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後見人に選ばれやすくするためにしておきたい3つの対策
執筆者;金光
公開日;2017/2/21
更新日;2017/2/21
こんにちは
LSO総合司法書士事務所の金光康太です。
成年後見の相談を受けていると多いのが
「自分が後見人に選ばれるか心配だ・・・」というご意見です。
電話相談だけでも、このお悩みは本当に多く伺います。
申立書に後見人候補者を記載していても、その方が必ず後見人に選ばれるわけではありません
まずは
“成年後見人は誰が就任するの?(2)~専門職が就任する場合”
“親族が成年後見人に選ばれにくい6つのケース”
をお読み下さい
“自分が後見人に選ばれたい”という事情は様々ですが、多く伺うのが以下の理由です。
・「専門職後見人」に支払う報酬を負担する経済的余裕がない
・自分の親族は、自分たちで面倒をみてあげたい
<関連コラム>
成年後見人は誰が就任するの?(1)~就任できない人々
成年後見人の報酬は月々幾ら?
上記のような理由があっても、裁判所が候補者が後見人に相応しくないと判断した場合には、一般的に弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選ばれることになります。
そこで今回は、基本的なことですが後見人候補者が後見人に選ばれやすくするために、私なりに考えた対策をご紹介致します。
1. 親族の同意書はできるだけ取得し提出して下さい
2. 収支報告書・財産目録はできるだけ調査して提出するようにしましょう
3. 本人と候補者との自宅距離について(本人は遠隔地に住んでないですか?)
では、解説にまいります。
1.親族の同意書はできるだけ取得し提出して下さい
成年後見申立では、添付書類で「親族の同意書」を提出します。
この書面により家庭裁判所は、本人の親族(推定相続人)が、成年後見申立てに協力的なのかを確認します。逆にいうと、本書面の提出がないということは、親族間でトラブル等があるのかも?と家庭裁判所に判断されることになります。
トラブルが見込まれるような場合は、親族の候補者ではなく、専門職が後見人に選ばれる可能性が生じてきます。
親族でも、わだかまりがあってお願いしづらいことがあると思います。
ですが「自分自身が候補者になりたい」と思われるのでしたら、出来るだけ親族に協力をお願いし、本書面を頂くようにしましょう。
但し、これは絶対に提出しないといけない書類ではありません。
例えば協力をお願いしたくない事情に、経済的に本人を虐待する問題のある親族がいる場合もあるでしょう。
そんな場合は、その事情を申立書に記載するか、上申書の形で家庭裁判所に説明しましょう。
事情がある場合には、きちんと説明すれば家庭裁判所も考慮してくれます。
<関連記事>
申立で親族の同意(同意書)がないとどうなるか?
成年後見申立ての必要書類のご説明(大阪家庭裁判所編)
2. 収支報告書・財産目録はできるだけ調査して提出するようにしましょう
後見人は就任すると本人のための財産管理を行わなければいけません。家族であっても本人の支出と親族の支出とが区別・説明できるように正確に財産を管理する必要があります。
申立時に提出する収支報告書・財産目録からは本人の生活状況や今後の金銭的な見通しを判断するわけですが、ここで、“ずさん”な報告書を提出すれば、家庭裁判所からどう思われるでしょうか?
当然、家庭裁判所からは、後見人には不適当な候補者と判断されるでしょう。
分かる範囲で構いませんが、家庭裁判所が見やすく判断しやすいように、生活費の領収書等はなるべく綺麗にまとめ、正確に収支報告書・財産目録に記載していきましょう。
しかし別世帯で暮らす親族の方などは、本人の生活費や財産状況が分からない場合もあるでしょう。
ですがその場合でも、家に残っている通帳を記帳するなどすれば、受取っている年金額や保険料が分かる場合もあります。親族の立場で出来る限りの調査をして報告書を提出して下さい。
その上でどうしても分からない部分が多い場合には、上申書の形で家庭裁判所に説明すると良いでしょう。
収支報告書・財産目録を含む申立書を丁寧に作成することは、後見人としての事務処理能力の高さを家庭裁判所に示すことになります。
申立書類は丁寧に分かりやすく作成しましょう!
3. 本人と候補者との自宅距離について(本人は遠隔地に住んでいませんか?)
本人と候補者の時間的距離はどれくらい離れていますか?
家庭裁判所は本人と後見人との居住地の距離について、「何時間以内で行き来できる範囲でないといけない」という定めはありません。
ですが、候補者と本人とが別の他府県に住んでいる場合など、一定の距離がある場合には候補者に選ばれない可能性が生じてきます。
距離が離れていても、本人が24時間介護が行き届いている老人ホーム等に入所している場合などには、候補者がそのまま後見人に選ばれる場合もあります。
もし後見申立以前に、本人が自宅にお住まいの場合で、老人ホームやグループホームに移すほうが本人の利益になると考え、そして近い将来、現実に移す予定がある場合には、先に移したうえで申立をする方が良いでしょう。
申立を急ぐ事情等がある場合には、「○○老人ホームという候補者の住所地の近くの施設に移す予定」である旨を、今後の療養看護の方針として、申立書類に記載しておきましょう。
また本人との距離がある場合でも、候補者と協力関係にある親族がいる場合には、そのことも申立書に記載し、面談においても説明すると良いです。
“豆知識“
ちなみに成年後見の申立場所は、本人の居住地を管轄する家庭裁判所です。
よって本人を候補者の住所の近場に移した上で、申立をするならば申立の面接も、近くの家庭裁判所での実施となり、移動距離が減り楽になります。
<関連記事>
成年後見の申立場所は?書式はどこで手に入る?
最後に
今回ご紹介した内容は、あくまでも候補者が後見人選ばれやすくするための基本的な対策です。
よって、本コラム記載のことを実行したからといって必ず候補者が選ばれるわけではないことは、ご理解下さい。
※当センターでは候補者が後見人に相応しいと考えた場合には
ただ申立書を作成するのではなく、出来るだけ候補者が後見人に選ばれやすいよう意識して、申立書を作成代行させて頂いております。
なお、本人が判断能力が衰えていない場合には、任意後見制度の利用をお勧めします。
法定後見制度では後見人候補者は必ず後見人に選ばれるわけではありませんが、任意後見契約を締結しておけば、あらかじめ本人にとって最も信頼する方を後見人と決めておくことが可能です。
但し、任意後見の場合は後見監督人が必ず就任することになります。
さらに後見人監督人が就任すると、その方に報酬が発生します。
後見人に支払う報酬よりも、後見監督人に支払う報酬の方が、一般的には低くすみますので、その意味でも本人の判断能力が衰えていない場合には、任意後見制度のご利用もご検討下さい。
<関連記事・コラム>
任意後見制度とは…
任意後見と法定後見との違いについて~本人の判断能力編~
後見監督人って何?
本コラムをお読み頂き、少しでも皆さんの成年後見制度の理解・利用に貢献できれば嬉しいです。
最後までご精読ありがとうございました。
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