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家族信託と成年後見制度について(成年後見制度より家族信託をお薦めする場合)
公開日:2018年11月26日 最終更新日:2018年11月26日
執筆者;司法書士 金光康太
はじめに
家族信託とは、お金や不動産など大切な財産を自分の信頼できる人に託し、自分で決めた目的に従って、自分や家族などのために管理・運用してもらう制度です。
家族信託とは
成年後見制度は、認知症等により判断能力に衰えが認められる場合に、その衰えを補い、その者を法律的に支援する制度です。
なお成年後見制度には、以下の2種類の制度に大きく分類されます
- 法定後見制度(既に判断能力が衰えてしまっている方向け)
- 任意後見制度(まだ判断能力が衰えてない方向け)
成年後見とは
任意後見とは
家族信託と成年後見、この2つの制度は、他の者のために財産管理をおこなうという点では、同じですが、各制度には、それぞれのメリットデメリットが存在します。
よって老後の問題・財産管理などでお困りの場合でも、どの制度を利用するかは事案によって、よく内容を検討し、判断しなければいけません。
今回は成年後見制度より家族信託をお薦めする3つケースをご紹介します。
成年後見制度より家族信託をお薦めする3つケース
①知らない他人に、自分の財産を管理監督されたくない
成年後見制度は家庭裁判所の監督の基に、本人(判断能力の衰えた人)のために後見人が財産管理や身上看護を行い、本人を支援する制度です。
成年後見の利用に際して、後見人を誰にするか候補としてあげることが出来ますが、誰が選ばれるかは最終的に家庭裁判所の判断となります。
候補者の方が後見人に選ばれない場合は、家庭裁判所が弁護士、司法書士等の専門職を後見人に選任することが多いです。
親族が成年後見人に選ばれにくい6つのケース
任意後見制度を利用する場合は、後見人を希望する人に選んでおくことができますが、その場合でも、後見監督人が必ずつくことになります。
これは必ず家庭裁判所が選任する者で、自分で「監督人は、この人にお願いしたい」などの希望を通すことはできません。
※後見監督人も弁護士、司法書士等の専門職が選ばれる場合が多いです
つまりいずれにしても後見制度の場合、自分の財産を見ず知らずの他人(弁護士や司法書士等)が管理する可能性が有りえるのです。
「自分の財産は、必ず自分の信頼できる人に託したい」
このような場合には、家族信託を選択する方が賢明かもしれません。
②成年後見人に定期的な報酬を支払いたくない
先に述べた通り成年後見制度を利用する場合に、専門職が関与する可能性があります。
それは任意後見制度において、事前に契約書で後見人を選んでおいても、後見監督人が選任されるので同様です。
専門職が後見人に就任する場合、当該専門職には後見人の報酬を支払わなければいけません。
後見人への報酬は本人の財産額や、行った後見事務によって金額が異なります。
詳しくは以下のリンクをご参照下さい。
成年後見人の報酬は月々幾ら?
後見事務は、原則本人が亡くなられるまで続きます。
1、2年で終わる場合もあれば、何十年と続く場合も有り得るわけです。
<例えば本人の財産額が何千万円とあった場合>
後見人の報酬を1ヶ月5万円と計算すれば、1年間で60万円
10年経つと600万円の後見事務報酬が発生することになります。
※上記金額は一例ですので、実際は上記金額より安い場合も高い場合もあります
知的障碍を持つ子を支援したい場合などは、子の人生を考えて、何十年という期間を踏まえた支援計画を立てないといけません。
そう考えると後見制度では、経済的に不安な場合があるので注意が必要です。
③柔軟な財産管理を希望する場合
例えば、以下のような場合には、後見制度では柔軟な財産管理を実行できない恐れがあります。
管理財産に収益不動産が多い場合
収益不動産が多い場合、リフォーム契約などの保守管理で、本人の財産を使用し高額の支出をする場合があります。
また事案によって、建物を取り壊し、駐車場にするなどの柔軟な対応が必要な場合があると予測されます。
こういった場合に、後見人の意向次第では、上記のような市場に合致した対応(契約)に慎重となり、本人にとって不利益となる場合が考えられます。
居住用不動産を売却する可能性がある場合
この場合、後見制度では家庭裁判所の承認が必要になります。
後見人が本人の不動産を処分するとき
また、後見人が代理人となり、不動産売却手続を進めることになります。
例えば本人(不動産の所有者)の判断能力が極めて衰え、意思確認が全く出来ない場合で考えてみましょう。
このとき本人の親族が、強硬に不動産売却を拒んだ場合、後見人としては不動産売却について、慎重にならざるを得ません。
結果として、不動産が上手く売却できずに本人のライフプランに支障が生じる可能性があります。
特定人を優遇して支援したい場合
例えば
- 障碍をもっている特定の子に手厚く扶養費を支払ってあげたい場合
- 孫にお小遣いを定期的に渡してあげたい
こういった思いがある場合でも、成年後見制度を利用した場合、家庭裁判所若しくは監督人から、それを実現する財産管理に「待った」が掛かる可能性があります。
後見制度はあくまでも本人の為にしかお金を行使することができないからです。
被後見人の財産の使い道
自分の方針を守って株式の議決権について行使して欲しい
例えば本人が、会社の元経営者で、その会社の株式を有している場合
このような際に、後見人が代わって議決権を行使します。
後見人が経営者としての感覚が乏しい場合や、高度な経営判断に迫られる場合などには、ケースによって議決権の行使が適切でなく、会社の経営が傾くことも想定されます。
- 他の役員をしている親族に株式を譲ろうにも、贈与税などの多額の流通税が発生する場合
- 自分がまだ元気なうちは、自身で議決権を行使したい
- そして後見人に議決権の行使を任せるのは不安
こういった場合には、後見制度ではなく、家族信託を選択するのも、一つの手段です。
まとめ
家族信託と成年後見制度
どちらが制度として「優れているとか勝っている」そういうことはございません。
どちらの制度にも一長一短があるので、どちらの制度を利用するかは個別具体的に話を伺い、検討する必要があります。
また事案によっては、家族信託と成年後見制度を組み合わせて利用したりすることもありますし、更に遺言書で欠点を補う場合もあります。
いずれにしても、自身や家族のために財産管理・老後問題について考える場合は
- 自分は今後どうしたいのか(想いの優先順位)
- 今の財産の状況(財産額だけでなく収支なども)
を改めて振り返り、制度をご検討下さい。
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