内部統制・コーポレートガバナンスについて
「内部統制・コーポレートガバナンス」をざっくり言うと
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どちらも健全な経営をおこなうためのルール・仕組みのこと
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内部統制には、『会社法が定める内部統制』と『金融商品取引法(J-SOX)が定める内部統制』の2種類がある
- コーポレートガバナンスは明確な定義はないが、日本では『株式会社東京証券取引所が公表しているコーポレートガバナンス・コード』が有名
実務家からのコメント
内部統制とコーポレートガバナンスの違いについて
私見となりますが、内部統制とコーポレートガバナンス、どちらも会社を健全に経営していくためのルール・仕組みであることに違いはありません。
同じような内容であるのに、言葉に違いがあるのは
内部統制・コーポレートガバナンスを述べるそれぞれの機関が「誰に対してその意義を主張しているか」
この違いにあると考えます。
内部統制について
まず内部統制は『会社法が定める内部統制』と『金融商品取引法(J-SOX)が定める内部統制』に言及されています。
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会社法は、会社の設立、組織、運営及び管理について定めた日本の法律
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金融商品取引法は、証券市場における有価証券の発行、売買その他の取引について定めた法律
※金融商品取引法の目的は、第1条において「国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資すること」としているものの、内部統制に言及された部分(末尾参考条文参照)は主として会社に向けられたものと判断できます
コーポレートガバナンスについて
株式会社東京証券取引所が公表しているコーポレートガバナンス・コード(以下、「本コード」という)により解説します。
本コードではコーポレートガバナンスについて、以下のように解説されています。
コーポレートガバナンス・コードについて
本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。
本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。
まとめ
以上から、どちらも健全な経営をおこなうためのルール・仕組みには違いはないものの、両者の違いは、以下のように理解できます。
内部統制は法律により主として会社や利害関係人に向けて意義を主張された、ルール・仕組み
コーポレートガバナンスは、会社や利害関係人だけではなく経済全体、社会全体に対してその意義を主張するもの
本コードの経済全体という表現からイメージとして頂ける通り、コーポレートガバナンスの方が内部統制に比べ、より大きく包括的な意味合いで健全な経営の意義を主張する場面で使用することに適しているでしょう。
<参考条文>
〇会社法(抄)
(取締役会の権限等)
第三百六十二条 (略)
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一~五 (略)
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 (略)
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない
〇金融商品取引法(抄)
(財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価)
第二十四条の四の四
第二十四条第一項の規定による有価証券報告書を提出しなければならない会社(第二十三条の三第四項の規定により当該有価証券報告書を提出した会社を含む。次項において同じ。)のうち、第二十四条第一項第一号に掲げる有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書(同条第八項の規定により同項に規定する有価証券報告書等に代えて外国会社報告書を提出する場合にあつては、当該外国会社報告書)と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。