離婚したら年金はどうなるの? ~合意分割と3号分割の違い~

公開日: 2019.05.30

最終更新日: 2019.12.03

こんにちは

LSO総合司法書士事務所の沖中です。

 

今、離婚を考えている人の中には、「離婚したら夫の年金の半分がもらえる」

こう思っている人は少なくないのではないでしょうか。

 

間違った感覚ではありませんが、そう単純にいくものでもありません。

そこで今回は、分割の対象になるものや、その割合についてお話ししていきます。

 

想像しやすいように、最後に具体的な数字を用いてお話しますので、

一つ一つの言葉を理解した上で、具体例を読んでみて下さい。

 

  1. 01

    まずは基本の確認 ~年金のしくみ~

     

    基本的なことですが、まずは年金のしくみをしっかり把握してから、分割の話に移ります。

     

    年金は、公的年金と私的年金に分かれ、自分が加入するものによって第○号被保険者と分類されます。

     

    公的年金(3種類)・・・国が運用するもの

    国民年金(全国民が加入)、厚生年金(会社員が加入)、共済年金(公務員が加入)

    厚生年金と共済年金は、国民年金に上乗せされるものです。

     

    私的年金・・・公的年金にさらに上乗せするもの

    国民年金基金、厚生年金基金、確定拠出年金、保険会社の各種個人年金などです。

     

    分類方法

    農林漁業、自営業、学生、無職の人

    →第1号被保険者・・・国民年金の加入のみ

     

    会社員(厚生年金)、公務員(共済年金)

    →第2号被保険者・・・国民年金に加え、厚生年金又は共済年金に加入

     

    第2号の扶養配偶者

    →第3号被保険者・・・国民年金の加入のみ

  2. 02

    年金分割の対象

     

    分割の対象になるのは、ずばり、

    夫が加入している厚生年金または共済年金(標準報酬)にあたる部分のみで婚姻中のものに限られます

     

    つまり、婚姻開始以降に、厚生年金か共済年金に加入していない場合は、そもそも年金分割ができないということです。

     

    自分は、どうすべきかこのフローチャートで確認してみて下さい。

     

     

  3. 03

    分割方法と割合

     

    年金の分割には「合意分割」と「3号分割」と呼ばれるものがあります。

    それぞれ、期間や割合が異なるので、簡単に説明しますね。

     

    合意分割

    これは、夫婦が、2008年4月1日より前から婚姻関係にあった場合は、

    その日(2008年4月1日)までの夫の厚生年金または共済年金を、

    話し合いで最大2分の1までを限度に自由に割合を決められるというものです。

     

    話し合いで決められない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて決めることになります。

    2008年4月1日以降の年金については、割合を決めることはできず、2分の1と定められています。

    ですが、共働きの場合は少し異なります。あとでお話しますね。

     

    3号分割

    3号分割は、第3号被保険者のみを対象に、話し合うことなく自動的に、

    夫の厚生年金または共済年金の2分の1を受け取ることができるというものです

     

  4. 04

    共働きと専業主婦・パートで違いはあるの?

     

    夫婦の生活形態によって分割の方法は変わります。

     

    共働きの場合

    夫婦共働きの場合でも、夫の標準報酬額*が妻より多いときに限り、夫の年金を分割することができます。

    この場合は合意分割のみの適用になります。

    つまり、2008年4月1日を境に何も変わらないということです。

     

    ※標準報酬額とは・・・

    加入期間とその間の収入の平均に応じて計算される年金額のことです。各人の給料体系はさまざまで変動的なため、

    一定の幅(1等級~31等級)に区分した計算の基礎を設けて処理しています。

     

    専業主婦・パートの場合

    専業主婦の場合は2008年4月1日より前のものは合意分割、それ以降のものは3号分割になります。

     

  5. 05

    分割割合を定めたら・・・

     

    合意分割をした場合は、手続きの際に、分割の割合を記した書類(離婚協議書や公正証書など)が必要になります。

     

    そして、この年金の取り分は、離婚後に受ける側が請求しなければ自分のものになりません。

    つまりこの手続きは自分自身で行います。

     

    手続きに必要な書類

    年金手帳離婚年月日が記載された書類(戸籍謄本等)、印鑑は必ず必要になります。

    その他に、婚姻期間を記した書類や、年金分割を定めた離婚協議書や公正証書も必要になりますので、

    詳しい必要書類は、年金事務所の問い合わせるのが確実です。

     

  6. 06

    手続きの期限には要注意!

     

    年金分割の手続き期限は、離婚したときから2年間です。

    2年を経過すると、請求ができなくなるので、注意して下さい。

     

    また、合意分割と3号分割の請求は別々に手続きが必要です。

    口すっぱく言いますが、どちらの請求をするにしても、その期限は離婚から2年間です。

     

    手続きを忘れると、将来受けとる年金が減ってしまいます…

     

  7. 07

    具体的に考えてみましょう

     

    <事例>

    2000年に結婚した夫婦がいて、2010年に離婚することになった場合で、

    ①は専業主婦(もしくはパート)②は共働きの事例です。

     

    ①卒業と同時に就職して厚生年金に加入後、結婚を機に退社したあとは離婚するまで

    会社員の夫の扶養家族になっていた(専業主婦・パート)場合で、離婚後は国民年金に加入した場合

     

    →結婚後から2008年4月1日までの厚生年金は、合意分割により話し合いで決める(最大2分の1まで)。

    2008年4月1日から2010年の離婚するまでの厚生年金は3号分割により2分の1。

     

    ②卒業と同時に就職して厚生年金に加入して以来、離婚まで仕事を続け(共働き)、離婚後も継続する場合

     

    →2000年から2010年の離婚するときまで、全ての期間の年金は、合意分割により話し合いで分割します。(最大2分の1)

     

  8. 08

    まとめ

     

    現在の年金の受給資格は、65歳以上ですが、今の時代、

    自分が65歳に達したとき、本当に年金を受け取れるか確実ではなさそうですよね。

     

    しかし、もちろん可能性がないわけではないので手続きをするにこしたことはありません。

    離婚を機に人生の再スタートを快くきれるよう、また将来困らないように、年金分割の手続きはしっかりと済ませましょう。

     

    年金分割の割合は決めたなら協議書に残しておくことをおすすめします。

     

    年金分割以外のことでも、何かわからないことがありましたら、お気軽にご相談下さい。

    相談フォーム

     

    最後までご精読ありがとうございました。