会社設立の資本金はいつ払い込む?定款作成前・認証前の払込みは認められる?

会社設立の資本金はいつ払い込む 定款作成前・認証前の払込みは認められる
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結論

株式会社をつくるときの資本金(出資金)は、定款を作成した後であれば、公証役場で定款の認証を受ける前に払い込んでも差し支えないとされています。

また、2022年(令和4年)6月13日付の法務省の通知により、定款を作成する前に払い込んだ場合でも、その会社の設立のための出資と認められれば差し支えないとされました。

大切なのは、その入金が今回の設立のための出資だと分かることです。以前から口座にあった預金の残高だけでは、払込みがあったことの証明にはなりません。

いずれも、発起人(会社をつくり、最初の株主になる人)だけが出資する「発起設立」の場合の取扱いです。

1.会社設立時の出資金の払込みとは?会社法の基本ルール

株式会社を設立するときは、発起人(会社をつくり、最初の株主になる人)が、引き受けた株式と引換えに出資金を払い込みます。

払込みのルールは会社法34条に定められています。まずは条文を確認してみましょう。

会社法34条(出資の履行)

1 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。

2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(…)、信託会社(…)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。

2項の括弧書きの一部を「…」で省略しています。「設立時発行株式」は、会社の設立に際して発行する株式のことです。出典:会社法34条|e-Gov法令検索

1項のとおり、発起人は、株式を引き受けた後、遅滞なく出資金を払い込みます。2項のとおり、払込先は、発起人が定めた銀行などの口座です。

株式会社は、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立します(会社法49条)。設立の登記をするまで会社はまだ成立していないため、払込先の口座は、原則として、発起人の名義の口座になるとされています(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)116頁)。会社が成立する日(設立日)の決め方は、会社の設立日はいつにするかで解説しています。

なお、一般に「資本金の払込み」と呼ばれますが、正確には、株式と引換えにする出資金の払込みです。払い込まれた額のうち2分の1を超えない額は、資本金とせず、資本準備金とすることができます(会社法445条2項・3項)。資本金の額の決め方は、資本金はいくらが目安かで解説しています。

では、この払込みは、定款を作成して認証を受ける手続との関係で、いつすればよいのでしょうか。

2.定款作成後なら、認証前の払込みは以前から認められていた

株式会社の発起設立では、定款の作成、または発起人全員の同意の後であれば、公証人の認証を受ける前に出資金を払い込んでも差し支えないとして、登記実務で取り扱われてきました(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)93頁)。

会社法34条1項は、株式の「引受け後」の払込みを求めています。そして、発起人が割当てを受ける株式の数と払い込む金額は、定款で定めるか、定款に定めがなければ発起人全員の同意で定めます。発起人全員の同意について定めた会社法32条1項を確認してみましょう。

会社法32条1項(設立時発行株式に関する事項の決定)

発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
一 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
二 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
三 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項

「定款に定めがある事項を除く」とあるとおり、これらの事項を定款に書いた場合は、発起人全員の同意で定める必要はありません。出典:会社法32条|e-Gov法令検索

このため、発起人が払い込むべき金額は、定款を作成した時か、発起人全員が同意した時に決まります。認証の前に払い込んでも差し支えないとされてきたのは、その時点で、払い込む金額がすでに決まっているためです。

松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』は、この扱いの参考先例として、定款の認証の前に株式の引受けと役員の選任をし、その後に定款の認証を受けた株式会社の発起設立について、設立の登記の申請を受理してよいとした先例(1956年(昭和31年)5月19日付民四第103号回答)を挙げています(商事法務、93頁)。

ここで区別したいのが、定款の「作成」と「認証」です。定款は発起人が作成し、株式会社の場合は、その後に公証人の認証を受けます(会社法30条1項)。作成日と認証日は同じ日になるとは限らず、払込みの日を認証の日に合わせる必要もありません。

では、定款を作成する前に払い込んだ場合はどうなるのでしょうか。

3.2022年(令和4年)の法務省通知で、定款作成前の払込みも条件付きで認められた

2022年(令和4年)6月13日付の法務省の通知(民商第286号)により、定款の作成日や発起人全員の同意の日より前の払込みでも、差し支えない場合があるとされました。発起人等の口座に払い込まれているなど、設立に際して出資されたものと認められる場合です(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)93頁)。

この通知に先立ち、同年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画では、法務省が実施する事項として、次のように書かれています。

規制改革実施計画(2022年(令和4年)6月7日閣議決定)より

株式会社発起設立時の出資に係る払込みの時期について、設立時発行株式に関する事項が定められている定款の作成日又は発起人全員の同意があったことを証する書面の同意があった日前に払込みがあったものであっても、発起人又は設立時取締役(発起人からの受領権限の委任がある場合に限る。)の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものについては、設立登記申請の4週間前など近接した時期のものであれば、出資に係る払込みがあったものと認めることとする。

「Ⅱ 実施事項」の「5.個別分野の取組」<スタートアップ・イノベーション>(1) No.1「法人設立手続の迅速化・負担軽減」bの一部です。出典:規制改革実施計画(令和4年6月7日閣議決定)|内閣府

実施計画では、例として「設立登記申請の4週間前」が挙げられています。「など」が付いているとおり、4週間は一律の期限として書かれているわけではありません。一方で、払込みの時期がいつでもよいとされているわけでもありません。問われるのは、その入金が、今回の会社の設立のための出資と認められるかどうかです。

従来の取扱いと、通知による取扱いの違いを、次の時系列図で比べてみましょう。注目するのは、払込みが定款の「作成」と「認証」のどちらより先かという点です。

図解① 払込みのタイミングはどう変わった?株式会社の発起設立における払込時期の取扱い

従来から認められていた例

定款作成後、定款認証前に払い込むケース

定款作成
払込み認証前でもOK
定款認証
設立登記申請
2022年(令和4年)の通知による取扱い

設立のための出資と認められれば、定款作成前の払込みも差し支えない

払込み条件付きでOK
定款作成
定款認証
設立登記申請
重要なポイント:定款作成前の払込みが無条件に認められたわけではありません。今回の会社設立のための出資であることが確認できる必要があります。
※上図は払込時期の違いを示す例であり、会社設立手続の唯一の順序を示したものではありません。

なお、この通知で会社法34条の規定が変わったわけではありません。変わったのは、設立の登記の申請書に添付する「払込みがあったことを証する書面」(商業登記法47条2項5号)で、どの時期の払込みまで認めるかという、登記実務の取扱いです。

この通知は、株式会社の発起設立についてのものです。発起人以外からも株主を募集する募集設立では、引受人は、発起人が定めた払込期日または払込期間内に払い込むこととされています(会社法63条1項)。会社の設立後に新しく株式を発行する増資では、引受人は、会社が定めた払込期日または払込期間内に払い込むこととされています(会社法208条1項)。

4.具体例:定款作成前に100万円を振り込んだ場合

定款作成前の払込みでも、その会社の設立のための出資と確認できれば、設立登記で使える可能性があります。

発起人A(1人)が100万円を出資して株式会社を設立し、2026年(令和8年)10月20日に設立登記を申請する場合を例にすると、次の時系列図のようになります。払込みが、定款の作成と認証より先になっている点がポイントです。

図解② 100万円を先に払い込んだケース2026年(令和8年)10月1日に入金し、10月20日に設立登記を申請する例

10月1日
定款作成前の払込み100万円を入金

会社設立のための出資金として、発起人A名義の口座に入金。

10月8日
定款を作成

出資額などの設立事項を反映した定款を作成。

10月13日
公証人による定款認証

この時点では、100万円の入金はすでに完了。

10月20日
設立登記を申請

払込みがあったことを証する書面(通帳の写しや取引明細を合わせたもの)などを添付して法務局へ申請。

※設立のための出資であると認められることを前提とした例です。日付の近さだけで一律に判断されるものではありません。

この例では、払込みは定款の作成より7日前、設立登記の申請より19日前です。入金した当時から会社設立のための出資であったことが確認できれば、10月1日の払込みを証する資料を使って登記を申請できると考えられます。

一方、以前から口座にあった預金の残高を、後から「これが出資金だった」と示すだけでは足りません。登記実務では、口座に一定の残高があることを示すだけで入金の記録がない通帳は、払込みがあったことを証する書面とは評価できないとされています(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)117頁)。

では、実際の登記の申請に向けて、どのような点を確認しておくとよいのでしょうか。

5.司法書士として実際に確認しているポイント

当事務所では、払込日だけでなく、入金の記録・口座の名義人・設立書類の金額がそろっているかを、できるだけ登記の前に確認するようにしています。

入金の記録から、設立のための出資と分かるか

通帳の写しや金融機関の取引明細で、いつ・いくら入金されたかを確認します。払込みがあったことを証する書面(いわゆる払込証明書)に合わせる通帳の写しでは、どの入金が設立の出資分なのかを、下線を引くなどして示す必要があります(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)117頁)。

定款を作成する前の入金については、入金の時期や経緯を伺い、今回の設立のための出資と説明できるかを、できるだけ確認するようにしています。

払込先の口座の名義人は誰か

口座の名義人は、発起人のほか、設立時取締役(会社の設立と同時に取締役になる人)でも差し支えないとされています。名義人ごとに、その口座を使える場合と、あわせて添付する書面をまとめると、次の表のとおりです。

口座の名義人
その口座を使える場合
あわせて添付する書面
発起人
原則として、発起人の名義の口座を使います
—(委任の書面が必要になるのは、下の2つの場合です)
設立時取締役
使えます
発起人がその設立時取締役に払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任は、発起人のうち1人からで足ります)
それ以外の人
発起人と設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していないことが、添付書面から明らかな場合に、特例として使える余地が認められています
発起人がその人に払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面

出典:2017年(平成29年)3月17日付法務省民商第41号通達/松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)116〜117頁

当事務所では、入金先の口座の名義人と、委任の書面が必要になるかどうかを、できるだけ入金の前に確認するようにしています。

出資額と設立書類の金額が合っているか

発起人ごとの引き受ける株式の数と払い込む金額を、定款(または発起人全員の同意書)、払込みがあったことを証する書面、実際の入金額と照らし合わせます。発起人ごとの引受株式数や払込金額は、定款の附則に書かれていることもあります。附則については会社設立時の定款附則で解説しています。

入金額が足りないときの対応も、できるだけ登記の前に検討するようにしています。なお、出資用の入金と他の用途の入金を同じ機会にした場合のように、入金記録の合計額が、払込みがあったことを証する書面に記載した払込金額より多くても差し支えないとされています(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)118頁)。

当事務所に会社設立をご依頼いただく場合の流れは会社設立のご案内、料金の目安は商業登記の業務案内(手続・期限・料金の一覧)でご確認いただけます。

6.よくあるご質問

口座に資本金と同じ額の預金があれば、あらためて入金しなくてもよいですか。

いいえ。口座に残高があるだけで入金の記録がない場合は、払込みがあったことの証明にはなりません(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)117頁)。出資金として、あらためて入金の記録を残す必要があります。

払い込んだ出資金は、設立の登記が終わるまで口座に残しておく必要がありますか。

必ずしも残しておく必要はありません。株式会社の発起設立では、払い込まれた出資金を、設立事務所の賃料などの設立費用に支出することもできるとされています(松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)94頁・118頁)。設立の登記で必要になるのは、出資金が口座に入金されたことを示す記録です。

7.まとめ|会社設立の払込みは定款認証前でもできる

  1. 定款作成後なら、認証前の払込みで差し支えない株式会社の発起設立では、払い込む金額が定款か発起人全員の同意で決まった後であれば、公証人の認証の前に払い込んでも差し支えないとして扱われてきました。
  2. 定款作成前でも、設立のための出資と認められれば差し支えない2022年(令和4年)6月13日付の法務省の通知により、発起人等の口座に払い込まれているなど、設立に際して出資されたものと認められる払込みであれば、定款作成前でも差し支えないとされました。
  3. 大切なのは、設立のための出資と証明できること以前からある預金の残高だけでは証明になりません。入金の記録、口座の名義人、金額を確認したうえで設立の登記を進めます。

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司法書士法人LSOでは、定款の作成・認証から出資金の払込みの確認、設立登記までお手伝いしています。すでに払込みを済ませた場合も、資料を拝見したうえで対応を検討します。全国の会社からオンラインでご相談いただけます。

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司法書士法人LSO 代表社員 司法書士 金光康太

執筆・監修

金光 康太(かなみつ こうた)

司法書士(司法書士法人LSO 代表社員)

大阪・梅田の司法書士。スタートアップ・ベンチャー企業の資金調達、種類株式、ストックオプション、M&A・組織再編、IPO準備に伴う商業登記を中心に取り扱っています。U30堺市起業家輩出プログラムSIPメンター(2024年度・2025年度・2026年度)。

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本記事について

本記事は、2026年(令和8年)10月時点の会社法・商業登記法と公表資料をもとに、司法書士法人LSOが、株式会社の発起設立における出資金の払込みの時期を整理したものです。個別の入金の取扱いは、具体的な資料や事実関係によって異なります。

参考資料:規制改革実施計画(2022年(令和4年)6月7日閣議決定)/2022年(令和4年)6月13日付法務省民商第286号通知/2017年(平成29年)3月17日付法務省民商第41号通達/法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」

参考書籍:松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』(商事法務)93〜96頁(発起人による出資の履行の時期・払込みの場所、募集設立の払込み)、115〜118頁(払込みがあったことを証する書面、預金通帳の名義人と記載内容)

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