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被後見人の財産がなくなったとき
執筆者;沖中
公開日;2018/3/2
更新日;2018/6/12
こんにちは
LSO総合司法書士事務所の沖中です。
今回は、「被後見人の財産がほとんどなく、入院費などを支払って全部なくなってしまった場合、後見人が被後見人の生活費等を負担しなければならないのか?」
という疑問に答えていきたいと思います。
被後見人の生活に要する費用は、基本的には被後見人の財産から支払われるのが相当ですが、被後見人の収入が十分でなかったり財産が底を尽きる可能性もあります。
これは、後見人に就任された方にはとても大事な問題点ですよね。
後見人ではなく被後見人の扶養義務者が負担することになります。したがって、もし後見人自身が被後見人の扶養義務者であれば、負担を求められることがあります。
扶養義務者とは
私は扶養義務者に当たるのかな?
と思われた方がいらっしゃるかもしれないので、扶養義務者について簡単に説明させて頂きます。
法律上当然に扶養義務を負う者
- 配偶者
- 親、祖父母、曽祖父母
- 子、孫、曾孫
- 兄弟姉妹(全血兄弟姉妹、半血兄弟姉妹問わず)
※この順番に扶養義務を負うわけではありません。
扶養義務の順番については後ほど解説します。
例外的に扶養義務を負う者
家庭裁判所の審判により、先に述べた者が扶養できない「特別の事情」がある時に限り、やや遠縁となる三親等内の親族が選ばれることもあります。
こんな場合も扶養義務は発任します
被後見人が養子縁組をしている場合
被後見人に養親がいたり、養子がいる場合その人たちも血族とみなされますので扶養義務者に該当します。ただし離縁した場合には、扶養義務はなくなります。
認知した子がいる場合
被後見人に認知した子がいる場合、その子が生まれたときにさかのぼって親子関係が認められ、当然扶養義務者に該当します。
以上が扶養義務者に該当する方です。
自分は扶養義務者に該当すると思われた方や、該当する人が何人かいると思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
扶養義務の順位や方法について
では次に、 扶養義務者が複数人いる場合の、扶養義務の順位や方法について説明します。
原則;当事者間での話し合い
法律の定めはありません。
基本的には当事者間での話し合いで決めることになります。
話し合いが"まとまらない場合"
まとまらない時、協議できない時は家庭裁判所が決めることになります。家庭裁判所では、各扶養義務者の経済状態や家庭の状況など一切の事情を考慮して決めますが、配偶者および未成年の子を養ってなお余裕のある者に扶養義務を負わせ、余裕がなければ負わせられません。つまり、「普通の生活をした結果、余裕があれば援助をお願いします」ということです。
したがって、被後見人に扶養義務者が存在し、かつ経済的に余裕のある方がいればその方が被後見人の生活費等を負担することになります。
誰も経済的に援助できる人がいない場合
では、こんな場合はどうなるのでしょうか。
- 被後見人に全く身寄りがいない
- 身寄りはいるが生活に余裕がなくて援助できない
この場合は生活保護を受給を検討することとなります。
受給要件は以下の4つです。
・本人に生活を維持していくだけの収入がないこと
・生活を援助してくれる身内、縁者がいないこと
・本人が病気やケガでやむなく働けないこと
・資産、財産(家、車等)がないこと
つまり、財産も身寄りもない被後見人は生活保護などの公的扶助を頼る以外方法はないと言えるでしょう。
最後に
今までのお話をまとめると以下のようになります。
・たとえ被後見人の財産が底を尽きたとしても後見人が被後見人の生活費等を負担するとは限らない
・後見人自身が扶養義務者の場合は負担しなければならない可能性がある
・被後見人に身寄りがない、いても援助できない場合は生活保護など公的扶助を頼る
本コラムが、今現在後見人に就任されている方や、成年後見を申し立てようと考えている方
にとって少しでも参考になれば幸いです。
最後までご精読ありがとうございました。