第三者割当増資の割当先は誰が決める?会社法204条と定款の「別段の定め」

HOMEコラム資金調達・資本政策第三者割当増資の割当先は誰が決める?会社法204条と定款の「別段の定め」

結論

本記事では、第三者割当増資について、会社法203条の申込みを受け、その申込者の中から204条により割当てを決定する方式(本記事では「申込割当方式」といいます)を前提に解説します。この方式で譲渡制限株式を発行する場合、割当先・割当株数の決定は、原則として株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によります。ただし、会社法204条2項は「定款に別段の定めがある場合」を例外としており、定款の内容に応じて、別の決定方法を設けることができます。

一方、実際の資金調達では、株主総会の時点で、最終的な発行株数・払込金額だけでなく、割当先や各投資家への割当株数まで決まっていないことがあります。

※会社法205条1項の総数引受契約方式では203条・204条が適用されないため、本記事の中心的な解説は申込割当方式を対象としています。総数引受契約方式については後半のFAQでも触れます。

本記事では、非公開会社(全株式が譲渡制限株式)で、取締役会を設置していない株式会社を基本例として、次の2つを分けて整理します。

  • 募集事項の具体化:会社法200条による委任
  • 今回の中心割当先・割当株数の決定:会社法204条2項に対応する定款上の設計

この2つを、8月20日の株主総会から8月25日の払込みまでのモデルケースに沿って確認します。

第三者割当増資を理解する 3回シリーズ

第3回|割当て割当先は誰が決める?定款の別段の定め
(この記事)

1|モデルケース|募集条件も割当先も株主総会までに決まらない

まず、この記事で扱うモデルケースの前提を確認します。第2回で取り上げた「募集条件がまだ固まらない」ケースに、今回は「割当先・割当株数もまだ固まらない」という問題が加わります。

今回のモデルケース株式会社A(架空)
  • 非公開会社(全株式に譲渡制限あり)・取締役会非設置会社
  • 取締役3名(うち代表取締役1名)。業務の決定方法について定款に別段の定めはなく、会社法348条2項の一般原則に従い、取締役の過半数で決定する前提
  • 種類株式発行会社ではなく、発行可能株式総数には今回の発行に必要な余裕がある
  • 金銭出資による新株発行(現物出資ではない)
  • 今回発行するのは譲渡制限付き普通株式で、前記の申込割当方式(会社法203条・204条)を利用
  • 現行定款には、割当てを取締役の過半数の決定とする会社法204条2項の「別段の定め」はない
  • VC・事業会社等から、約5,000万円の第三者割当増資を予定
  • 8月20日に株主総会、8月25日に払込みを予定
  • 8月20日の株主総会を開く時点では、最終的な発行株数・払込金額等が未確定
  • さらに、割当先・各投資家への割当株数も未確定
  • この「株式会社A(A社)」は発行会社です(第2回と同じA社を使います)。第1回の設例に登場する株式会社P・Q・R・Sは投資家であり、別の事例です

※本記事では、払込金額がいわゆる有利発行に該当しない前提で説明します。有利発行に該当する場合は、会社法199条3項・200条2項等を含め、別途の検討が必要です。

A社 代表取締役の悩み

「株主総会の日程はもう動かしにくい。でも、その日までに最終的な発行条件も、誰に何株を割り当てるかも決まりそうにありません。投資家側の社内承認や最終的な投資意向が固まったら、数日後には払込みまで進めたいのですが、どのような決議をしておけばよいのでしょうか?」

スタートアップの資金調達では、株主総会の日程が先に決まる一方、投資家側の社内承認や最終投資額の調整が、株主総会の直前まで、場合によってはその後まで続くことがあります。そこで、株主総会の日に何が未確定なのかを確認し、後日誰が何を決めるのかまで先に設計しておくことが重要になります。

では、A社が8月20日の株主総会から8月25日の払込みまで進む場合の全体像を見てみましょう。

モデルケースの全体像8/20の株主総会で「ここまで決める」→「まだ決まらないもの」を整理し、8/25の払込みへ進む
8/20
株主総会までに定款を確認し、8/20に必要な決議を行う
会社法200条
199条の募集事項を後日具体化するため、「上限・下限」を定めて決定権限を委任

A社では、募集株式数の上限500株・払込金額の下限1株10万円を株主総会で定め、その範囲内で具体的な募集事項を決める権限を取締役へ委任します(会社法200条1項)。

会社法204条2項
A社には204条2項の「別段の定め」がないため、同じ株主総会で定款変更

後日の割当決定を取締役の過半数で行えるよう、会社法204条2項の「別段の定め」に対応する規定を新設します。

株主総会が終わっても、未確定なのはこの2つ

未確定①実際の発行株数・払込金額・払込期日等
未確定②割当先・各投資家への割当株数

株主総会後に正式決定

1

具体的な募集事項を正式決定

例:普通株式400株・1株12万円・払込期日8月25日

A社:取締役の過半数

2

会社法203条所定の事項を通知し、申込みを受ける

具体化した募集事項等を申込希望者へ通知し、投資家から申込みを受けます。

申込割当方式

3

割当先・割当株数を正式決定

例:VC甲250株・事業会社乙100株・投資家丙50株

A社:取締役の過半数

4

割当株式数を申込者へ通知

会社法204条3項の期限までに、各申込者へ割当株式数を通知します。

204条3項

5

8月25日|払込み

払込みを受けた後、必要な変更登記へ進みます。

クロージング

※上図は取締役会非設置会社であるA社の表示で、A社では取締役3名の過半数で決定する前提です。本記事と同じ非公開会社で取締役会を設置している場合、会社法200条による委任後の具体的な募集事項の決定は取締役会、譲渡制限株式の割当決定も原則として取締役会となります。
実務上の補足|具体的な募集事項の決定と割当決定を同じ日に処理することもあります。
ただし申込割当方式では、募集事項の決定 → 会社法203条の申込み → 会社法204条の割当てという前後関係があります。同日処理する場合も、この順序が成立しているかを確認します。

このモデルケースのポイント

8月20日の株主総会では、後日の決定に必要な「枠」と「権限」を整えます。会社法200条に基づいて募集株式数の上限・払込金額の下限を定め、具体的な募集事項の決定を取締役へ委任します。さらにA社には会社法204条2項に対応する定款規定がないため、後日の割当決定を取締役の過半数で行えるよう、同じ株主総会で定款変更も行います。そのうえで、株主総会終了時点でも未確定の「実際の発行条件」と「誰に何株を割り当てるか」を、後日それぞれ正式決定する流れです。

2|「募集事項」と「割当て」は別|会社法200条・204条を整理する

A社の流れを理解するには、まず「どんな条件で募集するか」「誰に何株を割り当てるか」を分ける必要があります。

募集事項 割当て
問い どんな条件で募集する? 誰に何株を割り当てる?
主な条文 会社法199条・200条 会社法204条(前提として203条の申込み)
A社の例 400株・1株12万円・払込期日等 VC甲250株・乙社100株・丙50株
株主総会終了時点 200条の委任を利用する場合、具体的な発行条件はなお未確定 割当先・各投資家への割当株数はなお未確定

募集事項の具体化|会社法200条の委任

A社のような非公開会社では、会社法200条により、株主総会で募集株式数の上限・払込金額の下限を定めたうえで、具体的な募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)へ委任できます。A社は取締役3名で、業務の決定方法について定款に別段の定めがないため、委任後の具体的な募集事項は取締役の過半数で決定します(会社法348条2項)。

補足|200条の委任には期間制限があります。
会社法200条3項により、委任に基づく募集の払込期日(払込期間を定めた場合はその末日)は、委任決議の日から1年以内である必要があります。本記事のA社は8月20日の決議から数日後の払込みを想定しているため、この期間内です。

割当先・割当株数|会社法204条

申込割当方式では、会社法203条の申込みを受けた後、会社が申込者のうち誰に、何株を割り当てるかを決定します。これが会社法204条の「割当て」です。

会社法第204条(募集株式の割当て)

1項
株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければならない。この場合において、株式会社は、当該申込者に割り当てる募集株式の数を、前条第二項第二号の数よりも減少することができる。

2項【今回の中心】
募集株式が譲渡制限株式である場合には、前項の規定による決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

3項
株式会社は、第百九十九条第一項第四号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない。

4項
第二百二条の規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与えた場合において、株主が同条第一項第二号の期日までに前条第二項の申込みをしないときは、当該株主は、募集株式の割当てを受ける権利を失う。

会社法第204条(募集株式の割当て)|e-Gov法令検索

つまり実務では

A社のような取締役会非設置会社が譲渡制限株式を発行する場合、定款に別段の定めがなければ、割当先・割当株数は原則として株主総会で決めます。取締役会設置会社であれば、原則として取締役会です。

会社の機関設計 譲渡制限株式の割当決定
取締役会設置会社 原則として取締役会
取締役会非設置会社 原則として株主総会
定款に別段の定めがある場合 定款に定めた決定機関・方法を確認

取締役会非設置会社で定款に別段の定めがなく、204条2項の割当決議を株主総会で行う場合は、会社法309条2項5号の特別決議となります。

200条で募集事項を委任したからといって、「誰に何株」まで当然に取締役が決められるわけではありません。
募集事項の具体化と割当ては、法的な根拠を分けて確認します。

本記事では、非公開会社・取締役会非設置会社・譲渡制限株式を基本例としています。
公開会社、種類株式発行会社、有利発行に該当する場合などは追加の確認が必要です。種類株式発行会社では、会社法199条4項・200条4項・322条等による種類株主総会の要否も、定款とあわせて個別に確認します。実際の開催方法については、種類株主総会を同日に開催するときの実務もご参照ください。

3|まず自社の定款を確認|204条2項の「別段の定め」があるか

A社のような取締役会非設置会社で、譲渡制限株式の割当てを後日、取締役の過半数で決定したい場合、まず確認するのは自社の定款です。

定款の記載イメージ(簡略例)

(募集株式の割当て)
当会社の募集株式の申込者に対する割当に関する事項は、取締役の過半数の決定により定める。

※理解のために単純化した一例です。そのまま各社に適用できる雛形ではありません。実際には機関設計、既存定款、株式の種類、投資契約・株主間契約等を確認して設計します。

このような定款規定がある

その規定が今回の募集株式の割当てにも適用できる内容かを確認します。適用できれば、会社法203条の申込みを受けた後、定款に基づいて取締役の過半数で「誰に何株」を正式に決定する流れが考えられます。

このような定款規定がない

会社法204条2項の原則に戻り、A社のような取締役会非設置会社では株主総会による割当決定が必要になります。後日、取締役の過半数で決定する設計とする場合は、定款変更を検討します。

定款規定がなければ、2つの進め方を検討します

方法A|今回の株主総会で定款変更

後日の割当てを取締役の過半数の決定とする定款規定を新設し、申込みを受けた後に割当てを正式決定します。

方法B|定款は変更しない

会社法203条の申込みを受けた後、会社法204条2項の原則どおり、改めて株主総会で割当てを決定します。

方法Aの定款変更は、今回の増資だけの一時的な委任ではありません。
会社法200条の委任が「今回の募集について」効力を持つもの(同条3項により、払込期日が委任決議の日から1年以内であることも必要です)であるのに対し、204条2項に対応する定款規定は、会社の意思決定ルールそのものを変えるものです。規定を残す限り、その適用範囲に応じて将来の募集株式の割当てにも継続して適用されます。今回のクロージングだけでなく、今後も割当決定を取締役の決定に委ねる会社設計でよいかを確認したうえで、規定内容を検討します。
また、前掲の記載例は「当会社の募集株式」一般を対象に読める書き方です。実際の定款設計では、この規定をどの範囲の募集株式に適用するかについても、今後の資本政策や機関設計を踏まえて検討します。

この定款規定を設ける実務上の意味

実務上の意味は、単に株主総会の回数を減らせることだけではありません。株主総会で決める資金調達の大枠と、後日の申込みを踏まえて決定する「誰に何株」という事項を切り分け、クロージングスケジュールに合わせて意思決定しやすくする点にも意味があります。

重要|定款規定がない場合は、割当決定機関に注意

A社のような取締役会非設置会社・譲渡制限株式について、204条2項に対応する定款規定がないにもかかわらず、株主総会による割当決定も経ずに取締役だけで「誰に何株」を決めた場合、会社法204条2項が定める決定機関による決議を経ていないことになり、割当決定の適法性に重大な疑義が生じます。後続の増資手続や登記にも影響する可能性があるため、募集株式発行の議案を作成する前に、現在の定款と割当決定機関を確認することが重要です。

※「定款規定がない=当然に新株発行全体が無効」「必ず登記が却下される」と一律に整理する趣旨ではありません。個別の手続違反の法的効果は事案ごとの検討が必要です。

4|同じ株主総会でどう手当てする?|定款変更と募集事項の委任

以下では、A社が前章の「方法A」を選び、8月20日の株主総会で①割当てに関する定款変更と、②会社法200条による募集事項の委任をあわせて行う前提で見ていきます。ただし、法律上の根拠は別です。

議案例①|定款変更
会社法204条2項

割当てを取締役の過半数の決定とする規定を新設
(募集株式の割当て)
当会社の募集株式の申込者に対する割当に関する事項は、取締役の過半数の決定により定める。

これは株主総会からの「委任」ではなく、204条2項の「定款に別段の定め」に対応する定款設計です。今回限りの措置ではなく、規定を残す限り将来の募集株式の割当てにも適用されます。

議案例②|募集事項の委任
会社法200条

上限・下限を決め、具体的な募集事項を委任
募集株式の数の上限 普通株式500株
払込金額の下限 1株につき金100,000円

上記に定めるもののほか、募集事項の決定を取締役に委任する。

会社法200条による委任では、募集株式数の上限・払込金額の下限を株主総会で定めます。

同じ株主総会で手当てしても、法的根拠は別

募集事項の具体化は会社法200条の「委任」、割当先・割当株数を取締役が決める仕組みは会社法204条2項の「定款の別段の定め」です。実務上は一体として準備することがありますが、法律上は区別して整理することが重要です。

決議要件も確認が必要です。
本記事のA社の場合、会社法200条1項による募集事項の決定の委任は、会社法309条2項5号の特別決議となります。また、204条2項に対応する定款規定を新設するための定款変更も、会社法466条・309条2項11号により原則として株主総会の特別決議が必要です。

定款変更の効力発生時期も確認します。
後日、A社の取締役の過半数で募集株式の割当てを決定する時点で、会社法204条2項に対応する定款規定が有効となっているよう手続を整理します。議案構成上、定款変更を先に決議しておく方法も考えられます。

当事務所の実務でも、同じ株主総会で募集事項の委任と、後日の割当決定につなげるための定款上の手当てをあわせて整理するケースは複数あります。

5|株主総会後の流れ|募集事項の決定から払込みまで

ここでは、前章のとおり、A社が8月20日の株主総会で会社法200条の委任決議と、会社法204条2項に対応する定款変更を行った前提で、その後のクロージングまでの流れだけを時系列で確認します。

8月20日株主総会

募集株式数の上限500株・払込金額の下限1株10万円を決議し、具体的な募集事項の決定を取締役へ委任します。あわせて、後日の割当決定を取締役の過半数で行えるよう、会社法204条2項に対応する定款変更も行います。

8月21日具体的な募集事項を決定

例えば、普通株式400株・1株12万円・払込期日8月25日など、委任された範囲内で具体化します。A社では、会社法348条2項により取締役の過半数で決定します(業務の決定方法について定款に別段の定めがない前提)。本記事と同じ非公開会社で取締役会を設置している場合は、取締役会決議となります。

8月21日〜22日会社法203条所定の事項を通知し、投資家から申込みを受ける

具体化した募集事項等を申込希望者へ通知し、会社法203条の申込みを受けます。各投資家が何株を申し込むのかも、この段階で明らかになります。

8月22日割当先・割当株数を正式決定

申込者の中から、例えばVC甲250株・事業会社乙100株・投資家丙50株と、会社法204条1項の割当てを正式に決定します。A社では204条2項対応の定款規定に基づき取締役の過半数で決定しますが、取締役会設置会社では原則として取締役会決議です。

法定期限まで割当株式数を申込者へ通知

払込期日を定めた場合はその前日まで、払込期間を定めた場合はその期間の初日の前日までに、申込者へ割当株式数を通知します(会社法204条3項)。

8月25日払込み

払込みを受けた後、発行済株式総数・資本金等の変更について必要な登記へ進みます。

実務上は同日処理することも

具体的な募集事項の決定と割当決定を同日に処理する案件もあります。A社のような前提では取締役の過半数による決定として、本記事と同じ非公開会社で取締役会を設置している場合は取締役会決議として整理することがあります。ただし、申込割当方式では会社法203条の申込みが204条の割当てに先行するため、同日に処理する場合でも、募集事項の決定・申込み・割当ての前後関係が適切に成立しているかを確認します。

この時系列を、株主総会の日から逆算して設計しておくことが、本記事のように短いクロージングスケジュールを組む申込割当方式による第三者割当増資では重要になります。

6|司法書士として実際に確認しているポイント

当事務所では、第三者割当増資について、まず申込割当方式か総数引受契約方式かを確認します。そのうえで、本記事で扱う申込割当方式では、会社・定款、募集・割当ての時系列、周辺手続を一連のスケジュールとして確認しています。

1方式・会社・定款を確認

  • 申込割当方式か、総数引受契約方式か
  • 取締役会設置/非設置
  • 募集株式が譲渡制限株式か
  • 204条2項の定款規定があるか
2募集・割当てを時系列化

  • 200条でどこまで委任するか
  • 申込内容・最終調整がいつ固まるか
  • 募集事項決定→203条→204条→払込みの順序
3周辺手続を確認

  • 投資契約・株主間契約との整合
  • 種類株式発行会社では199条4項・200条4項・322条等も確認
  • 204条3項の通知期限

204条3項の「通知」と「割当通知書」は分けて考えます

会社法204条3項が要求しているのは、所定の期限までに申込者へ割当株式数を「通知すること」です。条文上、「割当通知書」という名称の独立した書面を常に作成することまで規定されているわけではありません。

一方で、個別の「割当通知書」を作成するかどうかとは別に、204条3項所定の期限までに割当株式数の通知が適切に行われているかは確認する必要があります。投資契約書その他のクロージング書類や書面連絡を利用する場合も、その内容、時期、相手方、割当決定との関係を確認します。

「投資契約書があるから204条3項を確認しなくてよい」という意味ではありません。
また、契約自体が会社法205条の総数引受契約として構成されている場合には203条・204条が適用されないため、まず採用している方式そのものを確認します。

投資契約・株主間契約の法的レビューや投資条件の交渉は、弁護士へご相談ください。
当事務所では、会社法上の手続、定款、決議書類、登記に関係する範囲で内容を確認します。株価評価、税務・会計上の判断については、税理士・公認会計士等へご相談ください。

7|よくあるご質問

募集事項と割当てについて、同じ株主総会でまとめて手当てできますか。

実務上、同じ株主総会で両方について手当てすることはあります。ただし法的な仕組みは異なります。募集事項の具体的な決定は会社法200条による委任です。一方、A社のような取締役会非設置会社で、後日の割当決定を取締役の過半数で行いたい場合には、会社法204条2項の「定款に別段の定め」があるかを確認します。規定がなければ、同じ株主総会で定款変更を行うことも検討します。

定款に既に「割当ては取締役の過半数で決める」とあれば、増資のたびに定款変更が必要ですか。

その定款規定が今回の割当てにも適用できる内容であれば、増資のたびに定款変更が必要になるわけではありません。募集事項について必要な決議・委任を行い、後日の割当ては既存の定款規定に基づいて決定する流れが考えられます。

取締役会設置会社でも、割当てのために204条2項の定款規定が必要ですか。

取締役会を割当決定機関とするための「別段の定め」は、原則として必要ありません。募集株式が譲渡制限株式である場合、取締役会設置会社では会社法204条2項により、割当決定は原則として取締役会の決議事項だからです。取締役会以外の決定方法とする場合には、会社法204条2項の「定款に別段の定め」が必要となるため、その内容を個別に確認します。

総数引受契約を利用する場合も、204条の割当決定が必要ですか。

会社法205条1項の総数引受契約を締結する場合には、203条・204条は適用されません。ただし、募集株式が譲渡制限株式の場合には205条2項による契約の承認について別途確認が必要です。第1回では申込割当方式との違いを詳しく整理しています。

8|まとめ|「今決まっていないこと」から株主総会を逆算する

今回のポイントは、募集事項と割当てを分け、その後の決定権限まで株主総会の時点で確認しておくことです。

1何が未確定?

募集条件なのか、割当先・割当株数なのかを分けます。

2誰が後で決める?

取締役・取締役会・株主総会のどこで正式決定するかを整理します。

3権限の根拠はある?

200条の委任と、204条2項の決定機関・定款の「別段の定め」を混同せず確認します。

実務上のまとめ

本記事で扱ったA社のような非公開会社の申込割当方式による第三者割当増資では、「今日の株主総会で何を決めるか」だけではなく、その後の申込み・割当決定・払込みまでを逆算して議案を組むことが重要です。募集事項の委任と割当決定の権限設計を、資金調達に先立つ株主総会の段階であわせて整理しておくことが、クロージングを円滑に進めるための一つの方法になります。

具体的な増資スケジュールや必要な決議・定款変更の整理については、資金調達・資本政策の業務案内をご確認ください。

第三者割当増資の手続・スケジュールをご相談ください

最終的な発行条件や割当先・割当株数がまだ固まっていない段階でもご相談いただけます。現在の定款・機関設計・株主構成を確認し、まず採用する方式を整理します。そのうえで、株主総会で何を決めるか、その後に誰が何を決めるかを確認し、採用する方式に応じた会社法上の手続から払込み・登記までのスケジュールを組み立てます。

お問い合わせ
増資・資本政策の料金を見る

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度)。

詳しいプロフィールを見る

主な根拠条文・参考文献

主な根拠条文:会社法第199条(募集事項の決定)、第200条(募集事項の決定の委任)、第203条(募集株式の申込み)、第204条(募集株式の割当て)、第205条(募集株式の申込み及び割当てに関する特則)、第309条第2項第5号・第11号(株主総会の特別決議)、第348条第2項(取締役会非設置会社の業務決定)、第466条(定款の変更)、第915条第1項・第2項(変更登記の期間)ほか。

参考文献:金子登志雄・富田太郎『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』(中央経済社)。

法令:会社法第200条|e-Gov法令検索会社法第204条|e-Gov法令検索会社法第205条|e-Gov法令検索

本記事は、2026年8月時点の法令および公表資料等をもとに作成しています。法令や実務の取扱いは変更されることがあります。具体的な手続にあたっては、最新の定款・登記事項・株主構成・投資条件・既存契約等を確認する必要があります。会社法上の手続と登記については司法書士、投資契約・株主間契約の作成・交渉・法的レビューについては弁護士、株価算定・税務・会計については税理士・公認会計士等へご相談ください。

来所不要・全国対応。マイナンバーカードを利用したオンライン登記に対応しています

対応するスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、委任状等への電子署名をオンラインで行っていただけます。登記申請は当事務所が行います。電子署名サービス「サインルーム(旧RSS-SR)」と専用アプリ「RSSモバイル」を利用します。案件によっては、書類の郵送等をお願いする場合があります(専用アプリ「RSSモバイル」のダウンロードはこちら)。初回相談無料です。

商業登記・企業法務 料金表を見る