成年後見制度と認知症(2)~後見開始前の契約は取り消せるか?~
執筆者;金光
公開日;2016/7/7
更新日;2016/8/18
こんにちは。
LSO司法書士事務所の金光康太です。
弊事務所では、多くの認知症に関連した成年後見制度に関するお問い合わせを頂きます。
そのなかで、良くある質問に以下のような質問があります。
「成年後見制度利用前の契約(高価な布団、健康食品の契約)を取り消すことは可能でしょうか?」
結論から申し上げて、成年後見制度利用開始前に、本人が制限行為能力者であることを理由とした契約の取消をすることは出来ません。
ここでは、成年後見人に就任した事例で考えます。
- 成年被後見人Aさんが、悪徳リフォーム会社と、不適切な自宅のリフォーム工事契約(以下「本件契約」という)を締結したとします。
- この事例において、契約段階では成年後見人のAさんは既に認知症となっており契約を結べるだけの意思能力、判断能力がなかったとします。
- この後に成年後見人の利用申立てがされ、家裁の審判が確定し成年後見制度が開始したとします(つまり本件契約が締結されたのは、成年後見制度の利用開始前です)
- 契約締結時に成年後見制度が開始されていない以上、本人が成年後見人(制限行為能力者)であることを理由に取り消すことはできません。
では、本件契約については、本人やご親族は、泣き寝入りするしかないのか、というとそうではありません。
この場合は消費者契約法や一般の民法により、契約を解除できる可能性があります。
本件契約自体が詐欺行為や脅迫、不実の告知により締結された場合は、それらを主張することにより、契約の解除が可能です。
但し、成年後見制度による契約取り消しに比べ解除が認められるまで困難な場合が予想されます。
大切なことは認知症等の発症により、判断能力に衰えがみられる場合は早めに成年後見制度の利用を開始することです!
成年後見制度は、大切なご家族の財産を守り、ご本人様の平和な日常形成にも繋がる大切な制度です。
もし、ご家族が認知症にかかり財産管理に不安がある方は、大阪成年後見申立センターまでお気軽にお問い合わせ下さい。