書類について(会社法302条2項)定めがあり、いずれも株主から請求があったときは書類を交付します。承諾の取り方は、シリーズ第3回で解説しています。

電子投票の場合は、これに加えて提供が義務づけられます。承諾をした株主に電磁的方法で招集通知を発するときは、議決権行使書面に記載すべき事項も電磁的方法で提供しなければなりません(会社法302条3項)。承諾をしていない株主から株主総会の日の1週間前までに請求があったときも、直ちに電磁的方法で提供します(同条4項)。

4.採用しない場合|実務で同封する議案説明資料と委任状用紙

書面投票・電子投票を採用せず、株主本人または委任状を受けた代理人の出席によって議決権を行使する株主総会では、会社法301条・302条による株主総会参考書類の交付義務は生じません。要件は出席の方法ではなく、書面投票・電子投票を採用したことだからです。それでも実務では、議案の内容や株主構成に応じて、議案の説明資料や委任状用紙を同封することがあります。当事務所では、法定の書類ではなくても、議案の説明資料をできるだけ添えることをおすすめしています

「参考書類」という言葉の2つの意味

実務では、書面投票・電子投票を採用しない株主総会でも、議案の説明資料を招集通知に同封し、これを「参考書類」と呼ぶことがあります。法律上の株主総会参考書類(本記事の第3章)と、この実務上の説明資料は別のものです。違いは次の表のとおりです。

法律上の株主総会参考書類 実務で同封する説明資料
根拠 会社法301条1項・302条1項 法律上の根拠はない
必要な場面 書面投票・電子投票を採用した株主総会 義務はない。委任状方式の株主総会などで、実務上同封する
書く内容 法務省令で決まっている 自由(法律上の項目を目安にできる)
呼び方 株主総会参考書類 議案説明資料、添付書類、参考書類など

同じ言葉が2つの意味で使われるため、混乱しやすくなっています。本記事では、前者を「法定の参考書類」、後者を「議案の説明資料」と呼び分けます。

同封する書類の例

株主数の少ない非上場会社では、委任状方式が用いられることがあります。第1章のサンプル①の招集通知でも、出席できない株主に対して、同封の議案説明資料を検討したうえで、委任状用紙に議案への賛否を表示し、署名・押印して返送するよう案内しています。委任状方式の株主総会で同封する書類の例を整理すると、次のとおりです。

同封する書類 法律上の義務 内容
招集通知(本体) あり(取締役会設置会社は書面で) 日時・場所・議題と、欠席する場合の案内
議案の説明資料 なし 議案の内容と提案の理由
委任状用紙 なし 代理人の指定欄と、議案ごとの賛否欄
計算書類・事業報告等(定時株主総会) 取締役会設置会社は、あり 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、事業報告、監査報告など

書類の名前にも、実務の工夫があります。招集通知では「委任状」ではなく「委任状用紙」と書きます。株主が委任してはじめて委任状になり、それまでは単なる用紙にすぎないからです。

※この章の書式の例は、金子登志雄『総務・法務担当者のための会社法入門』(中央経済社)第1章第4話によります。

サンプル①の招集通知に同封する「議案説明資料」と「委任状用紙」の例を示します。

サンプル② 議案説明資料

議案説明資料

第1号議案 第○期計算書類承認の件
第○期(2025年7月1日から2026年6月30日まで)の計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)のご承認をお願いするものです。内容は、添付の計算書類に記載のとおりです。

第2号議案 取締役2名選任の件
(提案の理由)取締役全員(2名)は、本総会終結の時をもって任期満了となります。つきましては、取締役2名の選任をお願いするものです。
(候補者)
1 甲野 太郎(1980年4月1日生)
  2015年7月 当社設立、代表取締役(現任)
2 乙山 花子(1985年10月1日生)
  2018年4月 当社入社
  2022年9月 当社取締役(現任)

以上

※実務では、この資料を便宜上「株主総会参考書類」という表題で送ることもあります。当事務所でも、株主に分かりやすいことを優先して、そうする場合があります。法定の株主総会参考書類(本記事の第3章)とは別の書類ですが、表題によって株主総会の方式が変わるわけではありません。

サンプル③ 委任状用紙

委任状

株式会社サンプル 御中

私は、________を代理人と定め、次の権限を委任します。

2026年9月18日開催の貴社第○回定時株主総会(継続会または延会を含みます)に出席し、下記の議案につき、私の指示(賛否を○印で表示)に従って議決権を行使すること。

 第1号議案  賛 ・ 否
 第2号議案  賛 ・ 否

2026年  月  日
 株主 住所
    氏名            ㊞
    議決権の数    個

※サンプル②は法定の書類ではありませんが、取締役候補者の氏名・生年月日・略歴など、法定の参考書類の項目を目安にしています。委任状の文言の詳細は、シリーズ第4回で解説しています。

書面投票を採用する場合には、これに相当する資料を、会社法施行規則の記載事項を満たす「株主総会参考書類」として作成し、議決権行使書面もあわせて交付します(会社法301条1項)。任意の説明資料が、そのまま法定の書類になるわけではありません。

当事務所の方針|書面投票によらない場合も、参考になる資料をできるだけ提供する

当事務所では、書面投票を採用する場合だけでなく、通常の委任状方式の株主総会でも、議案に加えて、決議の参考になる資料をできるだけ同封するようにしています。ベンチャーキャピタル(VC)の方から、「議案だけでなく、決議の参考になる書類をもう少し送ってほしい」というご要請を受けた経験があるためです。議題の名称だけでは、株主が議案の内容を十分に把握し、賛否を判断することが難しい場合があります。

これは法律上の義務ではなく、当事務所の経験にもとづく取扱いです。すべての会社に当てはまる標準というわけではありません。株主の顔ぶれや議案の内容に応じて、どこまで資料を付けるかを会社ごとに検討します。作るときは、法定の参考書類の項目(議案、提案の理由、役員候補者の氏名・略歴など)を目安にします。法定の書類ではないので、会社の規模や株主との関係に応じて、分量は調整できます。

説明資料の呼び方に、法律上の決まりはない

議案の説明資料の表題に、法律上の決まりはありません。委任状方式のまま「株主総会参考書類」という表題を用いている非公開会社もあり、当事務所が関与する会社にも見られます。表題によって、制度の性質が変わるわけではありません。

大切なのは表題ではなく、その株主総会が実際にどちらの方式なのかです。確認するのは、①招集を決める際に書面投票(会社法298条1項3号)を定めたかどうか、②株主から返送される書面が「株主本人による議決権の行使」なのか、それとも「代理人への授権」であって代理人が総会で議決権を行使するのか、の2点です。呼び方に迷うときは、法定の書類と区別しやすい「議案説明資料」などとすることをおすすめしていますが、どちらでなければならないというものではありません。すでに「参考書類」の名前で運用している会社が、そのために手続を変える必要はありません。

5.司法書士として実際に確認しているポイント

当事務所では、株主に渡す資料を単独で見るのではなく、招集の決定、招集通知、議事録、登記申請書類と内容がつながっているかを確認します。手順は次のとおりです。

  1. 書面投票・電子投票を採用したかを確認する

    招集を決めた取締役会議事録(取締役会を置かない会社では、招集についての取締役の決定の内容)と、招集通知の文面を確認します。採用していれば、法定の株主総会参考書類(書面投票では議決権行使書面も)を作成します。採用していない場合は、議案の内容や株主構成に応じて、任意の議案説明資料を作成するかを検討します。

    取締役会を置かない会社で取締役が複数いる場合は、定款の定めもあわせて確認し、誰がどのように決定したかを見ます。定款に別段の定めがなければ、会社法298条1項各号の事項は取締役の過半数で決定し、各取締役に委任することはできません(会社法348条2項・3項3号)。

  2. 採用した場合:議案ごとに記載事項を条文と突き合わせる

    会社法施行規則73条の共通事項と、74条以下の議案ごとの事項を確認します。公開会社だけに適用される項を誤って当てはめていないか、逆に非公開会社にも適用される項を落としていないかを見ます。

  3. 採用しない場合:議案の概要が決定され、通知されているかを確認する

    役員の選任、報酬、定款の変更など、会社法施行規則63条7号に掲げる議題については、招集の決定事項として「議案の概要」が定められているかを確認します。取締役会設置会社では、その内容が招集通知にも反映されているかを見ます。取締役会を置かず、書面投票・電子投票も採用しない会社では、招集通知を書面で発する義務がないため、招集の決定の内容と、実際の通知の方法をそれぞれ確認します。

  4. 議案の文言を、議事録・登記申請書類とそろえる

    定款変更の新旧の条文、募集事項、役員候補者の氏名の表記を、株主総会議事録や就任承諾書などの登記申請の添付書類と一致させます。株主に渡した資料と議事録の議案が食い違っていると、どちらが決議された内容なのかが後から分かりにくくなります。

  5. 渡す時期と方法を確認する

    招集通知と同時に渡しているか。電磁的方法で提供する株主からは、会社法299条3項の承諾を得ているか。書類の交付を請求された場合の対応を決めているか。取締役会設置会社の定時株主総会では、計算書類・事業報告等も同時に提供しているかを確認します。

  6. 委任状方式の場合:文面から方式が分かるかを確認する

    説明資料の表題だけで判断せず、招集の決定の内容(書面投票を定めていないか)と、返送される書面が株主本人による議決権の行使なのか、代理人への授権なのかを確認します。

当事務所の支援内容は、株主総会・取締役会の運営支援のページでご案内しています。

6.よくあるご質問

株主が数名の非公開会社でも、書面投票を採用したら株主総会参考書類は省略できませんか。

省略できません。会社法301条1項は、株主の数や、公開会社かどうかで区別していません。株主全員の同意があれば招集の手続を省略できますが、書面投票・電子投票を採用した株主総会では、この省略もできません(会社法300条ただし書)。なお、内容そのものを省略することはできませんが、招集通知をメールなどの電磁的方法で受け取ることを承諾した株主には、書類の交付に代えて、記載すべき事項を電磁的方法で提供することができます(会社法301条2項。株主から請求があったときは書類を交付します)。株主が少数で全員の協力が得られる会社では、書面投票を採用せず、委任状や決議の省略(会社法319条1項)を使う方法もあります。

株主総会を開かずに書面決議(決議の省略)で済ませる場合、株主総会参考書類は必要ですか。

会社法上の株主総会参考書類は、書面投票・電子投票を採用した株主総会で、招集通知に際して交付する書類です(会社法301条1項、会社法302条1項)。決議の省略(会社法319条1項)は株主総会を招集しない手続なので、この規定が働く場面ではありません。ただし、株主は提案の内容を見て同意するかどうかを決めます。株主が何について同意するのかが明確になるよう、提案の内容は具体的に示します。

7.まとめ|招集通知は原則必要、一緒に渡す書類は場面で決まる

  • 招集通知は、どの株式会社でも原則として必要です。日時・場所・議題を記載します。書面投票・電子投票を採用しない場合、役員の選任や定款の変更など一定の議題については、取締役会の有無にかかわらず、招集を決定する段階で議案の概要を定めます(会社法施行規則63条7号)。取締役会設置会社では、これが招集通知の記載事項にもなります(会社法299条4項)。
  • 招集通知と一緒に渡す書類は、①書面投票・電子投票を採用するか、②取締役会設置会社の定時株主総会かで決まります。
  • ①なら、非公開会社でも法定の参考書類会社法301条1項会社法302条1項)を交付し、書面投票では議決権行使書面も交付します。書く内容は、すべての議案に共通する「議案」「提案の理由」など(会社法施行規則73条)と、議案の種類ごとの事項(同規則74条以下)です。
  • ②なら、これとは別に計算書類・事業報告等会社法437条。監査役を置く会社などでは監査報告を含みます)を提供します。取締役会を置かない会社に事前提供の義務はありませんが、当事務所では事前に送ることをおすすめしています。
  • どちらにも当たらない委任状方式の株主総会では、会社法上、必ず渡さなければならない書類はありません。それでも当事務所では、議案の説明資料をできるだけ添えるようにしています。大切なのは表題ではなく、招集の決定の内容と、返送される書面が株主本人の議決権行使か、代理人への授権かです。

株主へ渡す資料は、「何という名前の書類を付けるか」ではなく、「その株主総会で株主がどの方法で議決権を行使するか」から考えると、必要な書類と書く内容が決まります。本シリーズは今回で完結です。株主総会そのものの基本は、株主総会について|非公開会社を中心に基本を解説をご覧ください。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

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主な根拠法令・参考資料

  • 会社法 199条3項・200条2項(募集株式の募集事項の決定と委任)、238条3項・239条2項(募集新株予約権の募集事項の決定と委任)、298条(株主総会の招集の決定)、299条(株主総会の招集の通知)、300条(招集手続の省略)、301条・302条(株主総会参考書類及び議決権行使書面の交付等)、319条1項(株主総会の決議の省略)、348条2項・3項3号(取締役の過半数による決定)、361条4項(取締役の報酬等)、435条2項(各事業年度に係る計算書類)、436条(計算書類等の監査等)、437条(計算書類等の株主への提供)、438条(計算書類等の定時株主総会への提出等)、442条(計算書類等の備置き及び閲覧等)
  • 会社法施行規則 63条(招集の決定事項)、65条(株主総会参考書類)、73条、74条(取締役の選任に関する議案)、82条(取締役の報酬等に関する議案)、85条(計算関係書類の承認に関する議案)
  • 会社計算規則 59条1項(各事業年度に係る計算書類)
  • 金子登志雄『総務・法務担当者のための会社法入門』(中央経済社)第1章第3話・第4話

本記事について

本記事は、2026年9月時点の会社法、会社法施行規則および公表資料等をもとに作成しています。法令や実務の取扱いは変更されることがあります。具体的な手続にあたっては最新の情報をご確認のうえ、会社法上の手続と登記については司法書士、税務については税理士、会計については公認会計士等へご相談ください。

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