成年被後見人の選挙権について

 

執筆者;﨑井
公開日;2018/9/5
更新日;2018/9/5

こんにちは
LSO総合司法書士事務所の﨑井です

昨年の6月選挙権が20歳以上から18歳以上へと引き下げられたことで
選挙権についての議論が行われていましたね。
そこで今回取り上げたい話は、「成年被後見人の選挙権」についてです。
成年後見制度を利用すると、成年被後見人は選挙権を失ってしまうのでしょうか。

結論を先に申し上げますと、成年被後見人にも選挙権はあります。

今回は、成年被後見人の選挙に関して、成年後見人の関わり方や規則についてなどを、説明させて頂きます。

成年被後見人の選挙権

実は平成25年(2013年)に法律が改正されるまで、成年被後見人は選挙権を有していませんでした。

成年後見制度は平成12年(2000年)から開始されていますが、当初は欠格条項(障害などの理由で、被後見人ができないこと。与えられていない資格)が多く、選挙権もその中に含まれていました。

しかし、当初からこの欠格条項については違憲であるとの声があり、国家に対し訴えがありました。
その訴えが認められ、現在、成年被後見人にも選挙権が認められています。

被後見人の選挙における取扱い

成年被後見人に選挙権は認められていますが、後見人等が、被後見人本人の意思として、自分の推薦する人に投票してしまうのではないかという不安の声もあります。

では、実際はどのような対策がとられているのでしょうか。

総務省(成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律要綱)によると下記のように記載されています。

 

  • 成年後見人やその家族など、本人以外の方が本人に代わって投票することはできない。
  • 代理投票の補助者は、投票事務に従事する者に限定される。
  • 不在者投票管理者は、市町村の選挙管理委員会が選定した者を投票に立ち会わせることその他の方法により、不在者投票の公正な実施の確保に努めなければならないものとすること。

※代理投票は、病気等で字が書けない人のために、代理人に投票用紙の記入を行ってもらうことです。 投票所にて係員に代理投票の旨を伝えると、投票事務で2人選ばれ、一人が投票用紙の記入を行い、もう一人が立ち合い人となります。

※病院、老人ホーム等における不在者投票について、外部立会人を立ち会わせること等の不在者投票の公正な実施確保の努力義務規定が設けられました。

投票事務者により管理され、成年後見人や家族の方の意思が影響されにくいことがわかります。この取扱いは、成年被後見人の方に限らず、認知症や知的障がいのある方などについても同様となります。

選挙での後見人の関わり方や注意点

成年被後見人に選挙権が認められたことにより、
成年後見業務を行う司法書士会では指針が発表されました。 
以下に大阪司法書士会と京都司法書士会のものについて一部引用し、ご紹介します。

指針 大阪司法書士会

  • 成年後見人は、成年被後見人に対し、実施される選挙に関して、選挙権の行使が可能であることを告知する。

  • 成年後見人は、成年被後見人が選挙権行使の意思を表明した場合、利用できる選挙制度を検討し、必要な手配を行うなど成年被後見人が投票を円滑に行えるよう努める。

  • 成年後見人は、自らが支持する政党名や候補者名を告げることや、自らの支持、不支持に関係なく全ての政党や候補者に関して感想や評価を告げるなど、成年被後見人の投票行動に影響を与える行動をしない。

投票支援について 京都司法書士会

  • 「選挙に行こう」という推奨はしない。

  • 選挙が行われる都度、選挙があることを知らせる必要はない。

  • 成年後見人の職責として、被後見人の選挙権の行使については、あくまで中立的な立を保持すべきである。

  • 被後見人からの支援の申し出がない限り、成年後見人の側から特段の働きかけはすべきでない。

  • 被後見人から支援の申し出があった場合には、投票意思の有無を確認した上で、適切な投票方法の選択等、選挙権行使のための道筋をつけるべく手続面の補助を行う。ただし、同行すること等を要するものではない。

このように成年後見人となった司法書士は、成年被後見人の選挙に関して、中立的な立場をとることを義務付けられています。

被後見人からの投票の意思がない限りなにもしないということになります。

まとめ

成年後見センター・リーガルサポートの会員に対するアンケートによると、選挙権回復後最初の国政選挙である参院選で、投票の有無が確認できた被後見人の投票率は7%ほどであるそうです。(2013/9/28付日本経済新聞より)

選挙権は、私たち市民が、よりよい社会づくりに参加できるように定められた、大切な権利です。

  • 成年後見人の方は、選挙が行われるということだけを成年被後見人の方に告知し、自らの支持、不支持を伝えるなど控えること

  • 考えに影響を及ぼすような行為は行わないようにし、本人の意思を尊重するよう心掛けること

成年後見制度を利用された場合、以上のことを
成年後見人、また本人の周りの方々はご配慮頂ければ幸いです。

<追記です>
平成29年(2017年)6月、公職選挙法が改正され、選挙権が20歳以上から18歳以上へと引き下げられました。
成年被後見人の方も同様ですので、ご注意下さい。

 

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ペンチョウ先生
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