[無料書式付]登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革がつかない場合[解説]
こんにちはLSO総合司法書士事務所の金光です。
<コラムのその前に>
先に今回のコラムに関連する用語をざっくり解説しますね。
・登記簿 →土地や建物の記録のこと。誰が所有者なのか等を記載しています
・法務局 →不動産の名義を変えるための役所です
・戸籍の附票 →住民票と同じく住所の証明書です。本人の本籍地がある市役所(区役所)で取得 します
・住民票の除票→他の市町村へ引越しをしたり、死亡したことにより、住民登録が抹消されます
その住民登録が抹消された住民票を除票と呼ばれます。同じく戸籍の附票も
「戸籍の附票の除票」と呼ばれます
はじめに(本文開始です)
さて、皆さんは相続登記という手続きをご存知でしょうか?
登記簿上の所有者が亡くなった場合、法務局へ相続登記を申請しないと不動産の名義は相続人へと変更しません。
ここで、不動産登記簿に記録された登記名義人(以下、「Aさん」という)が亡くなった場合、表題の登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革がつかないと、相続登記の申請はできません。
今回は、この相続登記における表題の
「登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革がつかない場合」
この問題点と解決策を解説させて貰います。
特に、放置していた相続手続き等には、良く起こりうる重要な問題点です。可能な限り分かりやすく丁寧に解説していきます。
これから相続登記の申請を考えられている方、司法書士事務所(法律事務所)の新人の方は、是非是非、最後までお読み下さい。
そもそも登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革がつかない場合とは
売買や相続などで不動産を取得し、その事実を登記申請すると登記簿に、その方の住所氏名が記載(記録)されます。
ここでは不動産取得時の住所を大阪市としましょう。
以下、後記の時系列をご覧下さい。
~時系列~
①2005年Aさん不動産取得、登記も済ませる。→大阪市の住所で登記
②2010年Aさん京都市へ引越し。住民票を京都市に移しました。
③2015年Aさん東京都へ引越し。住民票を東京都に移しました。
④2020年Aさん死亡(相続発生)死亡時の住所は東京都。
上記をみて分かって頂けるでしょうか。Aさんの登記簿上の住所と、死亡時の住所が異なっていますよね。
相続登記では、この全ての住所の沿革をつけるために、被相続人Aさんの住民票や戸籍の附票を提出します。住民票や戸籍の附票には、今住んでいる所の前の住所が載っていますから、辿って取得すれば、住所の沿革をつけることが可能なのです。
しかし、住民票や戸籍の附票は除票になってから、5年間しか保存されません。保存年数は自治体によって異なる場合もありますが、原則5年で破棄されますので、要注意です。
したがって仮に被相続人Aの住民票や戸籍の附票が、相続登記をする際に、既に破棄されている場合は、住所の沿革がつけられなくなります。
これが問題となる「登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革がつかない場合」です
住所の沿革がつかないと何が問題なのか??
これは、亡くなった方が本当に不動産の所有者(登記名義人)かを法務局が確認できないからです。相続登記の申請書には、死亡日や、相続人を確定させるために、戸籍全部事項証明書(戸籍)を添付します。
しかし戸籍には被相続人Aさんが、いつ亡くなったかは記載されていますが、Aさんの住所までは載っていません。
~戸籍のサンプル(東京都北区役所HPより)~
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)見本
不動産の登記簿には、所有者の住所氏名は記載されていますが、本籍地は記載されていません。
つまり戸籍だけでは登記簿上のAさんと、死亡した戸籍上のAさんが同一人物か分からないのです!
そこで、「登記簿上のAさんと、死亡した戸籍上のAさんが同一人物ですよ。だからこの人の相続登記を受理して下さいね」と主張証明するために、本籍地付きの住民票や戸籍の附票を提出するのです!!
※「戸籍の附票」には、当然本籍地も記載されています
しかし、「住民票」や「戸籍の附票」が既に破棄されていた場合はどうするか・・・。
では解決策を紹介します
以下の書類を提出することで、「住民票」や「戸籍の附票」が既に破棄されていた場合でも、相続登記を受け付けて貰う事が可能になります。
(ここでは、この申請方式を勝手に「上申書方式」と呼びます)
①上申書
相続人から「登記簿上のAさんと、死亡した戸籍上のAさんが同一人物ですよ」と法務局へ上申するために提出します。
印鑑証明書の添付も必要です。但し発行後3ヶ月以内のものでなければいけないという制限はございません。
②不動産権利書
被相続人が、申請対象の不動産を間違いなく所有していたことを証明するために提出します。つまり、住民票で登記簿上のAさんと、死亡した戸籍上のAさんが同一人物かは、証明できないけど、不動産の権利書も持っていましたし、間違いないですよ、と主張証明するために提出します。
★なお、後記の固定資産税納税証明書を提出する場合は、本書面は必要ございません。
③固定資産税納税証明書
被相続人が、固定資産税を払っていたならば、対象不動産登記簿上のAさん本人に間違いないですよ、と主張証明するために提出します。
被相続人が亡くなって暫く経過後の場合は、相続人のどなたかが代わりに支払っている場合もあるでしょう。その場合は相続人が支払ったことの証明書でも大丈夫です。
★なお、上記の不動産権利書を提出する場合は、本書面は必要ございません。
但し、以下の確認を行って下さい
・過去何年分必要か?(ある法務局では3年分必要と言われました)
・固定資産税納税通知書+固定資産税の領収書←でも代替可能なのか?
~法務局ごとに取り扱いが異なるので~
上記に加えて「保証書」なる書面の提出も求められる場合があります。
書式は①の上申書とほぼ同じで表題を変えた程度なのですが、「保証書」は推定相続人以外の方の実印押印と印鑑証明書の添付が必要になります。
法務局ごとに取り扱いが異なるので、「上申書方式」で提出する場合は、事前に法務局に確認を行って下さい。私も「上申書方式」で初めて提出する法務局には必ず事前打ち合わせを行います。
[無料]書式公開します
赤字の箇所は適宜、事案に応じて変更して下さい。
相続人全員の実印を調印して貰って下さい(印鑑証明書も添付必要です)
・固定資産税納税証明書<サンプル>
赤字の箇所は適宜、事案に応じて変更して下さい。
本書式の書面を提出しなくとも、各自治体(市役所、区役所等)で、請求すれば発行して貰える場合もあります。まずは当該自治体に確認してみましょう。
また「固定資産税納税通知書+固定資産税の領収書」を提出して認めて貰える場合もあります(少なくとも大阪、兵庫、京都では、この取り扱いを認めてくれる法務局が多いです)
~(くどいようですが)法務局ごとに取り扱いが異なるので~
原則は、住民票や戸籍の附票で、被相続人の登記簿上の住所と死亡時の住所の沿革をつける必要があります。本書式は、あくまでもサンプルですので、初めて「上申書方式」で相続登記を提出する法務局には必ず登記官と事前に確認を行うようにしましょう。
<今回のまとめ>
・沿革がつかない場合は「上申書方式」対応可能です
・相続登記はなるべく早めに手続きを済ませましょう!
※本コラムを執筆するに当たり、関西圏以外の管轄法務局の対応を確認するため
東京都、福岡県、広島県、香川県の提携司法書士に確認したところ、上申書+評価証明書でも、よかったり、そもそも権利書や固定資産税納税証明書があれば、上申書は必要ないという地域もあるようでした。本コラム作成に協力して下さった山中先生、堤先生、庄田先生には、この場を借りて御礼申し上げます。
本コラムが、相続手続きに悩まれる方の一助になれば、とても嬉しいです。
以上、長文に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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