被後見人の財産の使い道

 

執筆者;﨑井

公開日;2018/5/22

更新日;2019/12/10

こんにちは LSO総合司法書士事務所の﨑井です。

以前紹介したコラム「財産管理はどんなことをするの?①就任してすぐのお仕事」にて、後見人の仕事として、被後見人(本人)の財産の管理があると紹介させて頂きました。

後見人になったものの「本人の持つ財産を、どうやって使ったらいいんだろう?」と悩むことがあるかと思います。

そこで今回は、被後見人の持つ財産の正しい使い道について、具体例をあげながら紹介していきます。

被後見人の財産を使うにあたって

結論から言うと、財産の使い道は、本人のために使うのであれば特に制限はありません。

“常識の範囲内”での使用が適当であると言われています。

ただ、常識の範囲内って難しいですよね。 ではどのようなものが“常識の範囲内”で「被後見人のために」使用されていると考えられているのでしょうか。

支出できるとされる主な例

扶養家族への生活費

本人の財産と家族の財産は分けて考えるのが原則です。 ただ、後見人になる前からの本人の扶養状況などを考慮して、本人の夫や妻、 子どもなどへの生活費を支出することは可能です。

しかし扶養家族の財産状況や本人の収支を考慮し、それに相当な範囲でないといけません。

成年後見は本人の財産を守る制度なので、家族の生活費を支出することで本人の生活に支障がでたら大変ですよね。

被後見人が持つ債務の弁済

本人が借金などの債務を負っている場合です。

これは本人の債務なので当然に本人の財産から借金を返済することができます。

なお、後見人はその借金が本当に本人の借金なのか、契約書等から確認が必要です。

後見業務にかかる費用

後見人が後見業務を行うためにかかる費用は、被後見人の財産から支出することができます。

例えば

  • 被後見人の入院費、生活費、税金
  • 後見申立てに必要な書類のコピー代、切手代、各種手数料
  • 被後見人名義での祝儀や香典(常識の範囲内での金額で)
  • ヘルパーの人件費
  • 司法書士や弁護士へ事務処理を依頼した場合の報酬

などがあります。

本人と自分のお金が混ざらないように、その都度領収書を発行して整理したり、本人と後見人の財布をわけたりなどの工夫が必要ですね。

問題となる可能性のある支出の主な例

ここまで、被後見人(本人)の財産から支出できる例を紹介してきました。

それでは、どのような財産の使い方をすると 問題のある支出と考えられてしまうのでしょうか。

次にご紹介するような支出は、後見人の解任措置や、最悪な場合刑事告発を受ける可能性があります。ご注意下さい。

お見舞いにかかる交通費

後見人にかかる交通費は、医療費の支払いや生活に必要なものを届けるなど、後見人としての職務上必要なことを行う時にしか、本人の財産から支出することはできません。

交通手段も公共機関の利用を基本としているので、後見人の自宅と本人が住んでる場所が離れている場合は、ガソリン代や高速道路の費用、宿泊費用など大きい金額がかかってしまいます。 交通費として計上したい場合は、訪問回数が最小限になるようにする必要があります。

※交通費を本人のお金から支出する時の話なので、本人のお見舞いや訪問に行く事自体に問題はありません。

親族への報酬

ヘルパーに代わって親族が介護を負担した場合に、その報酬を被後見人の財産から支払うことは認められていません。

その他の不適正な支出

  • 本人と同居しているからという理由で、後見人名義のローンの返済をすること
  • 本人に退院の見込みがないのに、本人の引き取りを目的として改築費用を支出すること
  • 施設訪問を目的とした自動車の購入

なども問題となる財産の支出と考えられています。

ここまであげてきたように、被後見人の財産の処分は多くの制限がありますが、上記のような問題のある支出が多くあることが現状です。

なお、判断能力が低下する前に家族信託契約を結んでおけば、本人が望んだ方法で家族に財産の処分を任せることができます。

信頼できる家族に財産を残しておきたいと考えている方は、当事務所の家族信託のページもご覧下さい。

家族信託とは

財産が本人のために使われているか、本人にとって必要な支出なのかを考えることが大切です。

最後に

今回のコラムでは本人の財産の正しい使い道と、不適正な使い道を紹介させて頂きました。

しかし、今回あげたのはあくまでも代表例です。

この他にも財産の使い方について自分では判断が難しいということがあるかと思います。 その時は、その都度家庭裁判所に相談をすることをお勧めいたします。

また、例にあったことでも少し状況が違って悩むことがありましたら、同じく家庭裁判所に相談してみてください。

最後までご精読ありがとうございました。

 

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ペンチョウ先生
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