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成年後見申立ての必要書類のご説明(大阪家庭裁判所編)
執筆者;金光
公開日;2016/10/20
更新日;2020/7/3
はじめに
こんにちは。 LSO総合司法書士事務所の金光康太です。
当センターでは
「成年後見の申立をしたいけど、必要書類がよく分からない」
「家庭裁判所のサイトをみても、書類がたくさんあって分からなくなる」
というご相談をよく伺います。
家庭裁判所のHPは、申立書類がダウンロードできるようになっていますが、
書類の種類が多かったり、家庭裁判所によって掲載の仕方に違いがあったり、
難しく感じますよね。
※以前は、各都道府県の家庭裁判所によって申立書類の様式が違っておりましたが、
令和2年4月1日から全国統一書式になりました。
統一されたのは申立書類のみで、後見人就任後の報告書などの書類は、まだ自治体ごとに異なります。
ですが、申立書類が統一されたことで、地域によって書類がわかりにくかったり、
ネット上の色んな書式を見て混乱したりすることは減るのではないでしょうか。
当HPにも、申立に必要な書類の一覧を、簡単にご案内しておりますが、
今回はもう少し詳しく、書類の内容について紹介・説明をさせて頂きます。
大阪府以外の都道府県における申立においても、参考になると思うので、
これから成年後見の申立について検討されていらっしゃる方は是非お読み下さい。
なお、分かりやすいように、申立に必要な家庭裁判所に提出する書類を
以下の3つのグループに分けて説明してまいります。
1.家庭裁判所で貰える申立書類一式(申立をする方が作成する書類)
2.申立人・本人・候補者についての資料
3.裁判所に収める印紙・郵券
1.家庭裁判所で貰える申立書類一式(申立てをする方が作成する書類)
※以下に記載する書類名をクリック頂くと、申立書式のPDFが開くようになっております。
署名押印の箇所は、申立本人が署名し押印してください。
なお押印は実印でなく認印でも大丈夫です。
この申立書は、1枚目は、申立人の住所・氏名、本人の住所・居住場所・氏名等、
基本的な情報を書くようになっています。
また、申立書の上部に、□後見 □保佐 □補助 というチェックボックスがあるため、
医師の診断書を見て、本人が該当するものにチェックを入れます。
2枚目は、申立の趣旨や理由を記入する書類です。
チェックボックスになっているので、よく読み、該当するものにチェックをいれていきます。
また、下部に具体的な事情をかける欄がありますので、チェック欄だけだと不足がある場合には
そこに詳しく記入してください。
3枚目は、誰が成年後見人になりたいのか、候補者を記入します。
また申立手数料の本人負担をもとめる上申欄もあります。
※成年後見の申立費用は原則、申立人の負担です。
ですが、ご事情により負担が難しい方は、手続き費用の上申にチェックを入れていただくと、費用の全部又は一部について、本人負担にできる場合がございます。
<関連リンク>
成年後見の申立場所は?書式はどこで手に入る?
成年後見の申立ては誰ができるのか?
② 代理行為目録
保佐開始申立と補助開始申立の際に提出しまs。
この書類は、成年後見申立の場合、提出する必要はございません。
<関連リンク>
成年後見「後見」「保佐」「補助」って?
後見人には、包括的な代理権が認められていますが、保佐・補助ですと、
本人の同意を踏まえたうえで必要事項に関しての代理になります。
そのため、保佐人・補助人としてどのような事を本人の代わりに(代理)していくのかを決め、
代理行為目録に記入(チェック)していきます。
同意行為目録は、補助開始申し立ての際に提出します。
この書類は、後見・保佐申立の場合、提出する必要はございません。
補助の場合、本人の判断能力は比較的高い状態です。
本人の意思尊重のために、補助の申立をしただけでは「同意権」「取消権」はありません。
そのため、補助人の同意(許可)を必要とする行為を、同意行為目録に記入(チェック)していきます。
※保佐人にはこの同意行為目録に記入されている同意権が認められているため、
同意行為目録として提出する必要はありません。
本人の認知力の状況や、普段の生活の様子や環境などを記入する書類です。
8枚もあるため、一見大変な書類に見えますが、基本的にはチェックボックスになっており、
内容的にも比較的記入しやすい内容です。
疎遠の親族の方など、詳しいことは分からないという方もいらっしゃると思いますが、
わかる範囲で記入いただければ大丈夫です。
④陳述書(親族など本人以外の方が、後見開始申し立てをされる場合のみ)
保佐や補助の場合は不要です。
陳述書は、本人が後見人をつけるのに賛成か、候補者が後見人になることに問題ないかを陳述する書類です。
ですが、後見相当のため、本人の意思確認をできない方の方が多いのではないでしょうか。
陳述書の上部に※で「説明をしても本人が手続きを理解できない場合や、本人に手続きを知らせていない場合には、陳述書の提出は不要です。」と書かれています。
本人が全く意思表示できない状態だったり、聞いてもかみ合ってなかったり、理解が難しいようでしたら、
この書類の添付はしなくても問題ありません。
本人の推定相続人その他の親族について、記入していきます。
推定相続人とは、本人が亡くなられた場合に相続人になる方の事をいいます。
<推定相続人の説明>
配偶者・・・・・・法律上の婚姻をしている人は常に相続人
第一順位・・・・・子またはその代襲者・再代襲者など
第二順位・・・・・直系血族の最も血の繋がりが近い者のみ
第三順位・・・・・兄弟姉妹又はその代襲者
よく分からないという方も、上の図を参考に当てはまる方がいらっしゃったら関係図に記入してください。
関係図にはもともと枠が書かれていますが、枠に当てはまらない場合は、書式を参考にしてA4の紙に記載してください。
家庭裁判所は後見開始の申立において、申立の内容や成年後見人として誰が適任かということについて、申立人以外の「親族」の意見も参考にしながら審理を進めていきます。そのために、この「親族の意見書」の提出が必要となります。
ここでいう親族の範囲は、本人からみて推定相続人にあたる人々です。
※なお、当然申立人は意見書の提出は必要ありません。
但し、未成年者や高齢者虐待など、問題のある方の意見書まではもらう必要はありません。
未成年者以外の理由により、本書面を提出できない場合は、できれば上申書などを提出し、裁判所に事情が分かるようにすると良いでしょう。
こちらは、候補者についての情報を記入する書類です。後見人候補者がいない場合には提出は不要です。
選択式の質問が多いので、該当欄にチェックをいれていきましょう。記入式の質問は自由に記入します。特に形式等きめられていません。
⑧財産目録
本人の所有している預貯金や不動産などの財産を一覧にして記入します。
申立書類一式の後ろに、財産の資料(通帳や保険証等)のコピーを添付します。
資料がある場合には、表の右端にあります「資料」の欄にチェックを付けましょう。
そして後に添付する資料のコピーには、右上に分かるように番号を書きます。
番号の書き方ですが、財産目録は「1 預貯金・現金」「2 有価証券等~」と項目にわかれており、各表には「1.2.3.4…」とふられています。
例えば、「1 預貯金・現金」の表に書いた№1の口座の通帳(コピー)を添付する際は、
資料(通帳のコピー)の右上に「財1-1」と書きます。
※「財1-1」は、財産目録、1 預貯金・現金 の№1の資料です という意味です。
⑨ 相続財産目録
本人が相続人となっている遺産分割が未だされていない相続財産がある場合にのみ提出します。被相続人(亡くなられた方)が複数いらっしゃる場合は、この用紙(相続財産目録)をコピーし、被相続人ごとに目録を作成します。
この用紙も財産目録と同じように記入し、資料にチェックをいれます。相続財産の資料には「相1-2」のように書きましょう。
※「相1-2」は、相続財産目録、1 預貯金・現金 の№2の資料です という意味です。
⑩ 収支予定表
本人の1ヶ月あたりの生活収支を記入してください。家賃や健康保険料等の月々の決まった金額のものは、その金額を記入します。
おむつ代等の日用品に関する支出は直近3ヶ月の平均金額を書くようにしましょう。
年金等は2ヶ月分が振り込まれますので、2で割って算出しましょう。
表の下に行くと、年額を算出する欄があります。表を埋めていき月額支出を計算した後、12(ヶ月)をかけて年額を計算しましょう。
<関連コラム>
申立で親族の同意(同意書)がないとどうなるか?
[必読]認知症の方の預貯金解約・引き落としにはご注意を
法定後見制度のメリットとデメリット
これまでの説明でも、実際の具体的な書き方に悩まれる場合もあると思います。
そんな場合は以下の書類をご参照下さい!!
上記①~⑩までの書類の書き方見本となっています。
申立書類の見本(大阪家庭裁判所編) ←クリックしてください
2.申立・本人・候補者についての資料
申立人についての資料
①申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)※本人と同じ戸籍であれば不要
本人と申立人の関係を確認します。そのため、添付した戸籍だけでは本人との関係が確認できない場合、追加での戸籍の取得をお願いされる場合もあります。
戸籍は、申立人の本籍地をおく市役所や区役所にて取得しましょう。
郵送での請求も可能ですが、その場合には請求書ともに、小為替、身分証明書のコピー、返信用封筒を同封する必要があります。
自分の本籍地が分からないという場合は、「本籍地付きの住民票」を取得すれば本籍地がわかります。
本人についての資料
①戸籍謄本(全部事項証明書)
本人の本籍地をおく市役所若しくは区役所にて請求します。
②住民票
本人が住所をおく市役所若しくは区役所にて請求します。
③登記されていないことの証明書
本人がすでに後見等を開始されていないかどうかや、任意後見契約の本人とする記録がないかどうかを確認するため、法務局の発行する本人の「登記されていないことお証明書」が必要です。
請求は窓口請求と郵送請求の、2つの方法があります。
<窓口請求の場合>
「登記されていないことの証明書」は、東京法務局後見登録課、全国の法務局・地方法務局(本局)の戸籍課の窓口で請求発行してもらえます。
ここで注意していただきたいのは、法務局の本局でしか請求できないということです。
例えば、大阪には、北大阪支局、堺支局等、多くの法務局があります。ですが、大阪府内の法務局で「登記されていないことの証明書」を窓口発行してもらえるのは、大阪法務局の本局(大阪市中央区谷町2丁目1番17号)のみです。
<郵送請求の場合>
東京法務局後見登録課に郵送請求をおこなって下さい。
登記されていないことの証明書を郵送発行してもらえるのは、東京法務局後見登記課のみです。
詳しい請求方法は、以下の東京法務局HPに案内が記載されていますので、ご参照ください。
<外部リンク>
登記されていないことの証明書の申請方法
④財産関係等の資料のコピー(但し不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)については原本提出)
財産関係の書類は、財産目録に記載している本人の財産についてわかる書類です。
例えば、預貯金通帳、生命保険の保険証券、不動産の謄本等です。
⑤本人情報シート、診断書及び鑑定についてのおたずね
後見の申立の際、医師からの診断書が必要になります。
また、医師が診断書を作成する際の資料になる「本人情報シート」をご本人の福祉関係者(ケアマネージャーやケースワーカー)に事前に記入していただき、その本人情報シートと診断書の用紙(鑑定についてのおたずねを含む)を医師にお渡しください。
⑥健康状態資料
精神障害者手帳、身体障害者手帳、療育手帳、要介護度が分かる書面(介護保険認定書等)等です。
これらの原本は家庭裁判所での事情聴取の当日に原本をご持参下さい。家庭裁判所にてコピー文書と相違ないか照合を行います。
もちろん、本人の「財産関係等の資料」はある分だけで、大丈夫です。特に申立てに至るまで、本人と別々の場所で、離れて暮らしていた申立人にとっては、本人の財産がどこにあるのか分からないことが多々あることでしょう。(当センターでも、そういう方がとっても多いです)
そういった場合には、実際に後見が開始され、後見人が本人の財産を調査していくことになります。ですので申立時に提出する「財産関係等の資料」は、可能な限り、集められる範囲で収集し、提出頂ければけっこうです。
候補者についての資料
①住民票(本籍表示のあるもの)
候補者が住所をおく市役所若しくは区役所にて請求します。
3.申立人・本人・候補者についての資料
ここでは、「成年後見申立」に掛かる印紙・郵券についてご案内させて頂きます。
(保佐開始・補助開始・任意後見監督人選任申立は、また異なります)
※ただし大阪家庭裁判所の場合になります。
①収入印紙(申立書貼付用) 800円
②収入印紙(登記用) 2,600円
③郵券(切手) 3,990円
但し、郵券の組み合わせは以下の組み合わせにてお願いします
※保佐開始・補助開始の場合はさらに500円×2枚を追加
必要な郵券等は、成年後見人の候補者の人数によっても異なってまいりますので、よくご確認下さい。
各裁判所によって、この「裁判所に収める印紙・郵券」の金額は異なります。
大阪府以外の申立を検討されていらっしゃる方は、各家庭裁判所のHPで確認するか、直接担当部署に電話してみましょう。
ちなみに大阪家庭裁判所(本庁)の場合には、建物内に印紙の販売所があります。
後見申立窓口で必要な郵券を確認し、家庭裁判所内で購入することもできるので便利です。
もちろん収入印紙・郵券は最寄の郵便局でも購入可能ですので、ご事情に合わせてご利用下さい。
最後に
さて、これまで紹介させて頂きました、以下の3つのグループの書面を収集、作成頂けましたら、いよいよ家庭裁判所に書類の提出をおこないます。
急ぎの場合などは、事前に家庭裁判所に電話連絡のうえで、面談の日程をおこなっておくと良いでしょう。
1.家庭裁判所で貰える申立書類一式(申立てをする方々が作成する書類)
2.申立人・本人・候補者についての資料
3.裁判所に収める印紙・郵券
なお、申立ての必要書類の説明には、省かせて頂きましたが、家庭裁判所にて必要があると判断した際には、鑑定費用(5万円~10万円程度)を裁判所に納付する必要がある場合があります。
ので、ご注意下さい。
※医師の診断書だけでは、本人の判断能力の判定に不十分として家庭裁判所にて本人の状態を鑑定する必要があると判断された場合には、鑑定費用を納める必要があります。
なお平成26年度の最高裁判所事務総局家庭局のデータによると、鑑定が実施されるのは、約10パーセント程度です。つまり残りの9割近くはこの鑑定は実施されず後見手続きは進められます。
成年後見制度は認知症や、知的障がいなどで判断能力が低下した方を保護するとても大切な制度です。
本コラムをお読み頂き、少しでも皆さんの成年後見制度の理解・利用に貢献できれば嬉しいです。
最後までご精読ありがとうございました。
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当センターでは、申立てのみのご相談、ご依頼も多数お受けしております。
また、大阪府内の家庭裁判所への申立事件だけではなく、他府県の成年後見申立も受任しております。もちろん依頼者の本人確認、意思確認のために弊事務所に来所して頂く必要がありますが、事情によっては出張相談も、対応可能です。
以下に、当センターの人気記事ランキングも記載しておりますので、ご参照下さい。
以上、宜しくお願い致します。