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[必読]認知症の方の預貯金解約・引き落としにはご注意を
本コラムに関連する興味深いニュース(令和3年(2021年)2月18日付記事)を確認しましたので、大きく内容を変えて更新させて頂きます
執筆者;金光
公開日;2016/9/26
更新日;2021/2/19
こんにちは。
LSO総合司法書士事務所の金光康太です。
さて、当センターには認知症に関わるご相談を数多くお受けいたします。
そのなかで多い相談の一つが「認知症になった親族の預金を解約したい、引き出したい」というものです。
具体的には、相談者の方は認知症になった親族(以下、「本人」という)の介護施設や、病院等の入所費用にあてたい、しかし金融機関が預金の引き出し、解約に応じてくれない。。という内容です。
2021年2月18日全国銀行協会(全銀協)の発表
代理権ない親族の出金を容認 全銀協、認知症顧客の預金
全国銀行協会(全銀協)は18日、認知機能が低下した高齢顧客の預金に関し、法的な代理権を持たない親族らでも代わりに引き出すことを条件付きで認める見解を発表した。
裁判所が関与して財産を管理する「成年後見制度」の利用を求めるのを基本としつつも、資金の使い道が医療費といった「本人の利益」を満たす場合などには可能だと記した。
認知症の高齢者は増加傾向が続いており、2025年には700万人前後に達するとの推計もある。認知症患者の預金を本人のために使いたいとの親族らの声が強まっていることに対応。加盟各行は今回の見解を参考にして柔軟な取引を進める。
これまでは判断能力が衰えた場合、親族であっても成年後見制度を利用しなければ、預金の引き出し、解約を行うことはできませんでした。
本人の預金は、本人の財産です。例え身内の方であろうとも、本人の意思が確認できない以上、その預金を引き出し、解約する権利はないからです。
しかしながら本全国銀行協会(全銀協)の発表により、今後以下の2点を満たしている場合、代理権ない親族が認知機能が低下した本人のために、柔軟に預貯金の解約に応じる可能性があります。
どのような場合に代理権ない親族の出金を容認するのか?
親族等による無権代理取引(出金)は、本人の認知判断能力が低下した場合かつ成年後見制度を利用していない(できない)場合において行う、極めて限定的な対応であることを、ご理解の上お読みください。
①本人が認知判断能力を喪失していることを確認できる場合
金融機関が確認する手段として、以下の方法があげられます。
・本人との面談
・診断書の提出
・本人の担当医からのヒアリング等
・診断書がない場合についても、複数行員による本人面談実施や医療介護費の内容等のエビデンスを確認することなど
※対面での対応が難しい場合には、非対面ツールの活用等も想定される
上記①に加え②認知判断能力を喪失する以前であれば本人が支払っていたであろう本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為
つまり本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることが考えられます。
「参照:一般社団法人 全国銀行協会 Web 令和3年2月18日 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について より(https://www.zenginkyo.or.jp/news/2021/n021801/)」
本人のキャッシュカードがあり、暗証番号も知っている場合は?
この場合、ATMで預金を引き下ろすことが可能でしょう。
但し、この場合でも事前に了承を得ていた場合を除き、本人の意思によらず預金の引き落とすことはできません。
将来的に本人のために成年後見人が就任した場合、特に司法書士、弁護士等の専門職が後見人に就任して、本人の財産について調査を行った場合などには、親族が行った預金の引き落としについて、追及を受けることもあります。
また相談者の方は、本人のためと思い本人のためにお金を引き落とした場合でも、他の親族、特に本人の相続人となる親族の方から後々クレームが入る恐れもあります。
例えば「あいつは認知症の母の預金を私的なことに利用するために勝手に引き下ろした!」等といった相談は、相続相談会では、よく聞く話です。
ですので原則として本人の判断能力が衰えた際、本人の為に預貯金を引き落としたい場合は「成年後見制度を利用する」又は「丁寧に説明し金融機関の了解を得る」ようにして下さい。
もし既に、認知症の親族の預金を引き出した方がいらっしゃる場合は
・いつ誰が引き出し、何の目的で使用したかメモをする
・本人の為に使ったことを証明する契約書、領収書は必ず保管しておく
これを必ず守るようにしておくべきと考えます。
誰にも後ろ指さされないように、資料は保管しましょう。
投資信託等の金融商品については?
投資信託等の金融商品の解約については、金融機関は預貯金に比べて、より慎重な対応を行う見通しです。
詳しくは以下一般社団法人 全国銀行協会Webの引用文をご参照ください。
投資信託等の金融商品しかまとまった資産として残っていない顧客の医療費や施設入居費、生活費等の費用を支払うために、親族等から本人の保有する投資信託等の金融商品の解約等の依頼があり、やむを得ず対応する場合、基本的には上記の預金の払出し(振込)の考え方と同様であるが、投資信託等の金融商品は価格変動があることから、一旦、解約等を行った場合、預金と異なり、原状回復が困難である。この点に鑑み、金融商品の解約等については、より慎重な対応が求められる。
「出典:一般社団法人 全国銀行協会 Web金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方についてより(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news330218.pdf)」
今回のまとめ
本記事に上げさせて頂いた全国銀行協会(全銀協)の見解発表は、実態社会の問題に対応した素晴らしい判断だと思います。
とはいえ本人の判断能力が衰えた場合、成年後見制度の利用が基本です。認知症の方の預貯金解約・引き落としには、十分な注意をなさって下さい。
なお、判断能力が低下する前に“家族信託契約”を結ぶと信頼できる家族に、財産の管理や処分を任せることができます。自分の判断能力が低下したときに、財産の処分が不安という方は家族信託の制度を利用することもお考えください。
家族信託とは
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