目次
成年後見人は身元引受人や身元保証人になれるか
執筆者;﨑井
公開日;2018/6/7
更新日;2018/6/12
こんにちは
LSO総合司法事務所の﨑井です
被後見人になった方が施設に入所される際、多くの場合は
「身元引受人」や「身元保証人」を施設側から求められるかと思います。
この身元引受人や身元保証人に成年後見人はなることができるのでしょうか。
結論から先に申し上げますと
成年後見人は身元引受人や身元保証人になることはできません。
今回は身元引受人や身元保証人と成年後見人の違いや、
成年後見人が身元保証人等になれない理由について、詳しく解説していきたいと思います。
身元引受人とは?
身元保証人というと何となくイメージが付くと思います。
では身元引受人とはどういった存在でしょうか。
まず、施設における身元引受人の主な役割について説明させて頂きます。
- 退所時の身柄の引取り
- 医療行為や、入院計画書が必要になった際の同意
- 有事の際の連絡先
- 入院費・利用料金の支払い
- 本人の貴重品の預かり
などが身元引受人の主な業務、役割として挙げられます。
つまり施設や病院は、上記のように経済的保障や、退所時の被後見人の引き取りを確実なものにするために、本人を受け入れる施設は、身元引受人(身元保証人)を求めているのです。
身元引受人と身元保証人の違い
ここで簡単に身元引受人と身元保証人の違いを簡単に説明させて頂きます。
身元保証人
→本人の債務も負うため、被後見人の財産がなくなった場合
自分の財産から入院費や生活費を負担しなければなりません。
身元引受人
→本人が有事の際に対応、相談を行う。
つまり緊急連絡先として登録され、本人に不測の事態などが生じた際には、本人に代わり施設との連絡窓口となります。
このように身元保証人の方が、金銭面でいえば、より責任が重いものとなっております。
※但し身元引受人や身元保証人の定義については、明確に法律で定められていないため
身元引受人と書いていても本人にかかる費用を負担しなければならないことがあります。
契約時には、施設側によく確認をお願いします
それでは次に、なぜこれらの役割を後見人が担うことができないのか、を説明させて頂きます。
成年後見人が身元引受人になれない理由
成年後見人の役割は被後見人に代わって財産管理、身上監護(法律行為など)を行うことです。
(関連コラム:財産管理はどんなことをするの?①就任してすぐのお仕事)
例えば、後見人が身元保証人になってしまうと
後見人は被後見人の代理人であるので、自分自身の身元を保証するという矛盾が生まれてしまいます。
また、法定代理人である後見人が被後見人の債務を保証するようなことになれば、利益相反を生んでしまいます。
利益相反とは「本人の財産を守るべき存在の後見人が、本人のお金を立て替えた保証人として、本人へお金の請求をする」といったように、後見人としての立場と身元引受人(身元保証人)としての立場、双方の利益が反した状態をいいます。
利益相反が生ずるような行為は、後見人の職責上おこなうべきではありません。
また、そもそも身元引取りや、債務の弁済等は成年後見人の本来の業務から逸脱しているため成年後見人は身元引受人(身元保証人)には、なることはできません。
[例外]
司法書士や弁護士の方など第三者が後見人になっている場合は、身元引受人(身元保証人)になることはできませんが、親族が後見人となっている場合は“親族”の立場として後見人と身元引受人の責務を同一の人が行う場合があります。
最後に
成年後見人は、被後見人が施設や病院に入所する際に、身元保証人や身元引受人を求められた場合には
- 後見人がついていることで、連絡先は確保されていること
- 不測の事態には、後見人が窓口となること
以上をお伝えすることで
身元保証人(身元引受人)を、そもそも不要にできる可能性があります。
最近では、成年後見人を立てていれば身元引受人や身元保証人は不要というケースも増えています。
当事務所でも、施設との契約書に保証人を求められる場合でも、意外とすんなり「後見人がついているのなら・・・」と、保証人が不要になるケースがこれまでにございました。
まずは、入居、入院の際には後見人がついているということを施設側に説明してみてください。
その上で、「どうしても施設が見つからない」という場合には、民間の身元保証サービスを検討なさって下さい。
最後までご精読ありがとうございました。