法定後見制度のメリットとデメリット
執筆者;髙澤
公開日;2016/7/9
更新日;2019/12/16
こんにちは。
LSO司法書士事務所の髙澤です。
今回は私から成年後見でよく相談される、ある質問について書いていこうと思います。
「父が認知症になり今回子どもの私が後見人として選任されました。今まで息子(本人の孫)の学費を支援してもらっていましたが、これからも学費の支出はできるでしょうか??
法定後見はあくまでも、本人の財産は本人のために使うのが原則となっております。
本人の財産から支出できるものは、「本人の生活費」の他に、「本人が負っている債務の弁済金、本人に扶養義務がある配偶者や未成年の子などの生活費、後見人が職務を遂行するのに必要な経費」などがあります。
もしそれ以外に勝手に支出してしまうと、業務上横領と見られてしまうでしょう。
これがもし任意後見であり、本人が「孫の学費として毎年○○万円支援しているが、卒業まで支援してほしい」などという取り決めをしていたのであれば、支出することが可能になります。
しかし、そのような取り決めをしない法定後見では、必要以上の
孫の学費への支出は難しいと考えられます。
→後記、成年後見デメリットの①に記載しております
成年後見のメリット・デメリット
成年後見は本人が安心して生活できるようにサポートする制度です。
基本的には「本人の財産や身の上を守ること」を前提に考えているので、デメリットは後見人になった人が感じることが多いように思います。
<メリット>
①本人の財産管理ができる
認知症のご本人では行えなかった、本施設などに入居する際に必要な契約、又は更新契約が代わりにできます。
また、施設の入居費用や本人の生活に必要なお金を管理するために、金融機関など口座の解約手続きや本人に代わってお金の引落しをすることができます。
②不正な契約などを解約することができる
後見人には不正な契約を取り消せる権利があります。本人が必要もないのに高額な商品を買ってしまったり、財産を誤って安く売ってしまったり、本人にとって不利益になる契約を後から取り消すことができます。
③家庭裁判所が本人の生活を見守る
後見人は毎年全財産の収支を家庭裁判所に報告します。
また、事案によって成年後見監督人を選任し、より慎重に本人の財産管理が実施されます。
そのためご親族の方々も、本人の財産を安心して守ることができます。
<デメリット>
①親族でも財産に手を出せなくなる
よく親族で、同居して面倒を見ているのだから、本人の財産もある程度自由に使っていいという感覚があるところもあるかと思います。そうすると、本人が施設に入る時にお金がないのであまり立派な施設には入れないという結果になってしまいます。そのようなことがないように成年後見制度では親族であっても財産に簡単に手を出せなくなっています。
また、成年後見では、財産管理を裁判所が関与して行われるので、本人の希望とは違う財産管理になってしまうこともあります。最初の事例のように孫の学費を支援したり、子どもたちの会社に貸付したりすることはできません。
②後見人の業務が長期間に及ぶ
後見の業務は本人の判断能力が回復しないかぎり、原則として本人がご存命中は続くことになります。
そのため、簡単に後見人をやめることは難しいです。
→正当な事由があれば、家庭裁判所の許可を得て辞任が可能です
③後見人に選任された場合、後見事務が大変
成年後見制度では就任後1ヶ月以内に本人の財産目録を作成、裁判所に提出しなければいけません。
また1年に1度、家庭裁判所に報告書を作成・提出しなければいけません。
専門家ではない方が、上記②、③のデメリットを引き受けた上で成年後見人に就任することは大変かと思います。
なお、判断能力が低下する前であれば“家族信託契約”を結ぶことによって、信頼する家族に財産の処分や管理を任せることができます。
家族信託とは
弊事務所では、成年後見人に就任した方向けのサポートプランもご用意しております。
よければ後記、料金表を是非ご参照ください!
どうぞ宜しくお願いします。