子どもが連れ去られたらどうすべき?

公開日: 2019.08.08

最終更新日: 2019.12.03

こんにちは

LSO総合司法書士事務所の崎井です

 

離婚をする際に、親権を夫婦のどちらがとるか、ということが協議によって決まらなかったときに、一方の親が子どもを連れ去るケースがあります。

この「子どもの連れ去り」ですが、親権に関してどのような影響があるのでしょうか。

今回は離婚前と離婚後の連れ去りのケース、そして国際結婚の場合について説明させて頂きます。

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    離婚前の子どもの連れ去り

    はじめに、離婚する前の段階での子どもの連れ去りについて説明していきます。

     

    離婚が決まる前に子どもを連れ去る理由は、子どもを連れて一緒に暮らすことで養育実績を作り、親権をとるために有利にするということが考えられます。

    離婚前では子どもの親権は夫婦のどちらにもあるため、違法にならない可能性が高いとされていました。

     

    しかし、近年は子どもの親権を争っている最中に子どもを連れ去った場合、未成年者略取罪にあたり、違法性が認められやすくなっています。

    また、夫婦のいずれかに虐待等の事実が客観的に認められれば、連れ去りは適法となる可能性が高くなります。

     

    この場合、監護権者指定及び子の引渡しの調停ないし審判を申立て、併せて審判前の保全処分を検討する必要があります。

    ※子の引渡しの調停は、離婚前であっても、両親が別居中で子どもの引渡しについての話合いがまとまらない場合や、話し合いができない場合に利用することができます。この場合は原則として、子の監護者の指定の申立てもする必要があります。

  2. 02

    離婚後に子どもが連れ去られた場合

    次に、離婚後に子どもが連れ去られた場合について説明していきます。

     

    協議離婚で親権を得ていない夫婦の一方が子どもを連れ去ることは、当然犯罪にあたります。

    たとえ親であった者でも、監護者の同意がなければ、子どもを連れ去ると刑法犯になる可能性もあります。

    このような場合親権者は、警察に連絡するなど、迅速な対応が必要になります。

  3. 03

    子どもの連れ去りの親権への影響

    ここまで子どもの連れ去りについて説明してきましたが

    子どもの連れ去りは離婚の際、親権を得るために有利にはたらくのでしょうか?

     

    結論を先に申し上げますと、養育実績を作るという点では有利にはたらく可能性はあります。

    しかし、子どもの意思に反して行った場合は不利になる場合が多いです。

     

    なお、連れ去り以前に子どもの養育実績がある方の親が子どもを連れ去ることは、問題がないというようにとらえられる場合が多くなっています。

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    国際結婚をした場合

    昨今増え続けている国際結婚ですが、夫婦の一方が外国籍で、子どもを国外に連れ去った場合はどのようにすればよいのでしょうか。

     

    以前までは、日本国外に子どもを連れ去られた場合、連れ去られた国の法律で解決しなければなりませんでした。

    しかし、2014年にハーグ条約を批准したことによって、夫婦の一方による違法な連れ去りがあった場合でも、国境を越えて子どもを連れ戻すことができるようになりました。

     

    しかし、ハーグ条約にも問題となっている点が多く、子どもが連れ去られた国が非加盟国の場合には、連れ去られた国の裁判所に申し立てをしなければなりません。また、批准してから現在までで、日本から国外の子どもに対しての返還が実現した件数は3割程度となっています。

     

    ※ハーグ条約とは

    通称「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」

    一方の親が相手の合意なしに勝手に子どもを自国に連れ去ることを防ぐ目的でつくられた多国間条約です。

    親権や監護権を決めるものではなく、子どもを返還させることで、法的手続きをとって解決させることを目的としたものになります。

  5. 05

    子どもが連れ去られた場合の対処法のまとめ

    以上をふまえ、子どもが連れ去られた場合の対処のまとめると・・・

     

    「子の引渡し審判」+「監護者指定の審判」+「審判前の保全処分」

    上記3つの申立を行うことで、解決することができます。

     

    子の引渡し審判

    離婚後、親権者でない夫婦であった者の一方が、子どもを連れ去った場合にこの申立をします。

     

    監護者指定の審判

    夫婦間で、子どもの監護者を決める協議が調わなかった場合に、家庭裁判所を利用して決める制度です。

    原則、子の引渡し審判の申立を行う場合、同時に申立を行う必要があります。

    離婚前で、監護者が決まっていない場合、この申立も行うようにしましょう。

     

    審判前の保全処分

    調停や審判の確定までには時間がかかるため、裁判所の決定が下されるまでに、必用な保護手続きを行う処分のことです。

    子の引渡しに関する審判前の保全処分は、審判確定までに迅速な対応をしなければ、子の福祉が害されるとみなされ、認められる場合が多いです。

     

    以上のようになります。

     

    これまでで、子どもの連れ去りがあった場合にはどのようにしたらよいか、ということを説明させて頂きましたが、子どものことを考え、可能であるならば話し合いで解決することが望ましいと思います。

     

    また、子の連れ去りが起きないように、離婚前に公正証書で離婚協議書を作成し、子の面会などについて決めておくことを強くお勧めします。

    弊事務所ではそのような公正証書作成業務も行っておりますので、ご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

    相談フォーム

     

    自分たちのことだけを考えず、どのようにすることが子どもにとって最適かということを考えるようにしていきましょう。