目次
成年後見の相談窓口はどこ?
執筆者;金光
公開日;2016/11/16
更新日;2018/7/30
はじめに
こんにちは
LSO総合司法書士事務所の金光康太です。
皆さんは成年後見制度の相談窓口で、どこを思い浮かべますか?
インターネットで「成年後見」「相談」などのキーワードで検索しても、たくさんの組織や事務所がヒットするので、どこに相談すればいいのか迷ってしまうのではないでしょうか。
また成年後見制度については、
・認知症になった本人の預金を解約したい
・不動産を売却したいけど、認知症の所有者の意思確認ができないから売却できない
などといった理由で成年後見制度を紹介され、初めて知る方がほとんどでしょう。
<関連リンク>
法定後見制度とは…
任意後見制度とは…
どんな動機で成年後見の申立てをするのか(ランキング形式でご紹介)
まだまだ社会的認知が低いので、成年後見制度について、いったい何が分からないのかも分からない、そんな方も多いと思います。
今回は、そんな方々の「道しるべ」になればと思い、成年後見制度・手続きの、主な相談窓口を紹介させて頂きます。
家庭裁判所
成年後見開始の申立ては、本人(認知症等で判断能力の衰えた方)の住所地を管轄する家庭裁判所に書類を提出し行います。
家庭裁判所は成年後見開始の申立から、後見制度開始後の1年に1度の定期報告、後見事務終了時(本人が亡くなった場合等)まで、つまり成年後見開始から終わりまで、全てに携わる機関となります。
特に、ご自身で成年後見制度の利用開始申立を検討されていらっしゃる方には、家庭裁判所に対して成年後見制度の相談をされることをお勧めします。
但し、家庭裁判所は成年後見申立に関する制度、手続きの説明はして頂けますが、成年後見手続きに関連しての法律相談までは実施していません。
成年後見人が就任したあとの遺産分割協議の法律問題や、そもそも成年後見手続きを利用すべきか否か?といったご相談までは対応しておりませんので、ご注意下さい。
なお、HPで家庭裁判所の相談窓口を検討されている場合は
「地名(大阪や東京など)」「成年後見」「家庭裁判所」と検索して下さい。
<家庭裁判所にて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの受付・相談・案内
・成年後見手続き開始後の各種受付・相談・案内
<関連リンク>
成年後見の申立場所は?書式はどこで手に入る?
成年後見申立ての必要書類のご説明(大阪家庭裁判所編)
司法書士関係
司法書士は平成28年(2016年)現在において、親族ではない第三者の専門職としては最も多くの後見人に選ばれています。
※【追記】平成30年(2018年)の発表においても同様です
参考までに、平成27年度の主な専門職後見人の選任件数は以下の通りです。
司法書士 9,442件
弁護士 8,000件
社会福祉士 3,725件
行政書士 822件
(平成27年度:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」より)
また司法書士は成年後見人の受任はもちろん、職務においても法定後見・任意後見の申立からサポートをすることが可能です。
急ぎであったり忙しかったりするなどで、成年後見制度利用をご自身で進めることに不安のある方は、司法書士にご相談下さい。
では具体的な司法書士関連の相談窓口を以下にご案内致します。
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートは、日本司法書士会連合会が中心となり司法書士を正会員として設立された法人です。
成年後見制度や申立手続き等の相談等の支援の他に、会員である司法書士の監視業務も行っています。
成年後見制度の利用を検討しているが、近くに相談できる窓口が思い浮かばない場合は、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートのHPから各支部(各県)の相談窓口にお問合せ下さい。
<公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートにて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの相談・案内
・申立に当たっての司法書士の紹介など
司法書士事務所
司法書士は、成年後見手続きを業務として取り扱っています。
また法律相談にも対応できることから、具体的な成年後見の申立を検討されている方は、司法書士事務所にご相談頂ければと思います。
但し、司法書士事務所に相談される場合、以下の2点を、できれば確認してください。
- 成年後見業務を取り扱っているのか?
司法書士事務所でも成年後見業務を取り扱っていない事務所も存在します。
- 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの会員なのか?
リーガルサポートの会員は後見人に就任するに辺り、リーガルサポートに対し年2回の報告を行い、監督を受けており、家庭裁判所とのダブルチェック体制に置かれています。リーガルサポートの会員でなければ成年後見業務を行えないかといえば、全く違いますが、迷われた際には、一つの基準にされると良いと思います。
<司法書士事務所にて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの相談・案内
・申立書の作成
・後見人の就任
・任意後見制度の利用支援
・法律相談
<関連リンク>
分かりやすい成年後見申立て費用の説明
弁護士関係
言わずとしれた法律事務手続きのプロが弁護士です。
弁護士も当然、成年後見人の受任はもちろん、職務においても法定後見・任意後見の申立からサポートをすることが可能です。
急ぎであったり忙しかったりするなどで、成年後見制度利用をご自身で進めることに不安のある方は、弁護士にご相談下さい。
特に、成年後見申立に当たって、紛争性のあるトラブルが予見・発生している場合には、弁護士会や弁護士事務所に相談されることをお勧めします。
では具体的な弁護士関連の相談窓口を以下にご案内致します。
弁護士会の相談窓口
各県弁護士会の多くでは高齢者や障害者のための相談窓口や支援センターが設けられています。
成年後見制度の利用を検討しているが、近くに相談できる窓口が思い浮かばない場合は、弁護士会の高齢者・障害者支援センターの相談窓口にお問合せ下さい。
<弁護士会の相談窓口にて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの相談・案内
・申立に当たっての弁護士の紹介など
弁護士事務所
弁護士も当然、成年後見手続きを業務として取り扱っています。
法律相談にも対応できることから、具体的な成年後見の申立を検討されている方は、弁護士事務所にご相談頂ければと思います。
但し、弁護士業務は非常に多岐にわたります。
相談される前に、成年後見業務に積極的に取り組んでいる事務所か否か、確認しておいた方が良いでしょう。
<弁護士事務所にて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの相談・案内
・申立書の作成
・後見人の就任
・任意後見制度の利用支援
・法律相談
社会福祉協議会
社会福祉法にて定められ、行政区分ごとに組織された民間団体です。
市民が安心して暮らせる社会の実現のため、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動への協力など、全国的な取り組みから地域の特性に応じた活動まで、さまざまな場面で地域の福祉増進に取り組んでいます。
成年後見制度の相談や案内もしておりますし、成年後見制度を利用すべき人がいるにも関わらず、申立てをする親族がいない場合や、親族がいたとしても後見申立てをして頂けない、する見込みがない場合などに社会福祉協議会を通じて後見申立て(市町村申立て)が行われることがあります。
<例えば>
ご近所で高齢や知的障碍のために、成年後見制度の利用を開始すべき人がいるにも関わらず、申立をおこなう親族の協力が見込めない場合には、社会福祉協議会に問い合わせて頂ければと思います。
<社会福祉協議会の相談窓口にて対応できること>
・成年後見制度や申立手続きの相談・案内
・成年後見制度の市町村申し立て
・後見人の就任
・福祉サービスの利用・相談のお手伝い
<関連コラム>
成年後見の申立ては誰ができるのか?⇒市町村申立てにも言及しています
今回のまとめ
以下に、今回のコラム内容を簡単に表形式でまとめてみました。
法律相談 | 申立手続の相談 | 申立書の作成 | 成年後見開始後の相談 | 備考 | |
家庭裁判所 | × | ○ | × | ○ | 自分で、書類収集、作成を全て実行できる方は、裁判所への、ご相談で事足りると思います |
司法書士 | ○ | ○ | ○ | ○ | リーガルサポート入会の司法書士事務所へのご相談をお勧めします |
弁護士 | ○ | ○ | ○ | ○ | 特に紛争性の高い、ご相談は弁護士事務所をお勧めします |
社会福祉協議会 | × | ○ | ○※ | ○ |
※市町村申立の場合は代理可能 |
なお、一般的な成年後見の申立手続において
弁護士事務所と司法書士事務所どちらに相談するか迷われている場合は、金銭的な面で選ばれるのも良いと思います。
多くの場合、弁護士報酬より司法書士報酬の方が低額な場合が多いので、どちらも選び難い・・という場合には判断基準としてご検討ください。
※私の所感ですので正確なデータではないですが、弁護士事務所では報酬20万円前後、司法書士は10万円前後の事務所が多い印象です
但し、繰り返しになりますが紛争性(親族間での遺産分割調停など)がある場合には、最初から弁護士事務所に依頼した方がスムーズかと思います。
<追記です>
本コラムで紹介させて頂いた相談窓口以外にも、行政書士会、税理士会、社会保険労務士会にも、成年後見の窓口が存在します。
上記事務所にご相談の場合には、各会が設置しております成年後見専門の社団法人に所属している、後見分野の知識が深い専門職へのご相談をお勧めします。
また弁護士、司法書士以外の士業、一般法人においても、相談事業は行っていますが、法定後見手続き利用開始の申立書作成は原則として弁護士、司法書士の業務となります。
申立書の作成代行を検討される方は、基本的に弁護士、司法書士事務所にご相談頂いた方がスムーズに進みやすいでしょう。
成年後見制度は認知症や、知的障碍などで判断能力が低下した方を保護するとても大切な制度です。
本コラムをお読み頂き、少しでも皆さんの成年後見制度の理解・利用に貢献できれば嬉しいです。
最後までご精読ありがとうございました。
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当センターでは、申立てのみのご相談、ご依頼も多数お受けしております。
また、大阪府内の家庭裁判所への申立事件だけではなく、他府県の成年後見申立も受任しております。もちろん依頼者の本人確認、意思確認のために弊事務所に来所して頂く必要がありますが、事情によっては出張相談も、対応可能です。
以下に、当センターの人気記事ランキングも記載しておりますので、ご参照下さい。
以上、宜しくお願い致します。