商業登記規則102条2項について|条文をたどって分かりやすく読む

結論
商業登記規則102条2項は、ひと言でいうと、「添付書類を電子データで送るなら、作成者の電子署名が要る」という規定です。作成者とは、その書類を作成する権限のある人のことです。たとえば株主リストは、紙で作るなら押印の定めはありませんが、電子データで送るなら作成者の電子署名が必要です。電子データで送らずに、紙の書類で出すこともできます(同項ただし書)。その場合は、紙の書類としての押印などのルールがそのまま当てはまります。
条文が読みにくいのは、主語と「何をするか」が別の条文に書かれていて、3つの条文をたどらないと意味が分からないからです。条文を5つのかたまりに分け、たどる先の条文を1つずつ確かめると、意味が分かります。たどる先の条文は、記事の最後の「本文でたどった条文」にまとめて載せ、該当する部分にマーカーを引いています。
この記事は、2026年(令和8年)11月時点の条文と法務省・法務局の案内をもとに、102条2項の読み方を整理したものです。
102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる
商業登記規則102条は、オンライン申請の方法を定めた条文です。1項は申請書の中身(申請書情報)の送り方、2項は添付書類(添付書面情報)の送り方を定めています。2項には「申請人等」「前項に規定する措置」という、1項を読まないと意味が分からない言葉が出てくるので、1項から続けて読み、そのうえで2項を5つのかたまりに分けて、分かりやすく言い換えます。
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1項の言葉が、2項で使われている
商業登記規則102条1項(登記申請の方法)
前条第一項第一号の規定により登記の申請をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。)は、法務大臣の定めるところに従い、法令の規定により申請書に記載すべき事項に係る情報に第三十六条第三項に規定する措置を講じたもの(以下「申請書情報」という。)を送信しなければならない。
要するに冒頭の「前条第一項第一号の規定により登記の申請をする」は、オンラインで登記を申請するという意味です。「前条」は101条のことで、101条1項1号が、登記の申請をオンライン(電子情報処理組織を使用する方法)でできると定めています。そのうえで1項は、オンラインで申請するときは、申請人等(会社・代表者・代理人)が、申請書の中身(申請書情報)に「36条3項に規定する措置」をして送る、と定めています。措置の中身は、このあと「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」で見ていきます。
1項でマーカーを引いた言葉のうち、「申請人等」と「第三十六条第三項に規定する措置」の2つが、2項でも使われます。続けて2項を読むと、①と④に出てきます。色と番号は、2項を5つのかたまりに分けたものです。
商業登記規則102条2項(登記申請の方法)
①申請人等は、②法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。)があるときは、③法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報に④その作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。)が前項に規定する措置を講じたもの(以下「添付書面情報」という。)を送信しなければならない。⑤ただし、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該書面を提出し、又は送付することを妨げない。
102条の1項〜5項の全文は、記事の最後の「本文でたどった条文」に載せています。出典:商業登記規則102条|e-Gov法令検索
1項の言葉と、2項での書き方を並べると、次のとおりです。2項だけを読んでも意味が分からないのは、このためです。
| 1項の言葉 | 2項での書き方 | 意味 |
|---|---|---|
| 申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。) | ①申請人等は、 | オンラインで申請する会社・代表者・代理人 |
| 第三十六条第三項に規定する措置 | ④前項に規定する措置 | 電子署名をすること(36条3項) |
2項を5つのかたまりに分けて、言い換えると
最初に見た2項の色と番号が、5つのかたまりです。それぞれを分かりやすく言い換えると、次のとおりです。
| 番号 | 原文 | 言い換えると | たどる先 |
|---|---|---|---|
| ① | 申請人等は、 | オンラインで登記を申請する人(会社、その代表者、代理人の司法書士)は | 102条1項 |
| ② | 法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。)があるときは、 | 登記に添付しなければならない書類があるときは(はじめから電子データで作った議事録なども含む) | 商業登記法19条の2 |
| ③ | 法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報に | 法務大臣が決めた方法で、その書類の代わりになる電子データ(PDFなど)に | — |
| ④ | その作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。)が前項に規定する措置を講じたもの(以下「添付書面情報」という。)を送信しなければならない。 | その書類の作成者(書類を作成する権限のある人。定款のように認証が必要な書類は、認証した人も)が電子署名をしたもの(これを「添付書面情報」と呼ぶ)を、送らなければならない | 102条1項→36条3項 |
| ⑤ | ただし、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該書面を提出し、又は送付することを妨げない。 | ただし、電子データを送る代わりに、紙の書類(押印が必要な書類は押印したもの)を法務局に持参したり郵送したりしてもよい | — |
5つのかたまりをつなげると
オンラインで登記を申請する人は、登記に添付しなければならない書類があるときは、その書類をPDFなどの電子データにし、その書類の作成者の電子署名を付けて送らなければならない。ただし、電子データを送る代わりに、紙の書類(押印が必要な書類は押印したもの)を法務局に持参したり郵送したりしてもよい。
ここで押さえておきたいのは、送る人(①の申請人等)と、電子署名をする人(④の作成者)が、条文上は別々に決められているという点です。会社の代表者が自分で作った書類を自分で送るときは同じ人になりますが、司法書士が代理して申請する場合、送るのは司法書士でも、添付書類に電子署名をするのは、その書類の作成者です。
2項には、ほかの条文を見ないと意味が分からない表現があります。このあと、①〜⑤を1つずつ、同じ番号を付けた見出しで説明します。
①「申請人等」は、オンラインで申請する会社・代表者・代理人のこと
最初に読んだ102条1項は、「申請人又はその代表者若しくは代理人」を「申請人等」と呼ぶと定めています。1項でマーカーを引いた3か所のうち、最初の2か所の意味は、次のとおりです。
| 原文 | 意味 |
|---|---|
| 前条第一項第一号の規定により登記の申請をする | 「前条」は101条のこと。101条1項は、1号の「登記の申請」などを「電子情報処理組織を使用する方法」でできると定めている。つまり、オンラインで登記を申請する、という意味 |
| 申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。) | 「申請人等」とは、申請人(会社の登記では会社)、その代表者、代理人(司法書士など)のこと。この呼び方は、規則の同じ章の中で使われる |
つまり、102条2項の「申請人等は」は、オンラインで登記を申請する会社・代表者・代理人はという意味です。102条1項の後半は、申請書の中身(申請書情報)に「第三十六条第三項に規定する措置」をして送る、という定めです。この「措置」が、④の「前項に規定する措置」を読み解く鍵になります(「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」で説明します)。
②「添付すべき書面」には、押印が不要な書類も含まれる
②は、電子データにして送る書類の範囲を決めている部分です。
| 原文 | 意味 |
|---|---|
| ②法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面 | 商業登記法や商業登記規則などの法令で、登記の申請書に添付するよう定められている書類のこと。議事録、就任承諾書、株主リストなど |
| ②(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。) | はじめから電子データで作った議事録や定款なども含む、という意味。商業登記法19条の2は、添付すべき定款・議事録などが電磁的記録で作られているときは、その電子データを添付すると定めている |
紙なら押印が不要な書類も、電子データで送るなら電子署名が要る
②は「添付すべき書面」とだけ書いていて、押印が必要な書面かどうかで区別していません。そのため、紙で作るなら押印がいらない書類も、電子データで送るなら作成者の電子署名が必要です。
| 書類 | 紙で作る場合の押印 | 電子データで送る場合 |
|---|---|---|
| 株主リスト | 押印の定めはない(商業登記規則61条3項) | 作成者の電子署名が必要 |
| 取締役会設置会社の取締役の就任承諾書 | 押印の定めはない | 就任する本人の電子署名が必要 |
紙で作る場合の押印の要否は、商業登記で押印が不要な書類・必要な書類で一覧にしています。
③「当該書面に代わるべき情報」は、PDFなどの電子データのこと
③は、添付書類をどのような形で送るかを決めている部分です。紙の書類そのものではなく、その書類の代わりになる電子データを、法務大臣が決めた方法で送ります。
| 原文 | 意味 |
|---|---|
| ③法務大臣の定めるところに従い | 送り方の細かいルール(ファイルの形式など)は、法務大臣が決める。法務省は、署名付きのPDFファイルなどで送るよう案内している(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」) |
| ③当該書面に代わるべき情報 | 「当該書面」は②の「添付すべき書面」のこと。紙の書類の代わりになる電子データ |
ただし、電子データにするだけでは足りません。次の④で見るとおり、その電子データに作成者の電子署名が必要です。
④「前項に規定する措置」は、36条3項の電子署名のこと
102条2項でいちばん分かりにくいのは、「前項に規定する措置」です。何をするのかが書かれていないので、条文を2回たどります。
STEP 1 102条2項
その作成者…が前項に規定する措置を講じたもの
ポイント:「前項」は、1つ前の102条1項のことです。つまり「前項に規定する措置」は、102条1項に書かれている「第三十六条第三項に規定する措置」を指します。
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STEP 2 102条1項
申請書に記載すべき事項に係る情報に第三十六条第三項に規定する措置を講じたもの
ポイント:102条1項を見ると、たしかに「第三十六条第三項に規定する措置」と書かれています。ただ、1項も「36条3項に書いてある措置」と言うだけで、何をするのかまでは書いていません。そこで、36条3項を見に行きます。
ここまでで、2項は「その作成者が36条3項に規定する措置を講じたもの」と読めます。
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STEP 3 36条3項
当該情報の作成者…が、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律…第二条第一項に規定する電子署名をいう。)のうち、日本産業規格…であるものを講ずる措置を講じたもの
ポイント:36条3項で、ようやく中身が出てきます。措置とは、電子署名(電子署名法2条1項の電子署名)のうち、日本産業規格に合うものを講ずること、つまり電子署名をすることです。「日本産業規格…」は電子署名の技術的な条件(暗号の方式と鍵の長さ)なので、条文の意味をつかむうえでは読み飛ばしてかまいません。
これで、2項は「その作成者が電子署名をしたもの」と読めます。
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102条1項でこの措置をするのは、申請書情報を送る申請人等です。102条2項は、同じ措置(電子署名)を、添付書類の作成者がするよう求めています。措置の中身は借りてきても、措置をする人は入れ替わっている点に注意します。
なお、36条3項は、もともと書面で申請するときに電子データを記録した媒体(CD-Rなど)を添付する場合の規定です。102条1項がこの措置を借りてきているので、オンライン申請でも同じ電子署名が求められます。
「作成者」の電子署名が求められるのは、誰が作成したかを示すため
電子署名法は、電子署名を、その情報が署名をした人によって作成されたものであることを示し、改変されていないかを確かめられる措置と定めています(電子署名及び認証業務に関する法律2条1項)。紙の書類に作成者が署名や押印をするのと同じように、電子データでは、作成者が電子署名をすることで「誰が作成したか」が示されます。102条2項が「その作成者」の電子署名を求めているのは、このためです。
「作成者」は、ファイルを作った人ではなく、書類を作成する権限のある人
ここでいう「作成者」は、WordやPDFのファイルを作った(入力した)人のことではありません。法務省は、添付書面情報には作成者の電子署名が必要で、作成者は作成する権限のある者でなければならないとし、たとえば取締役会議事録では、署名すべき出席取締役などが作成者に当たると案内しています(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
商業登記法の解説書も、添付する電子データに記録する電子署名は作成権限のある作成者のものでなければならないとし、たとえば取締役会議事録では、出席した取締役と監査役が作成者に当たると説明しています(神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コンメンタール』(金融財政事情研究会、2017年)63頁)。
そのため、会社の担当者や代理人の司法書士が議事録のファイルを用意しても、その人の電子署名で、出席取締役などの電子署名に代えることはできません。
申請代理人の電子署名で、作成者の電子署名に代えることはできない
「102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる」で見たとおり、送る人(申請人等)と電子署名をする人(作成者)は、条文上は別々に決められています。代理人の司法書士が電子署名をするのは申請書情報で(102条1項)、申請を代理しているというだけで、添付書類の作成者に代わって電子署名をすることはできません。ただし、定款作成の代理人として電子定款を作成する場合のように、書類そのものを作成する権限を委任されたときは、代理人がその書類の作成者として電子署名をします(法務省「電子公証制度の概要について(Q&A)」Q18)。押印した紙をスキャンしたPDFも、作成者の電子署名がなければ添付書面情報になりません。法務局の記載例では、たとえば次の人が電子署名をするとされています。
| 書類 | 電子署名をする人 | 出典 |
|---|---|---|
| 就任承諾書・辞任届 | 就任を承諾した本人・辞任する本人 | 法務局の記載例 |
| 株主総会議事録(取締役会を置いていない会社が、株主総会で代表取締役を選定した場合) | 議長と出席した取締役の全員 | 法務局の記載例 |
| 取締役会議事録 | 出席した取締役と監査役の全員 | 法務局の記載例 |
④のカッコ書きの意味
| 原文 | 意味 |
|---|---|
| ④(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。) | 定款のように認証が必要な書類は、作成者に加えて、認証した人の電子署名も必要。たとえば会社を設立するときの電子定款には、定款の作成者(発起人。司法書士などが定款作成の代理人として作成する場合は、その代理人)の電子署名と、認証者である公証人の電子署名が付いている(法務省「電子公証制度の概要について(Q&A)」Q18)。「第五項において同じ」は、5項(一緒に送る電子証明書)でも、作成者に認証者を含めて読む、という意味 |
| ④(以下「添付書面情報」という。) | ④の電子署名をした電子データを、この条文から先は「添付書面情報」と呼ぶ |
一緒に送る電子証明書(102条5項)
電子署名だけでなく、電子署名をした人を確かめるための電子証明書も、一緒に送らなければなりません(102条5項)。使える電子証明書は、書類によって違います。
102条5項の電子証明書の区分を詳しく見る
102条の3項から5項は、電子署名と一緒に送る電子証明書の定めです。3項と4項は申請書情報(3項は委任による代理人を除く申請人等、4項は委任による代理人)について、5項は添付書面情報について定めています。
5項も、2項と同じように別の項を指していて読みにくいので、表で置き換えます。5項の「当該情報の作成者が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報」は、作成者が電子署名をしたことを確かめるための電子証明書のことです。
| 5項の区分 | 原文が指す先 | 置き換えると(一緒に送る電子証明書) |
|---|---|---|
| 1号 委任状情報(委任による代理人の権限を証する情報) | 「第三項各号に掲げる電子証明書」 | 3項の各号=商業登記電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書、認定認証事業者が作成した電子証明書その他法務大臣が定める電子証明書など |
| 2号 それ以外の添付書面情報 | 「前項各号に掲げる電子証明書又は…指定公証人電子証明書」 | 4項の各号=3項各号の電子証明書に加えて、これに準ずるものとして法務大臣が定める電子証明書。または、公証人の電子証明書(指定公証人電子証明書) |
つまり、委任状は3項の電子証明書に限られ、それ以外の添付書類は、4項の分だけ使える電子証明書が広い、という作りです。
なお、電子署名であれば、どの電子証明書でも使えるわけではありません。法務省は、書類の種類や作成者の区分(添付書面に市町村長の作成した印鑑証明書が必要とされている場合など)によって、使える電子証明書が違うと案内し、「第3 電子証明書の取得」に一覧を載せています(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
⑤紙で出すこともでき、その場合は紙の書類のルールに従う
⑤のただし書により、添付書類を電子データで送らず、紙のまま法務局に持参・郵送することもできます。法務省も「添付書面が電磁的記録により作成されていない場合は、書面の提出又は送付も認められます」と案内しています(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
「妨げない」は、「してもよい」という意味の法令用語です。紙の書類を提出・送付する方法を選んでもよい、という意味で、押印を免除する意味ではありません。
紙で出すときは、書面で申請するときと同じルールに従います。ただし書が認めているのは、電子データの代わりに「当該書面」、つまり添付すべき書類そのものを出すことだけです。押印が必要な書類(代表取締役の就任の登記に添付する取締役会議事録や、実印と印鑑証明書が必要な就任承諾書など)は、押印したもの(必要なら印鑑証明書も)を出します。オンラインで申請したからといって、紙の書類の押印がいらなくなるわけではありません。法務局も、オンライン申請で添付書面を紙で出すときは、書面申請の記載例を参考にするよう案内しています(法務局「株式会社の役員変更の登記をしたい方(オンライン申請)」)。
はじめから電子データで作った書類(②のカッコ書き、商業登記法19条の2の電磁的記録)を、電子データで送らずに提出・送付するときは、法務省令で定める構造の電磁的記録媒体(CD-R・DVD-Rなど)に記録して提出・送付します(商業登記規則36条1項)。記録媒体には、電子データの内容とあわせて、作成者の電子署名と電子証明書も記録します(同条2項〜4項、神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コンメンタール』(金融財政事情研究会、2017年)62〜63頁)。
司法書士として実際に確認しているポイント
当事務所が、オンラインで商業登記を申請するときに、102条2項との関係で確認していることです。
登記に添付するすべての書類に、作成者の電子署名が付いているか
添付書類も電子データで送る完全オンライン申請で進めるときは、登記に添付するすべての書類について、作成者の電子署名が付いているかを確認し、付いていなければ作成者に電子署名をお願いしています。紙で作るなら押印がいらない書類(株主リストなど)も含みます。電子定款のように、作成の段階で必要な電子署名が付いている電子文書は、その電子データを添付します(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
電子署名をしているのが、その書類を作成する権限のある人か
議事録などのファイルを会社の担当者や当事務所が用意しても、電子署名をするのは、その書類の作成者です。取締役会議事録なら出席した取締役と監査役の全員、就任承諾書なら就任する本人というように、書類ごとに電子署名をすべき人の分がそろっているかを確認します(「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」の表)。
電子署名に使った電子証明書が、その書類に使えるものか
電子署名が付いていても、どの電子証明書でもよいわけではありません。書類の種類や作成者の区分によって使える電子証明書が違うため(102条5項、「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」)、法務省の案内の「第3 電子証明書の取得」の一覧で、その書類に使える電子証明書かを確認します(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
紙で出す書類に、押印と印鑑証明書がそろっているか
電子署名を用意できない場合、紙で作った書類は、紙で提出・送付します。紙で出す書類には紙の書類のルールがそのまま当てはまるので、押印が必要な書類は押印したもの(必要なら印鑑証明書も)を出します(「紙で出すこともでき、その場合は紙の書類のルールに従う」)。また、紙で出す書類は、押印が不要な書類でも、登記の内容とご意思の確認のために押印をお願いすることがあります。ご了承ください(商業登記で押印が不要な書類・必要な書類)。
よくあるご質問
- 押印がいらない書類なら、電子署名も省略できますか?
-
いいえ。102条2項は押印の要否で区別せず、登記の申請書に添付すべき書面のすべてについて、作成者の電子署名を求めています。電子データで送らない場合、紙で作った書類は、紙のまま提出・送付できます(同項ただし書)。はじめから電子データで作った書類は、CD-Rなどの電磁的記録媒体に記録して提出・送付します(商業登記規則36条1項)。
- 一部の添付書類だけを紙で提出することはできますか?
-
102条2項ただし書は、添付書面情報の送信に代えて「当該書面」を提出・送付することを認める形で定められています。法務省も、添付書面を書面で提出・送付するときは、添付書面に申請番号を書くか「書面により提出した添付情報の内訳表」を付けるよう案内し、委任状を書面で持参・送付する場合の取扱いにも触れています。そのため、電子署名を用意できた書類は電子データで送り、残りを紙で提出する方法がとれます(法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」)。
- 紙で出すなら、押印が必要な書類も押印なしで出せますか?
-
いいえ。102条2項ただし書は、電子データの代わりに添付すべき書類そのものを紙で出すことを認めているだけです。紙で出す書類には、書面で申請するときと同じく、押印や印鑑証明書のルールがそのまま当てはまります。
まとめ
- 102条2項は、添付書類の電子データに作成者の電子署名を求める規定オンラインで申請するときに、添付書類を電子データで送るなら、その書類の作成者(書類を作成する権限のある人)の電子署名を付けて送ります。押印の要否は関係ありません。
- 「申請人等」の意味は102条1項に、「前項に規定する措置」の意味は36条3項に書かれている「申請人等」は会社・代表者・代理人のこと、「前項に規定する措置」は電子署名のことです。送る人と電子署名をする人は、同じとは限りません。
- ただし書で、紙の書類で出す方法も残っている電子署名を用意できない場合、紙で作った書類は、紙のまま法務局に持参・郵送できます。紙で出す書類は、押印が必要なら押印したものを出します。
公的資料(5件)・参考文献とe-Gov法令検索へのリンクを見る
条文(e-Gov法令検索)
- 商業登記規則102条(登記申請の方法)
- 商業登記規則101条(電子情報処理組織による登記の申請等)
- 商業登記規則36条(申請書に添付すべき電磁的記録)
- 商業登記法19条の2(申請書に添付すべき電磁的記録)
- 電子署名及び認証業務に関する法律2条(定義)
- 商業登記規則61条3項(添付書面)
公的資料
- 法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」(第2の2「添付書面情報の添付」、第3「電子証明書の取得」)
- 法務局「株式会社変更登記申請書(取締役会設置会社で役員全員が重任する場合)」
- 法務局「株式会社変更登記申請書(取締役会を設置していない会社において株主総会で代表取締役を選定する場合に、役員全員が重任するとき)」
- 法務局「株式会社変更登記申請書(取締役会を設置していない会社で、役員が辞任して新たな役員が就任する場合で、代表取締役を株主総会で選定しているとき)」
- 法務省「平成19年4月1日以降の電子公証制度の概要について(Q&A)」
参考文献
- 神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コンメンタール』(金融財政事情研究会、2017年)
本文でたどった条文
本文でたどった条文の全文です。本文で取り上げた部分にマーカーを引いています。101条1項は、この記事に関係する1号まで載せています。本文の条文名のリンクから移動してきた場合は、ブラウザの「戻る」で元の位置に戻れます。
商業登記規則101条1項(電子情報処理組織による登記の申請等)
要するに登記の申請などは、オンライン(電子情報処理組織を使用する方法)でできる。
次に掲げる申請、申出、提出、届出又は請求(以下「申請等」という。)は、情報通信技術活用法第六条第一項の規定により、同項に規定する電子情報処理組織を使用する方法によつてすることができる。ただし、当該申請等は、法務大臣が定める条件に適合するものでなければならない。
一 登記の申請(これと同時にする受領証の交付の請求を含む。以下同じ。)
一の二以下(8号分) 略
この記事で関係するのは、1号の「登記の申請」です。
この条文が出てくる箇所:「102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる」、「『申請人等』は、オンラインで申請する会社・代表者・代理人のこと」
商業登記規則102条(登記申請の方法)
要するに1項=申請書情報に申請人等が電子署名をして送る。2項=添付書面情報に作成者が電子署名をして送る(紙での提出も可)。3項・4項=申請書情報と一緒に送る電子証明書。5項=添付書面情報と一緒に送る、作成者の電子証明書。
1項前条第一項第一号の規定により登記の申請をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。)は、法務大臣の定めるところに従い、法令の規定により申請書に記載すべき事項に係る情報に第三十六条第三項に規定する措置を講じたもの(以下「申請書情報」という。)を送信しなければならない。
2項①申請人等は、②法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。)があるときは、③法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報に④その作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。)が前項に規定する措置を講じたもの(以下「添付書面情報」という。)を送信しなければならない。⑤ただし、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該書面を提出し、又は送付することを妨げない。
3項申請人等(委任による代理人を除く。)が登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該申請人等が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。
一 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
二 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
三 電子署名及び認証業務に関する法律第八条に規定する認定認証事業者が作成した電子証明書(電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第四条第一号に規定する電子証明書をいう。)その他の電子証明書であつて、氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの
四 官庁が嘱託する場合にあつては、官庁が作成した電子証明書であつて、登記官が当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの
4項委任による代理人によつて登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該代理人が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。
一 前項各号に掲げる電子証明書
二 当該措置を講じた者を確認することができる電子証明書であつて、前号に掲げるものに準ずるものとして法務大臣の定めるもの
3項・4項は、申請書情報と一緒に送る電子証明書の定めです。5項が「第三項各号」「前項各号」として引用しているので、あわせて載せています。
5項申請人等が添付書面情報を送信するときは、次の各号に掲げる情報の区分に応じ、それぞれ当該情報の作成者が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて当該各号に定めるものを併せて送信しなければならない。
一 委任による代理人の権限を証する情報 第三項各号に掲げる電子証明書
二 前号に規定する情報以外の情報 前項各号に掲げる電子証明書又は公証人法施行規則第十三条第一項に規定する指定公証人電子証明書
この条文が出てくる箇所:「102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる」ほか、記事全体
商業登記規則36条3項(申請書に添付すべき電磁的記録)
要するに電子データには、その作成者(認証が必要なものは認証者も)が、所定の方式の電子署名をしなければならない。
3項前項の情報は、法務大臣の指定する方式に従い、当該情報の作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。次項において同じ。)が、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名をいう。)のうち、日本産業規格X五七三一―八の附属書Dに適合する方法であつて同附属書に定めるnの長さの値が二千四十八ビット(指定公証人(公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第七条ノ二第一項に規定する指定公証人をいう。)が講ずる場合にあつては、二千四十八ビット又は三千七十二ビット)であるものを講ずる措置を講じたものでなければならない。
「前項の情報」は、書面で申請するときに添付する電子データを記録した媒体(36条1項・2項)に記録する情報のことです。
この条文が出てくる箇所:「102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる」、「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」
商業登記法19条の2(申請書に添付すべき電磁的記録)
要するに添付すべき定款・議事録などを電子データで作ったときは、その電子データを添付する。
登記の申請書に添付すべき定款、議事録若しくは最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているとき、又は登記の申請書に添付すべき書面につきその作成に代えて電磁的記録の作成がされているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を当該申請書に添付しなければならない。
この条文が出てくる箇所:「102条2項は、1項とあわせて読み、5つのかたまりに分けると意味が分かる」、「『添付すべき書面』には、押印が不要な書類も含まれる」、「紙で出すこともでき、その場合は紙の書類のルールに従う」
電子署名及び認証業務に関する法律2条1項(定義)
要するに電子署名とは、誰が作ったかを示し、改変されていないかを確かめられる措置のこと。
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
この条文が出てくる箇所:「『前項に規定する措置』は、36条3項の電子署名のこと」
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本記事について
本記事は、2026年(令和8年)11月時点の商業登記規則・商業登記法・電子署名及び認証業務に関する法律と、法務省・法務局の公表資料、商業登記法の解説書をもとに、司法書士法人LSOが、商業登記規則102条2項の読み方を整理したものです。個別の登記で必要な電子署名や電子証明書は、法務省の案内と管轄の法務局の取扱いもあわせてご確認ください。
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