上場会社の年間スケジュール|3月決算会社の1年

結論
上場会社の1年は、取締役会・株主総会、会社法上の決算・監査、東証への開示(TDnet)、金融商品取引法上の開示(EDINET)、商業登記、税務という主に6つの業務が、それぞれのスケジュールに沿って並行して進みます。
3月決算会社の最大の山場は4~6月です。前事業年度の決算・監査・定時株主総会と、4月1日に始まった新事業年度の第1四半期が重なります。7月以降は、四半期・中間期の決算・開示のサイクル(7~8月に第1四半期、10~11月に中間期、1~2月に第3四半期)に移り、2~3月の次年度準備を経て事業年度末へ戻ります。
上場会社の法務・総務・IRの事務手続は多岐にわたりますが、本記事ではこの6つの業務を中心に、3月決算会社(事業年度4月1日~翌年3月31日)をモデルとして、1年単位のイベントとスケジュールを整理します。臨時案件が入ったときの考え方と、登記で実際に確認している点もあわせて取り上げます。
主な読者として想定しているのは、定時株主総会の運営と商業登記を担当する法務・総務の方です。取締役会事務局や経営企画、開示を担当するIR・経理の方にもお使いいただけます。開示内容そのものの当否や、会計・税務の判断は扱いません。
1.本記事の前提|3月決算の上場会社をモデルにします
本記事では、4月1日から翌年3月31日までを事業年度とする3月決算会社をモデルにします。決算期や機関設計が違えば時期や手続も変わるため、まず前提を固定します。
そこで、本記事では次の条件を満たす会社をモデルとします。以下の「4月」「6月」「11月」といった時期は、このモデル会社を前提に読んでください。
本記事で使う主な用語
- 公開会社
- 会社法上の用語であり、「上場会社」と同義ではありません。会社法2条5号は、発行する全部又は一部の株式について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社を「公開会社」と定義しています。本記事のモデルとなる上場会社は、会社法上の公開会社に該当します。
- 基準日
- その日に株主名簿に記載・記録されている株主を、会社が定めた一定の権利を行使できる者として確定するための日です(会社法124条1項)。本記事では、3月31日を定時株主総会における議決権行使の基準日とするモデルです。基準日は、総会日そのものを決める日ではありません。
- 電子提供措置
- 株主総会参考書類等の情報を、株主が電磁的方法により提供を受けられる状態に置く措置です(会社法325条の2)。実務上はウェブサイト等で提供します。振替株式を発行する会社は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければなりません(社債、株式等の振替に関する法律159条の2)。
- TDnet・適時開示
- 適時開示は、東証の上場規程等に基づく開示制度です。TDnet(適時開示情報伝達システム)は、上場会社が適時開示を行う際に利用するほか、株主総会招集通知・株主総会資料、コーポレート・ガバナンスに関する報告書、独立役員届出書などの一定の縦覧書類(東証が写しを公衆の縦覧に供する書類)を東証へ提出する際にも利用します。制度とシステムは同じ意味ではないため、TDnetで提出するものがすべて適時開示というわけではありません。
- EDINET・法定開示
- 有価証券報告書、その記載内容が適正であることを確認した旨を記載する確認書、内部統制報告書、半期報告書、臨時報告書等は金融商品取引法に基づく法定開示です。EDINETは、これらの開示書類を電子的に提出・閲覧するためのシステムです。
本記事は制度の関係を整理したものであり、個別の会社の日程表ではありません。実際の時期・要否は、決算期、機関設計、上場市場、定款の定め、個別案件の有無によって変わります。自社の定款と各制度の規定に当てはめてご確認ください。
2.まず全体像|上場会社の1年は6つの業務が重なる
上場会社の1年が分かりにくいのは、取締役会・株主総会、会社法上の決算・監査、TDnet、EDINET、商業登記、税務という複数の業務が、それぞれのスケジュールで同時に進むからです。まず、この6つを分けて見ます。
例えば年度決算では、会社法上の計算書類・事業報告の作成と監査、取締役会での審議、TDnetでの決算短信、EDINETでの有価証券報告書、税務申告などが並行します。まずは次の主な6つに分けて考えると、全体像が見やすくなります。IR資料の作成、人事、内部監査などの業務は、本記事では扱いません。
会社の意思決定(取締役会・株主総会等)
会社法、定款、取締役会規程その他の社内規程等を確認し、事項ごとに必要な決議・報告を行います。経営計画、決算、株主総会の招集、役員選任など、何をどの機関で決めるかは事項と機関設計によって異なります。
会社法上の決算・監査
各事業年度について、計算書類・事業報告とそれぞれの附属明細書を作成し(会社法435条2項)、機関設計に応じた監査・取締役会承認等を行います(会社法436条等)。連結計算書類は会社法444条に基づく別の書類として整理します。
東証への開示・提出(TDnet)
決算短信・四半期決算短信や、上場規程等に基づく適時開示を行います。TDnetは適時開示のために利用するシステムであり、適時開示という制度そのものと区別して考えます。東証への提出書類のうち、公衆の縦覧に供する書類はTDnetで提出します。プライム市場の上場内国会社では、決算情報及び適時開示情報について、原則として日本語による開示と同時に英文開示が求められます(第6章で整理します)。
金融商品取引法上の開示(EDINET)
有価証券報告書とその確認書、対象会社の内部統制報告書、半期報告書とその確認書、臨時報告書等を提出します。EDINETは法定開示書類を電子的に提出・閲覧するためのシステムです。有価証券報告書・半期報告書に含まれる財務諸表等については、会社法上の監査とは別に、金融商品取引法上の監査・期中レビューも並行します(第6章で整理します)。
商業登記
役員変更、新株予約権の行使、募集株式の発行、組織再編等によって、登記事項に変更が生じた場合に変更登記を申請します。
税務
法人税、消費税等の確定申告や、該当する場合の中間申告が、会社法・金融商品取引法とは別の期限で進みます。税目ごとに期限・延長制度が異なるため、個別に確認します。
制度とシステムを分けて考えることが重要です。「TDnet」はシステム、「適時開示」は東証の上場規程等に基づく開示制度です。同様に、「EDINET」はシステム、「法定開示」は金融商品取引法に基づく開示制度です。電子提供措置と基準日の意味は、第1章の用語整理をご参照ください。
TDnetとEDINETには、それぞれ何が出るのか
制度の違いは、実際にどの書類がどちらに出るのかを並べると分かりやすくなります。本記事のモデル会社を前提に、代表的なものを挙げます。
| TDnetで開示・提出される主な情報 | EDINETで提出される主な書類 |
|---|---|
|
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この6つを区別したうえで、次に1年間を時間軸で見ます。
3.1年間の流れ|前事業年度対応と新事業年度が重なって進む
3月31日で前事業年度は終わりますが、4月1日には新事業年度が始まります。そのため4~6月は、前事業年度の決算・監査・定時株主総会対応を進めながら、新事業年度の第1四半期も同時に進行します。以下では、各3か月を「四半期」、4月1日~9月30日の6か月を「中間期」として整理します。
4つのフェーズで見る1年
第1四半期+前事業年度の決算・総会
前事業年度の決算・監査・定時株主総会対応と、新事業年度の第1四半期が同時に進みます。
第2四半期+第1四半期の開示
7~8月に第1四半期の決算・開示を行い、7月1日から第2四半期が進みます。
第3四半期+中間期の開示
10~11月に中間期の決算・開示を行い、10月1日から第3四半期が進みます。
第4四半期+第3四半期の開示・次年度準備
1~2月に第3四半期の決算・開示を行い、次年度準備と並行して事業年度末へ進みます。
あわせて注意したいのが決算短信の名称です。東証は「第2四半期(中間期)決算短信」という名称を用いていますが、対象となるのは4月1日~9月30日の中間会計期間です。名称に「第2四半期」とありますが、7月1日~9月30日の3か月だけを対象とするものではありません。現行の上場規程でも、中間会計期間に係る決算の開示として定められています(有価証券上場規程404条)。
月別の一覧|どの月に何が動くか
大きな流れをつかんだうえで、必要な月を次の表で確認してください。左が時期、右がその時期に動く手続です。この表には、法令上の期限、東証規則上の期限、東証が示す望ましい時期の目安が混在しています。それぞれ法的な位置付けが異なるため、括弧内の説明もあわせてご確認ください。色は、前章で分けた6つの業務のどれに属するかを示しています。
| 時期・節目 | 主な手続(色は6つの業務区分に対応) |
|---|---|
| 4月1日 | 新事業年度開始/第1四半期開始 |
| 4月 |
会社法前事業年度の計算書類・事業報告・附属明細書の作成と監査対応(計算書類等は監査役等及び会計監査人、事業報告等は監査役等)
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| 4月下旬~5月 |
会社法監査・計算書類等の確定に向けた実務
TDnet通期決算短信(決算内容が定まったとき直ちに。期末後30日以内がより望ましく、遅くとも45日以内の開示が適当)
税務法人税・消費税等の確定申告(原則として事業年度終了後・課税期間の末日の翌日から2か月以内)。申告期限の延長制度は税目ごとに異なるため、適用の有無と期限を個別に確認
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| 5月頃 (目安) |
意思決定計算書類等の承認/株主総会の招集事項・議案等の決定
会社法会計監査報告・監査役会等の監査報告の通知
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| 総会3週間前の日 又は招集通知発出日の いずれか早い日から |
会社法電子提供措置の開始(株主総会の日の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日から)
TDnet株主総会資料を東証へ提出(電磁的な方法による提供日まで。有価証券上場規程施行規則420条1項)
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| 総会2週間前まで |
会社法招集通知を発する(公開会社)
TDnet株主総会招集通知(アクセス通知)を東証へ提出(発送日まで。有価証券上場規程施行規則420条1項)
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| 6月末まで (3月31日起点) |
EDINET有価証券報告書(事業年度経過後3か月以内)・確認書(有価証券報告書と併せて提出)/内部統制報告書(提出義務のある会社は有価証券報告書と併せて提出)
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| 6月下旬 (モデル) |
意思決定定時株主総会/役員改選。必要な会社では総会後の取締役会等で代表取締役その他の役員体制を決定
TDnet独立役員に変更が生じる場合は、独立役員届出書を原則としてその変更日の2週間前までに提出(有価証券上場規程施行規則436条の2)
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| 総会後 |
EDINET議決権行使結果に関する臨時報告書(決議結果確定後、遅滞なく)
商業登記登記事項に変更がある場合の変更登記(原則、変更から2週間以内)
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| 変更時 (一定事項は総会後更新可) |
TDnetコーポレート・ガバナンスに関する報告書(原則、記載内容の変更後遅滞なく。一定事項は変更後最初に到来する定時株主総会の日以後遅滞なく提出可)
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| 6月30日 | 第1四半期末 |
| 7~8月 |
TDnet第1四半期決算短信(決算内容が定まったとき直ちに。各四半期終了後45日以内の開示が原則)
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| 9月30日 | 中間期末(第2四半期末) |
| 10~11月 |
TDnet第2四半期(中間期)決算短信(内容が定まったとき直ちに。東証の「決算発表の早期化の要請」の対象外です。遅くとも半期報告書の提出までには発表することになります)
EDINET半期報告書(本記事のモデル会社は中間会計期間経過後45日以内)・確認書(半期報告書と併せて提出)
税務該当する場合は法人税・消費税等の中間申告(消費税は回数・時期が会社によって異なるため、本表では個別の日程を省略しています)
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| 12月31日 | 第3四半期末 |
| 1~2月 |
TDnet第3四半期決算短信(決算内容が定まったとき直ちに。各四半期終了後45日以内の開示が原則)
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| 2~3月 |
意思決定次年度の経営計画・予算の審議/翌期の役員候補の検討(指名委員会等を含む。会社による)
会社法期末監査の準備/翌年度の監査方針・計画案の検討(会社による)
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| 3月31日 | 事業年度末/次回定時株主総会の議決権行使基準日(モデル) |
| 通年 |
意思決定定例・臨時の取締役会/代表取締役・業務執行取締役による職務執行状況報告(3か月に1回以上)
会社法取締役会等への出席、重要書類の閲覧、部門ヒアリング、会計監査人との連携等の期中監査
TDnet上場規程等に基づき適時開示が必要となる事項が生じた場合の開示
TDnetプライム市場の上場内国会社は、決算情報・適時開示情報の英文開示(原則として2025年4月1日以後に開示するものから。適用を猶予された会社は2026年4月1日以後。有価証券上場規程436条の4)
EDINET臨時報告書、有価証券届出書等(提出事由が生じた場合)
商業登記新株予約権の行使、募集株式の発行、組織再編等により登記事項が変わった場合の変更登記
税務該当する申告・納付等
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「四半期そのものの期間」と「その決算・開示を行う時期」は別です。例えば第1四半期は4月1日~6月30日で、決算短信はその後の7~8月頃に開示します。第4四半期終了後は「第4四半期決算短信」ではなく、通期決算として開示します。
税務の期限について。消費税の確定申告期限の1か月延長は、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を提出した場合に認められるもので、法人税の延長に自動的に連動するものではありません。また、消費税の中間申告は、直前の課税期間の確定消費税額に応じて年1回・年3回・年11回と回数が異なります。適用の有無と期限は税理士へご確認ください。
4.4~6月が最大の山場|前事業年度の決算・総会と新事業年度の第1四半期が同時進行
3月決算会社の4~6月は、前事業年度の決算・監査・定時株主総会対応と、4月1日に始まった新事業年度の第1四半期が同時に進みます。
決算・監査
前事業年度の計算書類・事業報告等を作成し、会計監査人・監査役(会)等の監査に対応します。
決算短信・税務
決算内容を固め、TDnetで通期決算短信を開示します。税務申告も別の期限で進みます。
株主総会の準備
監査報告、計算書類等の承認、招集の決定、電子提供措置、招集通知を進めます。
定時株主総会・法定開示・登記
定時株主総会の前後には、有価証券報告書・確認書・内部統制報告書、議決権行使結果に関する臨時報告書、登記事項に変更がある場合の変更登記などが重なります。
4~5月|決算・監査・決算短信
会社法上は、前事業年度について計算書類・事業報告とそれぞれの附属明細書を作成し、監査を受けます(会社法435条・436条)。
ここで、監査を受ける相手は書類によって違います。会計監査人設置会社では、次のように分かれます(会社法436条2項1号・2号)。
| 書類 | 監査する者 |
|---|---|
| 計算書類及びその附属明細書 | 監査役等(監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)及び会計監査人 |
| 事業報告及びその附属明細書 | 監査役等のみ。会計監査人の監査対象ではありません |
一方、東証への決算短信は、決算内容が定まり次第開示する別の制度です。決算短信の内容を確定して開示するための社内手続と、会社法436条3項に基づく計算書類等の取締役会承認は、制度上は別の手続です。実務上、同じ取締役会で取り扱う会社もあります。
事業報告の記載事項については、会社法施行規則118条と事業報告で詳しく整理しています。
5~6月|総会準備で特に重要な期限
総会準備では、監査スケジュールに加え、電子提供措置と招集通知の期限を総会日から逆算します。本記事のモデル会社は会社法上の公開会社であるため、招集通知は株主総会の日の2週間前までに発します(会社法299条1項)。電子提供措置は、株主総会の日の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日から開始します(会社法325条の3第1項)。
6月|総会の前後に開示と登記が続く
有価証券報告書は事業年度経過後3か月以内に提出するため、総会日とは別の時計で動きます。総会前に提出することも可能です。内部統制報告書の提出義務がある会社は、有価証券報告書と併せて提出します。
この提出義務の対象は、有価証券報告書提出会社のうち、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行者などに限られており(金融商品取引法24条の4の4第1項、金融商品取引法施行令4条の2の7第1項。同項が、同法24条1項1号・2号に掲げる有価証券の発行者を対象として具体化しています)、有価証券報告書を提出する会社のすべてが対象になるわけではありません。内部統制の位置付けは内部統制とガバナンスの関係で整理しています。総会後は、議決権行使結果に関する臨時報告書を決議結果確定後遅滞なく提出し、役員変更等により登記事項が変わった場合には商業登記も続きます。
5.総会前後の実務|期限の逆算と手続の起点
6月総会の日程が決まると、電子提供措置や招集通知などは総会日から逆算できます。一方、決算短信・有価証券報告書・登記は、それぞれ期末や変更日など別の起点で動きます。次の図は取締役会の開催表ではなく、定時株主総会の前後に関係する主な節目を一つの時間軸に重ねたものです。
なお、3月決算会社が6月に定時株主総会を開催しなければならないという決まりはありません。本記事のモデル会社では、3月31日の基準日株主に当該定時株主総会で議決権を行使させるため、会社法124条2項との関係で6月30日までに開催する前提としています。
議決権行使の基準日
定款で3月31日を基準日としているモデルです。上記のとおり、基準日株主に議決権を行使させるには、基準日から3か月以内に総会を開催することになります。
通期決算の確定・決算短信の開示
決算短信は総会日ではなく期末を起点に考えます。東証は期末後30日以内の開示をより望ましいとし、遅くとも45日以内の開示が適当としています(45日目が休日である場合は翌営業日)。
監査報告・計算書類等の承認・招集の決定
会計監査人の会計監査報告、監査役会・監査等委員会等の監査報告の通知時期を踏まえ、取締役会で計算書類等を承認し、株主総会の招集事項・議案・株主総会資料を固めていきます。具体的な監査手順・通知先は機関設計によって異なります。
又は招集通知発出日の
いずれか早い日から
電子提供措置を開始
株主総会の日の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日から開始します(会社法325条の3第1項)。
招集通知を発送
公開会社では株主総会の日の2週間前までに招集通知を発します(会社法299条1項)。印刷・封入・発送の工程はさらに前から逆算します。
までに
株主総会資料・招集通知を東証へ提出
上場会社は、株主総会資料を電磁的な方法による提供日までに、株主総会招集通知(アクセス通知)を発送日までに、TDnet(縦覧書類の登録)により東証へ提出します(有価証券上場規程施行規則420条1項)。会社法上の電子提供措置・招集通知と同じ日程に、東証への提出という別の作業が重なります。
2週間前まで
(該当する場合)
独立役員届出書の提出
株主総会や総会後の機関決定によって独立役員に変更が生じる場合は、独立役員届出書を、原則としてその変更が生じる日の2週間前までにTDnet(縦覧書類の登録)により提出します(有価証券上場規程施行規則436条の2)。役員改選のある年は、総会日から逆算する項目として確認します。
(期末起点)
有価証券報告書・確認書/内部統制報告書
有価証券報告書は事業年度経過後3か月以内に提出します。上場会社は、その記載内容が金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記載した確認書を、有価証券報告書と併せて提出します(金融商品取引法24条の4の2第1項)。また内部統制報告書の提出義務がある会社は、これも有価証券報告書と併せて提出します(同法24条の4の4)。いずれも総会日とは別の時計で動き、有価証券報告書を定時株主総会前に提出することもできます。
定時株主総会・役員改選がある場合の役員体制決定
当該定時株主総会の終結時に任期が満了する役員については、総会終結により任期が満了します。役員改選がある場合は、総会で選任された役員が就任承諾等を前提に就任し、必要な会社では総会後の取締役会等で代表取締役その他の役員体制を決定します。
議決権行使結果に関する臨時報告書
株主総会の決議結果が確定した後、遅滞なく、金融商品取引法上の臨時報告書を提出します(金融商品取引法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2)。
(一定事項は総会後更新可)
コーポレート・ガバナンスに関する報告書の更新
記載内容に変更が生じた場合は、原則として変更後遅滞なく、TDnet(縦覧書類の登録)により提出します(有価証券上場規程419条)。ただし、東証が定める一定の事項については、変更後最初に到来する定時株主総会の日以後遅滞なく提出することもできます。「総会後に毎回更新する」という意味ではありません。
登記事項に変更がある場合の変更登記
総会やその後の機関決定によって登記事項に変更が生じた場合は、原則としてその変更日から2週間以内に申請します。登記原因に応じて、議事録、就任承諾書、株主リスト等の必要な添付書面を確認します。株主リストはすべての変更登記に必要な書面ではなく、株主名簿とは別に作成する証明書です(商業登記規則61条2項・3項)。
年間スケジュールには「4つの起点」がある
以下の「4つの起点」は法令上の分類ではなく、本記事で年間スケジュールを整理するための実務上の見方です。すべてが総会日から逆算されるわけではなく、会計期間末、基準日、株主総会日、個別の決定・事由発生という複数の起点が並行します。
総会議案は会社によって違う
定時株主総会で計算書類を承認し、配当を決議するとは限りません。会計監査人設置会社では、取締役会で承認された計算書類が会社計算規則135条の要件を満たす場合、会社法438条2項の株主総会承認は不要となり、定時株主総会ではその内容を報告します(会社法439条)。また、会社法459条1項の会社要件を満たし、同項に基づく定款の定めがある会社では、剰余金の配当等を取締役会で決定できる場合があります。もっとも、その定款の定めの効力には会社法459条2項・会社計算規則155条の要件も関係します。
本記事では位置付けだけを押さえます。実際の議案構成は、機関設計、監査結果、定款の定め等を確認して判断します。
2026年のポイント|有価証券報告書の総会前提出
2026年改訂のコーポレートガバナンス・コードでは、株主総会前の有価証券報告書提出が原則1-2に盛り込まれ、解釈指針では開催日の3週間以上前の提出が最も望ましいとされています。なお、この「3週間以上前」は解釈指針による記載であり、解釈指針自体はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありません。本記事のモデルであるプライム市場・スタンダード市場の会社では、総会日程と有報提出時期の関係が従来以上に重要になります。
ただし、有価証券報告書の法定提出期限そのものが「総会3週間前」に変わったわけではありません。総会日を動かす場合には、基準日、役員任期、登記期限なども一緒に確認します。コーポレートガバナンス・コードの位置付けはコーポレートガバナンス・コードとは?で整理しています。
なお、2026年改訂を踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の更新は、2027年7月末日までとされています。これは改訂コードへの対応期限であり、通常のガバナンス報告書の内容変更に関する提出時期とは区別して確認が必要です。(東証FAQ)
6.7月以降|第1四半期・中間期・第3四半期の決算・開示
6月30日に第1四半期が終わると、7~8月にその決算・開示を行います。同じように、9月30日の中間期末の後に中間期の決算・開示、12月31日の第3四半期末の後に第3四半期の決算・開示が続きます。ただし、東証が示す開示時期の考え方は、通期・第1/第3四半期・中間期でそれぞれ異なります。
7~8月|第1四半期の決算・開示
モデル会社では4月1日から6月30日までが第1四半期です。第1四半期決算短信は、決算内容が定まったときに直ちに開示し、各四半期終了後45日以内の開示が原則です。金融商品取引法上の四半期報告書は、2024年4月1日施行の改正により制度そのものが廃止されました(四半期報告書の根拠であった金融商品取引法24条の4の7・24条の4の8が削除されています)。「第1四半期報告書」という名称の書類があるわけではありません。現在、第1・第3四半期の開示は取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化されています。
10~11月|中間期の決算・開示
事業年度の前半6か月が終わる9月30日が中間期末(第2四半期末)です。違いを整理すると、次のとおりです。
| 決算の区分 | 「決算発表の早期化の要請」 | 45日との関係 |
|---|---|---|
| 通期 | 対象。期末後30日以内の開示がより望ましく、遅くとも45日以内が適当(45日目が休日である場合は翌営業日) | 遅くとも45日以内が適当。左の要請の中で示されています |
| 第1・第3 四半期 |
対象外。有価証券報告書や半期報告書などの法定開示に対する速報としての位置付けではないことを踏まえたものです | あり。各四半期終了後45日以内の開示が原則 |
| 中間期 (中間会計期間) |
対象外。半期報告書の法定提出期限が中間期末後45日以内とされていることを踏まえたものです | 半期報告書の法定提出期限が中間期末後45日以内です。決算の内容が定まれば直ちに開示し、遅くとも半期報告書の提出までには中間期決算発表を行うことになると東証は説明しています |
いずれの区分でも、決算の内容が定まったときに直ちに開示するという点は共通です。本記事のモデル会社では、半期報告書を中間会計期間経過後45日以内にEDINETで提出します。半期報告書にも確認書の制度が準用され、半期報告書と併せて確認書を提出します(金融商品取引法24条の5の2による24条の4の2の準用)。この45日という期限は、金融商品取引法24条の5第1項の表の第1号(「45日以内の政令で定める期間内」)と、金融商品取引法施行令4条の2の10第2項(この期間を「45日」と定める規定)によります。
なお、銀行・保険会社等の上場特定事業会社(金融システムの安定を図るためその業務の健全性を確保する必要がある事業として内閣府令で定める事業を行う会社)では、半期報告書の提出期限は60日以内となります(金融商品取引法24条の5第1項の表の第2号、金融商品取引法施行令4条の2の10第3項)。また、税務上の中間申告の要否・期限は会社ごとに異なるため、税理士へご確認ください。
1~3月|第3四半期の決算・開示と次年度準備
12月31日が第3四半期末です。第3四半期決算短信は、決算内容が定まったときに直ちに開示し、各四半期終了後45日以内の開示が原則です。その後、2~3月頃から次年度の経営計画・予算、翌期の役員候補などの検討も進み、3月31日に事業年度末を迎えます。
会社法上の監査とは別に、金融商品取引法上の監査・レビューが並行します。有価証券報告書に含まれる財務諸表・連結財務諸表は、公認会計士又は監査法人による監査証明の対象です(金融商品取引法193条の2第1項)。半期報告書に含まれる中間財務諸表等については、同項に基づく監査証明として期中レビューが行われます。
一方、第1・第3四半期決算短信の四半期財務諸表等に対する期中レビューは、原則として任意です。ただし、有価証券上場規程施行規則405条2項に該当する会社では義務付けられ、その場合は、原則として、期中レビューの完了後に期中レビュー報告書を添付した四半期決算短信を開示することが必要となります。任意にレビューを受ける会社では、レビューの完了前に開示し、完了時に改めて開示する方法も認められています。第4章で整理した会社法上の監査(計算書類等・事業報告等)とは、対象書類も時期も別に動きます。
英文開示|プライム市場の上場内国会社では原則として日本語開示と同時に
プライム市場の上場内国会社は、英文開示も年間の開示スケジュールに入ります(有価証券上場規程436条の4)。要点は次のとおりです。
| 対象会社 | プライム市場の上場内国会社(スタンダード市場の会社に436条の4は適用されません) |
| 義務の対象 | 決算情報(決算短信・四半期決算短信、日本語で開示している決算補足説明資料等)と、適時開示情報(上場規程上開示が求められる会社情報に加え、会社がTDnetを利用して任意に適時開示している会社情報も含みます) |
| 対象外 | PR情報や、株主総会招集通知・コーポレート・ガバナンスに関する報告書等の縦覧書類(ただし下の注記のとおり、別に努力義務等の定めがあります) |
| 開示の時期 | 原則として日本語による開示と同時。ただし、発生事実に係る開示など急遽対応が必要になる場合や、関係者との調整等により開示直前まで日本語による開示内容が定まらない場合であって、英語による同時開示を行おうとすると日本語による開示の遅延が生じるときは、同時に開示しなくてもよいとされています |
| 英文の内容 | 日本語による開示の一部又は概要でも足ります |
| 適用時期 | 2025年4月1日以後に開示するものから。適用を1年間猶予された会社も2026年4月1日以後に開示するものから対象 |
対象外の書類について、英文開示をしなくてよいという意味ではありません。プライム市場の上場内国会社には、これとは別に英文開示に関する努力義務の規定があります(同規程445条の8)。また、株主総会招集通知の英訳についても、努める旨の規定が置かれています(同規程446条、同施行規則437条)。コーポレートガバナンス・コードの英文開示に関する原則は、プライム市場・スタンダード市場の上場会社が対象です。本記事の年間スケジュールは日本語での開示を前提に整理しており、プライム市場の会社では各開示に英文開示の作業が並行します。
7.年間を通じて並行する業務|取締役会運営と監査
ここまでの章は「何月に何が起こるか」を時系列で見てきました。ここでは視点を変え、年間を通じて並行して動く取締役会運営と監査を横串で確認します。
取締役会|「いつ開くか」と「何を審議するか」を分ける
取締役会は年間を通じて開催されます。会社法は毎月の開催までは求めていませんが、後述する職務執行状況の報告との関係で、一定の頻度での開催が必要になります。
実務上は、開催日を管理する「年間開催スケジュール」と、各回で何を決議・報告するかを管理する「年間付議スケジュール」を分けると整理しやすくなります。いずれも会社法上の法定用語ではありません。「年間の取締役会開催スケジュール」は2026年コーポレートガバナンス・コード原則4-14の解釈指針にも現れる表現で、「年間付議スケジュール」は実務書の整理を踏まえた管理上の呼び方です。なお、第5章の総会前後のタイムラインで示した取締役会関連の記載は、年間の開催時期を示したものではなく、定時株主総会の前後に直接関係する意思決定だけを抜き出したものです。
年間の開催スケジュール
- 取締役会を開催する日程を決める
- 通期決算、各四半期決算、定時株主総会など動かしにくい日程から押さえる
- 社外取締役・社外監査役等の予定を早めに確保する
年間の付議スケジュール
- どの取締役会で何を決議・報告するかを配置する
- 法令に基づく事項、社内規程に基づく事項、任意の重要事項を整理する
- 担当部署の資料作成や社内調整の時期を逆算できる
また、代表取締役及び業務執行取締役(取締役会の決議によって業務を執行する取締役として選定された取締役)は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法363条2項)。この報告については、取締役会への報告を省略できる会社法372条1項の仕組みは適用されません(同条2項)。そのため、少なくとも3か月に1回以上、代表取締役等が職務執行状況を報告する取締役会を実際に開催する必要があります。そのうえで、実際の開催頻度は会社ごとの運用によります。
コーポレートガバナンス・コード原則4-14の解釈指針でも、年間の取締役会開催スケジュールや予想される審議事項の決定、取締役会事務局の機能強化等が示されています。
監査役(会)|監査は決算期だけではない
監査役会設置会社を例にすると、総会後の監査方針・計画から、期中監査、会計監査人との連携、期末監査・監査報告まで1年を通じて進みます。以下の時期区分は目安であり、各監査活動は重なりながら進みます。
8.臨時案件が入ったとき|意思決定・開示・実行・登記を同じ時間軸で確認する
ここまでの年間カレンダーは定例的な流れです。M&A、増資、新株予約権の発行、代表取締役の異動などの臨時案件が入った場合は、会社法上の意思決定に加え、TDnet・EDINET・商業登記の要否を案件ごとに確認し、必要な手続だけを一つの時間軸に並べます。
臨時案件によって必要な手続は異なります。すべての案件でTDnet・EDINET・商業登記が必要になるわけではありません。決定内容に応じて、適時開示、法定開示、実行日、登記の要否とタイミングを確認します。
- 会社法上の意思決定どの機関で決めるのか(株主総会・取締役会・種類株主総会等)と、その決議日を確定します。
- TDnet(適時開示)取引所規則上の適時開示の要否とタイミングを確認します。
- EDINET(法定開示)臨時報告書、有価証券届出書等の要否を検討します。
- 実行払込期日・払込期間、割当日、契約締結日、組織再編の効力発生日など、案件ごとの法定・契約上の実行時点を確認し、開示・登記と整合させます。
- 商業登記登記事項に変更が生じていれば、期限内に変更登記を申請します。
例えば第三者割当による募集株式の発行では、決議日、適時開示、払込期日又は払込期間、株主となる時期(会社法209条)、資本金・資本準備金の計上、登記期限を一連で確認します。とくに払込期間を定めた場合の株式の発行による変更登記は、その期間の末日現在により、末日から2週間以内にすれば足ります(会社法915条2項)。払込期日を定めた場合の原則(変更が生じたときから2週間以内。同条1項)とは起算点が異なります。募集株式の発行を一律に「効力発生日」で整理すると、払込期日・払込期間等の違いを見落としやすいため注意が必要です。資本政策に関する手続は資金調達・資本政策の業務案内でご案内しています。
9.司法書士として実際に確認しているポイント
上場会社のご依頼でも、はじめに確認することは中小企業のご依頼と変わりません。登記簿と定款で、現在の登記事項と定めを確認します。ご担当者様との打ち合わせでは、この1年の流れを踏まえて、できるだけ共通の言葉でお話しできるよう心がけています。そのうえで、当事務所が上場会社のご依頼で実際に確認している点を、一例として以下にご案内します。
- 発行済みのすべての新株予約権(ストックオプション):複数回にわたって新株予約権を発行している会社では、第1回、第2回など登記されているすべての新株予約権について、行使期間の満了日と未行使の数を確認します。行使による変更登記は、行使のあった月の末日現在により、その末日から2週間以内にすれば足ります(会社法915条3項)。また、行使されないまま行使期間が満了した新株予約権は消滅します(会社法287条)。この消滅による変更の登記は、上記の月ごとにまとめる特例の対象ではなく、原則として変更が生じた時から2週間以内に申請します(同法915条1項)。登記は自動では消えないため、失念しやすい箇所です。
- 会計監査人:会計監査人は、定時株主総会で別段の決議がされなかったときは再任されたものとみなされます(会社法338条2項)。つまり選任の決議が議事録に現れません。それでも会計監査人の氏名又は名称は登記事項ですので(会社法911条3項19号)、重任の登記が必要です。いただいた委任状の委任文言から抜けやすい箇所ですので、会計監査人の重任が含まれているかを確認します。また、監査法人の側で名称変更や合併があれば、株主総会の決議とは関係なく会社の登記事項が変わりますので、登記されている名称が現在の名称と一致しているかもあわせて確認します。
- 電子公告のアドレス:公告方法を電子公告とする旨の定款の定めがある場合、その情報の提供を受けるために必要な事項(ウェブサイトのアドレス)が登記事項です(会社法911条3項28号イ)。登記されているURLが、実際に公告を掲載しているURLと一致しているかを確認します。商号変更やサイトのリニューアルでアドレスが変わっている場合のほか、サイトの常時SSL化により「http」が「https」に変わったまま、登記が古いアドレスのままになっているという例もあります。なお、有価証券報告書提出会社には貸借対照表の公告に関する規定が適用されないため(会社法440条4項)、決算公告のための措置とは区別して確認します。
ストックオプションの設計・登記についてはストックオプションの業務案内もご覧ください。
当事務所では、会社法上の手続と商業登記の観点から確認しています。金融商品取引法上の開示の要否、会計・監査、税務は、それぞれ弁護士、公認会計士・監査法人、税理士等の専門領域です。
10.よくあるご質問
当事務所に実際にご相談の多い点を、会社法と登記の観点からまとめました。
- 3月決算会社は必ず6月に定時株主総会を開催するのですか。
-
必ずしもそうではありません。会社法は定時株主総会を毎事業年度の終了後一定の時期に招集することを求めているだけで(会社法296条1項)、3か月以内と定めているわけではありません。多くの会社が定款で3月31日を議決権行使の基準日と定めており、基準日株主の権利行使が基準日から3か月以内に限られるため(会社法124条2項)、結果として6月末までの開催が多くなっています。総会日程を検討するときは、決算期だけではなく定款上の基準日を確認します。
- 登記事項が変われば、必ずTDnetやEDINETでも開示するのですか。
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必ずしもそうではありません。商業登記、適時開示、金融商品取引法上の法定開示は、それぞれ根拠となる制度と対象事項が異なるため、案件ごとに確認する必要があります。逆に、開示は不要でも登記は必要という場面もあります。登記期限は原則として変更が生じた日から2週間以内で、開示の要否とは別に進みます(会社法915条1項)。
- 上場準備中でも、会社法上のサイクルは上場会社と同じですか。
-
決算・定時株主総会・登記という基本的なサイクルは上場前にもありますが、同じではありません。会社法上の公開会社に該当するか、機関設計、会計監査人の有無等によって、監査・招集手続・必要書類は異なります。上場を見据える段階では、自社の機関設計と上場準備の進捗に応じて年間スケジュールを整えておくと、上場後の運営に移りやすくなります。スタートアップという言葉の意味や特徴についてはスタートアップ企業とは?経済産業省の資料から意味と特徴を考えるをご覧ください。
11.まとめ|上場会社の1年は「つながり」で見る
年間スケジュールを理解するときは、個々の期限を暗記するより、会社内部の意思決定、株主総会、開示、登記が相互にどうつながっているかを見ることが重要です。
- 3月決算会社の4~6月は、前事業年度の決算・監査・定時株主総会等と、新事業年度の第1四半期が同時に進む。
- 7月以降は、第1四半期の決算・開示→中間期の決算・開示→第3四半期の決算・開示→次年度準備という流れで進む。
- 総会準備には総会日から逆算する手続がある一方、決算短信・有価証券報告書・税務等は、期末など別の起点で動く。
- 取締役会の年間運営と監査役(会)の監査も、1年を通じて並行して進む。
- 臨時案件では、会社法上の意思決定に加え、適時開示(TDnet)、法定開示(EDINET)、実行、商業登記の要否と順序を案件ごとに確認する。
本記事は、年間の全体像をつかむための記事です。TDnet、EDINET、株主総会日程、会社法439条・459条、監査役(会)の年間スケジュールなどの各論は、個別記事で詳しく整理していきます。
12.主な参考資料・引用元
本記事は、以下の法令、公的機関・取引所の公表資料及び実務書を相互に照合して作成しています。法定期限・現行の開示制度は法令や公的機関・取引所の最新資料を優先し、実務書は手続の順序、準備の流れ、実務上の管理方法を確認するために参照しています。書籍の原文を転載するのではなく、該当箇所の考え方・整理を踏まえて再構成しています。
主な法令
- 会社法(e-Gov法令検索):2条5号(公開会社)、124条1項~3項(基準日)、209条(募集株式の株主となる時期等)、287条(新株予約権の消滅)、296条1項(定時株主総会の招集)、298条・299条(招集の決定・招集通知)、325条の2・325条の3(電子提供措置)、338条2項(会計監査人のみなし再任)、363条2項・372条2項(職務執行状況の報告・報告省略の適用除外)、390条3項(監査役会による常勤監査役の選定)、435条・436条(計算書類等の作成・監査・承認)、438条・439条(計算書類の承認・承認特則)、444条(連結計算書類)、440条4項(有価証券報告書提出会社には計算書類の公告の規定を適用しない)、454条・459条(剰余金の配当等)、911条3項(株式会社の登記事項。19号=会計監査人の氏名又は名称、28号イ=電子公告のアドレス)、915条(1項=変更登記の原則、2項=払込期間を定めた場合の特例、3項=新株予約権の行使等を月ごとにまとめる場合)。
- 会社計算規則(e-Gov法令検索):130条・132条(監査報告の通知等)、135条(会社法439条の承認特則の要件)、155条(会社法459条2項等の要件)。
- 社債、株式等の振替に関する法律(e-Gov法令検索):159条の2(振替株式を発行する会社の電子提供措置に関する定款の定め)。
- 商業登記規則(e-Gov法令検索):61条2項(株主全員等の同意を要する場合)・61条3項(株主総会等の決議を要する場合)(株主リスト)。
- 金融商品取引法(e-Gov法令検索):24条1項(有価証券報告書)、24条の4の4(内部統制報告書。第1項が提出義務の対象範囲を定め、その具体化を政令に委ねています)、24条の4の2(有価証券報告書の記載内容に係る確認書の提出)、24条の5の2(確認書に関する規定の半期報告書への準用)、24条の5(半期報告書・臨時報告書。第1項の表が半期報告書の提出期限の枠(45日以内・60日以内)を定め、その期間を政令に委ねています。第4項が臨時報告書)、193条の2(公認会計士又は監査法人による監査証明)。なお、四半期報告書の根拠であった24条の4の7・24条の4の8は、2024年4月1日施行の改正により削除されています。
- 金融商品取引法施行令(e-Gov法令検索):4条の2の7(内部統制報告書を提出しなければならない会社の範囲等)、4条の2の10(半期報告書を提出しなければならない会社の範囲等。第2項が45日、第3項が60日と定めています)。
- 法人税法(e-Gov法令検索):74条(確定申告)、75条の2(確定申告書の提出期限の延長の特例)。
- 会社法施行規則(e-Gov法令検索):132条(監査役監査報告等の通知期限)。
株主リスト・定時株主総会
- 「株主リスト」が登記の添付書面となりました(法務省):株主総会等の決議を要する場合又は株主全員等の同意を要する場合に株主リストが必要となること、記載対象株主の考え方。
- 株主リストに関するよくあるご質問(法務省):株主名簿と株主リストでは記載内容が異なり、株主名簿で株主リストを代用できないこと等。
- 定時株主総会の開催について(法務省):会社法が事業年度終了後3か月以内の開催を一律に求めているわけではない点。
決算短信・四半期決算短信・コーポレート・ガバナンスに関する報告書
- TDnetの概要(日本取引所グループ):TDnetが適時開示に係る一連のプロセスを電子化するシステムであり、上場会社が適時開示を行う場合に利用すること。
- 決算短信の開示時期について(東証FAQ):通期決算は期末後30日以内の開示がより望ましく、遅くとも45日以内が適当(45日目が休日である場合は翌営業日)。「決算発表の早期化の要請」は通期決算についてのものであり、中間期・第1・第3四半期はいずれも対象外(中間期は半期報告書の法定提出期限が45日以内であることを踏まえ、第1・第3四半期は法定開示に対する速報としての位置付けではないことを踏まえたもの)。そのうえで第1・第3四半期には各四半期終了後45日以内の開示を原則とする取扱いが置かれている。いずれも決算内容が定まったときは直ちに開示。中間期については、内容が定まった決算の開示を遅延させることはできないため、遅くとも半期報告書の提出までには決算発表を行うことになる旨も示されている。
- 決算短信・四半期決算短信 作成要領等(日本取引所グループ)
- プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備(東証FAQ):プライム市場上場会社の決算情報・適時開示情報について英文開示を義務付ける制度整備(2025年4月1日施行)。対象書類の範囲、同時性の考え方、猶予措置の内容。
- 四半期決算短信に係る期中レビュー(東証FAQ):第1・第3四半期の四半期財務諸表等に対する期中レビューは原則任意であり、有価証券上場規程施行規則405条2項に該当する会社では義務付けられること、義務会社は期中レビューの完了後に開示すること。
- コーポレート・ガバナンスに関する報告書の更新時期(東証FAQ):原則として変更後遅滞なく提出し、一定事項については変更後最初に到来する定時株主総会の日以後遅滞なく提出することもできる旨。
コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)
株式会社東京証券取引所、2026年7月21日。原則1-2(株主総会前の有価証券報告書の提出。解釈指針における「開催日の3週間以上前」「開催日・基準日の後ろ倒しも含めた検討」)、原則4-14及びその解釈指針(年間の取締役会開催スケジュール・予想される審議事項の決定、取締役会事務局の機能強化等)を参照。解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありませんが、原則の実施等を検討する際に参照することが期待されています。
- コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)の公表について(日本取引所グループ)
- コーポレートガバナンス・コードの改訂について(東証):2026年改訂を踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書の更新期限は2027年7月末。
有価証券報告書・半期報告書・株主総会前開示
- 有価証券報告書の定時株主総会前の開示について(金融庁)
- 有価証券報告書を定時株主総会前に提出する場合の留意点(金融庁、2026年2月):総会前に提出する場合の記載事項の取扱い。
- 四半期報告制度に係る改正法案の主な内容(金融庁):制度改正時(2023年)の資料です。四半期報告書制度の廃止(第1・第3四半期の開示は取引所規則に基づく四半期決算短信へ一本化)、上場会社の半期報告書45日、上場特定事業会社60日、非上場の有価証券報告書提出会社3か月、非上場会社が上場会社と同じ枠組みを選択できる仕組みの概要。改正の経緯を確認するために掲げています。現行の提出期限そのものは、上記の金融商品取引法24条の5第1項の表及び金融商品取引法施行令4条の2の10によります。
- 議決権行使結果の開示について(金融庁):現行の根拠は金融商品取引法24条の5第4項及び企業内容等の開示に関する内閣府令19条2項9号の2です。次の資料は、制度導入時(2010年)の金融庁の解説記事として掲げています。
消費税の申告期限・中間申告
- No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について(国税庁):法人税の申告期限の延長の特例の適用を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を提出した場合に、消費税の確定申告期限が1か月延長されること。
- No.6609 中間申告の方法(国税庁):直前の課税期間の確定消費税額に応じて、中間申告の回数が年1回・年3回・年11回となること。
この記事で参照した書籍
- 『会社法実務スケジュール〔第3版〕』橋本副孝・吾妻望・菊池祐司・笠浩久・中山雄太郎・高橋均 共編/新日本法規出版/2023年1月/648頁。第1章「機関運営一般」第1「株主総会」1「定時株主総会」及び第3「監査役(会)」。計算書類・事業報告等の作成・監査から株主総会・登記までを一つの時系列で確認するため、また監査役(会)の年間サイクルを確認するために参照しました(新日本法規出版の書籍情報)。
- 『取締役会事務局の実務──コーポレート・ガバナンスの支援部門として』日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク取締役会事務局懇話会 編著/商事法務/2021年。取締役会事務局の1年間、年間開催スケジュールと年間付議スケジュールの区別、社外役員の日程確保、付議事項の分類・時期の調整に関する記述を参照しました。
- 『会社法コンメンタール10 計算等[1]』江頭憲治郎・弥永真生 編/商事法務/会社法435条の解説部分。各事業年度に係る計算書類・事業報告・附属明細書の作成・保存と、その後の監査・取締役会承認・定時株主総会への提供等の流れを確認するために参照しました。
いずれも原文を転載したものではなく、該当箇所の考え方・整理を踏まえて当事務所で再構成しています。書籍の日付例はそのまま採用せず、法定期限は現行の法令・東証・金融庁の資料で個別に確認しています。2024年以降の四半期開示制度の見直しや2026年コーポレートガバナンス・コードについては、書籍ではなく金融庁・東京証券取引所の現行資料で確認しています。
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本記事について
本記事は、2026年8月時点の法令、公的機関・取引所の公表資料及び参考書籍をもとに、3月決算の上場会社をモデルとして年間スケジュールを整理したものです。書籍部分は該当箇所の要旨・考え方を踏まえて当事務所で再構成しており、原文をそのまま転載したものではありません。実際の時期や手続は、決算期、機関設計、上場市場、定款の定め、個別案件等によって異なります。具体的な手続にあたっては、会社法上の手続と商業登記については司法書士、金融商品取引法上の開示については弁護士・公認会計士等、税務については税理士へご相談ください。
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