コーポレートガバナンス・コードとは?罰則の有無と適用範囲を解説

企業法務の基礎知識
結論
コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)は、東京証券取引所(以下「東証」)が上場制度の中で定めている、実効的なコーポレートガバナンスの実現に向けた原則です。会社法のような法律ではありませんが、上場会社にとって単なる任意の参考資料でもありません。
東証のプライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場する国内の会社には、市場区分に応じて対象となる原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」で説明することが、東証の有価証券上場規程(436条の3)上求められます。原則を実施しないこと自体に直ちに罰則があるわけではなく、必要な説明を行わない場合に公表措置等の対象となり得るという建て付けです。
本記事では、CGコードの法的な位置付け、2026年改訂で変わった点、会社法上の内部統制やJ-SOXとの違い、IPO準備会社での見方を、会社法・商業登記の実務の視点から整理します。
1.コーポレートガバナンス・コードとは?なぜ「原則」なのか
CGコードは、上場会社に同じ細かな運営方法を一律に当てはめるのではなく、会社ごとの違いを踏まえて「どのような会社運営が望ましいか」を考えるための原則を示すものです。
東証のCGコードでは、コーポレートガバナンスを、上場会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会などの立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みと捉えています。
もう少しかみ砕くと、「誰が重要なことを決め、誰が経営を監督し、その判断を株主などへどう説明するのか」を整える仕組みと考えると分かりやすいでしょう。ここでいう「コード」は、法律の条文集という意味ではなく、会社がよりよいガバナンスを考えるための原則をまとめたものという意味です。
CGコードが作られた大きな目的は、意思決定の透明性・公正性を確保しながら、必要な場面では迅速かつ果断な経営判断を後押しし、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげることにあります。
なぜ「細かなルール」ではなく「原則」なのか
会社は、規模、事業内容、成長段階、株主構成、取締役会の構成などがそれぞれ違います。望ましい会社運営の方法をすべて細かなルールで決めてしまうと、ある会社には合っていても、別の会社には合わないことがあります。
そこで、まず基本となる原則を示し、それぞれの会社が自社に合った方法を考えるという発想が採られています。
不祥事を防ぐためだけのものではない
コーポレートガバナンスというと、「不祥事を防ぐ」「経営者を監視する」といったイメージを持つかもしれません。もちろん、それも重要です。
ただし、CGコードが目指しているのはそれだけではありません。適切な監督や説明の仕組みを整えたうえで、経営者が将来の成長のために必要な投資や経営判断を行える環境をつくることも重視されています。CGコード自身も、その目的について、「守りのガバナンス」にとどまらない、いわば「攻めのガバナンス」の実現を目指すものだと述べています。CGコードには、原則4-2「取締役会の役割・責務Ⅱ:適切なリスクテイクを支える環境整備」が置かれ、取締役会は経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うべきである、とされています。ここでいう「適切なリスクテイク」は、会社の成長のために必要なリスクを適切に取りながら経営判断を行う、という趣旨です。
2.CGコードは法律?どの会社に適用される?
CGコードの各原則そのものは、会社法のような法律ではありません。一方、東証のプライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場する国内の会社には、市場区分に応じて対象となる原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明することが、東証の有価証券上場規程(436条の3)上求められます。
対象となる会社と、市場区分による違い
東証の有価証券上場規程436条の3は、上場内国会社(東証に上場している国内の会社を指す規程上の用語)に対して、CGコードの各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由をCG報告書で説明することを求めています。そのうえで、対象となる原則の範囲を、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場という市場区分ごとに定めています。本記事では読みやすさを優先し、以下では「上場会社」と表記します。
対象となる原則の範囲は、次のとおり市場区分によって異なります。
| 市場区分 | 実施するか、実施しない理由を説明する対象 |
|---|---|
| プライム市場 | 基本原則と原則 |
| スタンダード市場 | 基本原則と原則 |
| グロース市場 | 基本原則 |
グロース市場では、大きな柱にあたる基本原則のみが対象とされています。上場を検討する段階では、どの市場区分を目指すかによって、対応が求められる範囲が変わる点を押さえておくとよいでしょう。
各原則そのものは、法律と同じ意味での法的拘束力を持たない
CGコードの各原則そのものは、会社法のように、実施しなければ直ちに法律違反となるルールではありません。CGコード自身も、各原則は「法的拘束力を有する規範ではない」と述べています。
そのため、会社の事情によっては、ある原則を形式的に実施するよりも、実施しない理由を丁寧に説明する方が制度の趣旨に合う場合もあることが、CGコード自体に示されています。大切なのは、形式だけをそろえることではなく、各原則の趣旨・精神を踏まえて自社の対応を考えることです。
細かな答えではなく「原則」を示す(プリンシプルベース)
CGコードには、「取締役会を必ず年○回開催する」「必ずこの組織図にする」といった細かな答えが一つずつ書かれているわけではありません。
まず会社が目指すべき考え方を示し、その趣旨を自社でどのように実現するかを会社自身が考える仕組みです。この考え方を、専門用語では「プリンシプルベース(原則主義)」と呼びます。
「実施する」か、「実施しない理由を説明する」
上場会社は、市場区分に応じて対象となる原則について、次のいずれかの対応を行います。
この考え方を英語で「Comply or Explain(コンプライ・オア・エクスプレイン)」と呼びます。英語を覚えることより、すべての上場会社に同じ対応を一律に求める制度ではないと理解することが大切です。
理由の説明は「CG報告書」で行う
東証の上場規程では、上場会社が自社に適用される原則を実施しない場合、その理由を「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」で説明することが求められています。以下、本記事ではこの報告書を「CG報告書」と呼びます。CG報告書は東証のウェブサイトで公開されており、誰でも読むことができます。
つまり、CGコードの各原則そのものは法律ではない一方、「実施するか、実施しない理由を説明する」という仕組みは東証の上場規程の中に組み込まれている、という関係です。
3.CGコードの原則を実施しないとどうなる?罰則はある?
対象となる原則を実施しない場合であっても、それだけで直ちに罰則が適用されるわけではありません。実施しない場合には、その理由をCG報告書で説明するという仕組みです。
実施しない場合は、その理由を説明する
例えば、ある原則について、会社の規模や事業内容などの個別事情を踏まえ、現時点ではその原則を実施しないと判断する場合もあります。
その場合には、単に「実施していません」で終わるのではなく、なぜその原則を実施しないのかを株主等のステークホルダー(株主・従業員・顧客・取引先など、会社に関係する人たち)に分かるように丁寧に説明することが重要です。
説明そのものを行わない場合は別の問題
一方、東証の上場規程上求められている理由の説明を行わない場合には、公表措置等の対象となる可能性があります。公表措置とは、東証が上場会社の規程違反等について、その事実を公表する措置です(有価証券上場規程508条)。
ここでいう「罰則」について:この章で扱っているのは東証の上場規程上の措置であり、刑事罰とは別のものです。CGコードの原則を実施しないこと自体に刑事罰が科されるわけではありません。
この記事でまず押さえたいのは、「原則をすべて実施しているか」だけを見る制度ではなく、実施しない場合の理由を説明することまで含めた仕組みだという点です。
CG報告書は、会社のガバナンスの考え方を投資者に伝える資料
東証は、CG報告書を、各社のコーポレートガバナンスの状況を投資者により明確に伝えるための資料として位置付けています。実施しない場合に、なぜ実施しないのかを分かりやすく説明することが重要とされるのは、このためです。
4.2026年改訂で何が変わった?基本原則・解釈指針と株主総会実務
CGコードは2026年7月21日に改訂され、同日から施行されています。基本原則は4つです。ここでは、CGコードの位置付けを理解するうえで押さえておきたい変更点を整理します。
4つの基本原則
| 基本原則 | 見出し | 簡単にいうと |
|---|---|---|
| 1 | 株主の権利・平等性の確保、株主との対話 | 株主の権利を実質的に確保し、株主と対話する |
| 2 | 株主以外のステークホルダーとの適切な協働 | 従業員・顧客・取引先などと適切に協働する |
| 3 | 適切な情報開示と透明性の確保 | 情報を適切に開示し、透明性を確保する |
| 4 | 取締役会等の責務 | 取締役会等が役割・責務を適切に果たす |
この中で、司法書士の実務と接点が生じやすいのが、4つ目の「取締役会等の責務」のうち、会社法や定款上の決議、取締役会議事録などに関係する部分です。
古い記事で「基本原則は5つ」となっているのはなぜ?
2021年6月版のCGコードでは、基本原則が5つありました。2026年版では、2021年版で独立した基本原則とされていた「株主との対話」が、基本原則1の見出しに取り込まれています。基本原則の数が変わったのはこのためです。
「補充原則」は廃止され、「解釈指針」が示されている
2026年改訂では、従前の補充原則を再整理し、ガバナンスの中核となる箇所を原則に格上げする、という整理が行われました。その結果、2026年版に「補充原則」という区分はありません。従前の補充原則の内容は、原則に格上げされたもの、解釈指針に移されたもの、コード内の他の箇所や法令等と重複するものとして削除されたものに分かれています。あわせて、すべての基本原則と一部の原則に「解釈指針」が示されています。
解釈指針は、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありません。CGコード自身が、解釈指針は各原則についての実質的な対応を支援する役割を担うものであると述べています。「解釈指針に書かれていることを実施していないから説明が必要」という関係ではない点に注意が必要です。
もっとも、CGコードは、今回の改訂でコンプライ・オア・エクスプレインの対象から外れ解釈指針に移された記載について、その重要性が失われたと考えることは適切ではないとしています。「対象外だから対応しなくてよい」という意味ではありません。
内容面の主な改訂|有価証券報告書を株主総会の前に提出する
ここまでは構成の変更ですが、2026年改訂では内容面の見直しも行われています。司法書士の実務と関係が深いのは、株主総会に関する原則1-2です。
2026年改訂では、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備の重要な例として、有価証券報告書を株主総会開催日前に提出することが原則1-2に記載されました。その解釈指針では、有価証券報告書には投資家の意思決定に有用かつ信頼性の高い情報が豊富に含まれることから、株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいとされ、株主総会開催日や議決権行使に係る基準日を、従前の慣行に基づく時期から後ろ倒しすることも含めて検討することが挙げられています。
会社法・商業登記との関係:株主総会をいつ開催し、議決権行使の基準日をいつに設定するかは、招集手続のほか、「定時株主総会の終結の時まで」とされる役員の任期や、重任登記を申請する時期とも関係します。上場を見据える会社では、将来こうした日程の考え方が変わる可能性があります。
他社のCG報告書を参考にするときの注意
改訂後のCGコードを踏まえたCG報告書の更新期限は2027年7月末日とされています。それまでの間は、改訂前のCGコードに基づいて更新することも認められており、その場合は、「コードの各原則を実施しない理由」と「コードの各原則に関する取組み」のそれぞれの欄に、2021年6月版に基づいて記載している旨を明示することとされています。
そのため、いま公開されているCG報告書やインターネット上の解説記事には、2021年6月版を前提にしたものが混在しています。他社の記載を参考にする場合は、どの版を前提にしているかを確認してください。
5.会社法上の内部統制・CGコード・J-SOXはどう違う?
会社法上の内部統制、CGコード、J-SOXは、会社の管理や監督について考える場面で一緒に出てきますが、それぞれ根拠も目的も異なる制度です。ここでは、CGコードの位置付けを理解するために必要な違いだけを整理します。
「そもそもコーポレートガバナンスと内部統制は何が違うのか」「会社法上の内部統制やJ-SOXをもう少し詳しく知りたい」という方は、内部統制とコーポレートガバナンスの違いとは?会社法・J-SOXとスタートアップの整備ポイントを解説をご参照ください。本記事では、CGコードとの違いに絞って説明します。
まず「内部統制」とは
ここでは、内部統制を「会社の仕事が適正に行われるようにするための社内の仕組み」と考えてください。例えば、誰が支払いを承認するのか、重要な問題を誰に報告するのか、不正やミスをどのように防ぎ、見つけるのか、といった仕組みです。
会社法では「業務の適正を確保するために必要な体制」が問題になる
会社法にも、会社の業務が適正に行われるための体制についての規定があります。取締役会設置会社で「業務の適正を確保するために必要な体制」の整備について決定する場合、その決定は取締役会が行い、個々の取締役に委任することはできません(会社法362条4項6号)。さらに、大会社である取締役会設置会社では、その体制について決定すること自体が義務となります(同条5項)。
機関設計によって根拠条文が変わります。会社法362条は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社には適用されません。これらの会社では、内部統制に関する体制の決定は取締役会が行うこととされ、大会社でなくても決定が義務となります(監査等委員会設置会社は会社法399条の13第1項1号ハ・同条2項、指名委員会等設置会社は同法416条1項1号ホ・同条2項)。IPOを見据えて機関設計を変更する場合は、この点も確認が必要です。
J-SOXは、財務報告に関する別の制度
上場会社などでは、もう一つ「J-SOX(ジェイソックス)」という制度も問題になります。J-SOXは、決算書などの財務報告の信頼性を確保するための内部統制が有効に機能しているかを、経営者が評価し報告する制度です。正式には、金融商品取引法上の「内部統制報告制度」と呼ばれ、同法24条の4の4に根拠があります。対象となるのは、有価証券報告書を提出する会社のうち、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者などです(金融商品取引法24条の4の4第1項、金融商品取引法施行令4条の2の7第1項)。有価証券報告書を提出する会社のすべてが対象となるわけではありません。対象となる会社では、経営者が「財務報告に係る内部統制」を評価し、その結果を内部統制報告書として提出します。
3つの違いを整理する
| 制度 | 根拠 | 何を求めるものか |
|---|---|---|
| 会社法上の内部統制 | 会社法 | 業務の適正を確保するために必要な体制の整備について、取締役会が決定すること(大会社である取締役会設置会社では決定が義務。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は大会社でなくても義務) |
| CGコード | 東証の上場規程(別添) | 会社をどのように統治するかについての原則。実施するか、実施しない理由をCG報告書で説明すること |
| J-SOX | 金融商品取引法 | 財務報告に係る内部統制を経営者が評価し、内部統制報告書として報告すること(上場会社等が対象) |
3つは別の制度ですが、まったく無関係ではありません。CGコードにも、取締役会の役割・責務として、内部統制や全社的なリスク管理体制に関する原則(原則4-4)が置かれています。根拠や目的は分けて理解しつつ、実際の会社運営では論点が重なる部分もあります。
なお、J-SOXの評価・監査の実務、会計処理そのもの、税務については、当事務所では判断していません。公認会計士・監査法人、税理士へご相談ください。
6.IPO準備会社ではCGコードをどう見る?
IPO準備中の非上場会社に、東証のCGコードがそのまま直接適用されるわけではありません。ただし、将来の上場を見据えて会社の機関や取締役会運営を検討する際に、参考資料の一つとして参照されることがあります。
モデルケース|IPOを検討し始めたA社
A社は、創業時には代表取締役を中心とするシンプルな会社でした。その後、スタートアップへ投資するベンチャーキャピタル(VC)から資金調達し、外部株主が入り、取締役会を設置し、外部から役員も参加するようになり、IPO準備を始めたとします。
当事務所へのご相談でも、このような会社について、「今回の事項はどの機関で決議するのか」「必要な議事録や登記は何か」といった会社法・商業登記上の確認が必要となる場面があります。
会社法・商業登記の観点から確認する順序の一例
-
現在の会社の機関・定款を確認する
取締役会や監査役等を置いているか、定款にどのような定めがあるかを確認します。
-
今回の事項に必要な会社法上の手続を確認する
株主総会や取締役会など、どの機関でどのような手続が必要になるかを確認します。
-
決議・議事録・登記の整合を確認する
必要な決議が行われているか、議事録等に記録されているか、登記が必要な事項について登記内容と整合しているかを確認します。
-
必要に応じてCGコードも参照する
上場を見据える会社では、会社法・商業登記上の確認を行う中で、必要に応じてCGコードの考え方も参考にします。
当事務所では、CGコードだけを基準に会社のガバナンス体制を判断するものではありません。まず会社法、定款、必要な決議、議事録等と商業登記との整合を確認し、そのうえで必要に応じてCGコードを参照します。
資金調達に伴う会社法上の手続については、資金調達・資本政策の業務案内もご参照ください。
7.司法書士として実際に確認しているポイント
当事務所では、商業登記や会社法上の手続をご依頼いただいた際に、登記申請だけを見るのではなく、その前提となる定款、必要な決議、議事録等との整合も確認しています。
上場を目指す会社についても、司法書士として確認する中心は、会社法上の手続と商業登記、その前提となる会社法関係書類です。その中で、必要に応じてCGコードの考え方を参考にすることがあります。
① その決議・手続を誰が行うのか
まず、今回の事項について、株主総会で決議するのか、取締役会で決議するのかなど、会社法や定款に照らして必要となる手続を確認します。取締役会規程等がある場合には、今回の会社法上の手続に関係する範囲で、その内容も確認します。
② 議事録に必要な内容が記載されているか
株主総会議事録や取締役会議事録について、会社法・会社法施行規則等に照らして必要となる事項が記載されているか、決議された内容が分かる記載になっているかを確認します。議事録の記載事項は、株主総会議事録については会社法施行規則72条、取締役会議事録については同101条に定めがあります。
③ 決議・議事録から登記まで整合しているか
例えば役員変更であれば、定款上の任期等の確認 → 必要な選任決議の確認 → 議事録等の確認 → 登記内容との整合の確認という順に見ていきます。登記申請の内容だけではなく、その前提となる会社法上の手続や書類と、最終的な登記内容までが整合しているかを確認しています。
役員任期については、取締役の任期はいつまで?「定時株主総会の終結の時まで」の意味と重任登記で詳しく解説しています。株主総会・取締役会の運営そのものについては、株主総会・取締役会の運営支援もご覧ください。
CGコードは、議事録の法的チェックリストそのものではない
CGコードに示されている取締役会運営上の考え方と、会社法・会社法施行規則等に基づく議事録の記載事項は、同じものではありません。
もっとも、上場を目指す会社の取締役会議事録等を確認する際には、会社法・会社法施行規則等に基づく手続・記載事項の確認を前提としつつ、CGコードが、形式的に取締役会を開催するだけでなく、実質的な審議が行われることを重視しているという点を参考にすることがあります。
2026年版CGコードの原則4-14(取締役会における審議の活性化等)の解釈指針では、取締役会の資料が会日に十分に先立って共有されるようにすること、年間の取締役会開催スケジュールや予想される審議事項を決定すること、審議項目数や開催頻度を適切に設定し、審議時間を十分に確保することなどが示されています。
これらを司法書士がCGコードへの適合性として審査するという趣旨ではありませんし、第4章のとおり、解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象でもありません。上場を見据える会社の取締役会運営を理解するための参考として意識している、という位置付けです。
業務範囲について:上場審査、金融商品取引法等の証券規制、契約内容そのものの法的判断・交渉、会計・監査、税務等は当事務所の業務範囲ではありません。これらについては、必要に応じてそれぞれの専門家へご確認ください。議事録の整備や過去の会社法関係書類の点検については、議事録整備・法務デューデリジェンス対応をご覧ください。
8.よくあるご質問
- 非上場会社にもCGコードは適用されますか。
-
一般の非上場会社に、東証のCGコードがそのまま適用されるわけではありません。ただし、IPOを目指す会社では、将来の上場を見据えて会社の機関や取締役会運営を検討する際の参考となることがあります。
- CGコードの原則を実施しないと罰則がありますか。
-
対象となる原則を実施しない場合であっても、それだけで直ちに罰則が適用されるわけではありません。実施しない場合には、その理由をCG報告書で説明することが上場規程上求められており、必要な説明を行わない場合には公表措置等の対象となる可能性があります。
- 基本原則は5つだと聞きましたが、4つなのですか。
-
2021年6月版のCGコードでは基本原則が5つでしたが、2026年7月版では4つです。2021年版で独立した基本原則とされていた「株主との対話」が、基本原則1の見出しに取り込まれています。なお、改訂後のCGコードを踏まえたCG報告書の更新期限は2027年7月末日とされているため、公開されているCG報告書には改訂前の版を前提としたものが残っています。
- CGコードとJ-SOXは同じものですか。
-
違います。CGコードは東証の上場制度の中で定められているガバナンスの原則です。J-SOXは金融商品取引法に基づき、財務報告に係る内部統制を経営者が評価・報告する制度です。
9.まとめ|CGコードの位置付けとIPO準備での見方
CGコードの各原則そのものは法律ではありません。一方、東証のプライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場する国内の会社には、市場区分に応じて対象となる原則を実施するか、実施しない場合にはその理由をCG報告書で説明することが、東証の上場規程上求められます。
- 実施しないこと自体に直ちに罰則があるわけではなく、必要な説明を行わない場合に公表措置等の対象となり得ます
- 2026年7月版の基本原則は4つです。すべての基本原則と一部の原則には解釈指針が示されていますが、解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありません(ただし、その重要性が失われたわけではないとされています)
- 会社法上の内部統制、CGコード、J-SOXは根拠も目的も異なる制度です。ただし、CGコードにも内部統制に関する原則が置かれているなど、実務では論点が重なります
- IPO準備中の非上場会社にCGコードが直接適用されるわけではありませんが、将来の上場を見据えた検討の参考資料になります
当事務所では、商業登記や会社法上の手続をご依頼いただいた際には、まず定款、必要な決議、議事録等と登記内容との整合を確認しています。上場を目指す会社については、こうした会社法・商業登記上の確認を行う中で、必要に応じてCGコードの考え方も参考にしています。
IPO準備に伴う会社法・議事録整備をご相談ください
取締役会や監査役などの会社の機関、定款、株主総会・取締役会の議事録、役員変更、過去の会社法関係書類と登記の整合など、会社法・商業登記に関する範囲から確認します。まだ上場時期や具体的な体制が固まっていない段階でも、会社法・商業登記に関する事項をご相談いただけます。
関連するご案内
主な根拠法令・参考資料
東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)」 / 東京証券取引所「有価証券上場規程の一部改正について(概要)」 / 東京証券取引所「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」 / 東京証券取引所FAQ(各原則を実施しない場合の罰則) / 東京証券取引所FAQ(2026年のコード改訂を踏まえたCG報告書の更新) / 会社法 / 金融商品取引法 / 金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)」
本記事について
本記事は、2026年8月時点の法令、東京証券取引所・金融庁その他の公表資料をもとに、コーポレートガバナンス・コードと会社法実務との関係を一般向けに整理したものです。法令、上場規程、各種基準および実務上の取扱いは変更されることがあります。
具体的な会社に必要となる対応は、上場・非上場の別、会社の規模、取締役会や監査役などの機関の置き方、株主構成、定款その他の事情によって異なります。司法書士法人LSOでは、会社法上の手続、商業登記、定款、株主総会議事録・取締役会議事録等の会社法関係書類を中心にご相談をお受けしています。
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